Vol.3: Injury Prevention



自分はアスレチックトレーニング学の中でも、“Human Anatomy”“Kinesiology”“On/Off field Injury Evaluation”“Taping”の分野が特に好きである。
しかし実際にアスレチックトレーナーとして働いている時は、“Injury Prevention”に力を入れている。

“Injury Prevention”とカッコイイ言葉を使っているが、やっていることは“怪我人のパトロール”である。
これは去年のサマーキャンプから身に付けた自己流のやり方で、練習の邪魔にならないように「からだの調子はどげんや?」「痛みのまだあっと?」などと選手達に聞いて回っている。
たとえ元気に練習している選手達にも、何かからだに不調がないかどうか声を掛けている。

自分が行なう“怪我のパトロール”には二つの目的がある。

一つは“怪我の早期発見”である。
例えば、もし選手が「ちょっと肩の後ろあたりが張っているんだけど、、、」と教えてくれる。 しかしその日の練習には何の支障も見当たらない。
そして次の日に「肩の調子はどう?」と聞くと、「うーん、昨日と同じ」と答えるがこの日の練習にも問題は見当たらない。
また次の日に同様の質問をして「相変わらず、肩は張っている」と答えれば、私はすぐさま何が原因なのか調べてみる。
急性の怪我の初期症状は原因が見つけやすいし、その応急処置やトリートメントが簡単で済む。

基本的に選手が怪我をした場合に、まずアスレチックトレーナーは怪我の評価を始める。 そしてその怪我の報告書を書き、その後医師や理学療法士の判断によりトリートメントやリハビリを開始する。
トレーナーとしてこれらの作業はとてもやりがいのある仕事内容だが、自分からしてみれば、「正直メンドくさい。」
間違っては困るが、何も自分が“おうちゃく者”でも“怠慢な者”と言うわけではない。
なぜ「メンドくさい」かと言うと、怪我の度合いにもよるが、いったん選手が怪我をすると毎日トリートメントやリハビリを続けなければならない。
トレーナーとして一生懸命に全力で怪我の回復を手伝っているものの、選手にその気持ちが伝わらない事も少なくない。
「一体いつになったら治るんだよぉー」「この治療は本当に怪我の回復のためにいいのかよぉー」と疑問じみて言われ、あるいはトリートメントの約束の時間を守らない奴もいる。
その他にも、普段はいい奴なのだが、怪我のために心理的または精神的なストレスが溜り、トレーナーたちにグチりまくる選手もいる。
それがやがてトレーナーたちのストレスとなり“選手・アスレチックトレーナー関係”にマイナスの影響を与える事を見てきたし、実際自分自身も経験した。
だから、そうなる前の楽な時に“怪我の早期発見”が出来るよう私は“怪我人のパトロール”をしている。

二つ目の目的は“選手とのコミュニケーション”である。
怪我に関係なく選手達と常に会話を持つことで自然と大きな信頼関係が築いていかれる。
そしてこの信頼関係は、もし選手達が怪我をした時にものすごく役に立つ。
普段から選手達と話をすることで、選手自身もトレーナーの性格や態度を見抜き、「こいつはトレーナーとしていつも頑張ってくれている」と思い、トリートメントやリハビリの指示をきちんと聞いてくれ、そしてそれをやってくれる。
学生トレーナーの中には練習中に教科書を読んでいる奴もいる。
確かに練習中の暇な時に少しでも勉強して授業についていかなければならない気持ちも分からないわけでもないが、それよりも選手達とコミュニケーションを取ることの方が大切だと思う。
なぜなら、怪我の回復は教科書どうりにいかないから。
選手個人のからだの回復力もあるが、それよりも心理的なものも大きいと思う。
どこまで選手達から信頼され、どれくらい怪我をした選手達のモチベーションを保てるかはトレーナーとして大事な要素でもあると信じている。
自分は PIP Joint を骨折した選手と良い信頼関係を築いた。
そして現在は、Medial Epicondylitis を持つ選手のトリートメントを通じて信頼関係を築いている。
彼はこの三週間なかなか痛みが引かなかったためにイライラした態度をとっていたが、私の気持ちが通じたのか、今では「きんじ、お前の指示することは何でもやる」と言ってくれる。
なお現在、私は彼のために Functional Throwing Program を作り、二週間後をめどにチームに戻すことを彼に説明し、一緒に頑張っている。

アスレチックトレーナーとしていろいろな知識や経験を身につける事は一切否定しない。 しかし私はその中でも“選手達に怪我をさせない”ということに気を配っている。 まだまだ私はトレーナーとして未熟者だが、怪我による煩わしさは嫌というほど経験してきた。 そして怪我を喜んでいる選手なんて一度も見たことがない。

他の先輩トレーナー達から何を言われようが、“怪我人のパトロール”で“Injury Prevention”が出来るのならば、今後も私はそれを続けるつもりである。
なぜなら、「選手達に怪我で苦しい思いだけはしてもらいたくない」から。


(Monday,Feburary 26,2001)