2005年3月25日 イランvs日本 アザディ・スタジアム


もったいない事をした。

イランは日本の筒抜けの情報を利用して、2トップ気味に布陣をしいてきた。
ハシェミアンが本来のポジションであるFWとして配置され、左に張っていたのを若干中に絞りダエイとの距離を近づけて、日本のイラン対策を逆手に取った「対イラン対策」とでも言える形を取った。

結果的にはそのハシェミアンに2点を奪われたので、「対イラン対策」は大成功だったのだろう。
しかし、そんな状況下に置いても、日本はよく踏ん張っていたと思う。二列目のカリミと両サイドアタックを封じるという重要課題に関しては、及第点を与えていいのではないか。
もちろん、マハダビキアを抑えきったかと言えば、そうは言えないが、前半開始早々浮き足立った観のあった三浦淳と、攻撃の比重を削って守備にも回った中村とで、なんとか超決定機までは与えないまま凌いでいたと思う。
カリミに至っては、決勝点のアシスト意外はほぼ封じきったと言ってもいいだろう。
福西が中央に常駐し、小野が絶妙なポジショニングのバランス感覚により攻守の繋ぎとカバーリングを見事にこなして、ボランチの関係も最高のものだったと思う。

逆に言うとつまり、あれ以上は望めないのだろう。システム的に言うと、それぐらい、2トップで来られた状況で、踏ん張り切っていたのだと言える。

しかし、ハシェミアンが中に絞ってきた事によって得られたものが一つあった。
右サイドの加地に、攻撃参加の機会が増えた事だ。

もちろん加地もサイドバックと言えどもハシェミアンのケアはしなくてはならない。しかし、逆に攻撃参加の機会にプレッシャーが少なくなり、頻繁に中田を通してサイドを駆け上がっていく姿を目にする事ができた。

しかし惜しむらくは、それが加地だったという事だ。

何回も攻撃参加をし、完全にサイドを抉って、プレッシャーもない状況でクロスを入れる。それなのに、そのクロスに全く意図が感じられない。一番大事な所なのに、どう考えても適当に蹴り込んでいる様にしか見えない。時にはクロスを入れるタイミングでグズグズして、プレッシャーを受けて潰されたりもする。結局、ただの一本も、しっかりとしたクロスを見る事はできなかった。日本のコーナーキックがやたらと多かったのも、実はこれが大きな要因を占めている。

加地に関して加えて言えば、今回の2失点の両方に絡んでいる。加地がしっかりプレッシャーを与えていれば、2点とも何とかなったものである。細かいところでもミスを頻発するし、正直我慢の限界に達してしまう。どうにかならないものか。

しかし勿論、責任が全て加地にあるわけでもない。2失点目はサイドに流れたカリミに中澤がプレスに行かざるを得ない状況になり、外につり出され、マークがズレたのが原因だし、それは三浦がその前の段階でカリミを抑えなければいけなかったからでもある。この時間帯で三浦は既に足が止まっていたし、その事への対処策を施さなかったジーコにも責任がある。

それでもセンタリングに対して、ただ突っ立っているだけでは、ディフェンスにならない。加地は、失格どころではなく、大失格である。いい加減に、決断して欲しい。無条件サポートを謳っていても、これでは救われる気がしない。

全体的に見直してみると、苦戦の大きな要因の一つが芝生のコンディションだった事は疑いない。あまりにも芝が根付いておらず、ズルズル滑り、足元がおぼつかなかった。影響が一番大きかったのがフォワード陣だろう。玉田は踏ん張りが利かない為、自分の特性を完全に殺されてしまったし、高原はボールタッチすらままならず、この二枚にボールが収まらなかった事が大きい。フォワードがポストをこなせなければ、二列目からのミドルもほとんど打てなくなる。可能性を感じる攻撃があまり見られなかったのも、芝生の影響が大きいだろう。しかし、それは相手にとっても同じ。条件は同じなのだから、言い訳には出来ない。ただ、日本らしいサッカーが出来なかった原因の一つとして、着目しなくてはならない。今後、対策を練らねばならないのだから。
しかし、それは何年も前から問題になっていた事でもあるのだが。
サンドニから、全く進歩が無いのが悲しくもある。

そして一番感じたのが、対人プレーの弱さ。これはもう、殺人的に弱い。ある程度、組織プレイが体に染み付いているので、イランがボールを持った時、それに対して数的有利を作る事は出来ている。1対1が厳しいならば、1対2で、という鉄則をしっかりと守っていた。しかし、取れない。イランが強いというのもあるが、時には1対3という状況にまでなっているのに、取れない。
これはもう、意識の問題としか言えないだろう。2人で囲む事はボールを取るためのプレイなのだが、そこにボールを奪うという意識がないと、イランの様な対人プレイが強いチームからは、ボールは奪えない。
「取る」では、ぬるいのだ。
「奪う」という強い意志を持って当たりに行かなくてはならない。

しかし実に惜しい事をした。勝ち点1は取れた試合だった。フェイエノールトとの暗黙の契約を守らなければならなくて小野を下げたのならば、なぜ小笠原だったのだろうか。ある意味、3バックにする絶好のチャンスだったのにも関わらず。どう考えてもストッパーを投入し、ズルズルと泥沼へ引っ張り込むべき展開だったのに、欲が出てしまったのか。その判断が遅れたため、ほぼ封じ込む事に成功していたカリミにやられてしまい、小笠原を投入するという不可解な起用に至ってしまった。

80分黙っていても、残りの10分で決定的なワンプレイをし得るレベルの選手に対して最大の敵は、その欲だったのかもしれない。