little girl
彼の屈んだ広い背から、ぽん、と飛び降りる。
彼の大きな体にとっては、天使の羽ほどしか感じなかった、その重み。
「…しょっと!あの、どうもありがとう!」
満面の笑顔で彼女はビルフォードに礼を言う。
「いや、どういたしまして…ええと、その。」
「あ、ごめんなさい!私パーシバルよ、よろしくねビルフォード!」
さ、とごく自然にパーシバルの手が差し出される。ビルフォードもそれに応えるべく、
すぐ手を差し出したが、如何せん彼ら二人の身長差は、40センチは優に超えている。
ビルフォードはほんの少し屈み、それに気付いたパーシバルも、自ら差し出した手をあ、と口に当て、
ほんの少しかかとを上げて再び手を差し出す。そこでようやく握手が交わされた。
どちらからともなく、二人に照れ笑いの表情が広がった。それが一段落してから、
「しかし、よく私の名前を知っていたな。」
と、ビルフォードは尋ねた。彼女とはどう考えても初対面だった。すかさず、
「もちろんよ!だって貴方、前回、前々回の個人戦の準優勝者なんだもの!トリスタンに
ついでの実力者を、キャメ校生徒だったらみんな知ってるんじゃないかしら?」
当然、とばかりに感じのよい笑顔のままで彼女は答える。そういう事か、と合点が行くも、
ビルフォードの胸中には一抹の苦さも残る。
「準」優勝者、そしてトリスタンという壁。
その中に留まらざるを得ない度、次こそは乗り越えようと、日々努力を重ねてきた。
その先を見る為に。
しかし、二年連続で、それらの壁を越えることは出来なかった。
トリスタンを除けばNO・1の実力者。
ずっと付いて回ってきたその言葉を、今年は外す事が―自分に出来るのだろうか。
「?…ビルフォード?」
その声で自分の内なる思考から立ち戻った。ふと下を見ると、パーシバルが小首を傾げて
見上げている。彼が気付いたのがわかると、再びニコッと笑顔になった。
「ふふ、とにかく!これからの後半、お互いに頑張りましょうね!前半は差が付いてしまった
けど、私も優勝を目指すんですもの、これから先スコアを挽回してみせるわ!」
女の子らしい小さな手を胸の前でぐっと握り締め、宣言する。自分の言葉を強く信じ、
実現しようとする意志の強さが、その声音ににじみ出ている。
その言葉は、彼の心の中の苦さを溶かし去った。不思議と笑顔になる。
「ありがとう…そうだな、お互いベストを尽くそう。」
無意識のうちに、彼の手はパーシバルの柔らかな頭髪を撫でていた。パーシバルが驚いたように顔を上げる。
彼女の大きく見開いた目に気付く前に、ビルフォードは慌てて手を離す。
「…あ、ああ、すまない!」
半瞬後、パーシバルは握った両の拳を解き、口を押えた。くすくす、と声を立てて笑っている。
「…やだもう、そんなに子供扱いしないでよ!ひどいわ、これでも同じキャメ杯を戦う出場者同士なんだから!」
その言葉に反し、彼女の表情はやはり満面の笑みを浮かべていた。そうとわかって、すぐに
ビルフォードもつられて苦笑してしまっていた。…しばらくして、すこし離れた所から声が聞こえた。
「おーい、パーシバル!こっちさ来てみねーか?なんかおもしれーぞ!」
「え、なーにガウェイン?今行くわー!」
と、振り返って彼女を呼ぶ声に返事をする。
それじゃあ、とパーシバルはふわりと手を振って、そのまま彼女を待つ方向に駆けていく。
ああ、と手を振り返し、ビルフォードも同じアメリカ校の仲間がいる方へ足を向ける。
ひとつ深呼吸をすると、彼の想いはしばしの安らぎから、すぐ個人戦後半に向かっていた。
おしまい。
神無月忍さんのお誕生日にビルクエを贈ったらばビルパーSSを下さいました…!!
うわーいうわーい(>▽<)この可愛さ!さわやかさ!!たまりません〜。
握手する二人の掌のサイズの違いを想像するだけで悦です。
トリスタンを追うビルフォードが好きな私には嬉しすぎる作品でしたv
忍さん有難うございました!