1999-2000 FA Carling Premier Ship

第三節

Manchester United (2-0) Leeds United

Scorer    Dwight Yorke (75,80min.)

 ベッカムのサイン入りチケットの半券

Old Trafford 1999/8/14 Attendance55000


Stats & 採点(Sunday Mirror 8/15)

 Manchester United 

GK・ボスニッチ <6> (ファン・デル・フーヴ <7>)

DF・P ネヴィル <6> , アーウィン <6> , ベルグ <6> , スタム <6>

MF・ベッカム <7> , キーン <5> , スコールズ <6> (バット <7>) , ギッグス <6>

FW・コール <6> , ヨーク <8> (シェリンガム <6>)

 Leeds United

GK・マーティン <6>

DF・ハート <5> (ハイデン <5>) , ラデベ <8> , ウッドゲイト <7> , ミルズ <6> , デュバリー <6>

MF・ボウヤー <7> , バティー <7> , キューウェル <9>

FW・ブリッジズ <6> (ホプキン <6>) , ハッカビー <5>


<Match Report>

 ジーザス!

 水曜日の試合で、チケットオフィスの前に早くから並んでチケットを定価で買うことに味を占めた私は、土曜日に行われるリーズ・ユナイテッド戦も早い時間にオールド・トラフォードに行こうと考えた。この試合のキックオフは12:00。友人と私は、メトロリンクのマーケット・ストリート駅に7:30に待ち合わせることにした。このことをホームステイ先の主人に伝えると、彼は「ジーザス」と言って胸の前で十字を切ってみせた。ユナイテッドファンの彼でも、7:30集合は狂気の沙汰に思えたのだろう。では、日本のサラリーマンの姿を見せたらどう思うのだろう?などと思いながら、試合前日の金曜日の床についた。

 土・日曜日はほとんどの店が休みになりバスの本数も激減する。このことを頭に入れて、普段よりも余裕を持って家を出発した、つもりだった。しかし、バス停で待てども待てどもバスが来ない。もう7:30まで15分しかない。そのバス停から街の中心部まで約10〜15分かかる。バスに乗ることを半ば諦めた私は、焦る気持ちを抑えて走っていこうと考えた。それでバスが拾えればいいと思いながら。隣の隣のバス停を過ぎて後ろを振り返ると、遠くからいつものオレンジのバスがやってきた。あわてて近くのバス停に戻り、左手を挙げて「停まれ!」の合図をする(こうしないとバスは停まってくれない)。ほっとしたのもつかの間、約15分遅刻した私を待っていたのは友人のふくれっ面だった。

 Cheers!ベッカム!

 チケットオフィスの前には既に10人ほどのファンが列を作っていた。30分くらい待つとカーテンが開き、前のヤツがチケットを購入しだした。と、そのとき、一台のスポーツカーが入ってきた。降りてきたのはポール・スコールズだった。私は25£を友人の手に握らせてスコールズのサインをねだる列に横入りした。現イングランド代表で、最もケヴィン・キーガン監督の信頼を勝ち取ったと言われる男は、体格はがっちりとしているものの、想像以上に身長が低い。私と同じかそれ以下だ。サインを頂戴したあと、後ろを振り返ると、友人がこの前と同じ24£のチケットを握ってこちらへ歩いてきていた。そのあと、スタム、コールらが入ってきたが、彼らは前にいた数人にサインしただけだった。ギッグスやシェリンガムに至っては、ファンの声に見向きもせずにスタジアムの中へと消えていった。

 シルバーだったかブラックだったかは忘れたが、そのフェラーリが入ってくると、ひときわ大きい歓声が上がった。車から降りてきたのは、そう、デヴィッド・ベッカムだった。その時私の近くでサインをしていたドワイト・ヨークには目もくれず、私は列の前の方にダッシュした。ガキの上から手を伸ばし、何とかサインをもらうことに成功した。すると、ベッカムはスタジアムに入ることなくサインを続けるではないか。再び友人のいる列の後方で何食わぬ顔をして待ちかまえていると、爽やか好青年ベッカムは再びサインをしてくれた。グレーのチェックのスーツに無精ひげ。間近で見ると、ブラウン管を通して見たときよりも数段魅力的だった。その後さらにソルシャイアのサインも頂戴した我々は、したり顔でゲートが開くのを待ったものだ。

 ヤングスターズ

 この日の対戦相手、リーズ・ユナイテッドは、昨シーズン、マンU、アーセナル、チェルシーのビッグ3に続く4位に食い込みリーグに旋風を巻き起こした。しかもそのメンバーの多くは20代前半で、ワールドクラスのビッグネームと呼べる選手はいない。昨シーズン18ゴールを挙げたオランダ代表のハッセルバインクはスペインのアトレティコ・マドリッドに移籍し、今シーズンは苦戦が予想された。しかし、ハッセルバインクを放出して得た資金でサンダーランドから獲得した、21歳のゴールゲッター、マイケル・ブリッジズは水曜日に行われた第2節のサウザンプトン戦で、アウェイながらハットトリックの大活躍で早速チームの勝利に貢献した。また、オーストラリア代表で21歳のハリー・キューウェルも今シーズンからは10番を付けるまでに成長した。イングランド代表監督のケヴィン・キーガンが、「彼がイングランド人だったら・・・。」と悔やんだという話は有名である。その他にも、18歳でイングランド代表入りした、センターバックのジョナサン・ウッドゲイト、同い年のアタッカー、アラン・スミス、ハート、ボウヤーなど、若手がチームの中心なのだ。これに、イングランド代表デヴィッド・バティーなどのベテランを加えたチームの陣容は、ベッカムやネヴィル兄弟などが台頭した95年のユナイテッドに似ているという声もある。ユナイテッドが足下をすくわれる可能性は十分にあるわけだ。

 曇天や雨天が当たり目のマンチェスターでは、本当に珍しく晴天の中キックオフ。ところが期待のアタッカー、ブリッジズは、わずか5分ほどでスタムに潰されて負傷退場。その後ユナイテッドの攻勢になるかと思いきや、主導権を握ったのはリーズ。左サイドハーフのハリー・キューウェルの強烈なミドルシュートが2本ユナイテッドゴールを脅かす。そのセービングの際に負傷したのか、キューウェルと同じオーストラリア人のGK、マーク・ボスニッチは20分ぐらいで退いた。その後、ユナイテッドも盛り返すが、今ひとつ決定的な場面を築くまでには至らない。ボールを持った後のユナイテッドの中盤に冴えがない。素早いコンパクトなつなぎがなく、サイドのギッグス、ベッカムも、リーズの5バックの前に活躍の場が少ない。対するリーズはキューウェルが得意のドリブルで、極東のどこかの国の船舶のように領海侵犯を繰り返すがゴールには至らない。しかし、それでも水曜日のシェフィールド・ウェンズデイ戦では盤石に思えたDFスタムを数回かわしての好プレーだけに、キューウェルの存在感は際だっていた。今ひとつ波に乗れないユナイテッドだったが、前半終了間際には、バックラインの裏へ飛び出したベッカムにカウンターのロングボールが通った。右45度でキーパーと一対一となったベッカムだったが、あっさり放ったシュートはバーを遙かに超えていった。

 決定力の差が明暗を分けた

 後半に入り、しばらくは前半のように一進一退の攻防が続いた。しかし、ついに本調子ではない攻撃陣に業を煮やしたセンターバックのヤープ・スタムがドリブルで突進。ハーフウェイラインを越えても突進を続けるスタムだったが、リーズのディフェンス陣に潰されると、ユナイテッドの最終ラインでボールを待っていたのはキューウェルだった。一気にロングボールがキューウェルへ。うまくトラップし、詰めてきた二人のバックスをかわしたキューウェルは、キーパーと一対一。角度は右45度。前半のベッカムよりもゴールに近い位置だった。絶体絶命のユナイテッド!グラウンダーのシュートは前に出てきたファン・デル・フーヴをすり抜けてゴールマウスへ。しかし、その後に待っていたのは、リーズサポーターの歓喜ではなく、「カン!」という乾いた音だった。ポストに救われたユナイテッド。頭を抱えるキューウェル。この場面がこの試合のキーポイントだった。

 その後、猫背の右サイドバック、フィル・ネヴィルのオーバーラップからゴール前に挙げられたボールに、ドワイト・ヨークがピンポイントでヘディングを合わせる。首でひねりを加えられたボールはゆっくりとゴール左過ぎに収まった。それまで終始オールド・トラフォードを包んでいた重苦しい雰囲気は、一瞬にして解き放たれたのだった。Yeahhhhhhh!誰彼かまわず、おやじ達ととりあえず抱き合う!75分目にしてやっとゴールマウスがこじ開けられた。さらにその5分後、左サイド深くで得たフリーキックを、ベッカムがピンポイントでニアで待つヨークへ合わせる。ボールが再びヘディングによってネットを揺らす。どちらかと言えば不利な状況にあったユナイテッドが、わずかなチャンスを活かして2-0。その直後、リーズはキューウェルを下げる。キックオフの時にはあれだけ晴れていた空が、そのときには土砂降りに変わっていた。

 翌日、リーズ行きのコーチ(長距離バス)に飛び乗った我々は、バスターミナルで買った「ミラー」紙のマン・オブ・ザ・マッチが、敗れたリーズのキューウェルだったことに気づいた。キューウェルに魅せられたのは我々だけではなかったのだ。

 1999/12/12

 

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