」 閉ざされた心

  

た今年も、熱い夏がフランスを通り過ぎていった。パンターニ、ウルリッヒと主役を欠くツール・ド・フランスは、ガンを克服したランス・アームストロングが、マイヨジョーヌを獲得するという感動的なフィナーレで幕を閉じた。新たな強者の登場が、来年のツールを盛り上げる恰好の材料となったことに、それほど不満はないのだが・・・

 今年も、去年、一昨年に引き続き、私の視線はリシャール・ビランクただ一人に注がれた。彼は自転車レースの盛んなヨーロッパ、中でも出身地フランスでは絶大な人気を誇るヒーロー「だった」。いや、おそらく今でもヒーローなのは間違いない。ただ、彼は輝きを失ってしまっていた。ここ数年で突如厳しくなったドーピング検査により、彼はその矢面に立たされた。それが去年の出来事である。あれから一年、長い月日は、彼の疑惑を晴らすのにまだ十分ではなかったようだ。それゆえ、今年も出場が危ぶまれていたが、主役を欠くこのレースの人気集めとして、出場が許された。

 しかし1999年のツールはすでに終わりを告げている。ビランクは笑い方は忘れても、山岳王の証マイヨグランペールの取り方だけは覚えていた。彼がドーピングをしたかどうかは、私にはわからない。ただ私は彼の輝きを見ていたいだけである、あの眩しいほどの輝きを。なぜなら、フランス人のヒーローである彼は、1人の日本人のヒーローでもあるからだ。

 

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