「不登校・ひきこもり」について
1.はじめに
最近、凶悪事件の犯人が「ひきこもり」の青年であった。などという報道をしばしば耳にするようになった。
WHOでは21世紀の重要課題の1つとして、メンタルヘルスを挙げた。また、一生のうちで4人に1人がなんらかの精神的健康上の問題を経験する、と推計している。
このような現代社会において、「不登校・ひきこもり」と言われている人達ははたして特別な人達なのか?ということを出発点として、これらの実態を調べるとともにその時代背景、地域の役割、教育のあり方、役割について考察した。


2.方法
1)現状の把握
文献,インターネットによる調査、当事者・経験者およびその関係者に対するインタビュー、中学校・高校・フリースクール・精神保健センターへの訪問による。
2)情報交換・討論
個々人で集めた情報をお互いに提供し合い、ディスカッションすることにより理解を深めていき、問題の対策と今後の改善策について討論した。



3.現状
1)精神保健福祉の現状
精神保健とは、狭義には精神障害の予防を目的とし、広義にはわれわれの精神的健康の保健増進を目的とするさまざまな知識、技術、活動であると定義される。この目的達成の方法として、医学を中心に、心理学、社会学、法律学さらには哲学、宗教などの広範な関連領域をも動員する必要がある。また、精神保健は公衆衛生学の重要な柱の1つでもある。
扱われる主な病気としては精神分裂病、躁うつ病、神経症、精神遅滞、アルコール依存、不登校、ひきこもり、スチューデントアパシー、神経性食欲不振症などがある。
わが国の精神保健の機関・施設には、医療機関として精神病院、クリニック、保健機関として保健所、研修機関として精神保健センター、社会復帰施設としてはデイケア、障害者援護寮、障害者福祉ホーム、障害者授産施設、作業所などがある。
2)不登校の現状
施設には治療機関、相談機関、学校・教育機関があり
治療機関には、情緒障害児短期治療施設、精神科、心療内科・思春期病棟・小児科病棟、カウンセリング施設等がある。また相談機関には、教育相談所、児童相談所、精神保健センター等がある。学校・教育機関としては学校(小・中学校)、適応学級、フリースクール、養護施設、院内養護学校、教育委員会等がある。
携わる人には、学校関係者、カウンセラー、医師、保健婦、各種相談員等が居り、学校関係者は、小・中学校や教育委員会に居り、心理相談員は、保健所、精神保健センター、教育相談所、児童相談所に居る。医師は病院、保健所等に居り、保健婦は主に保健所に居る。カウンセラーは病院や各種相談機関に居り、また開業している場合もある。
 実態としては、症例で詳しく説明するが、以下の資料に示すように小学生よりも中学生の方が多い。そして、各機関において様々な対策がとられているにも関わらず、増加し続けている。



3)ひきこもりの現状
現在のところ、「ひきこもり」に関して期間や症状などに関する定義が定められてはおらず、およその捉え方が一致している程度である。
厚生労働省は平成13年5月8日、「ひきこもり」に対応するための指針を示したガイドラインを作成した。ガイドラインの正式名称を「10代、20代を中心とした社会的ひきこもりをめぐる地域精神保健活動のガイドライン(暫定)―精神保健センター・保健所・市町村でどのように対応するか、援助するか」といい、平成12年に行われた全国56箇所の精神保健福祉センターにアンケート調査などをした研究結果をふまえたものである。
これによると、「ひきこもり」の定義を用いている精神保健福祉センターは少なかった(16カ所)。また、相談件数は、男子事例の方が女性事例より多く、女性事例の方が、より若年で来談し、本人が来談する割合が高く、精神医学的診断のついている割合が高かったことなどがわかる。
また、「ひきこもり」が原因で援助機関を訪れる場合、最初の相談は本人よりも家族によるケースが多い。よって、大部分のケースでは、本人だけでなく家族全員が「ひきこもり」の支援の対象になる。
一方、「ひきこもり」に対する関係機関、援助機関の間でのネットワークにおいても、まだ画一されたものはない。相談者の訪れた窓口で、ケースバイケースの対応をしているのが現状である。相談者の訪れる窓口としては、精神保健福祉センターや保健所などがあり、本人や家族だけでなく、職場や学校関係者が関わることもある。また、次に紹介を受けて利用する機関としては、民間機関から公的なもの、医療機関までさまざまである
精神保健福祉センター、保健所における相談、支援上の問題点では、専門家の不足、治療相談体制の、未整備、知識・支援技術の不足、対応の困難さなどがあげられる。




4.具体例
省略





5.原因と対策(予防)

  乳幼児期  〜  学童期  〜  青年期  〜  成人  

個人

←―――――精神障害(外傷体験、虐待、災害、犯罪)―――――→

家庭

←―――両親不和、ドメスティックバイオレンス――→

一人っ子

学校・会社

←―――――いじめ、体罰――――→←―――同左―――→

地域

←―――――――人間関係、コミュニティーの希薄化――――――→

ソーシャルスキルの低下

社会

成果至上主義、学歴社会

←―――――Highストレス、個人主義――――――――→

高度成長の終焉


 ひとまとめに不登校・ひきこもりといっても、その状態が現れる時期や環境は異なる。私達は不登校・ひきこもりの状態となる時期を乳幼児期・学童期・青年期・成人期に分けた。そして環境については個人・家庭・学校・会社・地域・社会にわけて考えた。

 討論した結果、不登校・ひきこもりの状態となる原因をまとめると図のようになった。これらの原因、またはその原因により不登校・ひきこもり状態となってしまった場合への対策・予防として、精神障害による場合に対してはメンタル検診による早期発見、早期治療を行う。医療従事者、一般人への啓蒙による医療の質、対応の向上などが考えられた。

 両親の不和、ドメスティックバイオレンスによる場合に対しては家庭以外での居場所の確保、問題のある親に対する育児指導やサポートによる育児への介入が考えられえた。いじめに対しては学校関係機関による予防策(電話相談による発見機会の向上、いじめに関わる加害者・被害者に潜む精神障害を踏まえたうえでの指導、教師側と生徒側との円滑な意思疎通の実現など)の実施、フリースクールに代表されるような既存の小・中・高の学校に縛られない教育の自由化を考えた。体罰に対しては、学校側が教育方針として体罰に対する態度を明確にすることが予防になるのではないかと考えた。

 地域における人間関係の希薄化に対しては祭や共同作業など町内会の充実を考えた。ストレス社会、個人主義による場合、高度経済成長の終焉を迎えた現在では成果至上主義だけでは社会や個人の価値を測れず、いままでのやり方に対する疑問やストレスが問題となっている。これにはカウンセリングを受けやすくする環境をつくる、またストレスの少ない職場のありかたの研究・実践、個人が余暇をどのように過ごすかという時間の費やしかたの提案があるだろうと考えられた。





6.提言

 WHOの21世紀のテーマにもあるように、世界の人々のメンタルヘルスに対する意識は高まってきていると思われる。

しかし地域の健康関連施設を見てまわったところ、人々のメンタルヘルスについての知識はとても乏しかった。例えば精神疾患への偏見や隠れた患者が多いことに現れている。学校や保健所ではメンタルな問題を解決するためにいろいろな対応をしてきた。

その中で、いくつかの問題が浮かび上がってきている。問題が複雑なのでケースカンファレンスに時間がかかる。現在の教育制度では対応できない。家族にとどまらず、地域のつながりまで保つ必要がある、といったことである。

 前項で考えた原因と対策のなかでも「隠れた患者の発見」、「知識の普及」という2点にしぼって具体的なモデルを考えた。

「隠れた患者の発見」は現状把握・研究資料・治療介入の点で重要である。「知識の普及」は偏見の排除・疾患の早期発見・患者自ら健康関連施設にくることで人材・資金の節約、など多岐にわたった底上げ効果が期待できるので重要である。我々は資金・人材・時間の点から、「なるべく今あるものを活用する」という方向で問題解決法を模索した。



隠れた患者の発見については国民の誰もが必ずいる場所として、職場・学校・家庭を考えた。精神問題について、一般人よりは健康専門家のほうが適切に判断できるので生活の場で発見した患者に対して健康専門家が介入する。

介入の方法としては養護教諭や民生委員などを中心にした生活の場のスタッフと、保健所などの健康専門家スタッフとの間でケースカンファレンスをもつことが考えられる。ケースカンファレンスについては時間と手間を考えて、インターネットのメール・チャット・掲示板などを利用する。しかし現状では本人の良くなりたいという意思がなければ介入できない。




 知識の普及については実用性を重視した講義にする必要がある。つまり国民のLife Skillを向上させる一助となるべきものである。

講義をする能力のある人として、特に時間的な余裕のある学生の活用が効果的と考えられる。養護教諭や産業医からの講義の要請にこたえることで手一杯という現状があるので、需要が多いという点から企業などの民間団体、NPOとしての活動も考えられる。またこの制度の利点は、専門家と一般人との交流にある。専門家は学問の恩恵を受ける人たちからの情報のフィードバックができ、一般人は分野の最前線について知ることができる。今は生涯教育という位置付けになるが、将来的には学校の科目とすることも考えられる。





7.結語

WHOは21世紀の重要課題の1つに「メンタルヘルス」を挙げた。

WHOの決定を受けて、「不登校・ひきこもり」とは、誰にでも起こりうることであり、危険な人物であるなどという偏見を是正する必要がある。問題の特性から相談に訪れず、家族の中だけで対処される例が非常に多く、今現在苦しんでいる。これらの隠れた患者を発見し、地域や社会で取り組んでゆく必要がある。そのためには知識の普及が不可欠であり、その実践には医療従事者の果たすべき役割は重要である。