2015年1月28日(水) 21:49 濾胞性リンパ腫の生存率と余命
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濾胞性リンパ腫の告知を受けた人が最初に思うのは、
「いつまで生きられるんだろう。」
ということが多いと思います。
しばらくして落ち着いてくると、
「初回治療は効くんだろうか?
治療を無事に終えられるんだろうか?」
という心配でしょう。
現に、”濾胞性リンパ腫 予後”や、”濾胞性リンパ腫 余命”、”濾胞性リンパ腫 生存率”で検索される人が多いのです。
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R−CHOPで5年
再発後R−Bendamustineで5年
再再発後R−FNで5年
合わせて、初回治療を受けてから15年。
その間に新規薬剤の登場を待つ日
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上記は、「12月8日 がん診療オープンカンファレンス」
悪性リンパ腫の治療 神戸市立医療センター 免疫血液内科
に書かれてあったもので、それはここをクリックです。
治療に使う薬は違っても、すでに上に書かれているように、「濾胞性リンパ腫の平均余命は15年」になっているかもしれません。
それについて、もう少し詳しく考えてみましょう。
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濾胞性リンパ腫の国際予後因子
Solal-Celigny P, et al.: Blood. 2004,1;104:1258-65
昨上記画像は、国立がん情報センターにある「濾胞性リンパ腫」に書いてあるもので、それはここをクリックです。
そこに書かれてある「【分類と特徴についてさらに詳しく】」をクリックすると、上記画像が出てきます。
上記濾胞性リンパ腫の生存グラフは、リツキサンが登場するまでのものと考えた方がいいと思います。予後因子に応じたそれぞれのグラフですが、リツキサンが登場するまでは、濾胞性リンパ腫の50%生存率は10年前後といわれてきました。その表現にも問題がありますが、それは後で触れます。
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愛知県がんセンターにおける濾胞性リンパ腫の予後曲線
Overall survival in 94 patients with follicular lymphoma.
昨上記画像は、国立がん情報センターにある「悪性リンパ腫の病理組織像」に書いてあるもので、それはここをクリックです。
そこに書かれてある「【濾胞性リンパ腫についてさらに詳しく】」をクリックすると、上記画像が出てきます。
上のグラフで15年以降がフラット(平ら:誰も死なない)になっていますが、調査が出来ていないという意味で、現実にフラットになっているのではありません。
全員が亡くなられるまで追跡調査を続けないと「平均余命」は算出できませんから、今は50%生存率で代替するしかありません。
1000人の濾胞性リンパ腫患者さんがおられたら、治癒された人は何人おられるんでしょうね。
このグラフは最近のもので、日本でリツキサンが使われ始めたのは2001年の10月からですから、それがほぼ使われ始めてからのデータになります。
最初に提示したグラフに比べて、このグラフでは50%生存率が15年前後になっています。ただし、このグラフの母数(グラフを作るために集められた患者さんの数)が94人だけなので、正確性を期すためにもう対象になる患者さんの数が欲しいところです。
最初のグラフに比べると、明らかに生存率の延長が見られますが、それに寄与したのがリツキサンという薬の登場だと思われます。
「濾胞性リンパ腫」と告知された人の半数が、14年後も生きておられるということです。
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上の図は、濾胞性リンパ腫の告知を受けてから毎年の死亡者数です。
長く「濾胞性リンパ腫の予後は、10年前後」といわれてきましたが、その言葉だと、濾胞性リンパ腫で亡くなられる人が10年前後で山を描くようなグラフを形成する。つまり、10年後を頂点に、7、8年から12、3年後にかけて集中するように思いますが、そうではありません。
例えば、100人の人がある病気になられたとして、2年後に50人の人が亡くなられ、20年後に、残る50人の人が集中して亡くなられた場合、平均余命は11年になりますが、実際は2年後か20年後のどちらかなので、「平均余命は11年」という値に意味はありません。
濾胞性リンパ腫の、「予後は10年から、今は14年、ひょっとしたらそれ以上に変わっている。」というのも、似たようなもので、誤解を生じる可能性が強いものなのです。
じゃあ、実際はどうなのかですが、上の棒グラフがそれに当たります。
実際のグラフから抜き取ったもので、これも母数が少ないので、実数の少々の多少は意味がありません。数百人単位のデータを取れば、もっとなだらかな棒グラフになるでしょう。
例えば、100人の濾胞性リンパ腫患者さんがおられたとして、
初年度から6年目にかけて、毎年5人ずつ亡くなられます。 合計30人
7年目から14年目にかけて、毎年4人ずつ亡くなられます。 合計28人
その後残る42人の人が、毎年3人前後順次亡くなられます。
おそらくは、そうした中で「治癒された人もおられる」と思いますが、全ての患者さんが亡くなられるまで追跡調査されたデータは日本国内にないので、治癒された人がそれくらいおられるかは不明です。
上記の数字は実際のデータではなく、イメージですので、そういう感じで、「平均余命は14年前後」という意味を捉えていただければと思います。
じゃあ、自分はそのグラフのどこに位置するのか?
という問題が生じます。
残念ですが、それを的確に把握できる方法は現在は見つかっていないのですが、大まかな指標として下記の「予後因子」があります。
予後因子
FLIPI (Blood 2004;104:1258-1265)
※1985年〜1992年に診断された症例をもとに作成された.
--年齢 ≧ 60歳
--病期(Ann Arbor) III〜IV
--ヘモグロビン<12 g/dL
--血清LDH>正常上限
--病変のあるリンパ節領域 ≧ 5
● Low: 0または1項目該当.5年OS 90.6%,10年OS 70.7%
● Intermediate: 2項目該当.5年OS 77.6%,10年OS 50.9%
● High: 3項目以上該当.5年OS 52.5%,10年OS 35.5%
予後因子
FLIPI-2 (JCO 2009;27:4555-4562)
※2003年〜2005年に診断された症例をもとに作成された.
--β2MG > 正常上限
--最大の腫大リンパ節 > 6 cm
--骨髄浸潤あり
--ヘモグロビン < 12 g/dL
--年齢 > 60歳
● Low: 該当項目無し.3年PFS 90.9%,5年PFS 79.5%
● Intermediate: 1または2項目該当.3年PFS 69.3%,5年PFS 51.2%
● High: 3項目以上該当.3年PFS 51.3%,5年PFS 18.8%
残念ですが、ごく少数の患者さんで初回治療時から治療抵抗性の人がおられます。特別な副作用が生じることなく初回治療時に治療はできるのですが、しこりが治療に反応しないのです。反応してしこりが縮小しても、2クール目の治療をするときには縮小したはずのしこりがまた元の大きさまで大きくなっているというものです。ほとんどおられないのですが、これは厳しい状態です。何度目かの再発で、瀰漫性への転化を含めて治療抵抗性になることもありますが、深い骨髄抑制に起因する感染症が難しい状態になられた直接の原因の場合も多くあります。
グレードの3Bが瀰漫性に近く中悪性に似た進行を伺わせることや、リンパ腫細胞の骨髄浸潤を多くの血液内科医は嫌がるようですが、それらは上記予後因子に含まれていません。予後因子に含まれていないからだいじょうぶというよりも、それが予後に及ぼす影響が、まだ統計的に解明されていないのでしょう。
他にも濾胞性リンパ腫の代表的な遺伝子転座にBCL−2がありますが、濾胞性リンパ腫でも転座が認められない人が10%ほどおられますし、リツキサン単剤で効果がない人が3割あまりおられますが、それらの人の予後も不明です。リツキサンが効かなかったと思われる私が、今も長期間無憎悪の状態が続いているのですから、ひとつだめでも何もかも悪くなるというものではありません。
濾胞性リンパ腫の大半は生検後の各種検査で3期か4期とわかる人が多いので判定が難しいのですが、十二指腸原発の濾胞性リンパ腫は、より低悪性といわれており、原発部位によっても性質が若干変わる可能性がありますが、これも詳細は不明です。
それらを解明するには、濾胞性リンパ腫患者全員の各種データをデータベース化して、あらゆる方向からデータを集積加工して、データから予後を解明する方法を確立しないと、治療法の採用順位によって予後が変わる可能性もあるのです。
例えば、濾胞性リンパ腫の患者さんの初回治療に使われるのはR−CHOPが一番多いのですが、初回治療にR−CHOPを採用した場合、再発するまでの期間は平均3年前後とされています。しかし、例えば100人の患者さんが初回治療でR−CHOPを受けられたとして、個々の患者さんがいつ再発されたかというデータを見たことがありません。おそらく、血液学会に発表するなどで、その医師が所属する病院のデータを整理されたことはあるでしょうが、複数の病院に渡ってそのデータを解析されたことはほとんどないのではないでしょうか。
年間10人あまりの初発濾胞性リンパ腫患者を診ている医師は、どうしても難しい症例が集まったら濾胞性リンパ腫の治療は難しいと判断するでしょうし、偶然長く再発しない患者が続いた場合は、濾胞性リンパ腫の早期は楽観できるというかもしれません。どうしてもそういう先入観に囚われやすいので、それを打破するには身近に膨大なデータを置くのが一番です。
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濾胞性リンパ腫の進行していくイメージ図です。
治療が奏効して深く寛解にいたり、10年以上無憎悪無再発の人もおられます。
私のように、初回治療を受けて毎年再発してきたのに、治療が奏効して、数年間無憎悪無再発が得られる患者もいますから、上図は目安であって、いい方向に外れる人もいます。
固形がんで再発した場合、手術をしてもまた再発することが多いといわれます。そして、再発するまでの間隔がどんどん短くなっていくといわれます。
でも、私の場合は基本的に逆です。
初回治療で自家移植を含む大量化学療法まで受けたのに、その5ヵ月後に首にできた新たなしこりを見つけてしまいました。それを含む4度再発をしたそれぞれで治療を受けて、今は連続無憎悪期間が8年目に入っています。
「濾胞性リンパ腫は化学療法が効きにくい」といわれます。
これも誤解を生みやすい言葉です。
濾胞性リンパ腫患者がR−CHOPの初回治療を受けた場合、奏効率が90%を超え、寛解率が60%前後といわれています。
化学療法で、そんなに高い効果が得られる固形がんはありません。
同じリンパ腫で化学療法が効きやすいといわれる瀰漫性でも、奏効率や寛解率は濾胞性とさほど変わりません。
ただし、濾胞性リンパ腫でR−CHOPの初回治療を受けて寛解にいたっても、再発しやすいのは確かです。それは、濾胞性リンパ腫の幹細胞がほとんど通常細胞と同じ寝た子のふりをしていて化学療法をやり過ごし、忘れた頃になってむくっと起き出して活動するからではないかといわれています。
濾胞性リンパ腫は、化学療法が効きやすいのです。
歯茎の脹れは少し残っている程度になりましたが、
明日も歯科クリニックです。
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