氈@フランスの夏再び

こに'90年代最強と謳われたあのミゲール・インデュラインの幻影が映し出された。熱い風が、ピレネーやアルプスの山々を吹き抜けながら、彼を最強の自転車ロードレーサーに仕立て上げたのだ。これを復活などという言葉で気安く飾ってはいけない。彼は復活したのではない。誕生したのだ。

 あまりにも強すぎた。昨年手にしたマイヨジョーヌには「ガン克服」という感動がついて回ったため、彼の真の実力を誰もが肯定できずにいたのだった。そう、彼は一年前から最強だったのだ。それを今年は世間に知らしめるかたちとなった。役者は揃う。'97年に23才という若さで優勝したドイツ人ヤン・ウルリッヒ、'98年にツールを制した世界No.1クライマー、マルコ・パンターニ、そしてフランスのアイドル、リシャール・ビランク。他にも強敵は揃っていた。しかし最終日、エッフェル塔にマイヨジョーヌを披露したのは去年と同じアメリカ人であった。二度の個人タイムトライアルをそれぞれ2位、1位とし、山岳ステージに入ってもあのパンターニを置き去りにするアタックを見せるなど、もはやつけいる隙などどこにも見あたらない。混戦?そんな言葉が聞こえてきた20世紀最後のツール・ド・フランス。それは「2位以下が」という言葉をつけ加えて、3週間以上に及ぶ長い旅を終わらせた。

 ライバルと呼ばれていた彼らも、それぞれの実力を発揮してみせた。まずヤン・ウルリッヒはというと、個人タイムトライアルでも上位に食い込むなど以前の力強い走りをみせてくれた。総合2位は立派である。マルコ・パンターニは山岳ステージで二度優勝するなどしてファンの期待に応えてみせた。そしてフランスの英雄リシャール・ビランクは、あのドーピング疑惑が造り出した心の闇から抜け出すことに成功した。それぞれが共に、これから始まる一年の空白を楽しませてくれる結果となったことで、21世紀の熱いフランスの夏をすぐそこに感じずにはいられない。

 そして・・・、ランス・アームストロングここに生まれる。2度目のマイヨジョーヌと共に。

 

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