■初代レガシィBF型(’89年1月〜’93年9月)
1989年1月に登場した初代レガシィ、BF系の登場はスバル自身の変化だけでなく日本のステーションワゴンと言うものに対して大きな変化をもたらしたといってもいいだろう。
レガシィの全身とも言えるレオーネで培ってきたステーションワゴンのノウハウ、コンセプトメイクを活かしているかのようにも思えるが、実際はすべて見直すことから生まれた。
レガシィの登場前のバブル時にもかかわらず、巨額の赤字を計上し、日産の傘下に入ってしまった(その後、日産自身の不振で提携は解消された)のは、記憶に新しい。そういった背景からも、すべてを一新した上での、自動車造りというものが必要とされた。
スバルにとっては実質初となる、ライバルはひしめき合っている2.0L中心のラインアップ。1970年代から熟成を重ねてきた、水平対向エンジンと4WDシステムは、やはり残しつつ、それにプラスするものはなにか。その答えがステーションワゴンだった訳だ。それまでの日本のワゴンと言えば、バンを乗用扱いにしたものばかり。一方、レガシィはそんな状況に目をつけ、ヨーロッパ社に見られるような、ワゴン専用ボディとして設計を行うことで、より質の高い走りと使い勝手を実現することに成功した。今まではワゴン専用ボディなどは珍しくなくなっているが、日本のワゴン専用設計ボディはレガシィから始まったのだ。
それだけにデザインも、それまでのどこか「商用バン」の面影を残したものでは全くない。今まで培ってきた物を取り入れつつ、新たなコンセプトを取り入れる。高い技術力と魅力ある商品性という点で、うまく融合させたという点で、日本の自動車史上、希に見る成功例であろう。
当然のごとく大ヒットモデルになったのだが、その大ヒットを広告戦略が後押ししていた点も見逃せない。発売当初のTVCMは開発の仕上げに行われた10万キロ走行世界速度記録(FIA公認)を全面に出したもの。「10万キロ連続走行世界速度記録」と言うキーワードと、ただのワゴンではない「ツーリングワゴン」というネーミング。イメージによらない、本当の実力をアピールすることで、ワゴン新時代の到来を予感させるに充分だったといっていい。ちなみこの記録は20日間、447時間44分9.887秒走り続けて10万キロに到達した。タイヤ交換や給油の時間も含めてだ。平均速度はといえば計算すると実に223.345km/hと言うことになる。この記録を見ればいかに速く走り続けていたかが納得できるだろう。
話は戻るが、発売当初のラインアップを見てみると、ワゴンは1,8Lと2,0LのNAのみ。もちろん新開発の水平対向4気筒。ターボの設定はセダンにはあったものの、ワゴンにはなかった。NAの持つ「走りの味わい」を優先したのが、その理由だろう。そのかわりと言う訳ではないが、ワゴンにはエアサスが最上級グレードのVZに設定されていた。このエアサスも、レオーネ時代から熟成が重ねられたスバル自慢の装備だ。駆動系は、2WDがセダンのみに設定されて、高い走破性と安定性を強調するためか、ワゴンは4WDのみだったが4AT/5MTが用意されていた。
その登場から約8ヶ月後、GTの追加があった。セダン/ワゴンの両方に同時に設定され、ここに、現在にも受け継がれるステーションワゴンの王者、GTが誕生した。当初のスペックは200PS/26.5kg/m。セダンのRSに積まれていた2,0L、DOHCインタークーラー付きターボを20PSほどデチューンし4ATとの組み合わせも可能にした。ワゴンに、高出力エンジンとATを組み合わせて搭載することで、まさにGTの名にふさわしい、より高いツーリング性能を確保できたと言っていいだろう。
その後も、好調な販売を追い風に着実に車種を増やしていく。マイナーチェンジは3回行なわれ、ワゴンに限って見ていくと、1回目では、エアサス装着車種の拡大。そして2回目は、買い得感と装備の充実を両立したブライトンの追加など。また1992年に行なわれた最後のマイナーチェンジでは、初となるFFの設定。そして初の3ナンバーとなった2,2LNAエンジン搭載のブライトン220が追加され、バリエーションは豊富に。その後も、220PSエンジン搭載のSTiバーションがワゴンに追加されるなど、初代で既にレガシィの完璧さがうかがえた。
■2代目レガシィBG型(’93年10月〜’98年5月)
初代から完全にステーションワゴンの王者に上り詰めセダンも含めて大ヒットとなった。そんな状況の中、2代目のBG型が登場した。超人気車種となったレガシィはモデルチェンジとなるとその内容に多くに人が引き寄せられた。
また、すでにインプレッサも登場しておりレガシィ同様ワゴンが用意され、スポーツ性を全面に出した展開に。車格的にはインプレッサのほうが下で、より純然たる差別化が必要とされた。
実際2代目レガシィを見てみると、初代のイメージはそのままに、より先進なボディをまとって登場した。まさに正しく進化したといえ、うまくまとめられていた。全体のデザインは、直線基調でスクエアさを強調していた初代に対して、丸みを帯びたなめらかなシルエットとなり、より風格が増したと言っていいだろう。アカ抜けた感じは、新世代のツーリングワゴンを予感させるに充分すぎるほどだった。
その影には、エクステリアとインテリアデザインの両面で、チーフデザイナーにフランス人のオリビエ・ブーリー氏を迎えたというのが、大きく影響しているだろう。このブーレー氏はイデア→ポルシェ→ベンツなどを経て、このレガシィを担当した。
デザインにこれだけ力を入れたからというわけではないが、内容面に関しては、それほど大きな機構の変化などは見られず、ボディはライバルのワゴンたちが軒並み3ナンバー化をおし進めたのに対して、レガシィについては5ナンバーボディのまま。限られた中で扱いやすさを追求することに重点を置いたのだ。
ただし、エンジンに関しては大幅な変更が加えられている。まずインプレッサとの差別の必要性からか1,8Lエンジンはラインアップから外された。その一方ターボの強化が図られ、初代のシングルタービンに対して、2Lのまま、ツインターボ化された。システム的には2ステージ化することで低回転時にはシングルで過給し、高回転域になるとツインで過給するというもの。ターボエンジンの欠点である、低速トルクの細さを補うもので、スバルらしい技術と言えよう。また、タービン自体も軸部分にはボールベアリング支持を採用し、フリクションロスの低減によるピックアップの良さと、高い耐久性を実現。組み合わされるインタークーラーも冷却効率と軽量さを重視して空冷タイプが装着されている。
スバルらしさで忘れてはならないものがある。それは4WDシステム。なんと3タイプもの方式を使い分けているのだ。普通、技術的、コスト的にも一つの車種には一つのシステムとなるが、一つの車種に3タイプものシステムを採用するというのはいかにもスバルらしい技術だ。
細かいはなしになるが、ワゴンに限ってみていくと、GTの4ATにはVTD−4WD(不等&可変トルク配分電子制御4WD)が。GT以外のAT車はアクティブスプリット式となり、MT車はビスカスLSDを使ったセンターデフ方式を採用している。なかでもVTD−4WDは、現行でも採用されるスバル自慢のシステムで、前後のトルク比は35%:65%を基本として、さらにその配分を電子制御の多板クラッチで可変制御するというもの。悪路走破性だけでなく高速安定性や旋回性能を高い次元で可能にした。
このように充実した内容でスタートしたのだから販売面でも好調な滑り出しを見せた。そんな状況の中、フルモデルチェンジ後半年で車種の充実が図られる。一度は廃止になった1,8Lエンジンの復活。さらにNAの2,5L、DOHCエンジンを搭載した250Tがラインアップに加わる。これにより鋭いレスポンスが持ち味のターボ系と上質さを強調した大排気量NAの選択肢ができた。その後、250Tと同じエンジンで最低地上高を200mmまで高めたグランドワゴンを追加。途中でランカスターと名をかえるが人気グレードの一つへと育っていった。
そして1996年6月、レガシィシリーズのフラッグシップモデルのGT系にGT-Bが発表される。MTのみではあるが国内規制値いっぱいの280PSだ。その際に全モデルもパワーアップしMASTER‐4と名づけられた。GT-Bにはビルシュタインの倒立式ダンパーがこの時に初採用になっている。
この後も様々な特別仕様車が登場し、バリエーション豊かなラインアップになる。
■3代目レガシィBH型(’98年6月〜)
3代目を迎えたレガシィ。「新世紀レガシィ」というコンセプトのもの、レガシィを極めるという開発テーマが掲げられた。BHとなる3代目は、ワゴンのみが先行発売された。今まで売れなかったワゴンのおまけ的存在だったセダンをB4と名づけ、半年後に発売させた。B4はBOXERと4WDの頭文字を取ったほかにBerlinetta(イタリア語でフェラーリでは屋根付きタイプのことをさす)と4ドアの頭文字を取った2種類がある。そしてB4と名づけ、差別化したことの裏側にはツーリングワゴンもセダンから差別化したというスバルのワゴンに対するこだわりがうかがえる。
半年も先行させたことで、ワゴン専用車として設計されている。普通はセダンをベースにワゴンを作るのだが最初からワゴンとして設計する。先代までは商用バンを設定しないという意味で、ワゴン専用ボディと呼ばれていた。しかしこおの3代目になって、より一歩踏み込んだ手法を取るにいたった訳だ。まさにレガシィを極めたと言っていい。
グレードについては、2WDと1.8LモデルのLX、エアサスが廃止されたくらいでそれ以外には大きな変更はされていない。ただし、それぞれの内容となると大きく進化している。特にエンジンは全タイプPHASEUを採用。ブロック計上から煮詰め直し、剛性アップすることで基本部分の強化を図っている。シリンダヘッドについては新設計し、各機構の最適化と吸気系の効率アップなどを実現した。
ターボエンジンでは2.0L、DOHC2ステージツインターボというプロフィールに変わりはないものの、基本部分の進化をベースに加えて、斜流タービンを新採用。低回転やハーフスロットルでのレスポンスを向上させた。その他NAのDOHCモデルにはAVCSと呼ばれる可変バルブタイミング機構が新たに追加され、トルクの増大や燃費の向上を実現。
一方、4WDシステムについては、従来から採用されている、3タイプに変わりはない。ただし、4WDシステムも含めたトータル制御という点では、新システムが採用された。それはGTに設定されたVDT−4WDによる駆動力伝達制御と、ABSと4輪の独立制御というブレーキ制御。それに加えてエンジン自体の制御もプラスしている。コーナーへのオーバースピードの進入やレーンチェンジでの挙動の崩れを感知。ブレーキとエンジンの両方をコントロールすることで、安全なドライブを実現してくれる。
サスに関してはリヤがサブフレーム付きのマルチリンクに変更。GT−Bと250T−Bには従来からのビルシュタイン製の倒立式を採用している。パッケージング面では、初代からの伝統、5ナンバーサイズのボディは、BHでも当然同じ。シートに関しても、フロントは理想的な着座姿勢を追求した新開発シートを採用し、リヤについてもリクライニング機能が追加されるなど、疲れの低減をはかることで、その高いツーリング性能に、よりふさわしいものとなった。
他には初のマイチェンでGT−BにEチューンを設定。B4RSKのスポーツシフトやビルシュタイン製ダンパー装着。GT系のボンネットのアルミ化やVDC搭載の250T−V。これだけでも積極的な改良が見て取れる。
2回目のマイチェンは、安全性の向上に主眼が置かれるとともに、ターボに関してはタービンの改良で低中速トルクと燃費の向上を実現。さらにアルシオーネSVX以来の3L水平対向6気筒ユニットがランカスターに。
今後はどうなるのか楽しみだ。