「AG君、来んなぁ。」

今思うと、旅仲間の長老I氏の一言で、全てが始まったような気がする。

私とI氏はテラスの昼下がり、おなかを空かせていた。どこに行こうか考えていた時、そういえば今日は木曜日だと言う事に気がつく。近くの8番ラーメンが全メニュー25%OFFの日である。では久々にそこに行こうと言う事になったが、そこで気になったのがAGさんの存在。頭の切れるAGさんがその事に気づいていないはずは無い。彼も必ず行きたいはずだ。

がしかしAGさんは今、テラスには泊まってはおらず、しかしテラスにはほぼ毎日顔を出している。冒頭の台詞は、そんな難しい、微妙な時間帯に発せられたものである。

しかし夕方4時頃になってもAGさんは現れず。I氏は「後で来て、8番行きましょうって言ったりして。ハハハッ。」という、奇しくもそれが現実となる予言を発しつつ、二人で8番に行く事になった。

8番で私はチャーハン、I氏は味噌ラーメン、そして餃子を一皿シェアする事にし、店員を呼ぶ。注文を取った女の子の店員が、なかなか感じのいい応対で、見た目も65〜70点くらいあげられるいい感じの娘であった。普通と言えば普通だが、そこがまた私の中ではポイントに加算される要因でもあった。

腹もふくれ、満足してテラスに帰り、まどろんでいると、数時間後にAGさんがやってきた。

AG  「メシ、食べました?」
I氏  「あぁ、さっき食べたわぁ。」
AG  「今日、木曜ですよね。どうです、8番でも。」
GOL 「あぁ、そうだと思ってたんですよぉ。でもさっき行って来ちゃいました。」
AG  「いやいや、あそこのトムヤムラーメンが絶品なんですって。GOLさんにも食べて欲しいなぁ。」
GOL 「・・・、わかりましたよ。行きましょう。」

さっきのさっきで行くのもバツが悪いが、まぁ、さっきの店員もいる事だし、という付加価値を無理やり見出し、ポジティブシンキング。再び8番へ。

トムヤムラーメンをすすりながら、AGさんとの会話を楽しみながら、その流れでさっきの店員の話を出す。

GOL 「あぁ、あのコですわ。なかなかかわいくて、感じいいんすよ。」
AG  「え、誰ですか?あぁ、あのコ。ふーん。そうですか。」

まぁ、どこにでもいる普通のコだし、リアクションもこんなものかな、という感じで話は流れ、トムヤムラーメンを食べきり会計へと向かう。「今日はつきあわせてしまったんで、ここは僕が持ちます。」というAGさんの好意に甘え、ご馳走になる事に。レジへ向かう。

するとレジに立ったのは、例のそのコ。会計を打つと、出てきた請求額が51バーツ。うん?いくら25%OFFといっても安すぎないか?

GOL 「え?ちょっと安すぎません?そんなはずは・・・」
AG  「うん。ちょっとおかしいですね。」

AGさんはサクッとタイ語で、トムヤムラーメン2杯に水と氷だよ、51バーツってのは間違ってない?と彼女に尋ねる。彼女はそこで確認すると、やはり間違いだという事に気づき、正しい額を請求しなおし、そして会計が済んだ。

店を出て私はしみじみと、こう話し掛けた。

GOL 「AGさん。正直に伝えていい印象を与えましたね。あぁ、ドラマのテーマソングとか流れてきたりして。恋の始まりかもしれんすねぇ。」

想像の世界に生きる私のラブストーリーを、AGさんはたった一言でバッサリ。

AG  「僕、ああいうポカミスするコってダメっすわ。」

ロマンティストとリアリストのコントラストが、バンコクの漆黒の闇に溶けていった。
空は少しだけ、泣いていた。