For The Team 村田真一

テレビ朝日系列で毎週日曜深夜放送されているスポーツドキュメント番組、GetSports。
「肩が悪い」などと批判されながらも、毎年正捕手に一番近い位置でがんばっている村田真一捕手にスポットを当てたこの日の放送にとても感動した管理人が、レポートのような感想を書いてみました。(2001.02.13)


○1.チームの責任

読売ジャイアンツ、背番号9。村田真一、37歳。ポジション、キャッチャー。

ピッチャーが投げた球を、後ろにそらした場合。
相手のランナーの盗塁を阻止できなかった場合。
そして、ピッチャーに要求した球が、打たれた場合。

この場合は、キャッチャーの責任となるだろう。
では次の場合はどうだろう。

ピッチャーが投げた球が、打たれた場合。
そしてその球が、キャッチャーの意図と異なっていた場合。
つまり、サインに首を振った場合だ。

責任は、誰にあるだろうか。十中八九、ピッチャーであろう。

しかし、村田は違う。その回が終わり、ベンチに帰ってくる。
すると、打たれたのがピッチャーの責任であろうとも、決まって「すいません。」というのだ。

「チームとしての責任はキャッチャーにある」ということなのだろうか。

○2.チームに貢献するということ

村田を語る上でこの項は欠かせない。

デットボール。時速約140キロの硬球が、体にぶつかってくる。とてつもなく痛い。

村田へのそれで有名なのは、1999年シーズン序盤の長期戦線離脱を余儀なくされた頭部への死球だが、2000年の死球にも、ひとつ、エピソードがある。

9月19日。対広島戦で、バントしようとして、手に当たった。
のち、骨折だとわかるその死球を受けた村田は、ベンチに帰って第一声、こう言った。

「どうですか。ランナー、進められたでしょ。」

骨折である。どんな選手でもとてつもなく痛いはずである。
なのに第一声が「痛い」でなく、「ランナー、進められたでしょ」。
おまけとしてバントは失敗したが、ランナーを進められたという意味の「どうですか。」まで付いている。

結果としてこの試合は負けてしまったが、それにしてもすごい言葉である。

○3.清原を復活させた男

去年の日本シリーズ。
村田がホームインした。
そのとき、その本人よりも喜んでいた、一人の男がいた。

清原和博である。

巨人に移籍して成績が落ち込み、マスコミに徹底的に叩かれた。
そんな清原が落ち込んでいる時期に、村田がこう話しかけた。

「キヨ、お前はスーパースターなんだ。だから新聞でも叩かれる。でも活躍したら、『清原よくやった』『清原バンザイ』となるはずだ。俺なんかがどうがんばってもなれないスーパースターだ。それだけでも良いと思え。」

清原に、この一言がなければ、今年の復活劇はあっただろうか。

○4.キャッチャーとしての「心」の部分

野球解説者、栗山英樹は言う。

「前から、肩が悪い悪いと批判されてますけど、実はヤクルトの古田選手の研究とかやっていたりするんです。『裏表が無い』ってピッチャーの方はみんな言いますけど、影ではかなりの努力をしているんだと思います。野球は技術と精神だとすると、その精神、心の部分、これは絶対不可欠な要素だと思うんですよ。そこが村田選手はすごいんですよね。それプラス技術ということですから。」

結論、それは自分の心の中にある。

○5.フォア・ザ・チーム

今年、打撃力の高い吉永幸一郎が移籍、ドラフト1位として期待されている阿部慎之介も入団してきた。
両方捕手。ポジション争いはもちろん厳しくなる。
こんなとき、だれもがポジションを渡さないがため、必死であろう。
まして自分の知っていることなどをライバルたちに教えるなど。

シーズン中、村田のある姿を目撃した。

それは、村田善則と杉山直樹―同じポジションのライバルであるはずの2人―に、自分の知っているキャッチャーの技術を教えている姿だった。

今キャンプでも、それは変わっていない。村田善、そして吉永や、阿部にも。

なぜ。

村田はインタビューでこう語っている。

自分が(レギュラー争いに)負けても、チームが勝てばいいじゃないですか。そりゃあ、レギュラーにはなりたいですけど、でも負けるときは負けるんだから。原ヘッドコーチに言われました。『おまえがあって巨人があるんじゃない。巨人があっておまえがあるんだ。』そのとおりだと思うんです。巨人が優勝したら、ファンが、フロントが、読売グループが、みんな喜ぶじゃないですか。僕はファンとして、強い巨人が見たいですし、巨人は強くないといけないと思うんです。」

そして最後に一言。

「自分が活躍しても、給料がちょっと上がるくらいですから。」

勝たなければいけない巨人がある。正捕手が決まらない巨人がある。
その巨人が勝った時に、その場所により多く座っているキャッチャー。
それこそが、巨人の正捕手といえるのではないだろうか。

村田真一。―――彼の職業は、巨人のキャッチャー。


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