これは筆者が1年生のときの事件というか、まあたわいもない日常の一ページである。
夏合宿である。海。私はうれしかった。久々の潮の香りは故郷を思い出させる。
しかしはじめての海練。ずっとチャッカ−のうえ。
マークを打てばやることはない。波に揺られる。どんぶらこっこ、どんぶらこっこ。
三半規管の鍛えられていないものにとって一番恐ろしいもの。それは船酔い。
それは一度はまってしまうと、もう何もできない。ただの置物と化すしかない。
ちなみに当時はリクタイ(陸上待機)なるものがあった。
万が一の事故の際に無線でリクタイに連絡し、
そこから海上保安庁に連絡するためである。
もう少し脱線すると、当時このリクタイは一年生の間でじゃんけんをして決めていた。
もちろん負けた奴が居残りである。
しかしいつからかこのじゃんけんは
”陸に残りたい”じゃんけんに変わっていった。
ようやく昼頃になり、今度は3年生主体の練習が始まる。しかし、ここでも一年生はチャッカーの上。
ううっ負けるもんか。
だれもがそう思っていたであろう。船酔いとは不思議なもので自分より誰かが先に掛かってしまうと、
自分はなんともなくなってしまうのである。
私は同じ船で二人以上の人間が酔っているのを見たことがない。
そこで力尽きたのは、マック。
マック酔ったの?
と誰ともなく声をかける。
とたんに元気になる私。
やんや、やんや、からかわれ始めるまっく。
そこでまっくがちょびっと切れた。
「ナリちゃんのせいだっぺ」
今度はナリがきれる。ナリも結構船酔い気味だったらしい。
「なんでおれのせいなんだ」
ごもっとも。
マックの解説が始まる。
当時のヨット部は4年生4人、3年生3人、二年生5人、1年生4人という大所帯だった。そのため一年生は下で寝ていたのである。
なぜなら一年生の寝るスペースは寝返りが撃てないのである。撃てないのはつらい。
またあるバッドポジではマットとマットの間にスポッとハマッテしまうのである。
そして私とピカールは上が寝静まるとエロビ鑑賞会を始めるのである。
あまり関係なさそうであるが、関係しているのかもしれない。
マックの言い分を要約すると
(酔ったのは)昨日よく眠れなかったせいである。
それはナリが邪魔したからだ。
と言うことに限る。
ナリは猛烈に反発する。
眠れなかったのは俺も同じだ。
人のせいにするな。
これはあんに
私とピカールのエロビ鑑賞会のせいだ
と言っているのかな、 なんて考える余裕が私には生まれていた。
両者とも怒髪天をつく勢いになってきた。
しかし、わたしにはどうでもよかった。
みんな寝てないんだし、しょうがないよ と言う意味を込めて
そんなんどうでもいいじゃん。
黙ってしまう二人。
船酔いから開放されて晴れやかな私。
そしてそれを聞いていて、
一年生おもしれ〜とうけている西尾さん。
ナリはこのことをかなり長い間根に持っていた。
どれくらい根に持っていたかと言うと、沈帆湖の紹介の欄にこのことを書いたくらいだ。
そこでも彼はマックの言い分が間違っていたことを解説していた。
こんな彼は後に主将になってしまうのである。
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