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神様は言った、「巨人軍おめでとう」と。そして、その隣で藤井将雄がこう言った、「ダイエーホークスのみんな、お疲れさま」と。 20世紀の一番最後に野球の神様がOとNを結びつけた。日本中のプロ野球ファンが、こんなできすぎたストーリーを神に感謝したくなったのだろう。しかし、彼らが本当に感謝するべき人は、この対戦を実現させた両チームの選手達、そしてもうひとり。 何の因果だろうと思ってしまうのも無理はない。親友だった若田部はその勝利を誓った。弟のようにかわいがっていた工藤は、最高の試合をすることを伝えた。そして2人はこの世紀の対決の初戦で投げ合うことになるのだから。熱い魂と魂のぶつかり合いを、彼は、たしかに観ていたはずだ。若田部は初回からピンチの連続だった。結果4回途中で降板にはなったが、ファンそしてチームメイトはあの心の奥底からあふれ出る、勝ちたいと思う気持ちをしっかりと感じ取っていた。そしてまた、工藤もそれは一緒だった。シーズン中とはまるで別人のような鬼気迫る表情がそれをものがたっていた。想いが交差するグランドの最も高い場所で、2人は共に会話を交わした。もう1人の戦士と。そして彼は、最後までダイエーホークスの『選手』として支えてくれた愛する我がチームに、少しだけ力を貸してあげた。 若田部健一、投球回数4回、打者20人、被安打6、三振6、失点3。工藤公康、投球回数7回、打者25人、被安打5、三振8、失点3。6戦のなかで最もすばらしい試合となったこの一戦は、彼から私達へのプレゼントだったのかもしれない。「ありがとう」という言葉を添えて、記憶に刻まれたこの試合を思い起こしてみれば、必ず彼はそこにいる。 |