11月号
円形吹き出し: TOKAICLINIC

 

 

 

 

HealthCare

 

 


家庭でできる健康管理

近年、中高年人口が急増するとともに、高血圧や糖尿病、がんその他さまざまな成人病の比率が高まっています。こうした成人病は多くの場合、治療が長期〜生涯にわたるため、患者さんだけでなく家族や社会にもさまざまな負担が強いられます。
そのため近年は、成人病の予防が重視されるようになり、食事その他のライフスタイルの改善に加えて、家庭での血圧や体重チェックなどの重要性が指摘されています。血圧や体重測定などの家庭でできる健康管理は、ライフスタイルの改善努力を続けるための動機づけにもなるもので、成人病予防・健康づくりへの第1歩といえましょう。
肥満の人ほど死亡率が高くなる
成人病の多くは肥満が関連しています。肥満はからだの脂肪量が増えている状態で(健康人の体内脂肪量は体重の18%程度)、放置すると糖尿病や動脈硬化、高脂血症(血液中の脂質が異常に多い状態)、高血圧などの一因になります。そのため、肥満度が高くなるほど死亡率も高くなります(図1)。

肥満の判定法では、標準体重法がよく知られています。これは、身長が150cm以上の人ならば〔(身長−100)×0.9〕、身長が150cm未満ならば〔(身長−100)〕で標準体重を求め、そのプラス20%以上を肥満と判定します。
ただし、標準体重法は背の高い人や低い人に誤差がでやすいため、最近は「BMI法」(ボディ・マス・インデックス法)がよく用いられます。この方法では〔体重(kg)〕
÷〔身長(m)の2乗〕で算出し、この値が19〜25を〔正常範囲〕(22が最も理想的)、それ以上を〔肥満傾向〕〔肥満〕〔高度肥満〕に分類します(表1参照)。

 

朝のトイレ後の体重が基本
肥満の弊害を防ぐためには、家庭で体重を測定して肥満のチェックをする必要があります。この場合、どんなタイプの体重計を使っても特に支障はありません。まず自分が使いやすい機種を選び、同じ体重計を継続使用することが大切です。
家庭での体重測定は、心不全や腎疾患などを管理するうえでも重要です。これらの疾患では、病状によってむくみの状態が変わるため、体重をg単位で毎日厳密に測定し、むくみを起こす体内の水分量を細かくチェックする必要があります。体重測定によってむくみの程度を量的に把握するのです。
これに対して、肥満チェックの場合は多少の体重変動はあまり問題にする必要がありません。成人の体重は1日のうちに300〜500gくらい変動するのが普通ですので、g単位の増減で一喜一憂せずに、長い目で見ることが大切です。
体重を厳密に測定する時は、毎朝のトイレ後の体重が基本となります。ただし、肥満チェックの場合はあまり厳密さが要求されないため、風呂あがりの時など、自分が一番計りやすい時に計っても構いません。体重を自分で計ることで、肥満管理の動機づけをすることが大切といえましょう。
高血圧になりやすい人も多い

肥満気味だったり血縁に高血圧の人がいるような場合は血圧にも十分注意する必要があります。通常、血圧は心臓の収縮時に最も上昇し(最大血圧)、拡張時に最も下がります(最小血圧)。血圧の高低は動脈壁にかかる血圧が水銀血圧計の水銀柱を何mm押し上げるかを示すミリメートル水銀柱(mmHg)という単位で表されます。

健康な成人ならば、最大血圧が140mmHg未満で、最小血圧が90mmHg未満になるのが普通ですが、なかには慢性的に最大血圧が160mmHg以上、最小血圧が95mmHg以上になることがあり、このような場合は高血圧と診断されます(表2)。

 

高血圧は、何らかの病気の影響で発生することもあります。しかし、高血圧の80〜90%は、原因がはっきりしない本態性高血圧と呼ばれるタイプです。本態性高血圧は肥満や遺伝的要素、過剰な塩分摂取その他さまざまな要因が絡んで発生すると考えられているものの、その原因はまだ完全に解明されていません。日本人には本態性高血圧が多く、患者数は1千万〜2千万人に達すると推定されています。高血圧になると、徐々に血管が損傷され、脳卒中や心筋梗塞などを起こしやすくなるので、放置しておくと危険です。
血圧は同じ条件下で継続的に測定する
高血圧は早期発見が大切ですが、そのためには家庭での血圧チェックが大きな役割を果たします。家庭用血圧計を選ぶ場合、測定値の正確さでは上腕にカフ(血圧測定時に腕などに巻きつける用具)を巻いて上腕で測定するタイプが優れており、お勧めできます。しかしこのタイプは慣れない人には操作が多少煩雑です。手っとり早く測定したい人は、指や手首で測定できる簡便型のタイプでも構いません(こうしたタイプは多少誤差が出やすい)。

血圧の測定値は、測定する時間帯、測定する環境、測定時の心身状態などによってもかなり違ってきます。どんなタイプの血圧計を使うにせよ、同じ血圧計を使って同じ部位で計るようにし、測定する時間帯や場所などの測定条件を決めて、同じ条件下で毎日継続的に測定することが大切です(表3)。

通常、血圧は午前中〜昼頃が最大になります。この時間帯に測定するのがベストですが、時間的に無理なら朝方でも構いません。夜間は血圧が下がるので(睡眠時に最も低下)、夜間の測定値だけではあまり参考になりません。ただし、夜の測定値も高いような時は、早めに医師の診察を受けてください。測定回数は1日に1〜2回とし、1回の測定で2度測定して低い法の値を採用します。

普通は、最大血圧・最小血圧とも2回めの測定値の方が低くなりやすいのですが、緊張しやすい人はその逆になりがちです。また、上腕で測る時は、2回めの測定時に腕のうっ血が起こって最大血圧が下がり、最小血圧が多少高めになることがあります。これを防ぐために2回めの測定時には事前に腕を上に挙げて、うっ血を除いてから測定するようにしてください。

体温が下がる時は要注意!

その他、体温の測定も家庭でよく行われます。ただし、体温測定は成人病などの慢性疾患より、感染性の急性疾患などのチェックが主体となります。ですから、通常は定期的に体温を計る必要はなく、急性の発熱時に計るだけで構いません。

体温計を選ぶ場合、短時間で計りたい人にはいわゆる電子式の平衡温予測法を用いたタイプがよいでしょう。このタイプは約1分で体温の立ち上がりを計り、最終的な体温(平衡温)を予測して表示します。ただし、0.2度ほど高めに出やすいので注意が必要です。体温を計る部位は、脇の下が標準的です。脇の下で計る時は脇の下へ深く差し込み、体温計と脇の下を十分密着させて計ることが大切です。口中での体温計測はミスが少ないのですが、小児の場合は事故を起こす危険性があります。また、口中での計測値は、0.3〜0.5度程度高めになります。
普通、体温は朝方低く、夕方高くなりますが、その変動幅は0.5〜0.8度程度です。1日のうちに、体温が1〜2度も変動する時は注意してください。急性の感染症では、通常は熱が高くなります。しかし、発熱よりもむしろ熱が異常に下がる方が危険です。特に、高齢者や重症の病気の場合は、平熱より1度以上下がったら危険信号といえましょう。熱が続く場合は、3〜5日程度は続けて体温を測定し、記録します。病院で受診する場合、診察時にその記録を医師へ提出すれば、貴重な参考データとなります。