Vol.13: Ankle Sprain



今年のサマーキャンプは、去年の3倍近い数をこなした。 そして今回だけは「本当によく働いたよ」と自分自身でも感じる。
仕事の数に比例して、怪我の数も見事に多かった。 しかし、キャンプ期間中に自分が診てきた8割ほどの怪我は“Inversion Ankle Sprain”だった。
「もっとその他の怪我を診てみたかった」と言いたいところだが、自分の学習のために選手達に怪我をしてもらうわけにはいかなかったし、何よりも無事にキャンプを終わらせたことの方がアスレチックトレーナーとしては一番大切な事だろう。

さて“Inversion Ankle Sprain”に関して、今回のキャンプ期間中は今までの学期期間中とはちょっと違う評価手順で自分は怪我の対応をした。
これがその内容である。

「足首が痛いんだけど、、、」と選手がトレーナーである私の所にやってくる。
まずお決まりどうりに、私は怪我の状態についてその選手に色々な質問責めをする。 そして同時に怪我の部位を目でチェック。
この時点で頭の中に詰まっている“Inversion Ankle Sprain に関するページ”を開いて、私は次の手順を準備する。
次に行う触診で、今までは ATF (Anterior Talofibular) ligament → CF (Calcaneofibular) ligament → PTF (Posterior Talofibular) ligament の順で触っていたのだが、今回は PTF ligament→ CF ligament→ ATF ligament というふうに逆から始めた。

これには2つの理由がある。

まず1つ目は“怪我の度合い”を確認するためである。
「内捻りの捻挫では、最初に ATF ligament を痛める」 だから私は触れなくても、直ぐにこの事が予想出来る。 私がここで知りたいのは、「その他の靭帯がどうなのか?」ということある。 PTF ligament から先に触れることで、怪我がどの程度の状態なのか理解することが出来る。 なぜなら PTF ligament を痛めている捻挫ほど重傷だから。

2つ目の理由は“心理的作戦”からである。
捻挫して痛いのは分かっている。ただキャンプ参加者の子たちは高校生以下がほとんどで、さらに初めて会う子ばかりであった。 怪我に関する質問の会話でその子の性格は少々分かってくるのだが、“怪我に対する我慢強さ”に関しては全く理解出来ない。 身体的な痛みもあるが、“練習の辛らさ”や“親元から離れたホームシック”などの心理的な痛みのために、ちゃちな怪我でも彼らは大袈裟に表現してくる。
何度となく私はこのことに騙されただろうか、、、
今までは ATF ligament から順に触診していき、選手の苦痛した顔の表情から痛みの程度を予測していたが、キャンプ参加者の高校生以下らにはそれが全く通用しなかった。 それに彼らの痛めた ATF ligament から先に触ると、その痛みが他の部位に広がり、本当は痛くない部位でも「ここも、痛い」と私の判断を迷わせてくれる。
しかし、痛くもない部位から徐々に私の狙いとする部位へと触診を近づけていくと、簡単に特定の怪我の部位を見つけ出すことが出来た。
選手達に決して悪気があるとは思えないのだが、余計な痛みの表現は怪我の評価を行うアスレチックトレーナーにとって、とてもやっかい者である。“仮病”は判断出来ても“広がった痛み”は理解しずらい。

今回のサマーキャンプでは本当に“Inversion Ankle Sprain”を数多く診させてもらった。 しかし、ほとんどは自分が評価した限りでは“Grade 1”または“Grade 1 以下”の怪我だった。 そして奴らにはテーピングを巻いてとっとと練習場に送り返す。
学期期間中のトレーナー活動とは異なり、キャンプ期間中のトレーナーの役割は「選手がプレー出来る? 出来ない?」という単純な解答しか求められない。 それにたった5日間程度のキャンプでは練習前後のトリートメントや怪我の後のリハビリは説明だけで、現場での実践なんて全く出来やしないし、意味がないと思っている。
それに僅か数日間のキャンプのために彼らの両親たちは大きな参加費用を支払っている。 「少々の痛みぐらいは我慢して、払った以上のことを学んでこい」と私は心の中で常に考えていた。
“アスレチックトレーナーとしては適切ではない対応”かもしれないが、“親の子に対する愛情”が今となって私にも理解出来るようになったのだろうか?

最後に、怪我した選手たち全員をただ練習場に送ったと勘違いしないでください。 練習後やキャンプ後の処置はきちんと行いましたし、痛みのために練習に参加出来なさそうな子たちは最低限許される RICE 処置をしました。その他の自分では対応出来ない怪我やカラダの不調などは大学の健康管理センターに連れて行きました。
それから彼らのコーチがキャンプに同行している場合や保護者が見学に来ている場合は、そのコーチ達や保護者の方にきちんと彼らの怪我とその後の対応を説明しました。


(Sunday,August 13,2001)