はずみできてしまったと言っても過言ではない。石垣島から大きなモータボート
で1時間ちょっと。いい加減に耳が痛くなった位に島が見えた。「えっ!」と言うのが
正直な感想。他の沖縄の島々は大抵、高い山々がまず目に入ってきた。でもこの島は違
う。海から見るとこの島は島と言えるのか!!と言うくらいに平坦で起伏のない真っ平
らな島だった。降り立つと港は「何だこれは!」と言える位に小さな港だった。ターミ
ナルなど当然ない。人もほとんどいない。でもこれがいいんだな。たまらんわ、これは。
やった、やっと巡り会ったと言う感じだ。4月なのに初夏のようなこの感じ。草の匂い
がして、虫の声がした。日本最南端の島。ついに来てしまった。気持ちが高ぶる。途中
で人に会い、「町はどっちですか?」「あっちの方だよ。町かどうかは知らないけどね」
と言われた。果たして「町」に着く。小さな雑貨屋が2件。小学校のような建物があり、
他には目立つ建物はいっさい無い。あえて言うとすれば宮古島で見たような大きな風車が
1つだけゆっくり回っていた。のんびりとした島の昼間。民宿玉城で食べきれないような
昼飯をいただく。食事の多さで有名らしい。貸してもらった自転車で島をゆっくりと回る。
すごい断崖の続く高那海岸。南十字星が見える所らしい。南十字星。その響きは南半球に
行かないと聞けないような名前だと思っていたが、ここではその星座が普通に見えるらしい。
この島ほんとに果てなのだ。都会の暮らしでは信じられないくらい。島は狭い。自転車でま
わっても一周一時間くらいだ。サトウキビと青い空と遠くに見える海の世界。島は驚くほど
に狭いのに、その深さは無限の深さだ。ぶりぶち公園での湧き水をみてこの島にどうしてこ
んなに水がわいてくるのだろう、と思った。ペムチ浜に行ってみる。当然オリオンビールを
持って。夕暮れの白い砂浜。遥かもやの遠くまでそれは広がっていた。しばらく裸足でビー
チを歩く。ヤドカリがたくさん穴を掘っている。波の音以外何の音もしない。4月の南国の
夕方。全てを忘れるこの時間。たましろ荘に戻り、屋外の裸電球の下での夕食。ものすごい
量だ。泡盛「泡波」を飲みながら仲間と色々なことを話す。色々な所を旅した話。50w電
球の下で話は永遠に続く。夜がふけるまで。南十字星を見に行くツアーが出発する。こっち
は飲み過ぎで気持ちよくなっていた。まだ飲む。真っ暗な夜に地元でバイトをしているやつ
と真っ暗に話す。空では風車がゆっくりと回っている。どんどん南国の夜はふけていく。つ
いにこんな所まで来てしまった。北は散々行ったのに。南は。草の匂いがして、柔らかい風
の吹く夜はふけていった。翌日目が覚めると、夏の朝のような、これから暑くなるぞと言っ
た感じ。鳥の声と牛の声。小さい頃見た田舎ののどかな風景がそのままそこには有った。こ
れでもかと言うくらいに膨大な量の朝飯を食べて宿を出発する。この辺の建物は窓が開けっ
放しで、家の中が丸見えだ。人間金魚バチといったところか。行きは船だったが帰りはちょ
っと贅沢に飛行機。RAC(琉球エアコミューター)のトンボみたいな小さな飛行機がフラ
フラ飛んできておもちゃのように停まった。搭乗ゲートはウルトラクイズのハワイに降り立
つ際の最後の難関のゲートのようにちゃちだ。波照間犬(?)が勢いよく飛びついてきて一
方的にじゃれついて気が済むまでじゃれたら勝手にいなくなった。勝手なやつだ。乗ってみ
ると運転手(パイロットと言うよりこっちの方が合っている気がする)が触れそうな位に近い。
イスも体育館のパイプイスのようだ。重量バランスが崩れるから飛行中はたち歩かないでくれ
と言われた。定員15人くらいののどかなRACの飛行機。のんびりとした南国にぴったりの
ほのぼのとした感じだ。ただ、新任のパイロットにベテランパイロットが教えているようで、
飛んでいる途中にああだ、こうだと色々文句(指導?)をつけるのは乗っている人が不安にな
るのであんまりやらない方がいいと思った。プロペラ付き小型トンボ飛行機は海の表面に浮か
んでいるものが見える位の高さとスピードで飛行し、約15分で石垣空港に自慢げに降り立っ
た。ウミガメがいたらたぶん見えたな。