梅雨に入ると家の中にカビが生えやすくなることはよく知られています。カビはいくつかの条件が満たされると発生しますが、梅雨時はその条件を全て満たしてしまいます。カビが発生する条件は、@カビの胞子があること、Aカビの成長を許す環境条件であること(例えば栄養分、酸素、適当な温度、水分がある)、そしてBその環境が持続する、つまり成長するのに十分な時間があることです(図1)。空気中には目に見えませんがいつもカビの胞子が漂っていますし、家の中にはカビの栄養源になる有機物がたくさんあります。人が暮らす環境には酸素があり、温度は適温です。水分さえ与えられれば家の中はいつでもカビが生長できる環境に変わります。雨が続き、空気が湿る梅雨時は、この3つの条件がそろい、カビが育ちやすくなるのです。
カビ指数
カビの発生しやすさはカビ指数で表します。図2はカビ指数測定用の試験片(カビセンサー)です。湿気を通すフィルムでカビの胞子が閉じ込めてあります。このカビセンサーを一定期間(1週間、1ヵ月など)、調べたい所に置きます。調査箇所の温度と湿度環境がカビの生長に適していればいるほどカビセンサーに閉じ込めてあるカビは速く生長し、菌糸が長く伸びますので、菌糸の長さからカビの育ちやすさがわかります。住宅内でカビ指数調査をすると住宅の中のどこでカビが発生しやすいかわかりますし、温湿度をコントロールしてカビ防止を試みた場合の効果が判定できます。
カビ防止対策
住居の中のカビ発生を防ぐためには、水を使う所と使わない所に分けて考えることが必要で、それぞれ対策が違います。
@水を使う場所でのカビ対策
水を使う所のカビを防ぐには、栄養源になるものを取り除くことと、水分を断ち切る(水に濡れたらこまめに拭き取る、水蒸気を追い出す)こと、そして、カビの量を減らすことです。台所の流し台には、食べ物や汁の飛沫が、浴室にはアカや石鹸カスが付着します。いずれもカビにとっては栄養源になりやすい有機物で、量が多いほどカビがよく育ちます。暖かくなるとカビの生長速度が速くなりますので、夏は流し台に生ゴミを放置するとすぐに腐り、カビも生えます。栄養源になるゴミや汚れはできるだけ早く取り除きましょう。濡れた状態が長く続くほどカビは繁殖しやすくなりますので、拭き取れる箇所はなるべく拭き取って水分を残さないことが大切です。マンションの浴室などは、換気扇を回しても、なかなか乾きません。タオルで水分を拭き取ってから換気扇を回すと速く乾燥してカビが生えにくくなります。台所や浴室では水蒸気が発生するので、換気して水分を外に出すことが必要です。外に出さないとその水蒸気が全部居住スペースや収納スペースに移動し、家の中が湿り、水を使わない場所でもカビが発生しやすくなります。また、生えてきたカビを取り除くことも大切です。流しの前や浴室が黒くなるのはカビが生長して胞子を作っているからです。すでに黒く変色してしまった時には、塩素系漂白剤を使い、カビの除去と殺菌をすることも必要でしょう。栄養源を与え、濡れたまま放置することは、カビが育つのを待っているようなものです。いつまでもきれいに保つためには、目立たないうちにカビを取り除くことが大切です。
A水を使用しない場所でのカビ対策
水を使用しない居住スペースと収納スペースでは湿気のコントロールが効果的です。こうした場所にはもともと液体状態の水はありませんので、カビが育つために必要な水分は空気が供給します。相対湿度が70%以上になると、空気から水分をもらうことができるのでカビが育ちますが、相対湿度60%以下ではこれができないので育ちません。次に除湿機を入れてカビを防ぐ例を示します。表1は室内と物入れ(廊下にある)の二箇所で、除湿機を入れた場合と入れない場合のカビ指数を比較したものです。除湿機を働かせた時だけ四角で囲んであります。数値が高いほどカビが発生しやすい環境といえますが、これを見ると、除湿機が働いた時だけカビが育たない環境になっていることがわかります。また、室内で除湿機を働かせている時(7月8日からの調査)はカビの胞子が発芽していませんが(写真・下)、除湿機を止めたカビ指数14.0の環境(7月1日からの調査)では、カビの胞子が発芽し菌糸を伸ばしています。夏は外気中に含まれる水分も多く、換気しても室内の水分量を減らすことが困難です。通常のクーラーは、室温を低下させると共に除湿もします。湿度のみが高い時期、例えば梅雨の初めや秋の長雨の季節には除湿機を入れることが適当ですし、温度も湿度も高い時期にはクーラーの使用がよいでしょう。押入の湿気を取る小物がいろいろありますが、取れる水分の量が少ないので、収納スペースで湿度をコントロールする手段としてはあまりお勧めできません。集合住宅で年間を通してカビ指数を調査し、どこがカビの発生しやすい環境かを調べたことがあります。その結果、夏の住宅内全ての場所がカビ発生可能になっていることがわかりました(図3)。矢印が調査箇所で、○と□の中の数字は天井付近と床付近のカビ指数です。
この住宅では物入れ、クローゼット、靴入れなどの収納場所には吸湿剤を入れていました。図4に物入れ、和室、外気のカビ指数を比較して示します。吸湿剤を入れていてもカビ発生の可能性があることがわかります。収納場所は梅雨の終り頃に湿気が溜まっているように見えます。靴入れ内部はカビ指数が6月半ばから8月半ばまで連続して検出され、カビが増殖する環境になっていました。吸湿剤を使えるのは、かなり気密性が高い収納場所に限定されます。例えば、衣類や布団を穴の開いていないビニール袋に吸湿剤と共に入れ、しっかりと封をすれば効果が期待できるでしょう。この時に酸素吸収剤(使い捨てカイロでよい)を一緒に入れると、より効果的です。酸素を取り除くとダニを殺すことができますし、通常の押入れで生長するようなカビは育たなくなります。カビが発生してしまったときには、胞子を散らさないように気をつけましょう。押入の壁や畳にカビが発生した時には薄めた逆性石鹸液で拭き取り、カビだらけに
なって使えなくなっているものがあればポリ袋に入れて捨てましょう。