ァ 2つの速さ 

本で一番速いドライバーは高木虎之介である。フォーミュラーニッポン10戦8勝、誰もが認める周知の事実だ。ドライバーにおけるトップカテゴリー「F1」で自分の速さを証明する。そのためにも、ここFニッポンで負けるわけにはいかなかった。俺の速さを見てくれ。虎之介の走りは、F1関係者にそう訴えているようだった。莫大な資金が必要とされるF1。もはやドライバーの速さだけで、そのシートを得ることは難しい。今年から8年ぶりにF1の世界へ舞い戻ってきたHONDA 、そして2002年からのF1参戦を表明したTOYOTA 、いまや日本最速のドライバーをF1で活躍させることのできるチームは、この2チームしかない。そして来年、虎之介はアメリカでCARTドライバーとして速さの証明を命じられた。これは、TOYOTAが彼に与えた最終テストだ。21世紀ジャパニーズタイガーの実力は、自由の国で認知される。

本山哲には、虎之介がアメリカに行く前にどうしてもやっておかなくはならないことがあった。それは、「日本で一番速いドライバーは高木虎之介である」を覆すことである。’98年Fニッポンで優勝した。しかしF1のシートは手に入らなかった。去年は大接戦の2位。そして今年、戻ってきた親友に主役の座を奪われた。かつて日本最速の男と呼ばれた星野一義はいっていた。「本山より速い日本人がいるかい?」その言葉が今脳裏をよぎる。Fニッポン最終戦、ここにきてようやく戦闘能力をつけてきた自分のマシン。虎之介が日本を去る前に、勝たなければならない。一番速いのは俺だ、そんな彼の走りだった。プッシュし続ける虎之介、しかしその影さえ踏ませない異次元の走りを彼はやってのけた。今年唯一のこの勝利が、虎之介への挑戦状である。

 2人のドライバーが最高の舞台で競い合う、そんな未来が必ず来る。F1という世界に日本最速の2人が乗り込んでゆく日は近い。

 

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