10月号

ある産業医のつぶやき

 


若さを保つ運動-------水  泳-------

最近は全国に室内プールが普及して、誰でも気軽に一年中水泳ができるようになりました。
水泳にも、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライといった一般水泳のほかに、リズム水泳、マスターズ水泳、スキンダイビング、スキューバダイビングといった応用水泳や、腰痛水泳、リウマチ・関節障害水泳、ぜん息水泳、妊婦水泳といった水泳療法など、目的に応じていろいろな水泳があります。今この水泳が若さと健康を保つ運動として、注目を集めています。

水泳の分類

一般水泳

 クロール    背泳ぎ
 
平泳ぎ     バタフライ

応用水泳

 リズム水泳   スキンダイビング
 
マスターズ水泳 スキューバダイビング

水泳療法

 腰痛水泳    ぜん息水泳
 
リウマチ・関節障害水泳  妊婦水泳

始めに、なぜ水泳が健康のためによいのか、その効果からお話ししていきましょう。これは水泳の特性を示したものです。水泳は水温、水圧、水の抵抗、呼吸制限、浮力といった条件の中で、水平で行う全身運動ということができます。 まず水温による効果です。プールでは常に体温より低い温度の中で運動することになり、その刺激によって皮膚の表面の血管が収縮したり、拡張したりして体温調節を行います。その結果、その機能が鍛練されます。

また、水泳は、水圧や水の抵抗を利用したエアロビクスでもあります。水泳は、水圧のかかる中で呼吸しますので呼吸筋の鍛練になり、肺機能が向上しますし、水の大きな抵抗の中で泳ぐので、エネルギーの消耗量も大きくなり、健康の増強や減量のために効果的です。

エアロビクスは、酸素を体内に沢山取りこんで全身の細胞を活性化しようとするもので、水泳のほか歩く、ジョギング、サイクリングなどその一例ですが、特に水泳は手や足を同じぐらい使い、全身的に身体を動かしますので、心肺機能が高まり、全身の持久力が向上するわけです。

また、水中では浮力が働くため、骨や関節への負担が少なくなります。そのため、肥った方でも無理なく運動できますし、腰痛やその他関節障害のある人でも行える運動です。

その上、水泳は水泳で行う運動ですので、地球の重力の影響がなくなり、心臓に向かっての静脈の流れが楽になって、血液全体の流れがよくなります。そのため脚や下半身のうっ血がとれて壮快になります。以上は水泳の特性別にみた効果です。

水泳はまたストレスの解消にも効果があります。水に入ることによって通常の生活とはガラリと環境が変わり、気分転換になるからです。では次に水泳の実際について、お話ししていきましょう。

まず、水泳を始める前の注意です。一つは自分の健康をチェックすることです。特に高齢者で、運動習慣を持たない方が水泳を始める場合には、健康診断が必要です。自分の健康に異常がないかどうかを確かめてから、水泳を始めましょう。過去に何か病気があったり、現在治療中の方は、必ずお医者さんに相談してから始めてください。すべての人に水泳がよい影響をもたらすとはかぎらないからです。

もう1つは、健康のための水泳は、水に親しんだり、泳ぎの技術を習得しながら、健康づくりを目指すのが目的だということです。いたずらに競技や体力を増強させたりすることばかりを目指すのは、無理があります。自分の体力に合わせて段階的に始めるのがよいでしょう。そのためには、当日の体調を自分で記録することをおすすめします。体重、脈拍、血圧、体調などを毎回測定記録することによって、自分の健康状態を把握することができ、健康にたいしての意識もより高くなります。

次は水泳時の注意です。水泳は陸上の運動と異なり、水温、浮力、抵抗等の影響を受けますので「こむらがえり」いわゆる「つる」ということがおこりやすくなります。したがってプールサイドと水中の両方で十分にウォーム・アップを行うようにしましょう。プールサイドでのウォームアップは、ストレッチングを中心にしたもので、特にアキレス腱、肩と腰、頚などの関節を十分にのばします。そしてプールに入る時は静かに足から入り、急に泳ぐようなことはしないで、水中をゆっくり歩いたり、軽く走ったりして身体を水に慣らすとよいでしょう。

水中では、浮力のため体への負担が軽く気持ちがよい反面、バランスをくずしやすいものです。特に初心者は背の立つ所でもバランスをくずし、水を飲んだり、溺れたりすることもありますので注意しましょう。それを防ぐためには、水中での伏し浮きと、それからの立ち方を十分に練習しておくことも必要です。また、水中で息を完全に吐き出さないと、吸おうとしても肺へ空気が入っていきません。ですから息を吸うためにも、意識して吐くことを練習してください。初心者の欠点は、からだ全体が緊張してしまい、正しいバランスで浮けないことにあります。まずリラックスすることを十分練習しましょう。なお、健康増進という目的のためには、自分のペースでゆっくりと長く泳ぐことが大切です。途中に休憩を入れながらでも、無理をせずにゆっくりと泳ぎましょう。浮身などしてリラックスするのも、気分が爽快になり楽しいものです。からだを真直ぐにして浮けない場合は、ひざを曲げるとよいでしょう。その際、手首を上に曲げると浮きやすくなります。浮きにくい場合は、コースロープなどに足をかけるとよいでしょう。なお、プールによっては浮身のためにコースロープが使えないところもあります。また、このようにプールサイドに足をかけると、より簡単に浮くことができます。それでも浮いていられない場合は、ビート板を枕にするとよいでしょう。水泳後はすぐプールから上がらないで、ゆっくり泳いだり、少し水中を歩いたりして、クールダウンを行ってください。それから、水泳後に、血圧や体重の測定などの体調チェックも忘れないでください。また、水泳後1時間ぐらいたって眠くなるようでしたら、運動量が多すぎるためですので、少なくしましょう。

後に、水泳の実践プログラムについてお話ししましょう。まず、泳げない人のための水中運動プログラムです。水泳は、これまで泳げない人にとっては、全く関心のない運動と思われてきました。しかし、泳げない人でも、水中運動を楽しむことができます。例えば、水中ボビング、水中歩行、水中ストレッチング、水中ジョギング、リラクゼーションなど、いろいろなプログラムがあります。しかし、もちろん泳げた方がもっと楽しむことができます。この図は水泳の技能の習得過程を示したものです。まず、水に慣れることです。慣れてくると水に対する恐怖心も徐々になくなっていきます。それからこのように、沈む、浮く、進む、長く、速く、といった習得過程に従って練習していくわけです。段階的に1つ1つの技能をクリアし、泳げるようになれば、水泳の幅をより広げることができます。次に泳げる人のためのプログラムです。泳げるというのは、ここでは1つの種目が25m以上呼吸しながら泳げることをいいます。これは、初心者用水泳プログラムの一例です。

水泳プログラム例(初心者)

   1.25m×2(ゆっくり)
   2.25m
×4(中間に水中歩行25m)
   3.50m(できるだけ立たないように)
   4.水中ストレッチング・リラクゼーション
     (1+2+3+4)計200m、40分間

次は、中級者用水泳プログラムの一例です。

水泳プログラム例(中級者)

    1.25m×4(ゆっくり)
    2.50m
×
      
    3.10分間で約400mを目標に泳ぐ
      (心拍数130〜140/分)
    4.水中ストレッチング、リラクゼーション
      (1+2+3+4)計900m、50分間

水泳の基本泳法はクロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4種目ですが、当面の目標としては、この4種目が200m以上泳げるようになりましょう。ただし、高齢者や運動不足の人は、最初は腰に負担のかかる平泳ぎやバタフライはさけましょう。ある程度の距離を泳げるようになると、より美しいフォームで、より速く泳ぐ欲求が生まれてきます。なかにはマスターズ大会に出場しようとする人もいます。そのような場合、50mを10回といったインターバル練習をするとスピードと持久力がつきます。1回につき30秒程度休むのがよいでしょう。最後はより速く泳ぎたい人のためのプログラムです。もちろん年齢や体力のレベルによってプログラムの内容は異なりますが、一般的に週2〜4回、1回に1500m位、30〜45分の練習が、定期的にトレーニングを行っている人には、適当な量ではないでしょうか。水泳は、健康のために沢山の利点がありますが、一方では常に危険の伴う運動であることも忘れてはなりません。特にプールと違って海や川などでは、安全な場所で泳ぐなど注意が必要です。また、酒を飲んだあとや寝不足の時には、泳がないようにしましょう。特に初心者は安全に水泳が行われるよう、指導者の指導のもとで行うようにしてください。なお、プールは適切な管理をしないと、細菌などの繁殖につながりますので、利用する人も水に入る前にトイレに行き、シャワーなどで体も洗いましょう。また、泳いだ後もシャワーや洗眼をするなどの注意が必要です。以上、健康のための水泳についてお話ししてきましたが、この誰もが気軽にできる水泳を、より一層健康づくりと仲間づくりに活用していこうではありませんか。