
山本光利先生は「以前にはリハビリの効果が期待されていなかったが、今はかなり機能が回復することがわかってきた。病気の初期からリハビリの習慣をつけることが大切です。」※(1) と書いておられますが、どうしてリハビリで症状が改善したりするのでしょうか。
ここに中枢の神経障害による難病指定の病気という強い呪縛による、思いもよらない落とし穴がひそんでいるように思われます。
それはパーキンソン病として現れている症状のすべてが、脳という中枢の神経障害によるものだけではなく、抹消自身の問題も含まれているからではないでしょうか。もし中枢の神経障害によるものだけであれば、まずリハビリで改善されることはないはずです(もっとも病気によっては別の神経回路の働きが活性化して、回復すると言うこともあるのかもしれませんが・・・ )。
幸いにもこの点においてたとえ難病指定の病気といえども、小さなものかもしれませんが、自ら積極的に取り組むことの出来る余地が残されているとは申せませんでしょうか。
筋肉は長時間運動をしますと筋疲労をおこします。つまり疲労物質が完全に代謝されずに、すこしずつ蓄積されるために循環障害がおこり、その結果筋肉自身が持つ自己防衛反応として、萎縮硬化が起こってきます。
つまり筋肉自身は流れが悪くなってくると辛いので、少しでも動かないで済むように、萎縮し硬くなるようになってきます。
一方パーキンソン病の方は、起きている間中震え続けていることの影響も加わってか、からだは間違いなく少しずつゆっくりと、筋固縮から更にそこで留まることことなく、関節拘縮の方までへと進んでいってしまいます。これは運動し続けていること以上の方向へと、否応なくからだが傾いていってしまうということではないでしょうか。
もちろんパーキンソン病の特徴の一つである固縮は、歯車様固縮とも言われるもので、筋疲労からくる固縮とは同じものではないわけですが、その殆どのケースで、筋肉自身が固くなってくる症状も伴っているのではないでしょうか。
その固さを時間をかけてほぐすように取り組んでいきますと、震えも安定してくるように私には感じられます。
プロのスポーツ選手であれば、自分のからだの手入れや怪我の予防のために、からだをほぐすための体操を自分のトレーニングメニューの中に充分に取り入れています。中には自費で専属のトレーナーを抱えておられる人までいます。
パーキンソン病の患者さんもからだをほぐす体操を、自分の生活の中に取り入れてしまう必要があるのではないでしょうか。
以前に成人病と言われたものが、今では生活習慣病と言われるようになっています。パーキンソン病の場合は生活の中に問題の核心があるわけではなく、中枢の神経そのものに進行性の障害があるわけですから、診断された時点で自分のからだが今後どのような方向に傾いてゆくかは、おおよそわかってしまっているはずです。
そうであれば何も機能障害が出てくるまで手をこまねいてなどいずに、診断されたその日から、自ら積極的に全身をほぐすように取り組むべきではないでしょうか。
リハビリに取り組んで機能が改善するのであれば、機能障害が出る前から全身をほぐすようにしておきますと、その出現を遅らせることが出来るはずです。しかもそれは早ければ早いほどよいです。
機能障害が出ていなくとも中年を過ぎた人であれば、どなたもからだ中いたる所にメズマリを抱えながら生きているわけですから、ほぐすことでからだは間違いなく助かります。
そしてそのようなことに取り組まないでいるよりも取り組んだ方が、病気の進行を遅らせることが出来る可能性があるのではと期待を込めて思ってみたりもします。
プロのスポーツ選手は引退をすれば、自分のからだの手入れに入念に取り組む必要性から開放されますが、パーキンソン病の患者さんには今のところそれがありません。
しかもプロのスポーツ選手以上の方向へとからだが傾いてゆくことを考えますとき、どこかで、そのようなことに取り組み続けなければいけない病気になったのだと、思い定める必要があるように思われます。
作田学先生は「からだを動かした翌日は、からだが軽く動きやすくなったと実感する患者さんがたくさんいます。これはからだを動かすことにより血行や代謝が良くなり、その結果薬に対する感受性が良くなったためである、と考えられます。」※(2) と書いておられます。
もしそうであれば日頃からからだをほぐすようにしておきますと、血行が良くなり薬に対する感受性を高めておけるわけですから、そうしないでいるよりも薬を必要以上に増やさないで済む可能性があるとは考えられないでしょうか。
震えの安定化という面だけではなく、薬に対する感受性を良くするという面でも、ほぐす必要があるように感じられます。
もちろんこのようなことは、パーキンソン病の根本的解決になるわけでは決してございません。唯そのような意味では、パーキンソン病の患者さんたちに多大なる恩恵をもたらしているLドーパ自身も、なんら根本的な治療になっているわけではなく、あくまで症状の改善を目指しているはずです。
ロジャー・C・デュボワサン、ジャコブ・セージ両氏はその共著書※(3) の中で、次のように記しておられます。
「Lドーパ療法は根治療法ではありません。足らなくなっている身体経済に必須の物質を補充することを通して、症状の軽減もしくは改善を目指しています。
患者さんにとっては、この病気とうまく折り合いをつけ、前向きな姿勢で望むのが最良の方法です。故シドニー・ドロスが自分とパーキンソン病の出会いについての自伝的記録の題名の中で、このことをとても良く表現しています。
その題名は『降参なしの和解』です。」
ほぐすことはLドーパほどの劇的な効果をもたらしてはくれませんが、決しておろそかには出来ない和解のための一つの方法となりうるように思います。
※(1)『パーキンソン病 Q&A』 山本光利著 ライフ・サイエンス刊
※(2)『パーキンソン病はここまで治る』 作田 学 著 主婦と生活社刊
※(3)『パーキンソン病とたたかう患者・家族へのガイド』 第4版
ロジャー・C・デュボワサン
ジャコブ・セージ 著 創造出版刊