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HAPPY PRAYER

「あっアリア先生、ここにいたんですか」

「?どうかしたのリーベル?」

生徒達一人一人にクリスマスカードを書いていたアリアは彼の声に顔を上げた。
ちなみに今書いているのはガウェインの分だ。
走ってきたのか息を切らしているリーベル。
妙に嬉しそうな顔で近づいてきた。

「…ずいぶん嬉しそうね」

「え、あ、そうですか?さっきやっと手品成功したんですよ〜ほら、プライマリーの皆でやるやつ。今日の夕方本番なのに全然出来なかったから…もう嬉しくて」

少々興奮した面持ちで伝えてくるリーベルに、アリアはにっこりと微笑んだ。

「良かった、ずいぶん練習していたものね」

毎年恒例のクリスマスパーティーに向けて、今年のプライマリーは余興にマジック・ショーをすることになっていたのだった。
仲のいい彼ら、特にリーベル、ライザーは他の面々よりも張り切っているようだった。
この祝日に家族に会えない寂しさをそこにぶつけていないと言えば嘘になるだろう。
そんなことを考えて、成功如何についてはアリアも気にかけていた。

「私も本番を楽しみにしています。頑張ってね」

「はっはい!…あ、先生、その舞台なんですけど飾り付け、梯子が小さいやつしかなくて届かないんですよ。用具室の鍵、事務のお姉さんに借りようとしたけど居なくて…先生開けてもらえませんか?」

「えぇ」

私も鍵は持っていますから、と立ち上がるアリアにリーベルはついていく。
用具室までの、少し暗い木製の廊下。

「…今年は、皆いつもと違うようね」

「え?」

呟くように漏らされた言葉に思わず聞き返す。
それでも一瞬遅れて理解して、リーベルは少し考えて口を開いた。

「…そうですね。ガウェインに会わなかったら…こんなに明るい気持ちでここに居なかったかもしれません。俺だけじゃなく、他の皆も。キャメ杯で、ジュニアの人たちとも結構仲良くなったし…考えてみたら日本校って、変わりましたよね。こう…全体の雰囲気が」

「そうね。喜ばしい限りだわ、皆成長しているしね」

ガチャガチャと鍵を開けて大きな梯子を取り出す。

「はい。…一人では運べないわね、私がこっちを持つから食堂まで行きましょう」

「あっありがとうございます!すいません…」

しゅんとするリーベルにアリアは笑顔でそんなことない、と告げてまた鍵を閉めた。

「あなたが一番変わったかもしれないわね。変わったと言うよりは本来の自分に戻ったと言うのかしら…きっと、おばあ様も喜んでいらっしゃるわ」

その言葉に、いかに今まで自分が心配をかけていたかを感じてリーベルは申し訳なく思った。
そのときは自分のことでいっぱいで、先生の心遣いなんか全然気付かなかったけど。
思い返してみれば気にかけていてくれたんだと思う。

そりゃ、昔からずっと、好きだけどね。

食堂に梯子を置いて周りを見渡すと、何でか他の面々も居なかった。

「あれ?何処いったんだろう…あ、先生!」

そのまま行ってしまおうとするアリアを慌てて引き止めた。


ふーん、リーベルって器用なのねー。えらく可愛いじゃんソレ
おばーちゃんがこういうの好きだったから俺も覚えちゃった。それだけだよ
ううん、センスの問題ッしょ?イイ感じだと思うよ。売りモンみたい


テーブルの端にあるものを見て祐美子との会話を思い出して、ちょっとした手品をする気になった。

「コレお礼です。どっちか手、出してください」

アリアは、す、と左手を差し出した。

「いったい何を?」

「手品、練習した成果を見てもらおうと思って。」

おもむろに取り出したハンカチの表裏を見せて、仕掛けがないことを確認させる。
アリアの手を自分の手に乗せて、反対側の手でふぁさ、とハンカチをかけて見えないようにした。

「行きまーす。ワン・ツー・スリー、はい!」

「…まぁ」

今までより一段高い驚きの声に、リーベルはへへ、と頬を染めて笑った。
小指にきらめく、ビーズで出来た可愛らしいリング。
かなり細かいガラスの粒は花をかたどっていた。

「可愛い…手作りね?」

「僕が作ったんです…今それしかないんですけど。さっき祐美子がアクセサリーの話色々してくれてて、左手の小指に指輪してると幸せが逃げていかないでたまるとかそういう話があるらしくて。で、ピンキーリングは初めて作ったんですけど、良かったらどうぞ」

もうこんな可愛らしいのは私には駄目じゃないかしら、と言うアリア。それでも、

「幸せがたまる、ね…私の幸せは、みんなの成長を見守ることでもあるんだけど」 と、受け取ってくれた。
仕事があるからと、外してポケットに入れてしまったけど、リーベルは嬉しかった。
アリアが去ってしまった食堂でひとり。


…先生、俺、ホントはその横の指につけたかったんですけどね。


ポケットから、おそらく薬指に丁度のサイズであろう同じモノを取り出して呟くと、またしまってにっこり微笑んだ。


「頼りがいのある、立派な男になったらね」


幼い誓いはきっと変わることはない。

この先、どんな未来でも。


20011224


余韻なくさせそうなのでコメントはこちら

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