石垣離島桟橋からフェリーで約一時間。ついに来たと言った感じ。沖縄本島に
次ぐ大きさだと聞いて驚く。島の90%がジャングルらしい。ターザン天国と言った
ところか。自慢の自転車をフェリーに一緒に積み込み、コロンブスのごとく(?)舳
先に仁王立ちになり、海風を必要以上に受けながら迫りくる島を見つめる。とんでも
なく強い日差しの中でわざわざ甲板にでてこんなことやっている奴は他にいない。で
かいぜ、これは。巨大ジュラシック・パークのように鬱そうとした木々の生い茂る高
い山には恐竜の一匹や二匹がいてもおかしくない感じだ。大原港に入港すると結構大
きい港だ。降りる人も結構多い。降りてみると日差しがとんでもなく強かった。突き
刺さると言った表現が正しい。こんな中を自転車で走っているご苦労な奴は他にはい
ない。食料品店兼雑貨やに入って弁当を買う。コロッケやゴーヤチャンプルやその他
色々な惣菜のごちゃごちゃに入った、残り物をすべて詰め込んだような弁当。うまい
んだ、これが。しばし、ベンチの上に寝っ転がって休む。近くの学校から夏休み中の
ような声が聞こえる。まだ5月だ。すごい青さの空からは目もくらむ太陽の光が、人
差し指の形となって体中を突っついているようだ。島の反対側の船浦港を目指して自
転車のペダルをこぐ。距離は50km位か。走り出してすぐに汗が滝のように流れて
くる。水を飲んでもすぐ出てしまう。でも、すぐに蒸発してしまうので、べたべたし
た不快な感じはしない。太陽の往復ビンタは続く。しばらく走ると川があってマング
ローブの森が見えてきた。噂には聞いていたが変わった木だ。海水の中に生えている
らしい。普通なら漬け物になってしまいそうな気がするが。根元が複数に枝分かれし
ていて高床式住居のように上げ底になっている。よくできたものだ。結構アップダウ
ンが多く、やっと高台にさしかかると遠くに海が見えた。青い、透明な珊瑚礁の海。
自転車に乗ってここまで来られてよかったと実感する瞬間だ。調子づいてどんどん進
む。下りは得意だ。再び大きな坂に苦戦を強いられているとどこからか声が。「そん
なに一生懸命こいでないで、停まって休んで景色でもみてけ。海がきれいだから」。
声の主は道路を工事しているオジサンだった。南の人は言うことまでしゃれている。
確かに自転車はこいでる間は下ばかり見ている。しばし海を眺めた。やっと船浦港が
近くなった。少し手前に船浦橋と言う、両側が海になったすごい長さの橋がある。橋
と言っても下が空いているわけでなく海の中にある道というのがどちらかと言えば正
しい。湾の中に迷い込んだイルカが見えた。地元の人が突然海に飛び込んでイルカを
捕まえた。呆気にとられていると、イルカに触らせてくれた。もちろん野生イルカは
初めて。ゴムのような感触だ。怪我をしている。湾の中に迷い込んだイルカは出られ
なくなって死んでしまうのだそうだ。このイルカもそうなるのだろうか。船浦の町に
つく。民宿が結構あるがやはり食料品店兼何でも屋の店が一件ある以外は特に何もな
い。民芸品を売る店があり、笑う犬の生活に出てくるビーチボーイズのウッチャンみ
たいな色黒の人が「西表はいいぞ」と遠くを見ながら話してくれた。もっと先の白浜
の方まで行こうとしたが結構遠く、往復すると100kmを越えてしまいそうなので
断念。本当の西表島はこっちの方に有るらしいのだが。チャリダーは帰れない所には
行かないのだ。星砂の浜は本当に砂が星(ウニに近い)の形をしていた。ビールを飲
みながらフラフラとあっちったりこっちったりする。ビーチボーイズも暇そうだ。ダ
イビングをする人にとってはたまらない所らしい。でも自転車は海には潜れない。こ
んどは海に潜ってみよう。日は長いが夜になるとすごく暗くなってしまう。星がすご
くよく見える。港の堤防にねっころがり上を見る。宿に戻って部屋にいるとやたら騒
がしい声がするので、行ってみるとこの辺のバイトの人が集まって飲んで騒いでいる。
日本中から集まっているようだ。いっしょに混じって飲む。長い間島にとどまってバ
イトをしながら、やりたいことをやっているようだ。学生が多いがフリーターとかも
いる。うらやましく思った。やりたいことを思う存分やっているのだから。南国の酒
宴は時計の針が90度位になるまで続いた。