」 薔薇

ッカーの神は我々を見捨てはしなかった.ブラジル対ドイツ.W杯の決勝でこのマッチメークを実現させた大会を「失敗」とは呼べない.

 『サッカー新世紀』.メディアはそう伝えた.大陸間の実力差はもはや皆無に等しい.フランスとアルゼンチンが,優勝候補という名の麻薬に侵された時,気づいておくべきだった.アジア発「テハンミングク」ウイルスは,ポルトガル,イタリア,そしてスペインをも飲み込んだ.もはや強豪国には刹那の隙も許されない.2002年,世界地図は塗り変えられた.

 ただし,それでもサッカーがより魅力あるものになっているとは思えなかった.退屈な展開に単調なプレーの数々,わずかな興奮は得点シーンのみ訪れた.ファンタジーもスペクタクルもないグランドでは,綺麗な芝の緑だけが鮮やかに輝いていた.減った・・・,単純にそう感じた.高度な技術を駆使し,プレスを消し去り,想像を超えた世界に我々を導いてくれる.彼らはいったいどこに行ったのだろうか.

 プレーの組織化が煮詰まりつつある現在,誰もがチームプレーを心がける.それが当然であり,最も必要なことであることに変わりはないし,異論もない.だが一方で,進みすぎた組織化によって,たくさんの不器用なきら星達が淘汰されていったこともまた事実である.彼らは消されたのだ.組織化が奪ったものは決して相手の刺ではない,自分の刺だった.多くの監督がチームプレーに徹することの出来る選手を望み,そして多くの選手がそれに答えようと努力した.わがままな才能は『悪』となり,刺を失った選手にゴール前の網は破れなかった.

 「刺を抜いても薔薇は綺麗だ」,そう反論されるあなた.それじゃあ薔薇をつかむときドキドキしないじゃないですか.

 

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