とあるバンコクの昼下がり。

ネットに接続すると、「オッオ〜!!」と御挨拶の音。

チャットで世界中の人とコミュニケーションが取れる”ICQ”。

どうやらタイ人が私に興味を持ち、コンタクトを取ってきたようだ。

 

あれ?この子は以前、メールを送ってきた子だなぁ。

そういえば写真も添付してきてたな。

色白で髪が長くて、まぁ、綺麗な感じの子だなぁ。

23歳、女性、OL、ですか。

 

ムムッ!

 

いやいや、別に変な下心があるわけではないですけど、

ないこともないわけでもなくブツブツブツブツ・・・・

 

まぁ、とにもかくにもチャットしてみないことには。

そんなこんなで小一時間程チャットしてみたわけですが、

彼女、少し日本語が出来るらしいんです。ほんとに少しですが。

チャットの合間にも、たま〜にアルファベットで日本語を打ってきたりして。

まぁ、日本に興味があるってのはわかったし、

当然、日本料理も好きらしいんです。

で、私の住家からバス一本で行けるピン・クラオのセントラル近辺に住んでて、

なら今度セントラルのZenでメシでも喰いましょうね、

なんて言ったら、発狂してるんです。向こうで。

 

?何?話の流れでメシでも、ってのが、そんなに失礼なの?

初めてチャットした間柄なのに、いきなり会う約束とかって、まずいの?

 

いやいや、別に変な下心があるわけではないですけど、

ないこともないわけでもなくブツブツブツブツ・・・・

 

などと思ってたら様子が違って、どうやら大喜びしてるらしいんです。

なんだよ。早く言ってよ。

じゃ、いつにする?って聞いたら、「5時。」だって。

 

って、今日かよっ!

 

ちょっと、今さっき起きてシャワーも浴びてなければ髭もそってなければ、

歯も磨いていない状態なんですけど。

こっちもそれなりに準備が必要でしょ。

 

いやいや、別に変な下心があるわけではないですけど、

ないこともないわけでも(以下略)

 

というわけで7時という事で約束成立。

「私は今日は上下黒の服だからね。」

おぉ〜、膨らむ、イメージが膨らんでいくぞ。

「じゃ、7時にセントラルのスターバックスの前で。」

 

そんなこんなで向かいました。30番バスに乗ってピン・クラオ。

セントラル近辺に来たあたりになると、妙に周囲の女性を見渡してしまう。

上下黒の服を来てる女性なんか見つけた日にゃあ、あんた、

あの子かっ!?なんて思ってしまって。

それもかなりイメージ通りのかわいい子だし。

同じセントラル前で下車とかして、スターバックスに同時に到着したりなんかして、

「あら!」

「な〜んだ、同じバスだったんだね!」

な〜んて展開も、悪くないむしろイイッ!!

 

いやいや、別に変な下心が(以下略)

 

さてさて到着しました、セントラル。

なぜか20分くらい前に着いてしまったので、いや別にはりきってたわけでもなく、

まぁまぁ、いいじゃないですか、その辺は。

なもんでモール内をブラブラして、約束の5分前くらいにスターバックスへ。

 

ソワソワしてる内に、7時になった。

そろそろ背後から、「オマタセシマシタ。」なんて可愛い声がかかるはず。

タイ人は、声も可愛いからなぁ。

あの透き通るような、涼しくなるような、

絶妙な音の「カー」が聞きたい。聞きたいぞ!!

 

「オマタセシマシタ。」

 

来たー!!

?????あれ?

想像してた音と、ちょっと違うぞ。

なんていうか、うーん、

ドルビーサラウンド?

かかってるって言うんですか?

とにかくそんな感じ。

 

振り返りましたよ、私。おそるおそる。

彼女、立ってましたよ、そこに。ええ。

こっち見て、ニコニコしてますから、確実です。

つーか、彼女、というか・・・この類の人種のジャンルを表現する時に、

最も適切な言葉というのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間、受け入れ難い事実に直面すると、

それを受け入れたくないがために、そうでないという要素を無理矢理見出そうとするもんです。

確かに彼女、というか彼というか、まぁ、どっちでもいいんですが、

見た目は女なんです。それは。

でも長い事タイにいると、ある程度は見分けがつくようになるもんなんです。

というか、そんなに長い事いなくても、この人に関しちゃ見分けがつくかもしれない。

つーか、どう見ても、おかまなんですこれはかなしいかなやっぱり。

 

いやね、私は別にいいんですよ。

あなた達の人生観を否定しないし、尊重もするよ。

実際、メイクやらウエイトレス(ウエイター?)やらで、いい仕事するのは、おかまだし。

最近ではゴルフのキャディーでも、おかまはいい仕事するって情報も入ってるし。

ダンスフィーバーでも、おかまがいなけりゃ楽しさ半減だし。

市バスにおかまが平気でゴロゴロ乗ってる、ってのもタイのいい所だし。

おかまが平気で市民権を得てる懐の深さも、タイの好きな所だし。

だから、いいんです。いいんですよ。

 

がしかしプライベートでリアルな所で俺に関わるんじゃねぇ!!

 

もうね、それからは地獄ですよ。

どうやってこの局面を切り抜けるか。どうやってこやつを撒くか。

そればっか考えて。

つーか、メシの不味いこと不味いこと。

向こうはストロベリーサンデーかなんか注文して、

「メシはいいの?」って聞くと、

「ダイエット。ギャハッ!」って手で口を抑える仕草を交えて答えるわけです。

その仕草なんかもう、ふざけんなってくらい、かまかましてるんです。

もう、殺意メラメラですよ。

 

メシ喰い終わって、じゃっ、つーのも「いかにも」な展開だろうし、

向こうも傷つくだろうから、その辺が難しいよなぁ。

いかに向こうに傷つけずに立ち去るか、ホント難しいわけ。

つーか、こんな事マジメに気遣ってる俺、相当いいやつっしょ?マジで。

今かんがえれば、じゃっ、つってサクッと帰っちまってもいいじゃん、なんて思うんですが、

現場にいるとそうもいかないわけで。

 

そんなこんなで彼女、つーか彼、つーかどうでもいいんだけど、

やつのウインドウ・ショッピングにしばし付き合って、

そろそろ出ましょうって事になりました。

セントラルから出て、やつが「じゃ、どうしましょうか?」だって。

もう、いいでしょ。

よくやったよ、俺。

ノルマは果たしたよ。

これだけ気を遣えば、もう充分。

「帰ります。じゃね〜。」

ダッシュ!

 

翌日、このおかまからメールが来ました。

お礼のメールでした。

返信はもちろんしてません。

間違ってない、ですよね?