8月4日
バスケットボールの練習前に Hamer Hall のアスレチックトレーニングルームで必要なものを準備。
そして二人ほど足首にテーピングする。
午前中に練習が行われる高校の体育館まで各自車で移動するのだが、今回は台数が足りなかったのだろうか、二人の選手が「私の車に乗せてくれ」と頼んで来た。
うちの大学からその高校までは約10分ぐらいと近いのだが、その10分間は重い空気が漂っていた。 なぜなら、二人の選手とは自己紹介後は無言状態で会話がなかったから。 何を話してよいか私は何も浮かばなかったし、向こうも話をしてこなかった。
練習の方は相変わらずレベルが高い内容だった。
以前コーチに「みんな凄い」と話したことがあったのだが、コーチは「今バスケットボールはオフシーズンなので、まだからだができていない」と言った。
“からだができていない状態”でこんな感じである。 もしきちんと早い段階から計画的にからだづくりを始めていたら、彼らは今よりもっと凄い“化け物のような選手”になっていただろう。
練習中、うちの選手が鼻血を出していたので止血する。
別に接触から起った怪我ではなく、彼曰く「こんなことがたまにある」とのこと。
そして「コートにも血が落ちている」と言って来たので、アルコールで消毒しながらそれを拭き取る。
これはもちろん“血液による感染症を防ぐため”である。
彼には感染症などの病気はないと思うが、“アスレチックトレーナーとしての義務”なのできちんとやる。
彼は申し分けなさそうに何故か私に謝っていた。
練習終了後、再び同じ二人を車に乗せて大学まで戻る。
行きと違い、帰りはちょっとした会話があった。
一人が「お前も一緒にヨーロッパ遠征に付いて来るのか?」と聞いてきた。
私は「ただこのキャンプの手伝いをしているだけ。 それに来週からはフットボールのキャンプが始まり、そこで働かなければならないから行けない」と言った。
しかし本音は、お金と時間があれば頼んでも一緒に連れていってもらいたかった、、、
さらに彼が質問してくる。
「将来はどんなレベルのトレーナーになりたい? プロか? それとも大学でか? 種目は何がやりたい?」
私は「んー、トレーナー活動はやり始めたばかりだから、今のところまだ決められない。 それにレベルによってそれぞれ違いがあるから難しい」と答えた。
プロのようなレベルの高いところで働いてみたいが、一つの種目だけに専念したくはないし、かと言って高校レベルではアスレチックトレーニングルームの設備や法律的にややこしい事があるので考えてしまう。
本当にどのレベルが自分には似合っているのだろうか?
いろんな場所でいろんな経験をしながらそれは自然と分かっていくだろう。
Hamer Hall のアスレチックトレーニングルームで片付けをしていると、二人のバスケットボール選手が入ってきた。
彼らはいつも練習後は自主的に膝にアイシングしていた。
しかし、今回は私に「Ultrasoundをやってくれないか?」と頼んできた。
一人はうちの大学からの選手なので断ろうにも断れない。 ましてや、“トレーナーを必要”として頼んできてくれるので快く引き受ける。
そしてもう一人の選手も私に頼んできた。
彼は違う大学からの代表選手だが、“同じチーム”であり“今は私の担当選手”みたいなものなので責任をもって同じトリートメントを行う。
ポイント)Ultrasound Therapyとは超音波による物理療法のことで、温熱/非温熱的な方法により soft tissue injuries の回復や痛みを軽減させる。
音波の頻度(Frequency)である1MHz は Deep tissues、3MHz は superficial tissues(1ー2 cm または 1/3ー3/4 inch)と当てる部位の厚さによって選択する。
Sports Medicine の分野で使われる強度(Intensity)の範囲は、0.1ー3.0 W/cm2。
使用時間は、5分から10分程度と部位の広さによって変える。
なお Contraindication として禁忌されている部位/症状:
1.妊婦の背中・腹部
2.目、耳、精巣、脳、脊髄
3.心臓(ペースメーカーを使用している人も注意)
4.出血を含む急性的な怪我
5.禁忌ではないが、子供の Epiphysial area(骨端部)
午後のバレーボールの練習の前に、初日に足の親指を怪我していた子が、「痛みが激しくなってきた」と言ってきた。
私にはどうすることも出来なかったので、アスレチックトレーニングルームにいた大学院生に助けを求める。
大学院生の一人が「爪の下の内出血している血が周りを圧迫して、痛みを起こしている。 爪にちょっと穴を開けて、そこから血を出さなければらない」と彼女に説明する。
私はそのような怪我と対処法は何かの授業で学んでいた。
しかし一度も見たことがなかったので、その大学院生のやり方を見学しようとしていたのだが、道具がなかったので出来ずじまいに終わった。
不幸にも彼女はスポンジとテーピングでその指をカバーし、練習を続けることとなった。
午後のバレーボールの練習は、相変わらず“わたし的”には暇なので、のんびり見ていた。
途中、昨日腰が痛いと言っていた子と話をする。
今日もまだ痛いと言っている。
そこで怪我の再評価を行うことにした。
6ヶ月前から痛みが発生し、特にウェイトを用いたリフティングの時に痛いとのこと。
腰の辺りを見せてもらったが、変なアザや形状の異常はなかった。
触診では、L3 から L5 あたりが痛いとのこと。
次に腰の動きを調べてみるが、Trunck flextion(直立からの前屈)、Left lateral flextion(左側への屈曲)で痛みが伴っていた。
Lower back の怪我/症状を評価するスペシャルテストでは、Kernig’s test、Milgram test、Single−leg test でポジティブと異常が見られた。
「うーん、この子まだ初期症状だと思うんだけど、結構やばいんじゃないかなぁ」と考えていると、そばで私の評価を見ていたうちのバレーボール部員の一人が、「彼女はスパイクする時の姿勢が悪いから腰を痛めたんだよー」と言ってきた。
確かに彼女が言うとうり、その子のスパイクする時の姿勢は、明らかに後方に反り返っていた。
さらに“女性”という面を考慮しても、彼女の普段の姿勢は“く”の字型に反り返っていて、Lordosis ぎみだった。
そこで「痛みの原因は“そんな異常な姿勢”からではないか?」と考え直した。
ポイント)Abnormal spinal curvatures(脊柱の異常)
・Lordosis(脊柱前側湾症)とは、側面から見た時に腰椎がお腹側に突き出し、お尻が上にもち上がっている状態。
・Kyphosis(脊柱後側湾症)とは、側面から見た時に胸椎が過剰に曲がりすぎていて“猫背”のような状態。
・Scoliosis(脊柱側湾症)とは、前後から見た時に脊柱が左右のどちらに偏曲している状態。
彼女には「脊柱または脊柱の間の椎間板に異常があるかもしれない」と説明してみるが、「何、それ?」と話が通じない。
絵に描いて改めて説明してみるが、自分でも何を言っているのか分からなかった。 だから彼女にも理解できるはずがない。
自分の頭の中では分かっていても、人にはうまく説明できない未熟さが強く感じさせられた。
とにかく彼女には“練習後のアイシング”と“医者の診断”を薦めた。
うちのコーチから「バスケットボールのキャンプはいつ終わるのか?」と尋ねられる。
「何でバレーボール部のコーチがバスケットボールキャンプの日程を聞いてくるのだろう?」と思っていると、コーチは「明日からまた別のキャンプ参加者達が来て、別のキャンプが始まるから手伝ってくれないか?」と仕事の依頼をしてきた。
バスケットボールキャンプは今夜で終わるし、フットボールキャンプまではまだ日数があったので引き受けるよう返事した。
それからこのバレーボールキャンプが結構楽なことも引き受けた理由であった。
6:30pm、今日一日そしてこのキャンプ最後のバレーボールの練習が行われる。
途中、一人「足首が痛い」と言って私のところにやって来た。
その怪我の部位を見てみると、彼女は明らかに“Eversion sprain”をやっていた。
捻挫した時の足首の状態を聞いてみても、「外捻りだった」と話してくれる。
少々内出血と腫れが見られたが、「試合やりたいから、テープ巻いて」と言ってきたので巻いてやった。
もちろんその前に怪我の評価を行ったが、「練習は続けても大丈夫だろう」と判断していた。
普段はちょっとした会話をテーピング中にするのだが、この時ばかりは私は無口だった。 なぜなら、“外捻り用のテーピング”なんて授業で習った以来、二年ぶりだったから。 別に難しい巻き方ではないのだが、やったことがなかったので、話をせず頭の中で確認しながら巻いていったから。
めずらしい怪我だったのでもう一度見ておきたかったのだが、彼女は練習後テーピングをしたままアイスバッグをもらい去ってしまった。 残念。
バスケットボールの練習前にコーチから、「今回のキャンプのお礼」と言ってキャンプ参加者にあげられるT−シャツをもらった。
もらえる物は何でも嬉しい“貧乏性の私”なので喜んでいたのだが、サイズを見てみると“XL”だった。 でかすぎコーチ、、、
体育館には一人懐かしい選手が練習を見に来ていた。
しかし、彼には“松葉ずえ”と“膝の装具”も一緒だった、、、
彼にどうしたのか聞いてみると、二週間前に Patellar fracture(膝蓋骨骨折)を“また”起こしたとのこと。
彼は去年も同じような時期にまったく同じ所を骨折して、シーズンだけでなく一年間リハビリをしていた。
今回の怪我で彼はまたリハビリだけで、コート上でプレーすることなくすでにシーズンを終えてしまうことが決定的となった。
彼の気持ちを考えればとても悔しいだろう。
ちなみに、彼の骨折の原因は二回とも膝蓋骨が Patellar tendon/ligament と Femur(大腿骨)の間で圧迫されて起こされたものだった。
私の目が馴れてきたのだろうか?
それとも選手が少し手を抜いているのだろうか?
ゲームの動きに迫力が感じられなかった。
10:00pm、怪我もなく無事バスケットボールキャンプ終了。
今日の教訓:
「“専門用語”は“専門家のため”で、“素人”には“分かりやすい説明”を心掛ける」