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涙のわけは想像に難くなかった。本来そこは嬉しい顔を見せる場所。しかし、立っている場所の意味さえ忘れてしまいそうなその表情からは、大切なものが何であるかを胸の奥深くまで突き付けられた気がした。 人間はいつの日からか、歩かなくても移動ができるようになり、気がつけば空を飛び、月まで行けるようになっていた。火がなくてもあたりは明るく、夜の暗闇におびえることもない。寂しい時にはボタン一つで声が聞け、チャンネルをまわせばそこには誰かしらが映っている。人間に力を貸してくれるものは増えた。ただしそれらは、魂には手が届かないのだ。 時代が進むにつれて重要性が認知されていく科学トレーニングと、反比例していくその「大切なもの」は、私の胸の中の失われたラストピースだった。彼はまた投げる。来年は千葉に行こう。黒木知宏を見るために。 |
![]() Photo data:れんの部屋 |