ペットとの付き合い方
Q ペットから人間にうつる病気があると聞いて心配になりました。どんな病気があるのでしょうか。
A イヌやネコなど動物のいる生活は子供たちに命の尊さを教え、やさしい思いやりの心をはぐくんでくれます。また老人医療や心理療法の分野においても、動物を介しての心の健康づくり、アニマルセラピーが注目を浴びています。最近では、動物との触れ合いによって心がやすらぐだけでなく、血圧が下がるなどの身体的効果があることもわかってきました。このようにペットにはさまざまなメリットがありますが、人にうつる病気があるのも事実です。人間と動物に共通の病気ということで「人畜共通感染症」と呼ばれています。あまり神経質になる必要はありませんが、ペットを飼うにあたって心得ておきたい主な病気をあげてみます。
・狂犬病
イヌだけでなく、すべての温血動物がかかります。狂犬病にかかった動物にかまれることによって人に感染し、発病するまでの期間は平均30〜60日といわれていますが、まれに2年という例も報告されています。初期には頭痛、食欲不振、嘔吐、発熱などの症状が見られ、飲み水を怖がるのが特徴です。続いてけいれん、興奮、錯乱などの症状が現れます。発病すると100%死亡する恐ろしい病気ですが、日本では昭和32年以降は発生していません。
・トキソプラズマ病
トキソプラズマという原虫によって起こります。ネコがこの病気に初めて感染するとフンの中にオーシスト(虫の卵のようなもの)を排せつすることがあり、これが人への感染源になります。感染しても症状が出ないことが多いのですが、妊娠中の女性が感染した場合には流産したり、胎児に影響が出る可能性があるということで、一時期大きな問題になりました。しかしネコが直接の感染源になる率は低く、早めにフンの始末をすればそれほど恐れる必要はありません。心配な場合は人、ネコともに抗体検査を受け、その結果をみて対策を考えるといいでしょう。
・回虫病
子イヌに多い寄生虫病で、フンから人に感染します。回虫の幼虫がからだの中を動き回ることによって神経や目などに障害をもたらします。子イヌは2〜3カ月ごとに検便し、寄生虫が発見されたら早めに駆除してください。
・サルモネラ病
サルモネラは食中毒の原因菌で、多くの動物に分布しています。特にイヌに多く、フンから人に感染します。
・皮膚病
イヌやネコの皮膚病の原因はいろいろありますが、糸状菌や疥癬(かいせん)によるものは、人に感染する場合があります。イヌやネコのほか、家庭で飼われるペットにはウサギ、マウス、リスなどがあります。これらの動物は特に共通の感染症はなく、性格もおとなしいので、初めての人にも扱いやすいペットです。
Q ペットからうつる病気を防ぐには、どのような点に注意すればいいのでしょうか。
A 衛生面の注意をすれば、ほとんどの人畜共通感染症は予防できます。どの動物を飼う場合でも、次のことを守ってください。
ペットを清潔に保ち、健康状態に注意して、異常を発見したらすぐ獣医師の診断を受ける。
ペットにさわった後は手をよく洗う。特に子供には必ず手を洗う習慣をつけさせる。
フンは感染源になりやすいので、すみやかに処理する。
口移しはしない。ペットの病気がうつる危険性があるだけでなく、人間の病気がペットにうつることもある。
以上の点に注意すればまず大丈夫です。また近隣に迷惑を及ぼさないことも飼い主のマナー。公園などの砂場に放置されたペットのフンが問題になっています。イヌを散歩させる時は必ずフンを始末し、ネコも室内の決まった場所で排せつさせるようにしつけましょう。
Q ネコの毛やフケはアレルギーの原因になるとのこと。どんな注意が必要ですか。
A ネコに限らず、ペットの毛はアレルギーの原因になると言われていますし、ペットのフケや排せつ物がダニの餌になるとも言われます。家族にアレルギー体質の人がいる場合は、できれば屋外で飼うほうがいいでしょう。室内で飼う場合は、できるだけペットを清潔にし、住環境や掃除の仕方を工夫してください。
毎日ブラッシングをしてムダ毛を取り、2週間に1回は薬用シャンプーなどで洗います。
床はフローリングにし、毛が付着しやすく、掃除がしにくいじゅうたんは最小限にとどめます。
ソファーなどには毛の付きにくい素材のカバーを掛けます。空気清浄器や消臭剤も効果があります。
最近はペット用の空気清浄機も販売されています。アレルギーの原因は複雑で不明な点も多く、そのすべてを完全に取り除くのは不可能です。
ペットに関しても今の段階では決定的な解決策はなく、できる範囲で努力するしかないようです。
Q イヌにかまれたり、ネコにひっかかれたりした傷は小さくても危険だといいますが、本当ですか。
また日本では狂犬病の心配はないと考えていいのでしょうか
A イヌの歯やネコの爪はさまざまな細菌で汚れていますし、表面の傷は小さくても奥が深い場合があります。
体力のある大人はともかく、免疫力の弱い子供やお年寄りの場合は要注意。傷口から細菌が入って化膿し、
大事に至ることがありますから、医師に手当てしてもらうほうが安心です。確かに日本では40年近く狂犬
病は発生していません。しかし近隣の中国、韓国をはじめ世界各地で毎年発生しており、輸入動物や海外
旅行者を通して持ち込まれる可能性もあるのです。イヌにかまれた時には、そのイヌが狂犬病に感染して
いないかどうか確認する必要があ りますから、最寄りの保健所に届け出てください。こうした事故を防
ぐには、よそのイヌやネコに気軽に手を出さ ないこと。たとえ飼い主でも食べている時に手を出したり、
むやみに興奮させるようなことは禁物です。
Q 鳥や魚から人に感染する病気もあるのでしょうか。
A 鳥から人にうつる病気としては有名なオウム病があります。オウム、セキセイインコなどの鳥類から感染します。フンと一緒に排せつされる病原体のクラミディアを吸い込むことによって感染し、悪寒、発熱、頭痛など風邪に似た症状が出ます。抗生物質が効きますが、手当てが遅れれば命にかかわる危険な病気です。購入した時点で鳥がすでに感染しているケースが多いので、購入時に病気らしい症状が出ていないか、下痢をしていないか、やせていないかなど、よくチェックしてください。そしてしばらくは過度の接触を避けて様子を見ます。また、鳥類にはサルモネラ病もあります。いずれもフンの処理をきちんとすることが予防のポイントになります。魚類から直接人にうつる病気はありませんが、水槽の中にアエロモナスという細菌がいて、これが皮膚から侵入して化膿したりする場合があります。水槽に手を入れた後は手を洗うこと。手に傷がある時はゴム手袋をしてください。
Q 最近、外国からいろいろ珍しい動物が輸入されているようです。安全性はどうなのでしょうか。
A 輸入動物に関しては動物検疫制度がありますが、対象になるのは家畜伝染病予防法に基づくウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、アヒル、ウズラなどの家畜とイヌ(狂犬病のみ)だけです。ペットとなる動物はほとんどが対象外で、動物取扱業者の自主管理に任されており、必ずしも安全とは言いきれません。輸入動物の中で危険度が高いのはサル。人間に近い動物ほど共通の感染症も多いわけで、日本でも輸入ザルから赤痢菌が発見されています。特殊な病原菌を持っている可能性もあり、ペットとしては避けるほうが賢明です。野生の動物を飼うには、それなりの知識と心構えが必要です。珍しいからといった安易な気持ちで購入し、途中で放り出したのでは動物がかわいそうですし、周囲にも危険を及ぼします。最近はカラフルな小ヘビ、グリーンイグアナなどの爬虫類(はちゅうるい)がエキゾチックアニマルとして人気を集めているようです。爬虫類は鳴き声の心配がない、フンが臭くないといった理由で都会で飼う人が増えているとか。ミドリガメにはサルモネラ病がありますが、そのほかの爬虫類については今のところ人への感染症は報告されていません。ヘビなども、毒を持ったものや大型のものは、特定動物(都道府県が指定)として飼育許可が必要になります。
今のところ、登録制度があるのはイヌについてだけです。そのとき同時に行われる狂犬病予防注射のおかげで、狂犬病は国内に限れば30数年間発生していません。今後、イヌ以外の動物についても登録制度を設けようという声も少なくありませんが、制度がなくても、人とペットの両者の健康のため、定期的にペットの健康診断を行うことが大切です。それが、ペットを飼う人の最低限の責任であり、マナーだといえるでしょう。