この車はこんな使い方の他に、サーキットやジムカーナにも散々行った。4点式ロールバーを入
れてさらにスパルタンさを増したロードスターは、エビスサーキット、筑波サーキット、富士スピード
ウエイなどを走り、ジムカーナでは関東周辺のジムカーナ場をほぼ廻った。小さい車体に、くるくると
良く回る回頭性にFRというパワートレインを組み合わせたロードスターは絶対的な「速さ」は少し劣
るものの、常に上位の方にいた。マツダスピードの機械式LSDを組み込むとロードスターは水を得た
魚のごとくコーナリングを開始する。サイドブレーキで若干のきっかけを与えてやると、ロードスター
は目の覚めるようなドリフトを維持しながらコーナリングをクリアしていく。回転軸がまさに車の中心
に有るのを感じることができて、車が手足になるというのはこういうことを言うのだろう。前のTE7
1では回転軸は確実にボンネットの中に有った。事実ロードスターは運転席に座っているところを横か
ら見ると、笑っちゃうくらいに人が車の真ん中に鎮座している。ゴーカートのそれと同じだ。ドライビ
ングプレジャーをそのまま形にしたようなロードスターは運転するのに全ての快感を集約した結果の産
物であるので、やはりそれ以外の面は弱い。まず狭い。トランクは有るがスペアタイヤが妙な位置に有
るので荷物があまり入らない。ロードスターは2シーターである。よって後ろの席は無い。だから悲し
いくらいに荷物は積めない。自伝車が趣味でもある私は何とかして自転車を車に積もうと四苦八苦した
が、屋根を閉めた状態では積むのは難しい。増して、シートはほとんど倒れないので少し休もうとして
もシートはたったままで、これにはかなり参った。でも室内がとんでもなく狭いのでエアコンの効きは
ピカイチで夏冬問わず不自由したことは無かった。屋根がないので横転して下敷きになったらタダじゃ
済まないとの危険性を常に感じながらもこんなに素晴らしい車は世界中探しても無いだろうと常に思っ
ていた。140kmを越えるスピードでサーキットでスピンしながら、これはタダでは済まないなとい
う「走馬燈」を初めて見たのもこの車だ。よく車が手足のように動くという表現を耳にするがほとんど
の場合はそれは嘘だ。なぜならそれはロードスターという車が存在しているからだ。ロードスターに乗
ってみれば本当に車が手足のようになると言うことの言葉の意味が理解できるだろう。フェラーリやポ
ルシェがどうだろうとユーノスロードスターはやはり世界の名車だ。
モデルチェンジしてほとんど見かけることが無くなってしまったが、やはりユーノスロードスタ
ーは自分にとっては最高の車であることには変わらない。次の車のスカイラインGT−Rに乗り換える
際も何とかしてロードスターを保管しておきたいという気持ちは有ったが所詮無理なことだった。20
世紀最後の名車は我が手の元から去っていった。
初めて新車で買った車がマツダのユーノスロードスターだ。小型軽量でパワーもそこそこ有って、
何よりも特徴的なのがオープンカーだ。屋根がない。サンルーフなどとは比べものにならないほどの開
放感。それに憧れ、結構な値段がするので迷ってはいたが、「絶対に今しか乗れない車だ・・」と自分
に言い聞かせて手に入れる事となった。今までの車は生産されて以来10年以上たった車だったがこの
車は新車。まだ誰も触れていないロードスターに乗り込むと、言いようのない満足感に満たされ、本当
にこの車を手に入れてよかったと思った。初めてフルオープンにして走った時の気持ちよさと優越感は、
オープンカーに乗ったことのない人には一生分からないだろうと思った。バイクに比べると当然「風」
との会話は希薄になるが、それでもクローズド自動車の比ではない。太陽の日は直接当たるし、落ち葉
は舞い降りてくるし、雨が降れば濡れてしまう。風は車内を吹き抜けトランクの方へ流れていくのが見
える。見えないはずの透明な風が見える不思議な車がオ−プンカーだ。夏の夜などは最高で、生ぬるく
はあるが、生きた風を思う存分吸い込む。とんでもなく寒い冬の日もヒーターを全開にして、真っ青な
澄み切った空の下を走る。耳がちぎれるくらいに寒く痛くなるが心はガンガンに燃えていた。たかが屋
根がないくらいでこんなに変わるのだろうかという新鮮な感動が何度も何度も押し寄せてくる。