渡嘉敷島

 沖縄本島よりフェリーで2時間位の所にある小さな島。もう、ここより西に 有る主な島はほとんど行ってしまったので、沖縄本島の近くで手軽に行ける島は無 いかと迷った末だ。12月というシーズンオフのせいか観光客の姿はほとんどなし。 仕事関係の人ばかりだ。島は、300mくらいの山を中心として、どこに行くのも 山を越えないとならず、当然集落は海岸線の平地に点在している。渡嘉敷港は南の 島にありがちな感じののんびりとした感じの漂う静かな小さな町で高い建物や大き な道などはない。人もフェーリから降りた人がいなくなると日曜日のオフィス街の ように静まり返っている。島の反対側の阿波連ビーチに行ってみようとバス停を探す がバスは無いようだ。タクシーも無いね。しょうがないのでまあいいかといった軽い 気持ちで5kmの道を歩き始めた。小さな雑貨屋で買った昼飯のパンと飲み物をぶら 下げて。歩いている人なんていない。南の島の道はなぜか白くてまぶしく見える。珊 瑚を使っているからと聞いたような気がした。両側に田畑が広がる細い道をぼけっと 歩いているとトラックに乗った兄ちゃんが「どこへ行くんだ。」「えーと、島の反対 側へ。。」「じゃ、乗ってきな。歩くと遠いぞ」というわけで親切で無口な人とドラ イブ。峠越えの道よりあたりを見渡すと慶良間諸島の島々が辺りに、島も海が見えな ければどこかの深い山の中のよう、何となく北海道の礼文島のようにもみえる。なぜ か、南の島の風景は夏の北海道の風景に似ている気がする。曇ってはいるもののやは り海はマリンブルーで絵画のようにきれいで、やっぱ南の島だね。自分は南の島の雰 囲気と相性がいい気がする。阿波連の町は見渡した範囲にすべて町が入ってしまうよ うな小さな町で観光客やダイビングの人々の為の民宿が有る程度で、町に一件だけの 食料品屋、兼雑貨屋、兼観光案内所、兼民宿の店でオリオンビールを買ってビーチに 行ってみる。誰もいないビーチは目を開けていられないようなまぶしい白い砂と、透 明から水色、そして黒に近い深い青までのグラデーションで遠くの水平線近くまでの 海だけが広がっていた。12月なのに東京の9月中頃くらいの季節の爽やかな乾いた 風が流れている。しばらくぼけっと海を見ていた。特にやることもないし。まあ、そ れがいいんだけどね。静かだ。思う存分、思いっきりぼけっとしたので島の中を探検 してみることにする。小さな島だがさすがに歩いていたのでは大変だし時間がかかる。 レンタルスクータを借りてみた。5千円も取られた。オヤジにぼられたような気がし たが、他に無いのでしょうがない。自賠責保険のステッカーが付いてない。まあいいか。 バイクを手に入れたらもう自分にいけない所はない。島のすべての道をとりあえず一通 り攻略してから、2回目はゆっくりと観光しながら流す。至る所に二次大戦の跡があっ て、この辺は本当に大変な状態だったのだなと思った。曇ってしまい少し寒くなる。そ りゃそうだ。もう3時間近く走り回っている。一度動き出したら原子炉と同じでなかな か停まらない。島を約3回廻ったところでいい加減に疲れて、島の一番高いところにあ る島を見渡せる展望台で海を見る。曇っていて空は鉛色の中に少し白く明るいところが 見える程度。海は深い藍色になってしまった。南の島もこうなってしまうとさびしい。 辺りが暗くなってきたので宿に戻る。何もない民宿。テレビだけが場違いのにぎやかな 雰囲気をかもし出している。外にでてみると辺りは本当に真っ暗だ。人の姿なんて無い。 まだ、9時前なのに。風が夏の夜のように涼しい。虫の無く声がする。寝る。翌日は初 夏のような爽やかな晴れ。少しビーチで海を見てから、港を目指して歩き始める。暑く て日陰を探しながら島の高いところまでやってくる。灰谷健次郎と書かれた家が港を見 渡す高台に建っていた。夏の暑くなる前の午前中といった感じの涼しくて暑い気持ちの いい時間。今日の海はきれいだ。「どこへ行くんだ。乗ってくか?」と、また車の人に 声をかけられるが「歩きたいので」と丁寧に遠慮する。親切な人が多い。くねくねの細 い林道を歩く。所々から島に広がる山と遠くの海が見える。かけのぼる道が空に消える あたりに夏のような雲が絵のように見える。昨日の展望台から海を見ると島を一望にで き、港に入ってくる船が光って遥か遠く下の方に見える。海はどこまでも遠く青く広が っていた。沖縄本島が遥か遠くにかすんでみえる。外人の女の人が「コンニチワ」とい って登ってきた。真夏のカッコをして。港まで続く道をゆっくり下っていく。約6km の道を歩いてフェリーの待合所に到着。疲れてしばらく風に吹かれて寝てしまった。ア イスクリームをなめながら港の見える外の道沿いに座っていると、空は秋の澄んだこれ 以上ないような青色をしていた。日差しは夏の夕方のように濃いオレンジ色だった。ほ とんど人のいない港を離れ渡嘉敷島をあとにした。