作者のつぶやき   
 
 2006.4.22更新 
  内容目次    
                 男性と女性ーその1ー 一部加筆   
                 不妊治療に関して-その1-  
                60歳の出産に思うこと   
                代理母に関しておもうこと    
                 胚性幹細胞について思うこ
                不妊治療に関して-その2-  
                不妊治療に関して-その3- 
               なぜ男性で婦人科医なのか?
                62歳で男児出産
                日本人の性交回数

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なぜ男性で婦人科医なのか?

 大学などというところで働いていますと、時々学生からなぜ婦人科を選んだのですかという質問をよく受けます。 「ちょっとした間違いでね。」とか「さあ、なぜなんだろうねえ、自分でもよく分からないんだよね」とか適当にはぐら かしています。本当のところは自分でも正確なことは分かりません。ただ基本的に男性よりはずっと女性とお話し することの方が好きなことは確かなようです。それ以外には、やはり分娩という命の誕生の際の感動でしょうか。 私が学生だった頃は夫の立ち会い分娩などはほとんど無い状況でしたし、女性が陣痛が始まりひとりぼっちで (医者や助産師さんはいますが)分娩室で頑張って、自分から誕生した新たな命と初めて対面した際の感動は計 り知れず大きく、ほとんどの方が涙するのを見て、ああこういうすばらしい感動の場面に立ち会えるのだ。そして 今生まれてきた赤ちゃんが大きくなってどんな人に育っていくのだろうとか、新たな人生の始まりの感動にふれさ せてもらえるんだなあとか思ったのを覚えています。当時は産婦人科というと大変で、体力勝負で、いわゆる3K で、男性で無いととてもつとまらないというように考えられていました。ですから婦人科医は男性が当たり前という 状態でしたので、何の違和感(かえって女性がいる方が違和感があった)もありませんでした。まあ産婦人科医に なったのはこの程度の理由だったような気がしますが、産婦人科の医者となっていろいろなご夫婦の感動のお裾 分けをいただいて喜んでおりましたが、ある時この感動を味わいたいにもかかわらず、思うようにならないご夫婦 の事を考えるようになり、現在のような不妊治療に入ることとなりました。以来少しでも多くの方に最終的に喜んで もらおうと頑張っていますが、すべての方に喜んでもらえるわけではないのと、不妊治療やら雑用やらの都合で、 妊娠された方達の最終的な分娩に立ち会える機会がほとんど無く、密かな楽しみであった感動のお裾分けを他 の医者にとられてしまうようになってしまったことが心残りではあります。





不妊治療に関して-その2-

 不妊治療に20年近く専門に携わっていますと、診療中にしばしば診させいただいている方(どうも私は患者さん という言葉は好きではないのです。この言葉には何となく病気で煩っている弱いものという響きが感じられるから です。特に不妊で悩まれている方を患者さんと呼ぶのは、女性に対して機能的に劣っているぞというような決めつ けをしている様な気がしてなりません。しかし今のところ適当な言葉が無いので使わざるを得ないことがあります が、出来る限り使わないように心がけています。なんといっても子供がほしくないということならば、別に病気とは 言えないと思うからです)が、お話中に泣き出されることがあります。以前はちょっと話が立ち入りすぎて琴線に触 れてしまったかと反省していましたが、最近はかえって心を開いて泣いていただいた方がいいかなと考えていま す。病院に見える方は既にいろいろなストレスにさらされてみえていて、その中でともすればくじけ、落ち込みそう になりそうな気持ちを、自分を鼓舞するようにして頑張ってみえるのです。確かにこういった頑張るぞという前向き な気持ちも必要で、私たちも頑張りましょうといいますが、一方で、どこかで心の奥にしまい込んで他人には見せ まいと振る舞っていて、いつの間にか次第に心の重荷になってしまっているものを、思いっきりさらけ出していた だくことも必要なのではないかと思うからです。だいたいの方はその後肩の力が抜けて、すっきりされたような印 象を受けます。「取り乱してしまってすみません」などとおっしゃいますが、私はそういった心の中に深く沈殿してい るような感情が人前で出てしまうことが別にみっともないとか、おかしいとかは思いません。その方が自然であろう し、それでその方の心の重荷が少しでも軽くなればそれでいいのではないかなと思います。
 皆さん、時には肩の力を抜いて素直に感情を出してみましょう。
 だって人間だもの。




不妊治療に関して-その3-

 不妊治療医としての私たちは万能ではありません。20年近く専門的に従事していても出来ることはたかがしれ ています。病んでいる人を治してやろうというような偉そうな気持ちはありません。
 医療を通じて悩んでみえる方達が自分の力で妊娠され喜ばれる姿をみて、ちょっぴり皆さんの喜びに参加させ ていただいて嬉しくなってしまおうとしている程度の者ですから。
 私が医者に成り立ての頃に当時の教授の八神先生から「偉そうに患者さんを治したなどというのは間違いだ」と いわれたことがあります。その時は私もその年に応じた理解で、なるほどと思ったのですが、年を重ねるに従って 一層様々な角度からそう考えるようになりました。病院を訪れる方の病が癒えるのは自然な力によるもので、私 たちは単なるお手伝いをさせていただいているに過ぎないと思います。ただサービス業とは言え揉み手をして、諂 うようなことをするつもりはありません。医者という立場ではありますが、同じ人間として対等な立場でお話をさせ ていただいております。従って医療上でだめなことはだめといわせていただいております。
 医者として長年数多く訪れる皆さんを診させていただいた事により、いろいろ知ったこと、いろいろ調べて得た 知識などがあります。こういったものはすべて病院にかかられた方達がいて、その方達ひとりひとりから学ばせて いただいたことです。一方診察をしなくて得た知識もあります。つまり、読んだりして書物から得る知識です。しか しこれとて、それを書いた著者がやはりどこかの誰から学ばせていただいた知識をまとめたものです。こうやって 様々な方達から学ばせていただいて蓄積した知識を出来る限り、皆さんに還元してゆくことが医者の使命であろ うと常に考えております。
 従ってちょっと、診察の際の説明が長くなってしまい、予約された時間より診察時間がいつも遅れてしまいご迷 惑をおかけしたりしております。
この場を借りてm(。_。)m





男性と女性ーその1ー     

異なる性の存在
 人間には男性女性の二つの性が存在します。そして次の世代を生み出すにはこの両方の性が必要となりま す。ではどうしてこんな面倒くさい機構になっているのでしょう。            
 一つの考え方には業界用語の”単為発生”を繰り返していくと、生存している間に傷ついたDNAの傷が次の世 代にそのまま受け継がれ、また次の世代の傷が加わるとDNAの傷がどんどん蓄積されて、最後にはその種族が 滅びてしまいます。これを防ぐためにいつもある程度このような傷を補えるように、他の人の遺伝子と混ぜて傷を 余り蓄積しないようにしているという考えがあります。アメーバーのような単細胞生物のような構造の簡単な生物 では性は一つであったりします。またカビの一種には栄養状態が悪い状態の環境下では単為発生をして増え環 境がよいところでは二つの性を使って増えるというものもあります。さらにはワニは温度によって雌雄が決まると されていますし、魚類では雄から途中で雌に変化するものもあります。     
 さて、ヒトの基本的な発達はどうなっているのでしょう?実はヒトの基本的な設計は女性になっているのです。受 精が起こってしばらくすると(妊娠の6週頃からですが)、この胎児は男の子か女の子なのかがチェックされます。 そこでYの染色体(その中の一部の遺伝子が大事とされていますが)が存在すると、女性に発育する設計図が男 性を作るものに変更されます。そしてもしYの染色体がないとなると、その赤ちゃんは女性として発育していきま す。この染色体ですが男性は46,XY、女性ならば46,XXとなっています。このY染色体はXに比べると一回り小さな 作りです。そしてYの染色体はXの染色体から出来たものらしいといわれています。つまりヒトとして進化していく途 中で、女性の染色体から男性の染色体が出来てきたということになのです。ちなみにY染色体の中の遺伝子の持 つ情報はといいますと、Xにはぎっしりと情報が詰まっているのに比べて、ほんの僅かの情報しかありません。こ の男性女性の染色体の構造をみてもヒトの基本的な設計図が女性になっていることがわかります。                     

身体的な違い
 女性は子宮という臓器の中で赤ちゃんを育てて産み世に送り出します。つまりヒトの次の世代を積極的に生み 出す役割は女性と言えるでしょう。この受精に際しては男性の精子が必要となりますが、男性が必要なところはこ こだけです。つまり生物学的には自分の遺伝情報の半分を精子という形にして卵子に届ける、それだけが男性 の生殖にかかわる部分なのです(もっとも、最近では凍結保存された精子を用いた人工授精で、自分の子供は 欲しいが面倒な旦那はいらないというsingle mother希望の女性の要望を叶えるような医療も外国では出来るよう になってきてはいますが)。したがって夫婦というような確固たる絆があり、愛する女性との間に自分の子供が欲 しいという明確で強い希望でもなければ、女性の体の中で育っていく胎児に男性が愛着を抱くには、女性と異なり 少々難しいのかもしれません。このように女性は妊娠という現象に積極的にまた直接にかかわっているのに対し て男性は少々胎児に対して距離が異なるということになります。                                            
ミトコンドリアのこと
 さてパラサイトイブという本(瀬名秀明著)か映画を見られた方はある程度知って見えるかもしれませんが、細胞 の中にあり細胞のATPというエネルギーを作り出してくれるミトコンドリア。人間はこのミトコンドリアを細胞の中に 取り入れることが出来たために、陸上にあがってこれたと考えられていますね。もともと酸素が好きでなかった人 間の細胞は大気中に増えてしまった酸素(ラン藻や緑藻のように光合成を行うものが繁殖してきて大気中に蓄積 してきた)のおかげで海の中から出られなかったのです。そこへバクテリアの一種であったミトコンドリアを細胞内 に取りいれ、勝手に増殖したりしないように遺伝子を中でヒトの細胞には困るような遺伝子を取り去り、自分に都 合よく酸素を基にエネルギーを作り出せる機能だけを持たせるようにしました。これで、はれて大気中に進出でき るようになったと考えられています。このように元来は酸素に対して弱い細胞であったので、過剰の酸素があった りうまく利用できなかったりすると活性酸素というものが出来てしまい、細胞が痛んでしまうわけですね。さてこのミ トコンドリアですが、もとをたどれば一人の女性のミトコンドリアにたどり着く事が出来ると考えられていて、この女 性をミトコンドリアイブと呼んでいます。ミトコンドリアは女性から女性にしか伝えられません。寂しいことに男性の ミトコンドリアは基本的には排除されてしまうのです。つまり男性女性にかかわらず、その人の持っているミトコン ドリアはその人の母親のミトコンドリアだということです。そしてその母親のミトコンドリアはというとその母親、つま り祖母のミトコンドリアということになって、どこまで行ってもお父さんのミトコンドリアは出てきません。実は精子も 精子細胞のミトコンドリアの一部を精子の頭のすぐ後ろに持って出てくるのですが、精子が生存して運動し卵子に たどり着くためのエネルギーを作るためのもので、卵子に進入して受精が起こったあとで消えて無くなってしまい ます。しかし1997年にJ Choenが行ったような細胞質卵子注入を行うと言うような極めて人工的な処理を行うと、 この場合には完全に消滅せずに生まれてきた子供の細胞内にミトコンドリアが混ざった状態で存在していること が証明されていますけれど。もっとも核移植となると全く遺伝子は家系としてる繋がっているけれど、ミトコンドリア に関しては完全にとぎれてしまうと言うことになります。このように通常の妊娠においては細胞の機能を司るともい えるミトコンドリアは母親由来ですから、子供の頭の善し悪しは母親のせいだとか乱暴なことをいう人もいます が、そのままそっくり同じように伝わるわけではないので、それは間違いです。 
追加:2002年8月の学術雑誌(NEJM)に珍しいミトコンドリア遺伝の異常が報告されています。本来遺伝しないは ずの父親のミトコンドリアが遺伝していたという異常で、血液の細胞では母親由来のミトコンドリアが伝わっていま したが、筋肉の細胞では90%が父親由来のミトコンドリアで占められていたという異常で、このために筋肉の細胞 の異常が発生しています。何かの拍子に筋肉になる予定の細胞に父親のミトコンドリアが残ったの結果ではない かと考えられていますが、いろいろ病気を調べていくと、このような異常が更に見つかるかもしれません。                                                    
 



不妊治療に関して-その1-       

 不妊の治療に関するお話を患者さんとしていて時々感じるのが、どうもご本人はそれほど治療を希望してみえ ないなあと感じることがあることです。結婚して特に避妊してもいないけれど2年以上たっても妊娠しないなあとは 思っているものの、そのうち妊娠するだろうと別にそれほど病院に通いたいと思ってみえない場合です。それほど 真剣に検査や治療を受けたくないと思っているものの、ご主人のご両親などから「まだ、子供出来ないの?一度 病院で検査してもらったら」などと言われ、最初は適当にかわしていたものの、とうとうはぐらかすことが出来なくな って、病院に見える方ですね。こういう場合は余り無理に検査や治療を進めることは逆効果で、精神的なストレス が増してしまいます。ただ不妊の原因となるような決定的な問題があるような場合には、のんびり構えていても自 然に妊娠する可能性はきわめて低くなりますので、この場合にはある程度の治療が必要となります。残念ながら 女性には生殖可能な期間というものがあり、この時期を逃すとなかなか妊娠できなくなります。ですからもし問題 点があるのなら、その部分はある程度治療をして、あとはご本人のご希望に添って治療の計画を立てねばなりま せん。10数年前は私もそういったところを患者さんから感じ取れず、あとから気付き後悔したようなこともありまし た。不妊治療では、治療による肉体的精神的な負担はほとんどの部分が女性にかかってしまいます。生物学的 に自分の子孫を自分の体の中で育てるという機構になっているため、さけられないと言えば避けられないのです が、女性が治療で受けるストレスに対する理解がもっとも重要だと思います。最近は男性の精子が少なくなってき ているという情報がよく伝えられるので、精液検査もしやすくなりましたが、以前は精液検査をしましょうと言うと、 精液検査は無理ですというようなお返事が帰ってきたこともよくありました。「俺にはきっと悪いところはないと思う から、おまえだけ検査してもらえ」というような事をご主人が言ってみえるのです。以前に比べると最近はこのよう なことは少なくなってきましたが(無くなったわけではありません)、ご主人は家にいて「何が何でも子供が必要だ から、どんな治療をしてでも子供を作ってもらってこい」と、まるで子供を作るのが女性の唯一の仕事であるかの ように考えて見えると言うようなことはまだ時々あります。「嫁して3年子無きは去れ」などという時代錯誤の言葉 がこの家庭ではまかり通っていて、女性を子供を作る道具としか考えていないのではないかなあと考えてしまいま す。                        
 結婚したら子供がいないと不自然であるというのは日本の悪い社会通念といえるでしょう。また、気軽に「子供 まだなの?」と言うような言葉が挨拶代わりにされることも、言った本人には悪気がないだけに一層不妊に悩む 女性を苦しめてしまいます。いずれにせよ日本は不妊に悩む人たちには少々住みにくいところと言えるかもしれ ません。そして日本のしきたりとでも言うような新年の年賀状。最近ではよく子供の写真を入れて送られる方が増 えてきました。私もそういった年賀状を多くいただきますが、是非お出しになる際は相手先をよく考えてお送りいた だきたいと思います。同級生にお出しになるのはおよしになられた方がよいでしょう。ご夫婦の10組に1組が不 妊であるという事なら、お友達が10人みえるのなら、そのうち1組は不妊である可能性があるのですから。そして ちょうどなかなか妊娠しないことに悩んでみえる可能性が非常に高いからです。尤も私のように不妊治療をしてい るものにとっては、妊娠されてお子さんの成長していくお写真を送っていただけるのは至上の喜びではありますけ れど。                                                         



             
               60歳の出産に思うこと

 最近新聞に60歳で配偶子の提供を受けて日本人が出産をしたという記事が載っておりましたが、さすがにちょ っと驚きました。以前アメリカとイタリアで63歳の出産があいついで報告されて、物議をかもしていたときには、ま さか日本人もこのようなプログラムにのって出産をされる人が出てくるとは思ってもいませんでした。改めてこのよ うな報道に接して、やはりこのような出産は無理があるのではないかなあと感じずに入られません。元々人間の 配偶子つまり精子と卵子とでは全くその振る舞い自体が異なりますね。精子は死ぬまで作り続けられます。確か に細胞の老化などが起こってくるので次第に数などは低下していきますし、性欲自体が低下していきます。しかし 死ぬまで相手の配偶子と結びつくべく精巣で精子は作られ続けます。まあ男性は次世代を送り出すことに関して は精子を渡すという事でしか関わりませんので、自分の年齢にお構いなしに、いくつになっても女性を追い求める ように出来ているのかもしれませんね(これは結婚後の男性の浮気を正当化するためのものではありませんの で、誤解の無いように)。一方、女性の卵子は母親の体内で最高に達したあとは消失していくばかりで、それも月 経周期に一つ消費されるという程度ではなく、かなりの速度でただ消失していくばかりです。思春期に20−30万 個、そして閉経近くでは急激に卵子が消費されていきます。これはどういう事でしょう。これはとりもなおさず女性 自身が自分の身体を守るために自然にもっている機構ではないでしょうか。次世代を送り出すということに最も直 接関わり中心的な役割を果たす女性は自分自身に害が及ばないように、ある一定の年齢に達すると不用意な妊 娠が起こらないようになっているのではないでしょうか。ちょっと前のSF映画の題材が本当に身近になってきてし まっていますね。この報道で唯一納得できたのは、商業主義的な行為ではあっても、かなり厳しい様々な検査を 経て身体的に出産に耐えうるか否かを詳細に客観的に検討した上でなされたことで、医者はする技術があるし、 患者が望んでいるのだからと言うような安易な感情論だけで行われていなかったことくらいでしょうか。今初期胚 (受精卵)の凍結は結構行われていますが、これについて対して日本は議論がありませんが、皆さんはこの初期 胚をいつまで保存しておいて良いかということについて考えられたことがありますでしょうか?もし30年も40年も 保存して、どこかで移植され出産される様になった場合、自分のおじさんやおばさんにあたる人間が自分の子供 よりも若く生まれてきてしまう可能性が出てきてしまうとか、それ以上保存されてと言うことになった場合には、現 代のうらしま太郎が...........             

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代理母に関して思うこと
代理母の是非が色々議論されているようで、賛成反対色々な意見があると思いますが、いろいろな取り上げ方を 見ていてやはり問題だなと思うのは、問題がそう単純なことではないということで、よくマスコミなどが取り上げると きに安易にアンケートをおこなったり、街頭でのインタビューをしたりすることです。日頃からよほどこの治療につ いて関心がありいろいろな情報を得ていて考えていなければ、街頭で突然マイクを向けられて意見が言えるはず はないからです。で、結局本人が良いというのならいいのではないですか。などという安易な言葉が飛び出してき てしまいます。これでアンケートといわれると困ってしまいます。
代理母、いわゆる借り腹の問題点を考えてみますと、まず他人の身体を自分の目的のために利用するという事 実があります。これに関しては生命倫理の観点からは非常に問題がある行為ということになります。これに対して は善意の第三者が協力するといっているのだから良いという反論が時々なされます。他には母親という定義が混 乱し、遺伝子の親、生みの親、育ての親と非常に複雑化してしまうという意見です。確かにこのようなことで生ん だ私の子供だ、いや依頼し、卵子の親でもある私の者だということで裁判沙汰になっている事件は様々なところ でよく引き合いに出されることです。こういったことは確かに起こりうるので、子供を保護するという観点からもきち っとした法制化は必要でしょう。この代理母に関しては厚生省としては一応禁止の方向で進めているようですね。 これに対してもうすでに出産させている医師が名乗り上げているのもマスコミでよくご存じでしょう。アメリカで行わ れているのになぜ日本で行われないのか、どうして行えるようにしないのか、外国に出かけていってまで治療を受 けている夫婦がいるのに、日本は遅れている!と言う意見もみかけますが、別にアメリカがすべて正しくすすんで いて、それをすべて取り入れなければいけないという事は何もありません。少しテーマが変わりますが、アメリカが 自分の国では核兵器を持ちながら、他の国は持つことに干渉し査察までする、対戦車砲の弾丸に劣化ウラン弾 を使って、戦場となった地域に今も放射線障害を残してそのまま害はないと主張し続けている、このようなことも 日本は取り入れるべきでしょうか?何も猿まねをして何でも妄信的に取り入れる必要はどこにもなく、日本という 国の宗教観、倫理観など日本独自の判断に照らして、取り入れるべきは取り入れ、排除するべきものは排除す ればよいと考えます。こう書くと私が代理母反対論者かといいますと、私は認めても良いと考えております(但し、 ここに書かれている文章はあくまでも個人的な意見であり、産婦人科学会の方針や大学の方針というわけではな いことをお断りしておきます)。ただ、実際に治療として行うためには、きちっとこの治療をサポートできる状況がで きあがったうえでと言うことでです。ですから、単純に何らかの問題があって自分の体の中で胎児を育てられない 人がいて、それをかわいそうだと思う第三者がいるという事だけで、治療を行うのに十分だとは全く思いません。 例えば、子供を希望する方が初めての妊娠時に子宮を摘出せざるをえなかった方だとしたら、恐らく妊娠中に何 かの重大な問題(DICか子宮破裂か何かはわかりませんが)が生じた可能性があるということで、かわいそうだか ら手伝ってあげようと考えた第三者に同じ事が起こらないという保証は全くありません。その第三者はご自分の子 供を無事産んだ年よりも数年歳をとっていて、以前に比べて様々な合併症を起こす可能性は高くなっていて、体 に重大な後遺症が残ったり、最悪の場合死亡に至る可能性すらあると言うことを理解した上で代理母を了承して いるのでしょうか。またその方の家族の方たちも、そういうこと(最悪の場合は死亡することもあり得る)が起こりえ ることまで知っていて了解されているのでしょうか。更に最も大事なことはこの代理母を十分精神的にサポートで きる体制が整っているのでしょうか。一時的なかわいそうと思う感情的な動機だけで名乗り上げている可能性は ないでしょうか。最初は同情という事で始まっても、このプログラムは1週間程度ですむことではありません。38 週間自分のお腹の中で他人の胎児を育てていかなければならないということは、最初には想像できない精神的 なストレスが溜まるものと思います。果たしてこのようなことをしていて良いのだろうか?などと途中で不安になっ ても22周を越えてしまえば、途中で中絶は法的に不可能となります。非日常的な行為をしているという感情にさ いなまれても、もうpoint of no returnを越えたら最後引き返しは出来ません。それから次第に大きくなっていく自 分のお腹を他の人にどう説明するのでしょうか。近所の方たちにも恐らく代理母をしていることは宣言していない でしょうから、大きくなってくるお腹を近所の人たちがみれば、またおめでたですかと聞かれるでしょう。果たしてこ のときどう答えるのでしょうか?ええそうですと答えても、10ヶ月を過ぎてお腹が元通りになってもそのうちに赤ち ゃんがいる気配がないと言うことに近所の人たちは不審な目で見ると思います。それは生まれたての赤ちゃんを どうにかしてしまったのではないか、最悪の場合、最近ニュースとしてこれでもかと載る嬰児殺しでもしているので はないかと想像してしまうのが普通ではないでしょうか。アメリカでさえ5人目のお子さんを妊娠中ですかと聞かれ た代理母が「いえ、困っている方のために妊娠しているのです」と答えて、聞いた人が「子供を売り渡してお金をも らっているんですって!汚らわしい!」というような事を言って立ち去っていったと言うことも紹介されてます。アメ リカでも拒絶反応を示す人たちは大勢いるのです。
なにもアメリカがすべてどんな点でも進んでいて、取り入れないのは遅れているということではなく、こういう治療が 引き起こすであろうことをきちっと整理し、その対策をしてからでないと様々なトラブルが起こり、逆に治療の障害 となる可能性があると思います。
でももう年齢的に時間がないとおっしゃる方たちも見えると思います。その方たちのためには生殖に携わる医者 としては、だから見切り発車で行うのだというのではなくて、まず未熟な卵子や卵巣組織の凍結の技術を確立し、 いつでも許可になった時点で治療に移れるようにしておき、その間に代理母治療の抱える問題点を克服するする ようにしていくべきではないでしょうか。


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62歳で出産
62歳で男児を出産したというニュースがアメリカか2006年2月に流れましたね。視覚障害があり糖尿病もある女性 が男児を出産したということですね。その年齢で妊娠出産出来たということがなんといっても驚きです。何故かと いうとその年齢まで卵子が卵巣内に残っていたということがまず医学的に通常ではあり得ないと思えるほどの珍 しいことだからです。女性は大体50歳周辺更年期というものがあって、その少し前から急激に卵子が卵巣内から 消失していくことが知られています。60歳を過ぎて卵子が残っていたということ自体驚愕に値します。そしてその卵 子が受精して着床、妊娠が継続されて正常な新生児が出生したという事にも驚きます。もし卵子が残っていたとし ても長年の様々な影響を受けて染色体の異常の頻度がかなり高くなっているでしょうし(たとえば年齢のことでよく 知られているダウン症の発生は40歳を超えれば1/100以上の確率になります)、それ以外にも卵子の中の細胞 質のなかのミトコンドリアも十分に卵子のエネルギーを作り出せるとはあまり思えないからです。まあ世界最高齢 はルーマニアの66歳の女性なので上には上がいるわけですが、不妊治療で40歳を越えて見えるような方達に接 していると、ひょっとするとやはりまだまだ妊娠する可能性は0ではないのだなあと、患者さんが頑張ってみえる間 はこちらも一生懸命頑張らないと、とこちらが励まされてしまいます。
 しかし、糖尿病があってその年齢で視覚障害もひょっとすると糖尿病の性かもしれないというような方の分娩管 理というのも怖いというべきか無謀というべきか...........


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日本人の年間性交回数は45回

 41カ国の国際調査が行われて、日本人の年間性交回数が45回なのだそうです。さてこれを読んでかなりの方 が週1回未満か、と計算されてうなずかれる方が多いと思います。確かに調査結果なので頷かれる方が多いと思 います。私もこの数字を見てまあそんなところかなという感想ですね。さてこれが何が問題かというと41カ国の調 査対象の国のうち最下位、それも群を抜いて低いということなのですね。ちなみに最高は今年はギリシャで昨年 のトップのフランスを抜いて138回(3日に1回以上!)なのだそうです。フランスは前回と同じ120回だったそうです が、こういう数字を見ると、まあそういう国は性行為が好きなんでしょうと考えがちですが、国際平均が103回なの です!トップの国がとびきり多いとはいえないのです!第40位のシンガポールでも73回で日本は群を抜いて少な いということなのです。どうしてなのだろうかと考えるとやはり日本の経済の問題働く人の仕事中毒というか中毒 にならざるを得ない状況がある部分を占めているような気がします。不妊治療の関係でご夫婦の性交の回数が 何となくわかります。実際に不妊の方達をみているとで大体それくらいだという印象を持っています。ご主人の帰 りの時間などをお聞きしても遅い帰宅が多く帰っても食事をしたらそのまま寝てしまうような方が多く見られます。 それと不妊の方達はどうしても性行為を子供を作るという手段と考えがちになられるので、排卵日を気にするあ まり、排卵周辺以外は全く性行為がないという方達が多くを占めています。性行為が子供を作るための儀式とい うような状態になってしまわないようにと、時々奥様にお話しするのです。やはりごく自然に排卵周辺以外でも仲 良くしていただいて、古い精子を貯めすぎないようにされるのがよいと思います。まあ実際にはなかなかご主人も 疲れ果ててかえってみえるのでウィークデイは難しいかもしれませんが、ウィークエンドは夜仲良く過ごすために 時間を取っておかれるのがよいでしょう。結婚して何年もたっていて今更などと思われる方はいろいろな工夫をさ れてちょっといつもと違う雰囲気でというようなこともされるのがよいのではとアドバイスをしています。





-------------------------- 用語解説 -----------------------------

細胞質卵子注入 cytoplasmic transplantation, ooplasmic transplantation
 加齢により細胞機能の落ちた卵子では、なかなか妊娠に至るような良質の受精卵が発育してこないために、若 い女性から卵子の提供をうけて、その若い卵子の細胞質の一部(約1/4〜1/5くらい)を実際に子供が欲しい女 性の卵子の細胞質と入れ替えることにより、細胞の機能を上げて妊娠させようとする技術。わかりやすく言えば 車が古くなってうまく動かなくなってきたので、エンジンの一部を取り替えてまたスムーズに走ろうと言うようなもの です。治療の有効性については反論もあり、一定の見解はありません。 
  

核移植 nuclear transfer
 細胞質注入よりももっと過激なもので、車が古くなって動かないのなら新しい自動車に乗り換えようと言うもので す。若い女性から卵子の提供を受け、その卵子の核を抜いて、代わりに子供の欲しい女性の核を入れて高性能 エンジンを持った新たな卵子を作り出すという方法。 


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