氈@懐かしき胸の痛み


Photo Data:(C)Carrot Lunch

いビデオテープを整理していると、胸がつまる映像が目に入った。そこには悲劇の名馬が映し出されていた。「沈黙の日曜日」と称されたあの日から、いったいどれだけの日曜日が過ぎていったのだろう。

 その日もいつものように「速い馬」を探していた私は、彼がそうであるということはすでに知っていた。だから、彼がレースで勝つことが私を驚かせるはずはなかったのだ。レース後、それがグレードレースであることを馬鹿みたいに確かめながら、うれしさと感激に浸っていた。ゴールの瞬間、そこには1頭の馬と1人の騎手しか映っていなかった。

 後に世界第二位の評価を受けるエルコンドルパサーに最も差を着けて勝ったのは、まぎれもなく彼だった。単純に比較することがナンセンスであると分かっていても、その事実は彼を私の中で世界で一番速い馬であると認識させるのに十分であった。

 私の夢、競馬ファンの夢を乗せたまま、彼は走り去って行った。やりきれない気持ちをどこに向ければいいのか分からなかったあの時間が、鮮明に思い起こされる。テープは一番奥にしまわれた。

 

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