UEFA Champions League 1999-2000
Phase 2 , Group D
Chelsea (1-2) S.S.Lazio
Stamford Bridge , London
Wednesday , 22nd March 2000 Attendance 34,260

Scorer Poyet (45min.) Simone Inzaghi (54min.) Mihajlovic (67min.)
<Chelsea>
GK De Goey
DF Ferrer , Desailly , Leboeuf (Hogh 61min.), Babayaro (Harley 73min.)
MF Petrescu , Di Matteo (Morris 73min.) , Deschamps , Poyet
FW Flo , Zola
<S.S.Lazio>
GK Marchegiani
DF Negro , Couto , Mihajlovic , Pancaro
MF Stankovic (Boksic 46min.) , Simeone , Almeyda , Nedved
1.5 Veron
Fw Simone Inzaghi (Salas 67min./Gottardi 87min.)
<Match Report>
強硬なLondonのダフ屋
Manchesterからはるばるコーチに5時間近く乗ってLondonまでやってきた目的は、ズバリこの試合を見るためにあった。Londonの知り合い宅に泊まらせてもらったおかげで、資金にはだいぶ余裕があるな、などと考えながら、3/22の夕方にStamford Bridgeへと向かった。最寄り駅はDistrict Line(地下鉄)のFulham Broadway。改札を出ると早速、ダフ屋と話して大体の相場をつかむ。高い、高すぎる。150に120?「Last Offerだ!」とか言ってやっと90!?そんな大金持っているはずもない。どんなに出しても50までのつもりだった私は、ダフ屋によってLondonの物価の高さを痛感することとなった。一応、Ticket Officeも行ったが、Man Utdでは当たり前のReturn制度もないらしい。しかもStamford Bridgeのキャパが小さいので、さらに希少価値が増すのだろう。こいつは弱ったなあ。とりあえず飯でも食って、Kick Off前になってから再チャレンジすることにした。
Kick Offの一時間ほど前になって、再びStamford Bridgeに戻ると、Man Utd-Fiorentinaで会った日本人に再会した。彼と一緒に交渉し、Kick Offの30分ほど前に、彼は(たしか)バック・スタンドの33列目の席を60で購入した。60でも、ずいぶん粘ってやっと、という感じである。しかし、それでも納得のいかない私は、再びいろいろなヤツに接触。100、90、80。こんなんばっかりだ。Kick Offの15分前に、やっとメイン・スタンド二段目の二列目という、最高の席を持っているカップルから60(これでも相当粘った)で購入。Ticketの額面からして、なんと33!高すぎる。試合が始まってはいけないので、行列をかき分けて急いでスタンドへと向かった。
フレキシブルなLazioのシステム
スタンドに入ったときには、すでにスタメンの発表は終わっていた。自分の席を見つけた直後には、すぐ選手が入場してきた。整列しているLazioの選手を見ると、FWの選手がインザーギしかいない。よしよし。私はLazioのこのかたちが好きなのだ。2トップを入れずに、1.5列目にキー・プレーヤーを配すというこのシステムが。昨シーズンは、このシステムの場合は1.5のポジションにマンチーニが入っていたが、この日はヴェロンが入った。それにネドヴェドもいる。よしよし。
ホームの金権チーム(ファンの方がいたらすいません<笑>)Chelseaは、キャプテンのワイズを温存し、スタメンは全員外国人プレーヤーだ。ワイズも好きな選手の一人なので、ちょっと残念だった。
待ちに待ったKick Off。やはりLazioは思った通りのシステム。ラインの4バックに、中盤のミドルでやや低めに構えるのがシメオネとアルメイダ。左右にネドヴェドとスタンコヴィッチ。ミドルのやや高めに構えるのがヴェロン。そして、トップにはインザーギだ。Chelseaの方は、ワイズに代わってディ・マッテオが出た事以外は変化無し。
積極的に仕掛けるのはアウェイのLazio。なにせ彼らはもう後がないのだ。このゲームが2次リーグ最終戦。Chelseaは既に前節でクォーター・ファイナルへの進出を決めていたが、Lazioはこの試合で勝たないと進めなかった。ただでさえ攻撃的なチームが、「アウェイだからドローでいいや」という考えを捨てているのだから、余計にファンとしては楽しめる。Chelseaにしても、ここで負けては2次リーグ首位の座から陥落し、クォーター・ファイナルでは他のグループの首位と当たることになってしまうために、Lazioに負けるわけにはいかなかった。そのため、ただでさえプレミアもののカードが、よりエキサイティングな試合内容となったのかもしれない。
Lazioは、インザーギ、ヴェロン、ネドヴェドらが目まぐるしくスペースに走り込み、ドリブルで仕掛け、鮮やかにワン・ツーを決めるなど、華麗なCalcioを展開する。これだけ選手やシステムが代わっても、柔軟に対応できるところはさすがだ。世界最強チームのうちの一つ、と言われるだけのことはある。
Lazioペースのゲーム展開をポイエットがひっくり返す!
Kick Off直後に、早くもLazioは決定的なチャンスを生んだ。ネドヴェドの左サイドからのアーリー・クロスを、フリーのインザーギが右足インサイドのボレーで合わせた。デ・フーイがセーヴしたが入ってもおかしくないシーンだった。それからも、ヴェロンの右足アウトにかけたミドル・シュートやネドヴェドの疲れを知らないランニング、インザーギの絶妙のポジショニングなど、本当に美しいプレーの連続だった。
とりわけ素晴らしかったのが次のシーンだ。カウンター気味にボールを持ったヴェロンがハーフウェイ・ライン過ぎあたりから、10mほど前にいたインザーギへ鋭い縦パスを入れる。インザーギは後からのプレッシャーに耐えながらワンタッチで見事にコントロールし、ババヤロ(Chelseaの左SB)が上がってフリーになっていた右サイドへスルーパス。そこへ走り込んだのがネドヴェド。ネドヴェドから折り返されたボールを、ゴール前まで走り込んできたインザーギがフリーでヘディング・シュート。これは枠を超えてしまったが、非常に機能的で美しいプレーだった。
ホームのChelseaも反撃する。中盤でのパス交換からデシャンが、右サイドを上がってきたフェレールにミドルレンジのパスを通す(本当はペトレスクあたりに蹴ろうとしたミスキック臭いが)。フェレールは中へ折り返す。ファー・サイドでポイエットが落とし、エリア外にいたゾラがプレッシャーをかわしながら左足でボレー・シュート。これは惜しくもGKが弾いてCKとなったが、こちらも鮮やかな攻撃だった。
それでもワイズを欠いたためか、Lazioが4-4-1-1にして中盤の人数を増やしたためか、中盤はどちらかというとLazioが制圧していた。従ってややLazioペースで前半は進んでいた。
また、中盤での当たりも激しく、選手達がエキサイトする場面が多かった。小競り合いからシメオネとルブフがイエロー・カードを受ける場面もあった。Lazioファンも多く、彼らも大声で威勢よく応援していた。Chelseaサポーターよりも声量は多かったような気さえする。
それでも、0-0で前半が終了するかと思っていた44分だった。ChelseaのDFからの前線へのロング・ボールを、フローとLazio DFが競り合い、クリアされる。さらに、そのボールをハーフウェイ・ライン付近でデシャンとLazioの選手が競り合い、こぼれ球となる。それを拾ったポイエットがドリブルで突進する。Lazio DFのプレッシャーのかかる直前に、右足アウトサイドで30m付近から思い切ったロング・シュートを放つ!ボールは信じられない軌道を描いて(外れたかと思うくらい右にカーヴした)、ゴール右隅に突き刺さった!Chelsea先制!総立ちとなるスタンド!ワイズに代わってキャプテンを務めたポイエットは、キャプテン・マークをヘア・バンドのように頭に巻いて喜びを表現する。当にファンタスティックなゴールだった。
そして直後に前半が終了。
ポジショニングの達人、インザーギ
私はハーフ・タイムにもフィールドを注目して見ていた。マンチーニやサラスらのアップを見ているだけで楽しいからだ。マンチーニは、私が最も好きな選手のうちの一人だ。鮮やかなテクニック、卓越した戦術眼、そしてカリスマ性。今シーズン限りで引退する(らしい)のが本当に残念だ。その彼は、サラスやボクシッチが徐々に激しい運動に変化していくのに対し、いつまでもポケットに手を突っ込んで、ダラダラとパス交換するだけ。しかし、その存在感はずば抜けていた。後半のKick Off直前になると、それまでミーティングしていたスタメン選手の中からネドヴェドを捕まえて、みっちり何か指示を与えていた。当に「フィールド内の監督」と言われるだけのことはある。彼のプレーはこの日は見ることが出来なかったが、これだけでも充分に存在感を感じることが出来た。
後半の頭から、Lazioは右サイド・ハーフのスタンコヴィッチに代えてボクシッチを投入。スタンコヴィッチは、いいプレーもときにはあったが、全体として絡めていなかったし、Lazioとしては是が非でも得点がほしかったので、この交代は当然か。それによる柔軟なフォーメーション・チェンジが秀逸だった。ボクシッチとインザーギの2トップになり、センターの1.5列目にいたヴェロンが右のサイドハーフに移り、4-4-2へと変化する。この極めて自然に移るフォーメーション・チェンジとて、選手の対応力の高さを感じたものだ。
後半は、ボクシッチを入れたLazioが前半同様に、ややペースを握る。ネドヴェドのロング・シュートや、チェルシーのバックパスのミスを衝いて、ボクシッチがGKと一対一になる場面もあった。 対するチェルシーの方は、「ファンタジスタ」ゾラがスキルフルなドリブルを披露しスタジアムを沸かせる。
しかし、幾度も幾度もアタッキングを繰り返してきたLazioがついに同点ゴールを挙げる。右サイドやや深い位置からボクシッチが数m左のシメオネにグラウンダーのパス。シメオネはダイレクトで、ファー・サイドのオープン・スペースに早いボールを放り込む。そこへものすごい勢いで走り込んできたのがネドヴェド。シュートも狙えるポジションだったが、トラップが大きくなり、ゴール・ラインぎりぎりで中へ早いボールを折り返す。デサイーと交錯しながらボールに先に触ったのは、インザーギ。ゴール・イン!かなり数の多いLazioサポは大喜び。なんで、有利なポジションを取っといてインザーギに負けてるんだよ!と思ったが、あれはインザーギのポジショニングとインスピレーションを評価すべきか。泥臭いゴールだが、相手のイヤなところをひたすら狙っていくインザーギの真骨頂とも言えるゴールだった。
その後も、エキサイティングな試合が続く。また、是非伝えておきたいのは、競り合いの際、シメオネが被害者面して「ウワーッ!」とかわざとらしく声を出した事。ファールをもらおうとしたシメオネだったが、これは冷静な審判によって、逆にシメオネがファールを取られた(笑)。本当に狡猾で油断ならない男だ。
それぞれのプレーがスピーディーでハイレベル。本当に素晴らしいゲームだ。
Chelseaを撃沈した奇跡のFK
67分、信じられないゴールでLazioがリードを奪う。ボクシッチにババヤロがスライディングした際に、手にボールが当たってしまい、LazioにFKが与えられた。ポジションは右サイド深くで、普通なら直接狙わず、誰かに合わせるのがセオリーだろう。しかし、Lazioにはミハイロヴィッチがいた。といっても不覚にも私はゴールが決まるまでそのことを忘れていたのだ。「まあ、誰かに合わせるんだろうな」などと思っていた矢先、左足で放たれたセンタリングになるはずのボールは、恐ろしい軌道を描いて、そしてあまりにもアーティスティックなために時が止まったかのように、デ・フーイをかわして遠くのサイド・ネットを揺らした。その瞬間、私は状況がつかめなくなった。シュートか?それも入った??でも、現にフィールドではLazioの選手は大喜びしているし、サポーターも気勢を上げている。そう、入ったのだ。ここまで印象的なゴールを生で見たのは初めてだった。それまで何度もバック・ラインからの鋭いロング・パスやサイド・チェンジのパスを繰り出してきたミハイロヴィッチだったが、ついに決定的な仕事をした。当に「アート」なゴールだった。
その後、攻勢に出たペトレスクが2度の決定機を迎えるも、GKのファイン・セーヴとバーに阻まれる。そして、このままLazioが逃げ切りタイム・アップ。Chelseaにとっては悔やみきれないゲームとなった。
試合後も一悶着
タイム・アップの瞬間、自分たちに転がり込んできた2次リーグ首位の座に喜びを隠しきれないLazioの選手達は、一斉に抱き合って喜びを爆発させていた。ファンも然りだ。よほどうれしかったのか、Lazioの選手達はサポーターにユニフォームを投げてプレゼントしだした。そこで一悶着あったのだ。一人のオヤジのファンがそれをもらおうとして、フィールドに入ってしまった。即座にセキュリティに羽交い締めにされたのだが、そのやり方があまりに刺激的だったのだ。二人掛かりでオヤジを捕まえると、地面に叩き付けて腕をひねり挙げた。それを見て、今度はヴェロンが怒ってセキュリティに突っかかる。慌ててチーム関係者が止めに入ったが、試合後ももめるなんて。
スタジアムを出ると、沢山のLazioサポが気勢を上げていた。私は一人のオヤジを捕まえ、「Congratulations!」と声をかけて握手を求めた。その腹の出たオヤジは、Motorolaの携帯を片手に一言。「グラッツェ」。
ビューティフル・ゲーム
この試合は、今回イギリス滞在中に観戦した6試合の中でもベスト・ゲームだった。両チームとも非常にハイレベルでエキサイティングなゲームを披露してくれた。
まずChelseaについて。ChelseaはDFの堅さが評価されているようだが、この試合を見る限りではそれは誤りだ。決してDFは強力であっても最強ではない。まず連携が悪い。特にババヤロは、攻撃参加のタイミングやDFとしての厳しさもまだまだだ。もちろん才能はあるけれど。中盤はLazioの中盤にはどうしても見劣りした。さらにワイズが出なかったのも敗因の一つではないか。彼が出れば、もう少しLazioの中盤でのコントロールを押さえることが出来たのではないかと思う。
Lazioは、いままで散々書いてきたとおり、素晴らしいオフェンスを持っている。課題はDFか。それでも、これくらいのレヴェルになると勝負を分けるのは本当にわずかな要素なのだな、と改めて思った。あのFKが決まっていなかったら、Lazioはクォーター・ファイナルに進出できなかったかもしれないのだ。
結局、昨日行われたクォーター・ファイナル第二戦の結果、ChelseaもLazioも敗退してしまったが、どちらも決勝に行く力は持っていたと思う。そう私が思うほど、この両チームのStamford Bridgeにおけるパフォーマンスは圧倒的だった。今後も2000/3/22は絶対に忘れないようにしなければ・・・。
2000/4/20