Scorer Roy Keane(35min.)
GK Bosnich
DF G・Neville , Stam , Silvestre , Irwin
MF Beckham , Butt , Keane , Scholes(Sheringham) , Giggs
FW Solskjaer(Yorke)
<Match Report>
千駄ヶ谷駅の改札を抜けると、そこには日本代表の試合を軽く超える数のダフ屋達がうごめいていた。そして、露天の数もいつもより多い。さらに、鮮やかなグリーンのユニフォームを着込んだパルメイラスサポーター達。むうう、パルメイラス侮りがたし。
スタメン発表のあと、驚きの全くないユナイテッドファンはいなかったのではないか。登録上とは言え、FWはライアン・ギッグスとオレ・ソルシャイア。ギッグスのFWなど、5年間くらいなかったのではないか。もしくはギッグスではなくてスコールズか?と、となりのオヤジとまたトーク。
後半、ソルシャイアに不満を募らせたファーガソンは、ドワイト・ヨークを投入。ヨークのキープ力やポジショニングの妙により、前半よりも、ユナイテッドは前線へとボールをフィードできるようになった。パルメイラスは、横浜フリューゲルスでプレーしていたエヴァイールを入れて対抗する。さらに後半30分頃にはテディ・シェリンガムを投入。スコールズが抜けて、ユナイテッドの中盤が薄くなったことにより、両チームともゴール前での攻防が多くなる。少ない人数で、的確なポジショニングと正確なフィード、素早い走り込みでパルメイラスゴールへと迫るユナイテッド。中盤でのゆっくりとしたリズムから、一気にスピードアップして中央突破やサイド攻撃を仕掛けるパルメイラス。決定的チャンスは両チームともあったが、ゴールには至らない。特に、あれだけ非難の的となった、GKのボスニッチのファインセーブの連発に、ユナイテッドは救われたと言っても過言ではない。結局、試合は1-0で終了。トップパフォーマンスとは言い難いユナイテッドだったが、パルメイラスの決定力不足とボスニッチのファインセーブに救われたこともあり、「とりあえず1月まで」クラブ世界一の栄冠を手に入れた。MVPはボスニッチかキーンでもいいと思ったが、先制点の見事なお膳だけをはじめ、持ち前のスピードを活かしたドリブルやスペースへの走り込み、さらにディフェンスと、センセーショナル(ちょっと言い過ぎかな?)なプレーを披露したライアン・ギッグスが獲得した。
前半、結局チャンスにはならなかったものの、ギッグスのクレバーな一面をかいま見たシーンがあった。(ユナイテッド側の)中盤左サイドで、パルメイラスの選手が、ドリブルでギッグスをかわしたのだが、ギッグスはあえてその選手の後を追わなかった。パルメイラスの選手がギッグスを抜いた際のボールタッチがやや大きくなったからだ。そこへアーウィンがサポートに入るのを確認したギッグスは、全速力で前線のスペースへと飛び出していった。そして、アーウィンがパルメイラスの選手からボールを奪い、ギッグスへのミドルレンジの縦パスが通ったのだった。ギッグスとアーウィンでその選手をサンドウィッチすれば、確実にボールを奪うことができただろうが、それではその後の攻撃に遅れが出る。逆に、もしアーウィンもパルメイラスの選手に抜かれていたとするならば、ユナイテッドは大ピンチを招いていた。ギッグスはリスクを負ってオフェンシブな選択を瞬時に行ったのだ。攻撃にはリスクがつきものだ、とよく言われる。フランスワールドカップにおいて、日本代表の攻撃を見ていて点が取れる気がしなかったのは、得点するために負うべきリスクから逃げていたからではないか。と、そんな考えが頭をよぎった(ある作家の受け売りのようだが)。ギッグスにとってはごく当たり前のワンプレーかもしれない。しかし日本人の私にとっては、きつい説教のようだった。
今回のトヨタカップに出場した選手の中で、間違いなく最も注目を集めた選手はユナイテッドのベッカムだった。しかし、そのベッカムはトヨタカップでは、期待されたほどの働きを見せることはなかった、と言われる。ユナイテッドの生命線とも言える両サイドのサイドハーフ、ベッカムと、そしてMVPを獲得したギッグス。何が二人を分けたのか。
試合の内容以前に、日本人のファンがベッカムに対して抱いていたイメージと、実際のベッカムのプレースタイルとの違いというのも大きいだろうが、ここではそれはカットしたい。
結論から先に言ってしまうと、ベッカムとギッグスの明暗を分けることになったのには、大きなふたつの要因がある(はたして断言していいのか?)。ひとつは、ユナイテッドのプレッシングが甘かったことによるもの。ヨーロッパ最強の声もあるコール&ヨークの2トップで、アレックス・ファーガソンがより積極的にしかけたならば、前線からの激しいプレッシングによって、より高い位置でボールを奪うことが可能になったはずだ。低い位置でボールを奪ったとしても、ベッカムとギッグスの両サイドは相手ゴールまでの距離が遠すぎたし、トップがソルシャイア一人では、なかなか前線への展開も望めない。そういう状況であれば、スピードのあるギッグスと「貴公子」ベッカムが、たとえそれぞれが同じ場所でボールを奪ったにしても、相手ゴールへの展開が開けるのはギッグスの方ではないか。そして、もうひとつの要因、それはパルメイラスの強力な左サイドバック、ジュニオールの存在だった。パルメイラスの両サイドバックが、ユナイテッドのサイド二人につく場面が多かったのは明らかだが、ジュニオールの攻撃参加は、ベッカムをユナイテッドのバックラインの方まで追いやるのに非常に効果的にだった。パルメイラスの右サイドバック、アルセもオーバーラップする場面があったのは確かだが、ジュニオールにくらべればずいぶん見劣りしたものだった。したがって、パルメイラス側の事情からも、ギッグスの方がチャンスが多い可能性が高かったというわけだ。また、本来ならダイレクトパスを小気味よくつないでいくスコールズが、サンパイオとポジションが重なる場面も多かったのも要因の一つだろう。さらにキーンがバックラインに戻ってディフェンスする場面が多かったことも。
しかし、それでもベッカムのパフォーマンスが最悪だったとは思わない。むしろ、ベッカムのような選手でも自陣深くにひいてディフェンスし、そして全速力でオフェンスにまわらなくてはいけない、ということを日本人に示した意味は大きいと思う。
1999/12/23
(これはトヨタカップ観戦直後に制作し、一部の友人にメールで送ったものを、加筆修正したものです。)