ここでは、米国での音楽療法士・資格取得について紹介しています。


内容は私の経験をもとに書いてありますので、詳しくは関係各所に問い合わせて確認して下さい。「私の大学ではこうだった」とか内容に不備がありましたら、掲示板、メールで遠慮なくお知らせ下さい。また、日本語での用語に不適当なものがあるとは思いますが、ご了承ください。by MIHARU



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1.大学での単位取得
音楽療法専攻の課程は、ほとんどの場合、州立大学などの総合大学にあります。
アメリカで音楽療法が専攻できる大学は非常に少なく、カリフォルニアのような大学が無数にあるような州でも現在3校しかありません。
また、音楽療法専攻の学生は、音楽学部(Music Department)に所属することになります。(ただし、大学によっては、音楽療法学部が独立していたり、音楽教育学部に含まれていたりするようです)


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1.1 一般教養
英語ではGeneral Educationなので普通「GE」と呼ばれています。
履修教科は日本の大学と大きな差はありませんが、基本的にアメリカの大学では音楽学部だからといって、一般教養の内容が易しくなったりはしません。
これは、アメリカの大学では、途中で専攻を変えたり、ダブルメジャー(例えば音楽療法とコンピューターを同時に専攻する)が可能であることと関係していると思います。
また、日本の短大や大学で取得した単位を移行することは比較的簡単です。

各大学が定めている履修教科とは別に、AMTA(米国音楽療法連盟)が音楽療法課程で要求している教科があります。
その中で、一般教養に含まれるものは
・心理学、異常心理学
・特殊教育
・解剖学
があります。
ただし、大学の規定で、解剖学をとる前に生物学を取らなければ行けなかったり、実験も取らなければ行けなかったりするので、編入等を考えている人はその辺もチェックした方が良いと思います。


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1.2 音楽一般
ほかの音楽学部の学生(パフォーマンス、理論、音楽教育、、、等)と一緒に履修します。
大学によって多少の違いはありますが一般的には

・個人レッスン
・器楽(自分の専門分野以外の楽器)
・ピアノ、キーボード
・音楽史
・民族音楽
・作曲、編曲
・和声
・ソルフェージュ等
・アンサンブル(オーケストラ、室内楽、吹奏楽、コーラス、、、等)
・コンピューター音楽(MIDI等)

などが含まれます。
音楽学部と言っても、日本と違い、初心者??という人から何十年もプロでやってきたけどちゃんと勉強したことがないので、大学に入ってきたという人まで、様々です。
ですから、ソルフェージュ系や理論は日本人にとっては、難しくないと思います。
ただし、「ドレミファソラシド」の発音が、「ドレイミファソラティド」だったり・・・余計な所で苦労します。
(ちなみに私は「レ」は「R」の発音で「ラ」は「L」の発音というのに苦労しました。)



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1.3 音楽療法 (講義と演習)
UNDERGRADUATE(学部レベル)では浅く広く学びます。
浅いとはいっても、ただでさえ読み物の量や宿題が多いアメリカの大学で、専攻分野の授業となると内容も濃く、演習・実習の機会も豊富になります。
内容はもちろん教授や大学によって多少変わりますが、例として私が履修した教科を紹介します。
また教科の呼び名は大学によって異なります。


1.3.1 MUSIC 292 (ORIENTATION TO MUSIC THERAPY)
このクラスは、音楽療法に興味のある学生のための導入クラスです。
受講者には、ほかの学部の人もいますし、逆にこのクラスを取ったあと自分に向いていないと思った人は、専攻を変えることも出来ます。
実際クラスメイトの約4分の1は、次の学期にはいなくなっていました。

履修時間数:2時間(週)× 15週
主な教科書:
Music Therapy, An Introduction. by Jacqueline Schmidt Peters

このクラスで一番印象に残っていることは、3、4人のグループで、「音楽療法とは何か」を表現するスタンツみたいな事をやったことです。私のグループは、進路に迷う高校生(私)が清掃員や看護婦などに「音楽療法って何?」と質問して、「変な音楽を治すことだよ」とか「病気の音楽家を治療する事だよ」という答えが返ってきて、さいごに天使の格好をしたガストンが出てきてガストンの音楽療法の定義を言うというものでした。
他のグループではクイズ番組形式にしてたりして、楽しかったです。



1.3.2 MUSIC 360 (FUNCTIONAL THERAPEUTIC/EDUCATION MUSIC SKILLS)
このクラスでは音楽療法の実践で必要なリーダーシップや音楽の能力を養います。ここでのリーダーシップとは、グループで歌を唄う時に「伴奏しながら自分も唄い、声かけをする」などです。音楽の能力とは、ギターを中心とした楽器(主に伴奏用)で、チューニングや移調の練習もします。
また、臨機応変に即興でセッションを行う練習もします。

履修時間数:
<講義> 3時間(週)× 15週
<演習> 2時間(週)× 15週
主な教科書:
教科書は教授が編集したハンドブックぐらいしか使わなかったと思います。

講義時間中もほとんどが演習でした。印象に残っているのは、演劇専攻の学生を相手に即興でセッションをしたことです。後にも先にもあんな嫌なセッションはありません・・・演劇の学生(演技中)と2人きりの部屋で、教授がマジックミラーの向うから「彼に数の概念を教えて」とか言うのです。もちろん必死で演技している「彼」は私がどんなに「ワン・ツー」とか言ってドラムをたたいても「無視」・・・何を言ってもひたすら「無視」・・・そして、「ワーーー」とか言って暴れ出した・・・ほんとあれは何だったんだろう。。。

他には、教授に「コミュニケーション」など課題を与えられて、何も知らないクラスメイト相手に即興でグループセッションをして、後でクラスメイトに「今のは、どんな課題でセッションをしたでしょう?」というのがありました。これは、クラスメイト相手だったのでみんな協力的で助かりました。(もちろん実際の現場ではそうはいかないのだけど)また、グループ研究として、私のグループは老人対象の音楽療法について研究して、実際に老人施設でセッションを行いクラスでプレゼンテーションをしました。


1.3.3 MUSIC 393 (MUSIC IN THERAPY)
このクラスでは主な心理療法の理論と手法を学び、それらの心理療法に音楽をどのように適用していくかを学びます。じっさいに学内のクリニックで観察をしたり、記録の方法、セラピストとしての倫理なども学びます。また、演習の時間には、クラスメイトを相手にグループセッションをします。

履修時間数:
<講義> 3時間(週)× 15週
<演習> 2時間(週)× 15週
主な教科書:
・CURRENT PSYCHOTHEAPIES. by Raymond Corsini
・MUSIC THERAPY: GROUP VIGNETTES. by Ronald M.Borczon

課題の一つに「施設や病院に音楽療法のプログラムを新設する為の企画書を作る」というのがありました。(私はこの課題のせいで危うく単位を落とすところでした)例えば、「12歳から18歳を対象とした精神科の病院で、患者数は100人。予算は2万ドル。・・・・・」などの条件が一人ずつに与えられ、それをもとに、予算案(楽器や備品の購入)、フロアプラン(セッションルームの位置や広さ、数。トイレなど)、セラピストやインターンのスケジュール表、診断書や契約書等のテンプレート等々・・・を作るのです。アメリカにも慣れて緊張感がなくなっていた私にはかなり辛かったです。


1.3.4 MUSIC 491 (PSYCHOLOGY OF MUSIC)
このクラスでは主に音楽療法のリサーチの手法(基本は心理学のリサーチと同じ)について学びます。また、音響学などにも触れます。実際にリサーチを行う大学もあるようですが、私達はリサーチは実際には行わず、ドラフトや論文を書く練習、プレゼンテーションの練習をしました。

履修時間数:3時間(週)× 15週
主な教科書:
MUSIC THERAPY RESEARCH: QUANTITATIVE AND QUALITATIVE PERSPECTIVE. by Barbara L.Wheeler

アメリカに来て初めての学期で履修してしまったので大変だったと思うのですが、何がなんだかわからないうちに終わっていた・・・という感じです。でも、インターンでリサーチをした時にこのリサーチの教科書はとても役に立ちました。また、APAマニュアルの本(アメリカ心理学協会(?)の論文フォーマット)も役立っています。


1.3.5 MUSIC 492 (INFLUENCE OF MUSIC ON BEHAVIOR)
このクラスではDSM−IVを中心に様々な精神疾患とそれぞれに対する様々な音楽療法の手法をデザイン・分析します。また、精神疾患の薬理についても学びます。学内のクリニックの観察実習もします。

履修時間数:3時間(週)× 15週
主な教科書:
・DIAGNOSITIC AND STATISTICAL MANUAL OF MENTAL DISORDER (FORTH EDITION) --- DSM IV --- by American Psychiatric Association
・AN INTRODUCTION TO MUSIC THERAPY: THEORY AND PRACTICE by William B.Davis etc.


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1.4 音楽療法 (実習)
実習には大学に通いながら週1度行なう「フィールドワーク(またはプラクティカム)」と全ての必修教科を履修した後、通常6ヶ月フルタイムで働く「インターンシップ」があります。

現在、実習時間数や方法の改定が移行期間にあるため、学生やスーパーバイザーも少し混乱しています。詳しくはAMTA等関係各所に問い合わせて下さい。


1.4.1 フィールドワーク(プラクティカム)
1時間(もしくは2時間)×13週×4学期間、地域内の様々な施設や学内のクリニックで現場のスーパーバイザーのもとで実習します。最初は、現場のセラピストや4年生の学生についてセッションを行い、学期を重ねるごとにメインのセラピストとしてセッションを受け持てるようになります。私の場合は、学内のクリニックで自閉症児と成人の個人セッション、乳幼児早期介入(マミー&ミー)、グループホーム、老人ホームの順で各学期実習させてもらいました。やはり、学生ですので精神科やホスピスなど、センシティブなサイトでの受け入れは少ないようです。
また、週一回クラスメイトや教授とのミーティングがあり、各実習先での体験報告や質問、ディスカッションをします。


1.4.2 インターンシップ
アメリカの大学では、医療・教育以外の専攻でも多くの学科でインターンシップが必修教科となっています。音楽療法専攻でも、インターンシップはほとんどの大学で卒業必修教科ですが、そうでない大学でもAMTAによって義務付けられているので、音楽療法士を目指す学生は、その他の必修教科履修後1040時間のインターンシップを行ないます。

詳しくは、次のセクションで説明します。


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2.インターンシップ
AMTAによって1040時間(1.4に書いたように現在時間数改定の移行期間です)のインターンシップが義務づけられています。通常、フルタイム(8時間×週5日)で6ヶ月間です。
受入先の数はインターンに対して十分ではないようですが、フィールドワークとは違って、精神科やホスピスも含め様々なサイトでインターンの受け入れをしています。学生は各自、就職活動と同じ要領で願書やその他の書類の提出をします。選考方法は各サイトによって様々で、直接面接をする場合もありますが、他州からの志願者もいるので、電話面接、ビデオ、テープ、小論文などでの審査をすることが多いです。

インターンの指導者の講習では「インターンは学生であり、各サイトはその教育の場だから、インターンを人材の頭数にいれないように。」と言われました。スーパーバイザーの方針やその施設の状況にもよるのでしょうが、実際私がインターンだった時には、とにかく、「人手」として仕事を与えられました。実践の経験としてはとても有意義でしたが、一人のスタッフとしての仕事、プラス学生としての課題も沢山あるので、とても大変でした。

インターン中は、様々な課題が与えられますが、一番大きなものが「リサーチ」です。インターンシップの前半で研究課題を見つけ、後半で、リサーチを行ないます。私は一人のクライエントの個人セッションを毎日持ち、データを取りました。実際、音楽療法士として働き始めると、一人のクライエントと毎日個人セッションを持つ機会などなかなか無いので、このリサーチはとても良い経験になったと思っています。


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3.資格試験 インターンシップを修了し学位を取得すると、CBMT(The Certification Board for Music Therapists)が承認している全米公認音楽療法士の資格試験を受けることが出来ます。英語ではMT−BC(Music Therapist−Board Certified)と言います。

現在この試験はコンピュータによって行われており、指定の試験日は無く、CBMTから委託されたAMP(Applied Measurement Professionals,Inc.)という会社に各自予約を取って、各都市にある試験会場で試験を受けます。受験料は$220と結構高いです。国外での受験も可能ですので、日本での受験を希望する場合はCBMTに連絡を取ってアレンジしてもらって下さい。

試験は4択問題が150問で、3時間あります。一人でパソコンの前に3時間座って問題を解くのはかなり疲れると思います。内容は音楽理論から音楽療法の実践まで広範囲なので、試験勉強といっても練習問題を解いて復習し、あとは運に任せました。音楽理論は難しくないのですが、「Aは・・・と診断されています。ある日Aが・・・と言いました。あなたはどのようにアプローチしますか?」というような問題がいくつもあり、答えに迷いました。

資格は毎年維持費を払えば5年間有効です。5年間の間に学会などで単位を稼ぐか、また、5年後に試験を受けなければいけません。学会で単位を稼ぐのはかなり困難だと思います。