UNITE−X(ユナイトクロス)
第1回伊豆アドベンチャーレース参戦記
(2000/9/16)

 去年の8月末に行われた伊豆アドベンチャーレースのテストランから1年が過ぎました。テストランをきっかけに各地のアドベンチャーレースに参加するようになり、週末に練習と称して、たびたび海、山、川に遊びに行ったのは楽しかったです。今回も、伊豆の自然を楽しみに、そして国内でもトップのアドベンチャーレーサー達がプロデュースしたコースにチャレンジするため、伊豆(松崎)アドベンチャーレースに参加することにしました。今回はチームで完走が目標です。今年も前回に引き続き、報告をさせていただきます。以下、唐突にレースがスタートします。

 なお、今回のメンバーは以下のとおりです。(写真左から順に)

キャプテン   

早川正人(男)
(スポーツ歴:サッカー、水泳、スキー等)

5_shoukai.2jpg.jpg (82344 バイト)

選手1

中原祐二(男)
(スポーツ歴:剣道、合気道等)

選手2  

菊島明佳(女)
(スポーツ歴:サッカー、体操、合気道等)

アシスタント   

神谷広幸(男)
(スポーツ歴:合気道等)

みんな上記のほかに、時々遊びを兼ねて、山に登ったり、MTBに乗ったり、カヤックやったりしています。

<スタート:カヌー>

 もうすぐAM5:00。さっきから振り出した雨が、だんだん激しくなってきた。少しずつみんなのテンションが上がってくるのが感じられる。スタートの合図。みんな一斉にカナディアンカヌーの方へ走る。我々もさきほど選んでおいた船の方へ向かい、船を持ち上げて海へ。波は小さいので、のりこむのにそれほどの困難はない。
 団子状態のスタートからまず、予想どおり、「イーストウィンド」が飛び出した。パドルの回転数が全然違う。他のチームも次第に差が出てきて結局我がチーム「ユナイトクロス」は殆ど最後尾からついていく形になった。


スタート直前

 スタートから暫らくは岩科川を遡上するコースである。はじめは緩やかだった流れも上流に上るに従い次第に速くなってくる。はじめは声援を送ってくれている人達に応える余裕があったが、自分たちのあまりの遅さにその余裕がなくなってくる。川の流れが急なところはカヌーから降りて押していく。深さが腰あたりまでしかないので、このようなことが出来るが、流水の圧力でかなりきつい。足の筋肉が疲れ、息が上がってくる。自分でさえそうだから、もっと体重が軽い菊島は大変だろうと考えていたら、案の上、少しずつ遅れ始めた。自分も正人のスピードから遅れそうになる。ここは、チーム全体での体力温存のため、菊島にはカヌーに乗ってもらい、正人と二人で押しながら進んで行く。
途中の浅瀬はカヌーを持ち上げて土手を歩く。はじめは手に持って運んでいたが、途中で正人が「頭に載せて行けば楽かも」という提案をしたので、ちょうど、どこかの国の女性が洗濯籠や売り物が入った籠を頭に載せて運ぶように、船をひっくり返して頭の上に載せる。確かに楽だ。傘の代わりにもなる。アドベンチャーレースは頭を使え!ともいう。「俺の頭は荷物をのせるためについていたのかもな」と考えつつ、カヌーコースの終点(宇治橋)へ。この辺りで、シャラシャラ(地元チーム)を追いぬく。流石は頭脳プレーが得意な我がチームである。

 

<カヌーからトレッキングへ>

 カヌーを川の土手に置くと、歩いて登山道の入り口まで向かう。当初歩く予定だったという川を見ると結構な流れになっている。歩くことになっていたらかなり大変だっただろう。登山道に入る所に大会のスタッフがいて、すぐ近くにコントロール(=オリエンテーリングでチェックポイントに置いてあるマーカー。ホッチキスみたいになっており、紙を挟んで押すと紙に穴が開き、そのコントロールを見つけたという証拠となる。)が置いてある。今回はコース上に置いてあるコントロールを見つけながらレースを続けるというルールなので、早速コントロールを取る(=コントロールを見つけて、紙にしるしをつけることを「とる」というらしい)。
 コントロールをとると何故か二人が登山道をもどりコンクリートの道を登ろうとする。「???」と思いつつ、「道を間違っていると思うけど・・・」というと、二人は地図を確かめ道を間違っていることに納得。どうやら大会スタッフがこちらの方に行くようにと、指で示したように感じたらしい。こちらの勝手な勘違いだが、地図を確認して良かったと安堵しつつ、登山道へ。
 ここから520mのピークまで登りである。ただし、斜度が大したことないので楽な感じがする。他のチームは先の方へ行ってしまったが、ユナイトクロスの目標は完走なのでこういうところではマイペースを保ってピークを目指す。それにしても後続にシャラシャラ1チームしかいないのは寂しい。
 途中で少し開けた場所に出る。2〜3分ほど現在地を検討していたが、もっと登らなければということが分かり、自分の地図読みの技術を磨かなければと反省しつつ、また登り始める。このあたりでシャラシャラに追いつかれそうになるが、まだレースが序盤ということもあり、彼らは追ってこなかった。
 暫らく上るとコントロール2のあるポイントに差し掛かった。昨日のブリーフィングでは、「お地蔵さんのそばにある」ということだったので、辺りを見るとお地蔵さんがあっさりと見つかり、そのそばにコントロールがあった。早速ゲットし、そのまま約300m程進んだところにあるピークへ。ピークの辺りから前のチームの声がし始め、少し追いついたんだなと実感。ピークから緩やかな下りなので、軽くジョグをしつつ、前のチームを抜いてアシスタントポイント(以後、APと表記)1へ到着。AP1にあるコントロール3をゲットする。

 

 <AP1大峠:トレッキングからMTBへ>

 AP1ではアシスタントの神谷さんが待っていた。駐車場からAP1まで100mほどの距離がある。MTB3台と車にバラバラに積んだ荷物を一人で運んでいるので結構大変だったはずだが、キチンと注文どおりの道具が揃っており、感謝。メットをつけてカーボショッツをたべ、急いでコースへ。

コースはシングルトラックを3kmほど下るコース。前日のブリーフィングで大会コーディネーターの白石さんが「余程うまい人でも全部MTBにのって行くのは難しいでしょう」といっていたとおり、段差が多いシングルトラックで出来たコース。今回の大会にゲストできていたジョン・ハワードさんも「難しいコース」と言っていたくらいだから、やっぱり相当難しいんだろう。押していってものって行ってもあんまり差が出そうにないし、距離も短いので、転びそうなところは押しながらコースを降りて行く。今回怪我をするとしたら、MTBと沢下りだと思っていたので、完走のために、このあたりはセーブしておく必要があった。


大峠

 MTBを進めていくとコースの真中くらいにコントロール4があるはずだが、なかなか出てこない。「もしかしたら通りすぎてしまった!?」と思ったら、おじさんとおばさんがいたので「(コントロール4の近くにある)玄菜庵てどこですか?」と確認。「もう少し先だよ」と教えてもらい、安心しつつMTBを先に進める。玄菜庵を過ぎると、コントロール4が木の上に下げてある。正人が木の側に置いてある竹の束に乗っかってコントロールを取りに行く。途中竹から滑り落ちそうになる場面もあったが、無事ゲットして、再度MTBにまたがる。あとは比較的簡単な道を快適に飛ばして岩科川まで。最後の道路のところは走っては行けないことになっていたのでここはキチンとMTBから降りる。

 

<岩科川:MTBからカヌーへ>

 カヌーに乗る前にまた前のチームに追いつく。ほぼ同時にカヌーに乗ったが少しづつ差が開いていき、ユナイトクロスの実力が実証された。(もう一方のチームが速くて、ユナイトクロスはどんどん置いていかれたという意味です。)まあ、下りだしなんとかなるよと思いつつ松崎海岸へ。

 

<AP2松崎海岸:カヌーからカヤックへ>

 松崎海岸に到着。去年のテストランではトランジットの度にのんびりしすぎて、30〜40分くらい時間を費やしていたが、それではイカンということで、今回はトランジットの時間削減に努めた。といいつつも濡れた靴をずっと履いていると足の皮がふやけて剥がれたり(痛そう!)しそうだと考えていたので、サンダルに履き替えた。
 パドル、ライフジャケット、パドルフロート、スプレースカート等を準備し、余った時間で水と栄養分を採って出発。松崎海岸は波もそれほど高くなく、この時点ではまだまだ余裕があった。
 沖に設置してある魚網を過ぎてしばらくするとうねりが出てきた。今回はNELOというカヤックを知人から借りたが、スピードが出る一方で自分の実力からすると少々不安定に感じる。レース前に岩地で2、3回練習したが、波高2mが限界かなと考えていたので、これ以上波が高くならないように祈りつつ進む。そもそも、ロールも出来ないし、パドルフロートレスキューの練習も1、2回しかやっていないので少々不安がある。まあ、もう1艇がタンデムなので最終的にはレスキューしてもらえるだろうという安心感を頼りにパドリングを続ける。とはいいつつも今後の安全の為に来年までにはロールくらいは出来るようになっておきたい。
 岩地に近づくとさらに波が高くなってきた。この辺りは船が頻繁に通り、波が起こるのも辛い。タンデム艇の二人が「波がたのしい」と言っている一方で、ひっくり返らないように波に合わせてセコセコとパドルを入れる。菊島が「虹が出てるよ」と声をかけてくれたらしいが、聞こえてなかったし、聞こえていても見る余裕がなかったであろう。さらに進むと、海面に白く泡が残っている部分がある。「なんだなんだ?」と思いつつ入っていくと、波と波がぶつかっているポイントということが判明。カヤックが左右から揺さぶられる。沈するわけにもいかないので、ストロークの回転を早めて、艇を安定させて脱出。今回のカヤックではこの部分が一番危なかった。
 暫らく進むと、雲見が見えてきた。波は1.5m〜2.0mくらいか。海岸に向かう直前でまた別チームを追い越す。海岸へ近づくと少しずつ波の影響が少なくなり、楽になる。
 カヤックを砂浜に上げると、ゆっくりと歩きつつ烏帽子山へ。

<雲見海岸:カヤックからトレッキング>

 烏帽子山への上り口は階段で始まる。ずっと階段が続いているので、サンダルを履いているのは失敗したかな、などと思いつつ足を進める。下側の階段を上りきり、「さあ、次の階段だ」と上を見たらびっくりした。次の階段はさらに長くなり、しかも、上の方が見えない。角度も上になるにつれて厳しくなっていて、上部が反り返っているように見える。「なんじゃこりゃあー」と松田優作状態に陥る。斜度40〜45度くらい?。しかし、頂上にコントロール8(注:コースと天候の都合上、コントロール5−7、9は中止となった)がある以上しょうがない。後ろからついてくるチームに抜かれるのも癪なので、そのまま登りつづける。階段が狭い上、階段そのものも傾斜していて登り辛かったが、漸く階段がおわり、少々山道を歩くと、頂上へ到着。頂上からの眺望は素晴らしかった!これはコースに入れてもらって良かった。こういったコース設定の良さが伊豆アドベンチャーレースの良さの一つである。天気が悪くて富士山が見えず残念だったが、もしみえたら最高だっただろう。コントロール8をとり、写真を取ってもらい、下りへ。ちなみに下りも結構怖かった。

<雲見海岸:トレッキングからカヤックへ>

 海岸についたら、カヤックにまたがり、じゃなかった、カヤックに乗り込み岩地海岸へ。浜辺を出るとすぐ、自分の前を大きな漁船が横切ってくる。こちらを認識して停止しかけたのでそのままカヤックを進めたら、向こうも止まりきれなかったのか突っ込んでくる。そのままだとぶつかってひっくりかえりそうだったので、大きくスイープを入れてギリギリのところで衝突回避。ホントに10cmくらいしか離れてなかったと思う。沖に出ると相変わらず波が高いが、少し慣れてきたためか、それほどは沈する危険を感じなかった。暫らく行くと魚網がでてきた。それを岸の方に回って回避しようとしたが、岸まで続いていたので、途中で引き返して沖側から回避。大きなロスはこの部分だけで、あとは特に問題なく、いつもカヤックの練習にきている岩地海岸に到着。と思いきや、浜に着く直前、菊島と正人が乗っているタンデム艇が波に押されて自分の前に!自分のカヤックもそのまま波に押されてタンデムに突っ込んでしまい衝突。他人から借りたカヤック同士をぶつけてしまった。ごめんなさい。 

<岩地海岸AP3:カヤックからシュノーケリングへ>  

 カヤックから降りて、チェックを済ますと、目印のハタをつけてタンデム艇に乗りこむ。正人と菊島のシュノーケリングの準備が終わる前に神谷さんに手伝ってもらってカヤックを出す。
 まずコントロール10のあるテトラの周辺で待機。準備の出来た二人がやってきてテトラの周辺を探す。菊島が見つけて正人に知らせ、正人が水中へ。ところが、コントロールは水深2mくらいのところにあるはずなのに、正人がなかなか浮かんでこない。どうやら、コントロールを押すページを開かないままもぐってしまったようで、水中の中で悪戦苦闘していたらしい。みんなが心配になってきた頃、正人はコントロールを取って水面に顔を出した。

 さて次は少し沖の方にあるコントロール11へ。このコントロールは水深4mのところに沈めてあり、「大根島から295度、電波塔から105度、岬の山頂から220度のところにある」というガイドの指示に従ってコンパスを頼りに探さなければならない。まず地図を見ると、右側の岬の一番先から二つ目の山頂の下周辺にあるのが読み取れるから、とりあえずその場所へ向かうことにした。二人に「あそこまでカヤックで引っ張って行くからつかまっていいよ」と声をかけ、艇につかまらせる。目標はほんの400m先である。ところが二人の人間を引っ張るのは非常に重いことに気付いた。さらに先日痛めた腕の筋がまた痛くなってきた。そもそも日常生活では鞄より重いものは持たないから、腕に筋肉なんて少ししかないのだ。しかも、腕が疲れたからか、カヤックにつかまっている二人はますます重さを増して行く。「子泣きジジイ」という言葉が頭にちらつく。
 子泣きジジイ化した二人を引き連れてとりあえず、250mほど進んだ。沖に出た所為か波が少し高くなり、風にあおられて艇が岸に寄せられる。艇のコントロールが取り辛くなってきたし、腕も疲れてきたので引っ張るのは中止しようと思い、二人にカヤックから離れるように声をかけようとすると、菊島が顔を上げて「引っ張ってもらうのってすごい楽だねえ」と無邪気に言う。「やっぱりフィンだけだと足がつかれるからねえ」。先手を打たれた私は、結局、彼らをつれてもう一漕ぎすることになった。そもそも、自分で「引っ張ろうか」といったのだけど。
 目指すポイントに近づいてきた。艇を止めて二人に「このあたりなんだけど」と声をかける。「磁石で調べてください」と正人から言われ、両手に磁石と地図をもち、「さて」と思ったが、自分にはベアリング(コンパスと2つの目標物から自分の位置を把握することらしい)が出来ないことに気付いた。落ち着けばよいものの、今一つ考えがまとまらず、頭の中身がくるくる回る。「もしかして、頭がくるくる回るから、ベアリングっていうのかなあ」と下らないことを考えていると、カヤックも風と波にあおられて回転し始める。正人にキチンと聞いておけばよかったと後悔しても始まらない。だんだんその場に凍り付いているのも居たたまれないので、開き直って「ここらへんにあるはずだからみんなで探そう」と声をかけて散開する。
 手分けして探し始めた直後、船の上からオレンジ色のボールが海中に沈んでいるのが見えた。「もしかして」と思い、側にいた菊島に「あそこにオレンジ色のボールがあるからちょっと見てきて」と声をかけると、菊島がボールへ向かってコントロールであることを確認。ホントにラッキーである。早速、正人を呼び寄せる。正人はコントロール10でコントロールを押すページを開けないままで水中へ潜り、水中で苦労しているから、今度は海面でキチンとページを開き、ジャックナイフをして海面下へ消える。そして十数秒後、水面に浮上してきた。菊島が「とった?」と聞くとうなずいたので、3人とも喜びつつ、次のポイントである大根岩に向かう。
 コントロール11から大根岩までは大体400mくらい。今度は二人には自力で泳いで行ってもらう。大根岩につくと、外からの波がもろにカヤックにぶつかってきてじっと静止していられない。しかも風にあおられて岸の方に流されてしまう。
 カヤックのコントロールがうまくとれないまま、大根岩から湾のそとへ流されそうになったので、大根岩をぐるっと回って反対側から湾の中に戻ろうとすると、大会スタッフがカヤックを操って近くに寄って来て「タンデム艇の後ろに一人で乗っているから前側が上がって波と風の影響を受けやすくなっています。右側を大きく漕いで、スピードをだして舵を効かせてください。スピードがないと舵は効きません。」とアドバイスをしてくれた。なるほどと思い言われたとおりにすると、何とかもとの位置に戻ることができた。でもこの大根岩のすぐ側にいるとまた流されてしまいそうなので、シュノーケリングの2人が大丈夫そうなのを確認するとその場所から少しはなれて待つことにした。

 二人が無事コントロールをゲットして帰ってきたので、岸へ。ここから岸まで7〜800mあるから、結構大変だ。はじめは正人が菊島の手を引っ張ってサポートしていたが、疲れそうだったので菊島をタンデム艇の前に乗せることにした。正人にその旨を告げると、菊島をおいてさっと泳いでいってしまった。いや、ちょっとまって、菊島がカヤックに乗るときにカヤックがひっくり返らないよう、バランサーになってもらいたいんだけど・・・と思っている間にどんどん先にいってしまう。かといって菊島を何時までも泳がせておくわけにも行かない。しょうがないので、自分でバランスをとって菊島に乗ってもらうことにした。こういうときこそ学生時代に部活やっていた合気道のテクニックが役にたつ。肩の力を抜き臍下丹田に氣を集中し、重心を沈める。そうすると、氣の力で船が安定し、菊島が船に体重をかけてもひっくり返ることはあり得ない。
 というのはまったくのウソでそんなことが出来るわけもなく、おっかなびっくりバランスを取りつつ菊島を船に上げ、「人を乗せるのはちょっとルール違反かな?」と不安に思いつつ岸へ向かった。菊島が「海の中すごくきれいだったよ。魚も沢山いたし」と話すのを聞きながら、海岸へ到着。波に流されたときに腕を使いすぎ、少し筋肉が火照っていたので、波打ち際に横たわり、体を冷やしながら正人が帰ってくるのを待つ。正人は最後はクロールをしつつ海岸へ到着。流石に空身で泳いだ正人は速かった。
 シュノーケリングが終わった時点の我々の順位は、悪魔の仕業か、なんと2位!(1位は相変わらず、サロモン・イーストウィンド)。我々がカヤックを覚えたのは岩地だし、たびたび岩地には遊びにきているので、ここで他チームを抜けたのは土地勘の差でしかないのだけど、こんなことははじめてだし、今後もないだろうから、やっぱり嬉しい。しかし、今回の目標はあくまでも完走である。そのことを再確認しつつ、カヤックへ乗り込み、松崎へ向かう。

「少し筋肉がほてっていたので、波打ち際に横たわり、体を冷やしながら・・・」

 岩地を離れると、また大きな波がやってきた。沈しないように神経を集中させながら、松崎へ向かう。暫らく、波に乗りながら船を進めていたが、次第に波が穏やかになってきて、気分的に落ち着いてきた。ある入り江に差し掛かると急に風が吹きだし、また別の入り江に差し掛かるととたんに風が止む。なにか地形と風と関係があるのかな、などとボンヤリ考えていると、突然雨が降ってきた。穏やかで美しい水面に水の玉が跳ねる様子はとてもきれいだった。


シュノーケリング後↓

<松崎海岸:カヤックからカヌー>

 緩やかな波に運ばれながら、松崎海岸に到着。カヤックを陸に上げるとすぐにカヌーに乗り換えて川を遡る。ここから宮の前橋まではホンの1kmくらいなので、カヌーが苦手な我々にとってはありがたい。川は干潮で水が少なく、途中からカヤックを押しつつ宮の前橋へ。

 

<宮の前橋AP4:カヌーからトレッキングへ> 

川から上がると、すばやくトレッキングの準備に入る。足を念入りに拭いて靴下と靴を履き、ザックに水と食料を入れる。そうしている内にシャラシャラがカヌーで到着。あんまり差がないので急がないといけない。トレッキングの準備が終わると神谷さんの車にのって、大野山登山口へ向かう。当初の計画どおり、ほぼ13:00にトレッキングがはじめられそうなので、みんな調子づいてきた。
 登山口から大野山頂までは距離はないものの、急登である。曇っていて直射日光はないが、湿気が多くて蒸し暑い。息があがって苦しくなる。しかし、後ろのチームが追いついてきているので、我慢して登りつづけるしかない。


長九郎へ

 30〜40分ほど登っただろうか、山頂に近づいてきた。大野山の山頂へ向かうには登山道を少し外れなければならない。地図を見ると少し裏の方へ回ってから登るようなコースになっている。昨日のブリーフィングの時に白石さんが、「植生が変わっているところがあるので、そこから登るといいです」といっていたことを思いだしつつ、藪に切れ目がないか見つける。登山道を進みながら道を見つけていると、「ここだ!」という場所が見つかる。確かに藪が切れている。3人とも「よし!」という感じで藪の中へ。
 結局、藪の切れ目は、ただの藪の切れ目だった。あとから分かったことだけど、先行しているサロモン・イーストウィンドの踏み跡だったらしい。3人で「失敗したねえ」などといいつつ、藪を払いのけ、高い方へ進んで行く。3人とも半袖だったので、頂上へついたときには、腕が傷だらけになっていた。
 頂上でコントロール16を取ると、山の裏側から登山道へ戻る。なるほど、こちら側は藪がなく、ここを登ってくれば楽だっただろうと思われる。林から藪に入るとほぼ同時に、藪の右手の方から、他チーム(シャラシャラ)の声がする。彼らの闘争心を刺激しないように、音を立てないようにしながら登山道へ。
 登山道にでて、長九郎の方へ少し走ると、大会スタッフがいた。スタッフに「後ろのチームが迫っているよ」と脅かされて、道を急ぐ。暫らく歩くと向こうから大会コーディネーターの白石さんがやってきた。「3位のチームがすぐ後ろにいるよ」とまたしても脅されて先を急ぐ。少し進むと平坦で開けた道に出る。気持ち良い道だったので「この辺りを、『天使の散歩道』と名付けよう」などといいつつ小走りでかけぬける。『天使の散歩道』を過ぎると次はアップダウンが断続的に続く。アップダウンもさることながら、この辺りは雨で地面が滑りやすくなっておりスピードが上がらない。先を通った人達の足跡もところどころ滑っている。何度かすべって転び落ちそうになりながらコントロール17へ向かう。
 そのまま登山道を進んでいくと、分岐が現れ、そこを左に上っていくと33番ポストとコントロール17が見つかった。コントロールを取ると、菊島が「ザックのポケットに入っているカフェインの錠剤を取ってください」というので、ポケットから取り出して、菊島に渡す。彼女は一粒のんで、「中原さんも、飲む?白石さんもカフェインを取るとパフォーマンスがあがるっていっていたよ」というので、普段は刺激物は極力口にしないようにしているが、ためしに一粒飲んでみる。パフォーマンスと一緒にアホーマンスもあがらなければ良いが・・・。
 コントロール17から少し歩くと、林道にでる。林道には何人かのスタッフがいたのでチームの番号を告げ、またしても「後ろのチームが・・・・」と脅されながら、超苦労、でなくて長九郎山の山頂へと向かう。ここからは後ろのチームに追いつかれない様に少々ペースアップしつつ登る。途中から正人が先行し、そのうち姿が見えなくなった。流石に体力があるよなあ、と感心しつつ頂上までたどり着くと、正人がすでに山頂の塔の上にあるコントロール20を取っていた。
 水分と食物を少々とって、山頂を後にする。次のコントロールは地上5mの木の上にあるらしいので、どんな木だろうと木登りする姿を想像しつつ、道を下る。10分しないうちに、コントロールの隠されている場所へ到着。「どの木かなあ」と上を見ていると、ありました!なんと、サルスベリの木の枝にかけてあります。これは、裸足にならんと登れないかなあ、と考えていると、正人がとなりの木に登って、そこから手を伸ばしてコントロールをとるという案を考えた。早速その案を実行したが、途中で枝が折れてしまい木の上から落ちてしまった。怪我はないか?と思ったが擦り傷で済んだ様子。それでも、怪我が怖いので、菊島と二人で「とばそうか?」といったが、正人は「いや、取ります」との返事。どうやってとろう、と考えていると正人がシュリンゲ(沢登用のロープ)をどこかに引っ掛けられないかと言い出した。それを聞いて、沢登の時に他人の肩を踏み台にして岩を登った経験を思い出した。(あとで、白石さんがブリーフィングの時に「肩車でもして取ってください」といっていたことを思い出した。)そのことを正人に告げると「じゃ、肩車してください」というので、木の下で正人を肩車をした。正人は肩車からそのまま肩の上に立ちあがり、枝にシュリンゲを引っ掛けてさらに上の方にある枝に手を伸ばす。少々辛そうな場面もあったが、なんとか枝の上で体を安定させることができ、コントロールをゲット。もたもたしている間に後ろのチームに追いつかれないかとドキドキしたが、結局追いつかれなかった。
 コントロール21を取った達成感に浸りつつ、山道を下る。道も下りになったし、気分的にもすこぶる良くて、快調に飛ばす。道を下りつつ、大きな岩の下にあったコントロール21をゲット。次の崖の上にあるコントロール22は、崖を巻いて登り、上から手を伸ばしてゲット。ますます快調になってきた。足も体も気持ちもすべて軽く感じる。懸念していた膝痛も問題ない。このまま完走できそうな気がしてきた。

 登山道を下り切って、とうとうキャニオニングセクションについた。スタッフの方が何人か待っている。「さて、準備を・・」と思ったら、スタッフの方が「非常に残念だけど、時間切れです」。
 「ええっ!」。ああ、なんてあっけない幕切れ。時間のことはすっかり忘れていた我々であった。しかし我々も残念だったが、時間切れを告げるスタッフも残念だったろうなと思うと、自分たちの力不足を嘆くしかない。
 汗と土で汚れた姿のまま、スタッフの車に乗せていただく。一般チーム(サロモン・イーストウィンドを除いたチーム)の中で一番だったという達成感と、完走できなかったという悔しさで微妙な気分である。しかし、車でゴールまで送ってもらいつつ、まだまだかなりの距離が残っていることが分かり我々の実力では完走は無理だったことを再認識した。

 ゴール間近まで来ると、サロモン・イーストウィンドが土手の上を走っていた。その場所から、ゴールまではまだまだ距離がある。スタッフの方が「時間ギリギリかな」と言っていた。ところが、先に車でゴールに到着すると、暫らくして「イースト・ウィンドがきたぞ!」の声。さっきのところから相当の距離があった筈だが。流石は日本でトップのアドベンチャーレーシングチームである。3人は最後は川を横切ってきて、ゴールへ。結局完走できたのは田中正人さんが率いるイーストウィンドのみだった。イーストウィンドのゴールに前後して、他のチームも次々にゴールまで車でやってきた。こうして長いレースも幕を閉じようとしていた。

 


レース終了直後↑

<表彰式>

 表彰式は松崎海岸で行われた。日が落ちるのに合わせて、川からカナディアンで海へ下る。海岸へ上陸する順番で出発したが、ユナイトクロスは一般参加チームで一番だったので、先頭を切らせてもらった。海に着くと、暗い海の上でしばらく待機し、上陸の合図を待つ。暫らくして、ユナイトクロスの名前が呼ばれた。上陸の合図だ。カヌーを漕いで浜辺に乗り上げ、カヌーをチームの4人で持ち上げて、ゴールゲートの方へ。和太鼓の勇壮なリズムと手筒花火の火花の中に迎えられて、表彰式が始まった。
 他のチームも次々に上陸してくる。手筒花火がオレンジ色の火花を高く吹き上げ、時々、爆音をあげて火花を散らし終える。花火からは20mくらいは離れているが、爆音が上がるたびに、顔に爆風を感じる。和太鼓の響きも我々の気持ちを盛り上げてくれる。


 全チームが上陸すると、表彰が始まった。まず3位に入賞したインフィニティから順番にステージの方へあがり、次に2位のシャラシャラがステージへ。シャラシャラの長谷川さんは、この段階で誤ってシャンパンを開けてしまい、慌てていた。続いて、イーストウィンドがステージにあがり、最後にユナイトクロスがステージへ。ステージに上がりつつ、なんだか久しぶりに照れくさい感じがした。

表彰式→

 ステージに上がると、ローズマリーで出来た冠をかぶせてもらい、シャンパンを受け取った。正人が、「これ中原さんがやってください」とシャンパンを譲ってくれた。少し気が引けたが、正人の気持ちをありがたく受け取って、シャンパンを開ける役目を引き受けることに。こんなこと、恐らく最初で最後なんだろうなと思いながら。 

さて、いつごろ開ければいいんだろう?と考えていたら、誰かが、「(コルクをとめている)針金をはずしておいたら?」と言った。それもそうだな、と思い、針金を緩めたらとたんにコルクが外れて、シャンパンが吹きだした。「わっ!」と声をあげてコルクを押さえようとしたが、時すでに遅し。中身が吹きだしてくる。長谷川さんのことを笑ったら自分が同じ目にあってしまった。どうしよう?とあせっていたら、別の誰かが「もう、やっちゃえ!」といってくれたので、その言葉に乗じて、ボトルを激しく振り、親指をボトルの口から離すと中身が猛烈な勢いで吹きだした。それを合図に、シャンパンをかけあいが始まり、そして、ほぼ同時に花火のナイアガラの滝が始まった。シャンパンが入ってヒリヒリする目を激しく瞬きしつつ、視界をオレンジ色に染めて燃えている火花に見入った。


シャンパン↑

 今回は色々な制約の中でレース開催まで漕ぎつけた松崎の人達の熱意が伝わる良い大会でした。選手が大きな怪我もなく、しかも楽しみながらレースを終えることができたのは、やはり開催者側の熱意があったからに他ならないと思います。宣伝がギリギリまで出せず、参加チームが少なかったり、コースを短くせざるを得なかったりといった不満が開催者側にはあったと思いますが、それでも、無事に開催されて、すごく良かったです。我々ユナイトクロスのメンバーはもともと伊豆アドベンチャーレースのテストランから、アドベンチャーレースという競技に足を踏み入れましたし、カヤックも伊豆の海で覚えました。レースがなくても、伊豆の自然を楽しみに、たびたび伊豆に足を運ぶのは間違いありませんが、やはりまた来年も伊豆でレースをやって欲しいと(勝手ながら)思っています。

 また、遊びにきます。



おまけの写真

 

 ←ジョン・ハワード氏と
(中原さん憧れの宮内さんと)

もらったカヌー→
ぜひ載りに行きたい。

 

シャラシャラ↑
(南海先輩のモデル立ちに注目!)