55秒05
| ある数字が頭に記憶されてしまっていて、何故だかわからないが、ずーっと忘れることができなくなっている事ってありませんか? 特にスポーツを観ていてその状態に陥っている人は結構、いるんじゃないだろうか・・・ 人によっては、2時間23分14秒かもしれませんねえ。 またある人は、9秒99(ロサンゼルスのカールルイスの100mの記録でした。何故かこの数字がJUNは印象に残ってます) また、背番号の方もいらっしゃるでしょう。(23とか3とか1とか・・・) 個人的には1分35秒3(サッカーボーイという馬がマイルチャンピオンシップを勝ったときのタイム)もよく覚えています。 杉本アナが「1分35秒3、1分35秒3 恐ろしい馬ですっ!!!」と言っていたのが印象的だったので・・・。 まあ、そんな感じで、ひとそれぞれ、頭に焼きついている数字があると思います。今回はその中からピックアップ。。。 今回の表題の〔55秒05〕を見て、すぐにひらめいた方がいらっしゃったら、その方は僕と同じですね。。。 おそらくあの男のふてぶてしく、しかし頼もしく、最終的には満面の笑みで感動を与えてくれたアスリートに心を奪われた ことでしょう。あの男・・・ 鈴木大地さんである。 オリンピックという舞台がそうさせるのかどうかわからないが、一番感動して鳥肌がたった瞬間があのレースを観た時だった。当時まだ、ガキんちょだった僕の心に衝撃を走らせたスイマー・鈴木大地選手。 今回は、その時のことを回想しながら、何故あんなに興奮したのか を自分なりに検証したいと思う。 1988年9月24日(Qちゃんの女子マラソンとおんなじ日だよ) ソウルオリンピック。 100m背泳ぎ決勝。 3コースに鈴木大地選手。 この時のピリピリした雰囲気は今でも覚えてます。この時点で、JUNはこの男に非常に興味がありました。 その訳は、このレースの前の鈴木選手のテレビインタビューに答えるシーンにあったのです。 決勝前に インタビュアがこう聞きます。 「決勝に向けて何か秘策はありますか?」・・・・・・・・・・・・・ 鈴木選手は予選タイムはトップではなかったのです。 確かトップはバーコフ選手だったと思います。 つまり逆転できるの? っていう聞き方でした。 それに対して、鈴木選手「ありますよ」とにべもなく答える。 インタビュア「どんな作戦ですか?」 鈴木選手「それは秘密です。」 この問答の際の鈴木選手の表情が堪らんかったあ・・・・・つまらんこと聞くなよ。おしえられるわけないだろうが・・・・・。 そんな感じで、いかにも感じワルーで その時のツラ構えといったら最高でしたよ。。。 そのインタビューを偶然見たとき、ビリビリきましたわ。。この男・・・何もん?? いちおう知識としては知っていたので、メダル候補の選手だということは知っていたのですが、あの雰囲気は只者では なかったので・・・・・。 そして、スタートへ。。。 バサロという潜水泳法を駆使して、スタートダッシュを決めるのが彼の戦法。この日もバサロで好スタート。 しかし、バサロから浮き上がったときには彼の前にバーコフ選手がいる。 最初のターン、バーコフ先頭。ポニャッランスキー?選手(ポリャンスキーだったかなあ?)と鈴木選手が続く。 70m地点。以前、バーコフ選手先頭。鈴木選手が2番手に浮上。 しかし、残り25mぐらいから、鈴木大地選手が追ってくる。。。・・・・・NHK島村アナも絶叫してました。確か・・・。 「大地、追ってきた。鈴木大地追って来た!!!」 まさに声援に後押しされるようにグイグイ伸びる鈴木大地。。。 残り10m、5m・・・・・・。差が詰まった。。 あとは最後のタッチの差。どっちが先だあ〜〜 島村アナは「スズキダイチ〜〜 (ここに間がありました) 勝った!! 鈴木大地金メダル ゴジュウゴビョウレイゴー(55秒05) 鈴木大地金メダル〜〜〜!!!」 この実況の中、僕は最後の瞬間、鳥肌がたった・・・。というよりも寒気がするようなゾクゾクッとしたものを感じた。 もの凄い激戦だった。そして現実に鈴木大地が金メダルをもぎ取ったのだ。 電光掲示板で着順を確認する鈴木選手。近眼のため目を細めて何度も確認した。そして渾身のガッツポーズ!! どうだ!!! と言わんばかりに胸を張る。。(めちゃめちゃかっこ良かったぜえ) その後、プールの水面をプカプカ〜っという感じで天井を見上げていたっけ・・・。 何が去来してたんでしょうか・・・・・。 とてつもない感動をもらった瞬間だった。大満足!!! しかし、この後の話でこのレースの裏にひとつの大きな決意と賭けがあったことを聞き、さらに鈴木大地フリークへと導かれた。。。 ☆彼は腰を痛めていたらしかった。(その為200mは言葉は悪いが捨てていたのだ。そして、100に絞ろうという決意をしたわけだ) ☆そしてもうひとつ、予選の終了後、トップだったバーコフ選手とのタイム差、調子などを見るに、普通にレースをしたのでは勝てないことを確信する。 じゃあどうすればいいのか? 彼は自分のもっとも得意なバサロに賭けた。バサロの距離を伸ばすことでバーコフとの距離を詰めようとしたのだ。 バーコフは先行逃げ切り型。最後のスタミナには不安を持っている。 前半でバーコフの思惑よりも喰い付いていくことができたら、もしかしたらバーコフ選手は焦るかも知れない。。。 焦ることで、泳ぎに力みが生じ、最後のスタミナ比べに持ち込めればチャンスはある!! しかし、バサロの距離を伸ばせばそれだけスタミナをロスすることになる。 さらに、腰のこともあり、自分の方が駄目になってしまうかもしれない。。 これはまさに賭けだ。 しかも、普通に泳げばメダルの獲得自体は可能性が高かったわけで、何もそんな賭けに出て、獲れるメダルをフイにしてしまうのはもったいないじゃないか・・・。おそらくいろんな葛藤があったのかも知れない。 しかし、彼は、自分に賭け切った。金メダルを最後まで狙うことに賭けたのだ。 それで駄目なら仕方がないじゃないか・・・・・ そんな決意・賭けがあったのを、後で耳にしたとき、あの泳ぎが何故あんなに自分の心に響いたのか 謎はすぐに解けた。 自分を信じて賭けきれることの凄さ。 そして、実は彼自身、自分に思い込ませるためにわざと大きなことを口にしたこともあった。 と、なにかの本で読んだことがある。 自己暗示。イメトレ。 今では当たり前のことを彼は自分を鼓舞するために行っていた。すごすぎて言葉もでない。。。 真のアスリートはどういう人を指すのか? という命題を掲げながら僕はよく競技を見たりする。 いろいろな条件があるとは思うし、人によって意見も違うだろう。 しかし、これだけは言えるのではないか・・・・・ 最後まで自分を信じきれること。自分を信じることを諦めないこと。 このことだけは共通の答えではないかと思う。 僕にとって鈴木大地選手はそういう選手なのだ。 そして、シドニーの前の特番で女子マラソンの3選手が金メダル獲得を目指していると口にしているのを アナウンサーが鈴木選手にこう質問していました。 「金メダル、メダルということを口にしていますが、そればかりにこだわるのはプレッシャーになってしまったりしないんでしょうか? なんとなく心配もあるんですが・・・」 それに対して、鈴木さんはこう答えていました。 「メダル、金メダルというような感じで明確に目標を口にできるのは非常に素晴らしいことだと思います。 そして、そういうことを言える彼女たちを私なんかは不安というよりも むしろ頼もしく見えちゃいますねえ。 期待できるんじゃないですかね。いい笑顔でしたね みんな。」 おそらく日本のアスリートの考え方が以前とは変わってきていること、言うからにはやらなくちゃあいけないことを彼女たちが知っていることを 自分自身をダブらせて語っていたように見えました。 そして、それは現実になるわけですけどね。(3選手がどんな決意をもっていたかはわかりますよね) そう考えて、あの時の鈴木大地選手のふてぶてしいツラ構えを思い出すにつけ、なんとも言えずニヤケてしまう自分自身を 感じるJUNであります。 55秒05っていったら、あっという間だもんねえ。 その一瞬に賭け切った美学をその数字とともに永遠に忘れることはないんだろうなあ と再認識いたしました。 そして金メダルをとった後のインタビューで、感想を聞かれ、 「うれしいに決まってます。」と一言。 今から想い起こすとそんなシーンが堪らなく貴重に思えてきます。 そして真のアスリートが見られた瞬間でもありましたから・・・・・・。 |