EURO 2000

Portugal (3-2) England

Scholes (3mins.) , McManaman (18mins.) Figo (22mins.) , Joao Pinto (37mins.) , Nuno Gomes (59mins.)

五年に一度の名勝負。生涯最高の試合? - ポルトガルのコンダクター、マニュエル・ルイ・コスタ。

Group A , First Match Day 

Philips Stadion , Eindhoven, Holland , June 12 - 20:45


Portugal

GK  1.Vitor Baia

DF  14.Xavier , 5.Couto , 2.Jorge Costa , 13.Dimas

MF  4.Vidigal , 17.Paulo Bento , 7.Figo , 10.Rui Costa (16.Beto 85mins.)

FW  8.Joao Pinto (11.Sergio Conceicao 76mins.) , 21.Nuno Gomes (19.Capucho 91mins.) 

England

GK  1.Seaman

DF  2.Gary Neville , 5.Adams (6.Keown 82mins.) , 4.Campbell , 3.Phillip Neville

MF  7.Beckham , 8.Scholes , 14.Ince , 11.McManaman (17.Wise 58mins.)

FW  9.Shearer , 10.Owen (Heskey 46mins.)    


 イングランドが立て続けに2ゴール

 今大会で代表からの引退をほのめかしているアラン・シアラーのヘディングをバイアがキャッチする。それが、おそらくこの五年間で「最もスペクタクルな」と言えるくらいのゲームの幕を上げた。

 両チームとも堅さは見られない。ボールを多く支配し、中盤で目まぐるしいポジション・チェンジとショート・パスによって得点を狙うポルトガル。ボールを奪うと一直線にロングパスをシアラー、オーウェンに通そうとするイングランド。イングランド・サポだが、ルイ・コスタファンでもある私は、いささか複雑な気分で戦況を見つめた。

 3分。あっさりイングランドが先制点を挙げてしまう。左サイドを上がってきた左SBのフィル・ネヴィルのセンタリングが右サイドまで流れてしまう。それをサイドラインぎりぎりでベッカムが追いつくのだが、マークに付いたDFが詰めてこないのを見るや、ルックアップして鋭いセンタリングを放り込む。その視線の先にはするすると上がってきていたスコールズがいた。ピンポイントで合ったクロスをどフリーでヘディングし、あっさりとイングランドに先制点が転がり込んだ。ニアとファーには、それぞれイングランドOFとポルトガルDFがワンセットずつになっていたが、センターはエア・ポケットになっていた。スコールズの得意の二列目からの飛び出しに、ベッカムがピンポイントで正確に合わせた「ユナイテッド・コンビネーション」で気分は早くも上々だ。

 ポルトガルとて押されているわけではない。ルイ・コスタが華麗にチームを操り、ジョアン・ピントやフィーゴらがそれに絡む。さらにSBのザビエルが果敢にオーヴァーラップし、FWのヌーノ・ゴメスはDFラインの裏をギリギリのタイミングで窺う。前評判通りの創造性溢れる攻撃。右からのクロスをジョアン・ピントがヘディングで合わせたシュートは決まっていてもおかしくなかった。

 しかし18分にはなんと2-0になる。イングランドの右サイドでベッカムとオーウェンがパス交換。リターンを受けてDFを振り切ったベッカムが一点目よりも深い位置でセンタリング。ニアでは一点目同様、OFとDF(スコールズとザビエル)がワンセットになっていたが、ファーサイドにはまたもや二列目から飛び出してきたマッカがフリーになっていた。落ち際をハーフ・ボレーで上手く叩いて2-0!Yahhhhh!!やった!マッカ君が決めてくれた。あまりにも早く点差が開いたことで、むしろ試合がだらけるのではないかと要らぬ心配をしてしまったほどだ。ポルトガルは二点ともベッカムにスペースを与えたことによって喫した失点。さらに二列目の選手の飛び込みに対しても、全くといってよいほどケアできていなかった。

 イングランドは懸案の左サイドはマッカで行けそうだ。DFもしっかりこなし、センターにも果敢にポジション移動していくマッカ君は今までよりも格段に頼もしく見えた。また、最近はもっぱら不甲斐ないプレーを見せていたシアラーも右サイドに流れる動きや、後方からのパスのくさびとしてしっかりと機能していた。ベッカムもマッカ同様センターに流れたり、二点を演出したセンタリング、効果的なサイド・チェンジなどで見事にチームに貢献していた。フィル・ネヴィルも相変わらず果敢にオーヴァーラップし、左サイドを深くえぐっていく。前半は、「なんだよ。左サイドなかなか行けるじゃん」、という感じだった。

 フィーゴのマジカルなロングシュートが流れを変えた

 逆転はこれで厳しいかと思われたがポルトガルもこのままでは終わらなかった。失点後まもなくの22分。センター・サークル付近でボールを受けたフィーゴがオープン・スペースをドリブルで駆け上がる。そしてDFラインが近づき、アダムスがアタッキングしてきたところで思い切りよくロング・シュート!なんと信じられないことに、ボールはアダムスの股を抜いてゴール右上に突き刺さった。一歩も動けないシーマン。アダムスのヒールに当たって若干角度が変わったとは言え、素晴らしくファンタスティックなゴールだった。「もう一度やれ」と言われてもさすがのフィーゴも出来ないだろう。これが、もう沈むのかと思われたポルトガルを一気に蘇生させることになる。

 イングランドはポルトガルのボール廻しを警戒してか、オーウェン、シアラーも自陣に戻ってプレスを掛ける。それでもなかなかボールを奪うことは出来ない。むしろボールを奪いに飛び込んでかわされるのを恐れてか、なかなか積極的にはプレスを掛けられない。しかし一度ボールを奪うと、ポルトガルは多くの選手が上がっているのでベッカムからのロングパスがチャンスに繋がる。またスコールズのゴール前への飛び出しも光る。チームの出来は決して悪くない。

 それでも37分にはポルトガルに同点ゴールを喰らった。ポルトガルが右サイドでボールを廻す。ルイ・コスタから左のフィーゴへ。フィーゴがドリブルのそぶりを見せただけで、インス、フィル・ネヴィル、スコールズがプレスを掛けてくる。そしてフィーゴの存在感によって、それまでルイ・コスタをケアしていたスコールズの意識が一瞬フィーゴへ行ってしまった。これが勝負の決め手だった。フィーゴはルイ・コスタへリターン・パスを返す。ルイ・コスタにはセンタリングを上げるだけのスペースと時間が与えられた。これはほんの一瞬でほんのわずかなスペースであって、スコールズにとってはミスとは決して言えないほどのものだったが、ルイ・コスタにとってはこれだけで充分だった。5mほどドリブルで進むとルック・アップし鋭いセンタリングをニアに放り込む!有利なポジションだったキャンベルの鼻先に飛び込んできたのがジョアン・ピントだった。首を思い切りひねりながらなんとか当てたボールは、左のポストに当たってゴールに吸い込まれた!信じられないような一瞬の得点だった。見事、という言葉以外には表現しようがない。わずかな隙を活かしたルイ・コスタの冴え渡るテクニックと、彼とジョアン・ピントとの「あうん」の呼吸の産んだファイン・ゴールだった。あれではDFはどうしようもない。敵ながら天晴れ。

 両チーム共に激しいポジション・チェンジを繰り返し、素晴らしい得点の産まれたスペクタクルな前半戦はここで終了。

 マッカの負傷、そして決勝点

 後半、ケヴィン・キーガンはオーウェンに代えてエミール・ヘスキーを投入。たしかにオーウェンは今ひとつ見せ場がなかったが、ここでのヘスキー投入には疑問が残る。オーウェンは89分死んでいてもワンチャンスをモノに出来る選手だ。一方へスキーはまずまずのスピードはあるがオーウェンほどではなく、そしてなによりも得点能力が低い。前半だけでオーウェンの「キレ」を捨てたのには、「う〜ん」という感じがした。まあ、ヘスキーは余り好きではないという個人的な理由もあるけれど・・・。

 そしてイングランドにとって正に痛恨だったのがマクマナマンが左膝を負傷してしまったことだ。55分あたりにルイ・コスタをマークした際に靱帯を痛めてしまったようなのだ。担架で外へ出され一度はフィールドへ戻ったものの結局ダメ。やっと懸案の左サイドに目途が付いたと思ったら、そのマッカが負傷してしまった。代わって出場のワイズも期待できるはずもない。そもそも彼はセンターの選手だし、短気な性格のためインターナショナルなレベルで使うのには疑問が残る。案の定、この後マッカほどのプレーは見せることが出来なかった。

 そしてついにポルトガルが大逆転となる決勝点を奪う。ハーフウェイ・ライン過ぎでボールを受けると、ルイ・コスタはインスのプレスを受けながらやや右サイドのミドル・レンジまでドリブルで持ち込む。そしてダッシュのモーションからいきなりゴール前へ身体を投げ出しながら鋭いパスを送る。なんとそこにはマーカーのアダムスから左サイド側に離れる動きでフリーとなったヌーノ・ゴメスがいた。彼は右足でワン・トラップし、慌てて駆け寄るアダムスとシーマンをあざ笑うかのように右足アウトサイドでゴールに叩き込んだ。ポルトガル逆転。またしても針の穴を通すようなパスでゴールを演出したのはルイ・コスタ。そして何回もバック・ラインの裏を狙ってオフサイドを取られていたヌーノ・ゴメスがついにタイミングとチャンスをつかんだ瞬間だった。スピードと度胸のある将来有望な選手だ。

 その後、ポルトガルのボール支配率が低下したことで、逆にイングランドは、自陣でボールを奪ってからロングパスで上がったポルトガルDFの隙間を狙うという前半のような攻めがやりにくくなる。それでもベッカムのクロスからスコールズというかたちでまたもやチャンスを創っていく。また、右サイドからのフィーゴの左足でのクロスを再びヌーノ・ゴメスが決めたかに思われたが、これはわずかにオフサイドだった。

 そして試合終了。これだけの試合をされては、イングランドが負けてもしょうがないか、という気持ちになってしまう。常に華麗で、そしてこの試合に関してはしっかり点も取ったポルトガル。あまりにも美しく散ったイングランド。五年に一度の大勝負を生で見られてよかった。負けて悔いなし。

 

 2000/6/13

 

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