| 歯を抜くとき |
| 「歯を抜かれた」というのがよく言われます.自分の歯が他人(歯医者さん)によって抜かれちゃうんですから,そう思うのはしかたがないのかもしれません.でも,本当は「抜かれるべくして」抜かれたのかもしれません.「歯が抜かれる」つまり「歯が死ぬ」のは次のような場合です. 1)歯の病死 むし歯や歯槽膿漏が非常に悪くなれば,やむを得ず抜くことになります.これが歯を抜く場合のほとんどを占めています. しかし,この場合でも,どの程度悪くなったら抜くかという最終判断は歯医者さんに任せることになります.歯医者さんも,患者さんとの納得ずくで抜くのですが,抜かれる側にすれば,どこかに抜きたくないという気持ちがあるのでしょう.そこで,「抜かれた」という表現が出てきます. 2)歯の事故死 顔に外傷を受けて,歯が折れたり,歯が脱臼(元の位置からはみ出してしまう)したりすると抜かなくてはいけないことがあります.これもやむを得ないことです. もう一つ,事故死には,歯医者さんの誤診もあります.医療事故ではなくても,悪い歯と思って抜いてみてから「それほど悪くなかった」などとわかる場合もあります.ガンだと思って,肺切除をしたらガンではなかったというようなものです.これらは,一概に何とも言えませんが,歯医者さんも人間ですから,いろんな誤診はあり得ることです. 3)歯の安楽死 親不知のように使わない歯,歯槽膿漏で食事ができない歯,乳歯のむし歯のように他の歯に悪い影響を与える歯,八重歯のように,生えている場所が悪い歯,歯列矯正のために抜く歯,将来の入れ歯を考えて早めに抜く歯など,いろんな場合があります.これもやむを得ないことです. 4)歯の自然死 これは「抜かれた」のではなくて「抜けた」という場合です.乳歯は時期が来れば,ひとりで抜けるのが自然です.また,歯槽膿漏が悪くなると,永久歯でも自然に抜け落ちることがあります. 「歯の病死」であっても,患者側にすれば,歯医者さんに行くのを嫌だ嫌だと思いながら,やっと決心して行ったら「抜きましょう」と言われる.自分が悪いと思いながらも,何とかして欲しいと思って行ったのに,「抜きましょう」と言われては,やはり「抜かれた」とも言いたくなります. 他方,歯医者さんも,抜くか抜かないか迷うことはしばしばあります.抜かれたくない患者の気持ちを感じて,何度か治療してみても,やっぱりダメということはしばしばあります.そんなときは,患者に対する説明も曖昧になりがちです.そういうコミニュケーションの悪さが「抜かれた」という表現なのかもしれません. 歯医者さんが迷うが,迷うまいが,抜かれたのは歯医者が悪いと思う人は,しかたがないとあきらめることです.冷たい言い方になりますが,仮に誤診であっても,その歯医者さんを選んだのは,あなたですから,その歯医者さんの治療方針を信頼するしかありません.そのことで歯医者さんに不信感を覚えたら,遠慮なく転医することです. 歯の病気についての診断は,歯医者さんによってかなり異なる場合が結構あります.早めの転医は悪いことではありません.しかし,転々として,いつまで経っても信頼できる歯医者さんを見つけられないことも困ったことです.これもまた冷たい言い方ですが,世の中には,名医はそう多くないとあきらめ,ほどほどのところで手を打つのもやむを得ません. |
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