アイルランド − ドイツ
1 − 1

 面白かった。実に面白い試合だった。今の段階で今大会一番の試合だ。サッカーの試合での面白さは、いろんな要素が挙げられると思うが、戦術的や技術的な面白さを超越する、魂の戦いがこの試合だったと思う。スタジアムの雰囲気も最高だった。サポーターも素晴らしかった。ワールドカップの素晴らしさを存分に楽しめた試合だった。
 試合は常に白熱した展開で、両チームの特色が色濃く出ていた。ドイツがまたしてもドイツらしい点の取り方をして、その後守りを固めて、私の嫌いなドイツサッカーの典型的な試合運びをし、アイルランドはそのドイツサッカーに挑戦するかのように、ただひたすらゴールを目指す。終始その構図が崩れることなく、ドイツのキーパーのカーンが鬼神のごとくゴールに立ちはだかり、時にはペナルティーエリアを飛び出しアイルランドのFWに対してスライディングタックルを見舞う。アイルランドも何度もいい形を作るが、伝統と歴史の壁にはじき返されるかのようにゴールには至らない。そのまま後半もロスタイムに入り、またしてもドイツサッカーの勝利至上主義、リアリズムに屈してしまうのかと思った時、遂にアイルランドの若武者ロビー・キーンがその分厚い壁を突き破る。その瞬間、カーンの鬼神ぶりも全てこの試合に用意されたドラマを演出させる為の徒労となった。
 その瞬間、私は成田で仕事をしていて、ライブで同点シーンを見ることはできなかった。仕事が0時に終わり家路についた時、成田駅周辺には溢れ出すようなアイリッシュサポーターとドイツサポーターが鹿嶋から帰ってきていて、皆がワールドカップの喜びに浸っていた。私もアイリッシュサポーターのじいさんばあさんと歓喜を交わし、ズラリと並んだ警察官たちを横目に、再放送を観る為に家へと急いだ。