色々迷った末、石垣島に来てしまった。石垣空港はやはり光に満ちあふれていた。
指すような日差しがあふれている。空港は予想外に活気にあふれていた。1日に10便以
上の飛行機が沖縄本島や西表島や与那国に飛んでるなんて知らなかった。そう、沖縄より
西の最大の町が石垣市だ。石垣市はでかい。沖縄っぽい、茶色の瓦の平屋の建物もまだた
くさん残っている。でも町は大きい。車も店もたくさんある。周辺の島々への船もたくさ
ん桟橋からでている。でも、何か言いようのない懐かしい感じかたくさんある。この町に
は。まず、空が広い。高い建物が無いのでなおさらだが、真っ青な白い雲がプカプカ浮か
ぶ広い空が手に届くようだ。町の人々も色の黒い、彫りの深い精悍な人々ばかりだ。大好
きだ。自転車は気ままだ。思った方向に風に吹かれて飛んでいくかのごとく行ってしまう。
私はオートバイにも乗るが、やはり自転車に比べると飛行機と徒歩のごとく違いがある。
自転車はこがないと進まない。努力しただけ前へ進む。それが正しい。羽田空港から直行
便が出ている石垣島は東京から約3時間で着いてしまう。沖縄本島以西の島々に行くには
ここを拠点にすればほとんどの島に関しては都合がいい。島の中心地の石垣市はとても大
きい町で、高いビルなどは無いが、店や銀行、宿などが一通りそろっている。でも、ちょ
っと道を奥に入れば赤い屋根の平屋で風通しの良さそうな家がたくさん建っていて、南国
気分が漂っているのどかな所だ。周囲の島々への足がかりである港(離島桟橋)もすぐ近
くで、観光客などでいつもにぎわっている。今回は自転車を持ってきたので島を色々と廻
って見るつもりだ。青い空と白い雲と強い日差しの南国三首の神器に恵まれてペダルをこ
ぐ。日差しは強いが蒸し暑くはない。15分位走ると町の雰囲気は薄れはじめだんだんサ
トウキビ畑が広がり始める。遠くには常にマリンブルーの海が見える。とりあえず島の最
東端の平久保崎を目指す。途中の唐人墓のみやげ店に入り、自転車で平久保崎まで行くと
言ったら、「かなり遠いから夜になっちゃうよ。地元の人はそんなことはやらないね」と
言われる。自転車でだったので最初は現地の人と間違われていた。冷たいパイナップルジ
ュースを飲んで出発する。島というと平らなイメージが強いが、石垣島は実は標高500
mを越える山がある。海岸線も結構入り組んでいて道はアップダウンが多い。人力式自転
車は当然自分の力で坂を上らないとならないので坂があるとちょっとため息である。でも
、坂を登れば当然下りもあるわけで下るときの爽快感は思わず大声を上げたくなるくらい
で、下るために登っていると言っても過言ではない。青い空とは反対の地面ばかり見なが
ら必死に坂を登る。少し高台から周りを見るとジャングルっぽい木々の間から白い砂浜と
海が見えてきれいだ。ちょうど川平湾あたりか。あまり交通量のない道は結構坂を除けば
走りやすい。道ばたにはハイビスカスがたくさん咲いている。あまりのんびりしていると
夜になってしまうのでペースを上げる。左は海、右は広いサトウキビ畑といった感じの道
を延々と走り続ける。自転車は人力なので汗が出る。暑けりゃ当然たくさん出るわけで水
を飲まないとテキメンに体に影響が出て体が動かなくなってくる。たまに道ばたにある店
や自動販売機でつめたーいさんぴん茶とかを買って飲む。暑くてのどが乾いていればとう
ぜんうまく感じるわけで、自転車に乗っていると一日中おいしく水を飲むことができる。
ボトルに水を入れて持ち運んでいるがぬるくなってしまうので冷たいものが飲める自動販
売機はまさにオアシスだ。井原間湾までくるともう3時近い。よく考えた末、平久保崎ま
で自転車で行って、帰りはバスに自転車を積み込んで石垣市まで帰ってしまおうというこ
ととなった。もともと1日で島を一周してやろうと考えること自体が無謀なことで結局島
半周ということとした。岬までは一本道でアップダウンが多い。暑い日に照りつけられな
がらスポンジ状態のように汗を流しながら進む。バス停が所々に有るが、時刻表には数字
が少ししか書かれていない。「本当にバスがくるんだろうなー?」と疑問に思いながらも
信じて進む。観光客のレンタカーがたまに抜いていく。クーラーをかけて涼しく快適そう
だ。そんなことばかり考えてしまう。夕方近くに平久保崎にやっと到着。海に突き出た高
台で見回すとほぼ360度の視界だ。そのうち海は270度といった、船の舳先にいるよ
うな状態だ。風が強いが心地よく、下の方には岩場と遠くに砂浜。海は遠くでリーフに波
があたって白い波が立っている。「やっとここまで来た。これで石垣島も征服だ。」と勝
手なことを考えながら、しばらくぼけっと高台から海を見ていた。たまにくる観光客はち
ょっと景色をみて、すぐにいなくなってしまうが、こちとら来るまでの苦労の桁が2桁違
う。そんなに簡単に去るわけには行かない。全自動のカメラのシャッター押しマシン状態
となる。車の観光客から見ると自転車というのは驚異に値するらしく、興味深そうに話し
かけてくる。「がんばってください」とか言われて「はい、がんばります」とか訳の分か
らない会話をしている。存分に自己満足にひたってから、平野の町(?)に行き、自転車
を分解して袋に詰め込みバス停の横に座ってバスを待つ。予定では45分後くらいにバス
が来るはずだ。ほんとに島の一番端っこらしく、道が途中でばさっと切れて終点となって
いる。人は誰も見かけなく、牛や鳥の声がたまにしている。家は10件くらいしかない。
雲が広がってきて辺りも暗くなってきてだんだん寂しくて不安になってくる。バスが来な
かったらまた自転車を組み立てて元来た道を引き返さないとならないが、すでに体力が打
ち止め状態だ。自動販売機がたてるブーンという音だけがした。バスが来た。嘘ではなか
った。ほっとしたがバスはしばらくの休憩。出発まで15分くらい待つ。すると、向こう
から高校生くらいの女の子数人のうちの一人がやってきて、にこにこしながら「これ、食
べてください」とバナナを一本くれた。給食の残りか?考えもしてなかったことなので驚
いた。自転車をもって誰もいないバス停で疲れた顔をして座っている怪しい人にバナナを
あげようと思ったとは、相当腹が減ってるように見えたのかな?それからは、バスに乗り
一番前の席に座り、客一人、運転手一人のマンツーマン質問合戦を延々とやっていて途中
で疲れて寝てしまい、目が覚めるともう暗くなった石垣市のバスターミナルに着いていた。
自転車で走らないで済んでよかった。近くの食堂でゴーヤチャンプルを食べ、泊まった宿
でオリオンビールと泡盛を飲みながら、ジャミセンを教えてもらい、島唄を歌いながら夜
は更けていった。夜外に出てみると柔らかい海風がゆっくりと吹いていた。こんな気持ち
のいい夜はそう無いだろう。