空手の歴史


船越義珍

空手道とは

 沖縄には古来一種霊妙不可思議なる武術が伝えられている。この術に熟達したものは、身に寸鉄を帯びずしてよく身を(まも)り、その一挙手以て優に数枚の厚板を粉砕し、その一蹴(いっしゅう)以てよく天井を蹴破ることができる。又手刀を(ふる)って打てば(たちま)ち牛頭を(ほふ)り、四指を揃えて突けば容易に馬腹を貫き、あるいは(はり)(つか)み渡り、青竹を握り砕き、あるいは麻縄を稔じ切り、栗石を削り去るが如き、殆ど人間業とは思われぬ位の働きをすると人口に伝えられてきた。この霊妙不可思議なる武術、これを世間では空手の真髄だと思っている人もあるが,これらは空手道の一端に過ぎぬので、(あたか)も剣道における(わら)の試し斬りと同じく、これだけを以って直ちに空手道の全てと誤認してはならぬ。真の空手道とは,技術よりも心術に重きを置き、平生は礼譲の中に体力を鍛え精神を練り、一朝有事の際には正義に従って全力を尽くして当る。
 これが真の空手道である。

社団法人日本空手協会 最高師範 故 船越 義珍


中山正敏

社団法人日本空手協会 最高師範 故 中山 正敏