Vol.9: Dehydration
まず初めに、アメリカだけに限らず、日本においても夏休みを利用して合宿や試合などスポーツをする機会が多くなると思う。 息苦しい教室の中から開放された生徒又は学生達にとって、この時期は非常に楽しいものだろう。そして同時に不慮の事故が多くなるのも、この時期ではなかろうか?
今回は“Dehydration”と題して、去年 NATA から配布された“ NATA Position Statement: Fluid Replacement for Athletes ”等を用い、運動選手に対する水分補給の正しい知識を身に付けてもらいたい。 しかし、アスレチックトレーナーの増加により、運動選手ならば水分補給の必要性は十分に教育されていると思う。
そこで、ここでの知識は「特に選手を指導するコーチ、また選手の応援団である保護者の方に少しでも参考になれば、、、」と考えている。
1、“Dehydration(脱水症)”とは?
体液の過度の喪失に由来する症状で、 スポーツにおける脱水症とは不適度な発汗作用が体内の温度調節またはその他の人体機能に悪影響を与えることです。 悪影響の結果として、Heat Cramps (熱痙攣)・Heat Exhaustion(熱疲労)・Heat Stroke(熱射病)などに分類される“Heat illness(熱中症)”がその代表例です。
2、“Heat illness(熱中症)”とは?
・Heat Cramps(熱痙攣):過剰な発汗作用により、体内の水分また電解質の不均衡が原因で、主にふくらはぎや腹部の筋肉が痙攣した状態。
処置法としては、水分の補給、Cryostretch(数分間のアイスマッサージとストレッチを交互に繰り返すこと)があります。
予防法としては、運動を行う環境にからだを慣れさせること、適度な水分補給、適度な休憩を運動中に入れることです。
・Heat Exhaustion(熱疲労):熱痙攣から進んだ状態、あるいは脱水症が原因で、口内の渇き・体重の減少・疲労・頭痛・めまい・早い脈拍数・直腸体温の上昇( 42℃または 102°F)等の状態。
処置法としては、水分補給や静脈内点滴があります。
予防法としては、熱痙攣と同じです。
・Heat Stroke(熱射病):詳しい原因はまだ解明されていませんが、突然意識をなくす・浅い呼吸・早く、強い脈拍・少量の発汗または乾いた皮膚・直腸体温の上昇( 44℃または 106°F以上)等の状態。
熱射病は生死に関わる危険な状態で、緊急な対応と処置が必要です。
他の熱中症と比べ、全く予期出来ず、そして突然その症状が表れます。 直ちに救急車または近くの医療機関に連絡して下さい。 救急車を待つまでの間、あるいは患者の輸送中は水分補給はもちろん、アイスバッグを首・脇・太股の付け根などに置き、涼しい環境下で体温を下げる努力をして下さい。
予防法は基本的に上記と同じですが、医師による事前の診断も行うようお勧めします。
3、“水分補給はいつ必要か?”
・運動前:運動 2-3時間前に 500-600 ml(17-20 oz)の水またはスポーツドリンクの摂取。 さらに運動 10-20分前に 200-300 ml(7-10 oz)の水またはスポーツドリンクの摂取。
・運動中:基本的に 200-300 ml (7-10 oz)の水またはスポーツドリンクの摂取を10-20分間隔で行うが、喉の渇きを感じる前に水分摂取を頻繁に行うことが理想。
・運動後:運動後2時間以内に 600-720 ml / 減少体重 kg(20-24 oz / 減少体重 pound)のスポーツドリンクの摂取。 注)この場合の減少体重とは、運動前後の体重差。
*例、減少体重 2 kgの場合、
600 ml X 2 kg = 1200 ml(1.2 L)から 720 ml X 2 kg = 1440 ml(1.5 L)の水分補給。
4、“運動中の飲み物は何が良いのか?”
規則正しい食事を摂取していれば、経済的な負担が低く、そして手ごろな“水”で十分だと私個人としては思うのですが、もし“スポーツドリンク”等を用いる場合は以下のことに注意して下さい。
・炭水化物を含んだスポーツドリンクが効果的で、その理想的な炭水化物の濃度は 6%-8%(g/100 ml)
・フルーツドリンク、ゼリー状の炭水化物、炭水化物濃度8%以上のスポーツドリンクの運動中の摂取はなるべく控えて下さい。
・胃腸内の不快感を起こす可能性のあるフルクトース入りの飲み物はなるべく制限して下さい。
・尿量の促進効果や水分再吸収の作用を妨げるカフェイン入りまたはアルコール類は避けて下さい。
(ただし、カフェインに関しては事前の適度な量の摂取により、有酸素系運動で疲れを減少させる効果があると臨床上証明されています。 しかし、過剰なカフェインの摂取はドーピング問題に関与することをお忘れなく)
・胃に満腹感をもたらし、自発的な水分の吸収を妨げる可能性のある炭酸飲料水は避けて下さい。
5、“飲み物の適度な温度は?”
個人的な好みで意見が分かれると思いますが、10-15℃( 50-59°F)が理想的です。
6、“脱水症であるか知るためにはどうすればいいか?”
まず運動選手の意見や感覚などから主観的に知る方法があります。
それから客観的な方法として以下の2つがあります。
a)運動前後、または運動前と次の運動前の体重の差(二部練の場合)を計る。
・もし測定後の体重差が1%-2% ならば、身体パフォーマンスにマイナスの影響を与えます。
*例、運動前の体重 60 kg → 運動後の体重 59.4 kg から 58.8 kg の間
・もし測定後の体重差が 3% 以上ならば、熱中症になる危険性があります。
*例、 運動前の体重 60 kg → 運動後の体重 58.2 kg 以下
b)尿の量・色から判断。
・尿量に関しては個人差により定義付けが難しいのですが、日常での排尿量を目安にして下さい。
・尿の色に関しては、下の図表を参考にして下さい。

もし尿の色が、
1-2ならば、水分補給は十分になされています。
3-4ならば、脱水症への傾向を示しています。
5-6ならば、脱水症です。
7以上ならば、危険な脱水症です。
(ただし、特定の食物あるいは過剰なビタミンの摂取により尿の色が変化するので注意して下さい。 それから脱水症とは関係ないのですが、もし赤い色をした血尿が見られた場合、直ちに内科あるいは泌尿器科等での医師による診断を行って下さい)
参考文献:
・Essentials of Strength Training and Conditioning 2nd Edition.
・Journal of Athletic Training. “NATA Position Statement: Fluid Replacement for Athletes”. Volume 35, Number 2, June 2000.
・Principles of Athletic Training 10th Editions.
・熱中症のホームページ
(Wednesday,July 04,2001)