ヲ 切符の行方(1)

の瞬間、高橋尚子は何を思ったのだろうか?浅利純子は、有森裕子は、いったい何を考えたのだろう?山口衛里がゴールした瞬間、女子マラソンのシドニー行きの切符は2枚から1枚になろうとしていた。

 レースは三つ巴と見られていた。’97世界陸上優勝の鈴木浩美、その大会で1万m銅メダルの千葉真子、そして昨年の北海道マラソン優勝の山口衛里である。実績で言えば、山口は3番手。世界大会で活躍した鈴木や千葉に比べれば、世間の認知度もそれほどではなかった。しかし、夏場のトラックレースなどで好走し、スピードトレーニングの効果を発揮しつつあった山口のスピードは、マラソンにおいては「特殊」なものとなっていた。あのスピード自慢の千葉を15キロで振り切り、ロバ、エゴロワという2人のオリンピックチャンピオンを抑えての優勝は、日本陸連にとって、そして他の五輪候補者達にとっても大きな結果となった。

 残り5キロが上り坂の東京で、日本記録に迫る2時間22分12秒という記録はアピールに十分すぎる程である。しかし、ハイレベルで繰り広げられる戦国女子マラソン界。1月の大阪、3月の名古屋ではさらなるハイペースでレースが展開されることが予想され、これで決まりだと断言できないのもまた事実である。とにかく切符は2枚しかない。耳をすませば、日本陸連の嬉しい悲鳴が聞こえてくるかもしれない。

 

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