『意志を無くした遺子は石となる』
自分の生き方を自分で決めて それを誇りに思うこと
私も そうなれるかしら?
いえ そうなりたい
ものまね士、というのは一体誰が始めたのだろう。
ティナは、ふと思った。
自分の意思で生きろと皆は言う。それならば何故、あのゴゴという人は、「ものまね」をするのか。
ティナは、飛空挺の端の方で突っ立っている彼を見た。
聞きたい事はたくさんある。けれど、人の事をとやかく聞き出すのは良くないと、エドガーが言っていた。
いやむしろ、自分の質問に答えてくれるのかさえわからない。
「あの・・・・」
ゴゴはティナの方を見た。・・・ように思う。その目は頭を包む大きな布の影で、良くは見えなかった。
「ものまね士・・・ですよね」
緊張して声が掠れた。こんなことは初めてのような気がする。
「ものまね士、だ」
ティナのセリフと同じ様な調子で、彼は答えた。
聞きたい事は山ほどある。でもティナは、あえて一つに絞った。
「どうして、ものまね士なんですか?」
ゴゴは黙ったまま動かない。質問の意味が分からないのか、答えたくないだけなのか・・・
「だって、世界を救うなんて・・・命懸けでしょう?それを、真似してみようなんて簡単に・・・」
その言葉を最後まで聞かず、ゴゴは口を開いた。
「確かに俺はものまね士。常に誰かの真似をして生きてきた。おそらくこれからもそうだ。
もしかしたらこの言葉も、誰かの真似かもしれない」
「・・・よく、わからないわ」
「周りから見たら、主体性がない奴だと思うだろう。だが―――
俺がものまね『する』か『しない』かだけは、俺が決める。これだけは揺るがない俺の意志。」
「意志?ものまね士であることが、ゴゴの・・・したいこと?」
ティナは不思議そうに、改めてゴゴの姿を眺めた。
世界のどこでも見たことのないような、黄や赤を主とした服。
そこから辛うじて目が覗いているが、人相までは確認できない。
ティナの視線の意味に気がついたのか、ゴゴは自分の袖を軽く上げてみせた。
「だからと言って、何でそんな服装なのか、と聞きたいのだろう?
例えばだ、リルムの姿をしたロックがいたら、どう思う。」
「・・・」
「可笑しいだろう。どんなに相手の動きをものまねしても、その体だけは、姿だけはものまねできなかった。
これはものまね士として最大の屈辱・・・
だから俺は考えた。それならいっそのこと、俺が誰なのか、わからないようにすればいい。
「それは・・・その変な服で、自分の特徴を隠す、ってこと?」」
「そのようなものだ」
変な服、と言ったことをゴゴは気に留めなかった。
その一方でティナは、ただ不思議な存在だったゴゴが、こんなにも考えて行動していることに少し驚いた。
「私は・・・昔、いえ、昔と言うほど前のことじゃないけど――帝国に操られていたことがあったの。
皆と出会ってから、自分で考えて行動すること、自分自身を大切にすることを教わったわ。
でもあなたを見ていると、それとは違うような気がする・・・」
「まあ、そういう人もいるだろうけどね、」
ゴゴはティナの方を改めて見た。
「人間は、いや、全ての生物はものまね士なのだよ。
君が今話している言葉はなんだい?前以って作られていたものを、真似して使っているだけではないか?
言葉だけじゃない、その動作、習慣、生活の全ては―――」
君自身が作り上げたものなど、無いに等しいのだよ」
「それなら・・・どうしてあなたはものまね士に・・・?」
ティナは先ほどと同じ質問を、違った意味で問いかけた。
「・・・人間は、ゼロから何かを作り出そうとする。
だが俺はあえて、全てを物真似することでそれに抵抗してきた。今までも、そしてこれからもそうだ」
遠くでロックの呼ぶ声がした。どうやらサマサの村につくらしい。
ティナはそれに短く返事をすると、ゴゴに小さく頭を下げ、声の元へ駆け出した。
今度こそティナの話を書こうと思っていました。しかもギャグではなくシリアスで。
私はいつも、中心となる2人を決めて話を書くのですが、今回は悩みました・・・
帝国に操られていたティナと、ものまね士のゴゴ。
ゲーム上では全く関わりのないふたりを対比させてみたかったのですが、うまく伝わったでしょうか?
題名は珍しく国語辞典を引いて考えました。「自分の気持ち・考えを持っていない遺児は、石となってしまった」という意味。
自分でもよくわからん・・・
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