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俺の小説
狂ったような夏が去った。そして、今は秋が訪れている。ここは信州の軽井沢だ。日があまり差し込まぬ屋内では、暖房が欲しいほどの肌寒さだ。
旧軽の商店街はその殆どが、店を閉めている。メインストリートを闊歩していた、若者たちも都会へひきあげていた。
旧軽の西北側にある三笠の高級別荘地の中心を、カラマツ並木の通りが貫いていた。
カジュアルウエアの販売で成功したバーストリテイリングの会長である柳沢正の広大な別荘は、三笠通りの西側にあった。そのあたりの住人たちは、ほとんどが都会へ帰り、残っているものといえば、引退した裕福な家庭の者たちだけだ。
かつては、有料駐車場から溢れ返り、路上駐車で通りにくかった道も今は、すっきりとしている。
夜である。柳沢の別荘の、歩道に面した
正面から200メートル以上奥にある母屋の近くには、誘蛾灯が数本光り、十数台の車が止められていた。
別荘の二万坪を越す敷地の三方は塀に囲まれていた。コオロギやスズムシやマツムシが鳴いている。
カラマツや赤松、白樺などの林と、萩やヌルデやサンショウなどの潅木、ヘビイチゴやシダやアザミなどの草が生い茂った広大な庭を拳銃を握ったり、M1カービンを胸に抱いた30人ぐらいの男たちが警戒していた。
男たちはヘルメットに、腰のバッテリーに直結されたヘッドランプをつけていた。二人で一組になりパトロールしている男たちには、二通りの腕章がつけられていた。
黒の腕章のほうは、大日本船舶振興協会の終身会長である樺山一誠が抱える暴力団山誠会の連中だ。
一方、紫色の腕章は、グラマン事件で逮捕された金玉誉士夫が率いる暴力団青龍組のメンバーだ。
山誠会と青龍組は互いに、対立関係にある。なので、パトロール中でも一触即発の雰囲気が漂っていた。
軽井沢に夜露が出てきた。冷える。
バーストリテイリングの会長である、柳沢は1949年生まれだ。早稲田を卒業後、シャスコに入社するが8ヶ月で退社し、家業である紳士服店を継いだ。1972年のことだ。
当時の紳士服業界は、丸山商事が市場の主導権を握りつつあったことから、柳沢は業態転換の必要を感じていた。
そして、1984年に、広島にカジュアルウエア専門のバチクロを出店する。価格を低く抑えカラフルで派手な商品を中心にそろえた店内は朝早くから、夜遅くまでの営業が話題を呼び活況を呈した。
国内で安く大量に仕入れた商品を、叩き売る商法は、「安かろう、悪かろう。」といわれ、あまり収益は芳しくなかった。
しかし、それでも90年代には店舗数も20店に増えていた。この頃はすでに、国内での仕入れを見限り、人件費の安い香港や中国に委託生産を開始していた。
「カジュアルに年齢や性別は関係ない」だとか、「時代の流れに乗ったものより、ベーシックなものがいい」とかを、謳い文句に急成長を遂げた。
現在、バーストリテイリングの資本金は32億7000万円、年間売上高は約3000億円で、東証一部に上場している。
バーストは、会長の正とその弟で、社長である義正のツーマン会社であり、兄弟の気まぐれな判断で日本に散らばるバチクロの店長に抜擢されたり、年収が2000万を超える社員もいれば、40歳でも年に600万に届かない者もいる。
東京四菱銀行がバーストの、メインバンクだ。
バーストリテイリングは過小資本の上に、浮動株が少ない。浮動株が少ないと、ちょっとした株の売買で株価は、乱降下するようになる。
浮動株とは、大衆株のことで、市場を転々としている株のことだ。証券取引所は投資家保護の名目で、浮動株数や浮動株主数が一定の基準を下回ると、一部上場企業は第二部へ落とし、二部上場企業は上場廃止にするという規則を設けている。
そこで、株の買い占め屋などは、最低浮動株基準を逆手に取り、狙った会社に買い漁った株を高値で買い戻させて荒稼ぎをするわけだ。
柳沢の別荘の、贅を尽くしたサロンでは、大きな暖炉がブナや白樺の薪の炎をあげ、10人の男がマホガニーのテーブルを囲んでいた。
部屋には、ジュラルミンのトランクケースが数十個置かれている。そのトランクの前には、頬に傷のあるいかにも強面の男が、ヒップホルスターからシグザウエルP226のピストルを見せびらかしていた。
そして、トランクケースが置かれている位置とは反対のほうには、アタックザックが数個あった。その前にも、腕に覚えがありそうな屈強な男が、ワルサーP38をちらつかせながら、頑張っていた。
シグの方は、青龍組の男で、ワルサーの方は山誠会の男だ。
テーブルを囲んでいる男たちは、バーストの会長である柳沢正と社長の義正、バーストのメインバンクの東京四菱銀行頭取の浅井、四菱商事の社長岡田、それに会社乗っ取りや株の買い占めで暴利をむさぼる大日本船舶振興協会の終身会長樺山の4男の資紀と、資紀が社長をやっている、水難商事の秘書課連中5人だ。
水難商事は、全国のボート競技場を経営し、その競技場内の食堂や喫茶店だけでなく、弁当やジュース、アイスクリーム、アルコール類などの販売を一手に引き受けている。
社団法人大日本船舶振興協会は、年間4兆円以上の売上がある。
最近の競技は、ますますスピードがアップされた船が使われている。それに伴いエンジンのトラブルが増え、舵の故障の発生率は上がった。転覆や接触事故も多く、ギャンブル性が強調され、素人でもまぐれ当たりがあることから、人気を呼んでいるのだ。
財団法人船舶事業発展協会は、ボート競争の売上金の一部を吸い上げ、造船事業の助成金とするほか、その他の公益事業を行うことを目的に設立された。この協会の会長も樺山がやっている。
発展協会が振興協会から受け取る額は総売上の7パーセントだ。したがって、年間3000億円ほどだ。
発展協会は吸い上げた金の一部を交付金という形でほかの団体に与えるわけだが、受け取るほうの団体も樺山、もしくわその一族が支配している。
そのため、樺山は無尽蔵ともいえる、金を使い自分の野望に突き進んでいるわけだ。
発展協会は財団法人で、特殊法人とは違うから、樺山が交付金を受け取る側の団体の会長や理事長をしていてもなんら違法ではない。
サロンに、カクテルを積んだワゴンが入ってきた。ワゴンを押すのは、20歳のロングドレスをまとった女だ。フェラチオが上手そうな唇と、一重に見えるが奥二重の童顔の女だ。ドレスの谷間からはみ出しそうなほど発達した巨乳がいやらしい。
グラビア雑誌を最近賑わしている、小酒井若菜だ。受験浪人生が毎晩お世話になっていると言われている。少年雑誌の表紙を飾ることもよくあり、小学生のオナニーデビューを手伝ってくれることでも有名だ。
若菜は男たちの注目を浴びながら、バーストの柳沢正の傍により、軽く唇を合わせた。若菜は正の愛妾だ。
若菜はグラビア雑誌では人気だが、まだまだ売り始めの女優であるから、二人の関係は世間にはでていない。
周りの男たちが、視線のやり場に困り天井や部屋の壁を見ている隙に、若菜はそっと樺山にウインクした。
「皆様、今日はゆっくりとくつろいでください。私が皆様のお好きな飲み物をここで作らせていただきます。遠慮なくおっしゃってくださいね。」
若菜は甘ったるい、声で言った。動作をする度に、巨乳が揺れる。若菜が普通にいるだけでも、軽犯罪法違反だ。
今日、柳沢の別荘に男たちが集まったのは、樺山の水難商事が買い占めたバーストリテイリングの浮動株を、バースト側に買い戻してもらう交渉を行うためだ。証券取引所を通さずに直接取引きすることになっていた。
今日集まるまでに、幾度か柳沢と樺山の間で交渉はあったがやっと決着をつけることになったのだ。
証券取引所の上場基準によると、第一部銘柄の上場株式数が2000万株を切った場合や、株主数や売買高が極端に減少した場合は第二部に格下げされることになっている。
大日本船舶振興協会と
船舶事業発展協会とその子会社達が、柳沢のバースト株を買い漁ったのは去年の夏ぐらいからであった。
バブル期に拡大路線を一直線に突き進み不良債権を膨大に抱えてしまった大手小売業界とは対照的に、柳沢のバーストはアジアからローコストで調達した衣料品を好調に販売しつづけている。
バーストの株価は、樺山が買い始めた頃は一万円前後だったが、樺山の買いが噂されて一時期5万円を超えるまでに急騰した。
今年3月の名義書換の段階で樺山が買った株が数十万株づつ、数回に渡り出てきた。そして、名義書換の最終リストが出てきた時点では、バーストの株を700万株ほど取得していたことがわかった。
柳沢兄弟は焦った。早速、知り合いの政治家に樺山への紹介状を書いてもらい樺山資紀のところに挨拶をしにいった。
そこで、兄弟は樺山一族が買い集めたバースト株は1400万株ほどにもなることを知り、さらに驚愕した。
バースト株の総発行数は約6000万株ほどだから、1400万株は全体の20パーセントを超えてしまう。樺山はバーストに役員を数人送り込むこともできてしまう。
顔面蒼白になり震え上がった柳沢に、樺山資紀はこう言った。
「どえらいことになってしまいましたね?もし、我々が今度の株主総会であなたたち柳沢一族の実態を公表したりしたら、どうなると思います?心配しなくてもいいですよ。私達は善人だ。あなたたちを苦しめるようなことはしません、協力しますよ。」と、笑いながら言った。
プレミアム付で、株を買い戻せといったわけだ。
「ありがとうございます。しかし、1400万株ともなると、簡単にはいきません。私達だけの一存ではどうにも・・・。メインバンクである東京四菱銀行さんのほうとも相談しませんと・・・。」
結局、日を改めて交渉をすることになった。
数度、柳沢と樺山の間で交渉が行われ、柳沢側は一株当たり、19000円でなら交渉に応じると言った。
そして、今その最終交渉が行われているのだ。
99年はIT株が暴騰した年だった。創業まもないインチキ企業の株がIT関連だということで、とんでもない価格にまで上昇した。
「21世紀はインターネットの世紀になる。であるからには、これからインターネット関連の需要は爆発的に増える筈だ」という前提のもとに、情報通信関連の株が他の産業の株価がジリ貧にもかかわらず、急騰した。
しかし、いかにITが革命的であるとはいえ、情報関連の中でも創業間もない企業は赤字決算が続いており、この先本当に黒字になるかはわからないといった否定的な意見も多かった。
樺山一族は、その頃ある企業の株を買い漁っていた。ライト通信株だ。
樺山ファミリーが買い集めたライト通信株は200万株にもなる。
1994年から携帯電話の売り切り制度が導入され、日本でも大衆に受け入れられはじめた。携帯電話はますますコンパクトになった。値段も驚くほど安価になった。
携帯電話の普及に伴い、販売代理店の成長も目覚しかった。樺山が目をつけたライト通信も「HOT SHOP(ホットショップ)」というフランチャイズ店を全国に展開し、携帯の販売代理店をする会社だった。社長の名前は軽田という。
97年に、契約者数が2000万台を突破した携帯電話は、その後も二桁成長を続け、2000年には5000万台、そして現在は7000万台に迫る勢いで伸び続けている。
ライト通信は96年2月に株式を店頭公開して以来、資本市場や金融機関から積極的に資金を調達し、投資を続けてきた。そして、その資金を今後伸びていきそうなネットベンジャービジネスに重点的に出資していく。
90年のバブルの頃は、ウオーターフロント相場と言われ、湾岸開発が進み地価が青天井となり土地持ち企業の価値が膨れ上がるというものであった。
90年代終わりのインターネット相場はサイバースペースの開拓が進み一等地を占めるインターネット企業の価値が膨れ上がるというものである。
eコマースと呼ばれるインターネット上の商業活動は想像を越すスピードで拡大した。
神の国発言で有名になった当時の首相は、
インターネット革命(情報通信革命、或はIT革命とも言う)は産業革命以来の経済・社会の大変革だと国民を煽り、ネット関連株は急騰する一方だった。
軽田は笑いが止まらなかった。錬金術師のように、自分が投資した二束三文のクソ会社の株が信じられないような値段をつけるのだ。ライト通信も、設立からわずか10年ちょっとで、東証の一部に登録することができた。2000年の初めには、株価が240,000円を超えるところまで暴騰し、アメリカの雑誌で最も若い資産家の一人に選ばれた。
時代の寵児と、もてはやされていた軽田は、留まることを知らなかった。ピンは超一流の有名企業から、キリは歌舞伎町にあるラブホテルまで儲かりそうな所にはなんでも投資した。
一晩で数百万を使い、クラブで豪遊し、連日枯れ果てるまで精子を使い切った。最低でも一日、5人の女を抱ける日が続いた。
しかし、ネットベンチャー全盛の時代は短かった。元から参入障壁が低かったために過当競争がおき、ビジネスモデルが曖昧な企業は淘汰されるようになった。
ライト通信も、「寝かせ」といわれる架空契約が週刊誌に載り、株価は急激に下落した。株価は下がりつづけ、ストップ安で売買ができない状態が何日も続いたのだ。それに加え、NTTのアイモード人気も手伝い軽田のホットショップの売上は減る一方になった。
あわてた樺山が手持ちのライト通信株を売り逃げしようとすると、一日に数千円単位で値下がりしていったから、売ろうにも売れなかった。
「貴様、田園調布にあるどこぞの迎賓館を30億円でこうたそうやなあ。おんどれが、そんな心構えしてるから貴様の会社の株は下がりつづけとるのじゃ。責任とらんかい。貴様それでも人間か?」
樺山ファミリーは、ライト通信を恫喝して、保有株を引き取らせようとしたが、社長の軽田は樺山の強要をはねつけた。
軽田にすれば、自社株が100分の1以下になったのだから、樺山のことなどかまってはいられなかった。砂上の楼閣をみているようだった。
ライト通信株で痛手を被った樺山は、その損失を取り戻すためもあって、株の買い戻し要求に応じやすい企業を厳選するようにした。
つまり、ワンマン経営者が支配する同属会社で、収益が比較的大きい割に過小資本であるといった共通点を持っている企業だ。
その樺山の網に引っかかったのが、柳沢のバーストリテイリングだ。
買戻しの交渉は難航した。それは、バーストリテイリングの柳沢一族というよりも、メインバンクの東京四菱銀行が猛反発したからだ。
しかし、その交渉も回を重ねるうちに、互いの妥協点を探り合い、なんとか今日の最終段階まで持ち込めた。
バーストリテイリングは東京四菱からの特別融資と自分たち兄弟が溜め込んだ隠し金の一部を出すことによって、樺山の会社から株を買い戻し、そしてその株を時価から9.99パーセント値引きした価格で東京四菱に引き取ってもらうことで合意が取れた。
バースト側が買い戻した株を、10パーセント以上値引きして東京四菱に渡したら、東京四菱は贈与税を取られて面白くない。
東京四菱はバーストに役員を5名送りこむことができた。そして、バースト側は樺山との一件が落ち着けば、恩返しに東京四菱に3割の無償増資を行うことも決まっている。
柳沢の別荘を管理している老夫婦がサロンにはいってきた。アルコールバーナー付のワゴンを押している。香しい松露入りのコンソメ・スープからディナーが始まった。
グラビアアイドルでもある童顔巨乳の小酒井若菜がテーブルについた男達にボルドーのワインを注いで回った。
男達から、生唾を飲む音がかすかに聞こえる。若菜の濃艶な香水の匂いがいっそうズボンの前を膨張させた。
その頃、霧に包まれた柳沢の別荘の庭に4人の男たちが姿をあらわした。
4人の男は、左から田原、鈴木、桜井、中川と言う名前だ。身長は165から185と様様だった。全員、米特殊部隊用のカモフラージュ色戦闘服をまとっていた。
同じ色彩のヘルメットをかぶり、顔や首や手にも同様のペイントを塗っている。
4人とも、腰にM16自動ライフル用のキャンヴァス製の弾倉帯を巻き、それに拳銃のホルスターと、破片型手榴弾と焼夷型手榴弾を3個づつ差していた。銃剣もつるしていた。
背中には小型のデイパックを背負い、肩からM16A1自動ライフルやロープをかけている。
彼らが放つ雰囲気には、冷酷なものが漂い、身振り動作に隙はない。山誠会や青龍組のヤクザとは明らかに違う凄みがあった。
4人の戦士達は音もなく、母屋のほうへ近づいていく。
母屋の周りを警戒する山誠会と青龍組のパトロール部隊に見つかる範囲までくると彼らは二人で一組になり、左右に分かれた。
桜井と鈴木の組は母屋に向けて進む内に、一組のパトロールを見つけた。忍び寄る。そのパトロールは腕に黒の腕章を巻いていた。樺山の山誠会の連中だ。
潅木の茂みに身を隠した桜井と鈴木はカモ二人が通り過ぎてから間髪入れずに行動に入った。
そっと起ちあがった桜井が、ガーバーマークTのナイフでパトロールの男の延髄を抉った。
延髄とは、頚椎と頭蓋骨の間にある脳の最下部のボンのクボといわれている部分だ。ここを攻撃すれば、一瞬で即死させることができる。
桜井は突き刺したナイフをねじる。完全に破壊する。刺された男は、一瞬間を置いて倒れた。
鈴木も桜井と同様、もう一人の男の心臓に錘刀を突き刺していた。そいつは何事もなかったように数歩歩く。錘刀は外傷を残さずに攻撃できる武器として有名だ。刺されたものは自分が何をされたのかも気づかない。
そして、錘刀で攻撃された男も延髄を破壊された男と同じように地面に倒れた。
二人とも即死だ。
一方、田原と中川のほうも、パトロールの連中を始末しはじめていた。
中川は背中のデイパックの中にいれていた張力250ボンドでは、至近距離だと張りすぎるために張力を200ボンドに調節したコマンドウ・クロスボウの銃床を折って、テコの原理で弦を引き絞り、逆鉤に引っ掛けると、右腿に縛り付けてある矢筒から、4百グレインの重さの4枚刃の猛獣狩り用のヘッドがついた矢をつがえ、一番近いパトロールの一組の右側の男に忍び寄る。
フォールディングナイフを右手に備えた田原は、そのパトロールの左側の男へ忍び寄った。
中川はコマンドウ・クロスボウを肩づけし、銃床を右頬に密着させると、クロスボウにライフル・スコープを装着したウイリアムズ・クイック・サイド・マウントのピープサイトの方を使って、20メーターほど斜め前でぼうっと霧に霞む青龍組のパトロールの一人の首に狙いをつけた。
霧が深いためにライフルスコープではよく見えにくいからだ。ピープサイトといっても、中川が使っているものは、射撃競技用の精密な小径の孔ではなく、狩猟用の大きな孔のものだから、肉眼でみえる範囲のモノになら、何とか狙いをつけることができる。
中川はそのクロスボウを30メーターの距離で照準あわせをしてあった。
田原は、フォールディングナイフを構え、男の首部分を狙っていた。
田原は、さらに男に近づく。5メーターぐらいまで近づいたときに、二人のうち左側の男が後ろを振り返った。
驚愕の表情で口を開きかける。そこへ田原の研ぎ澄まされたナイフが男の頚動脈を切断した。
噴水のように血しぶきが空に上がる。刺された男は必死に手を首に当てるが、指と指の間から血が吹き出た。
中川はクロスボウの引き金を絞り落とした。矢が風を切る音が無気味に聞こえた。
4枚刃の矢尻は、狙った男へ一直線で飛んだ。そして、男の気管と頚椎を破壊した。首のななめ後ろから矢尻とアルミ・シャフトの矢が突き出る。
男は声をあげることもできずに、崩折れた。
田原に刺された男のほうも、倒れた。首に手をやる力も残っていないようだ。あと数十秒で出血多量と呼吸ができずに死ぬはずだ。
中川はクロスボウに矢をつがえ、ブロウガンにダートを差しこんだ。
田原と中川は慎重に母屋のほうへ歩き出した。
その時、イバラの茂みにすくんでいたメスキジと若いキジの一家が、けたたましい羽音をたてて、二人の足元近くから飛び立った。田原と中川は咄嗟に、蹲る。
「何だア?」
「どうしたああ?」
と、叫び交わすヤクザの声が響いた。
怯えたような声で仲間達と、音が聞こえたほうにむけ、叫びつづけた。少なくとも5人はいるだろう。
田原と中川は、クロスボウとナイフでは処理できないので、腰の弾倉帯につけたホルスターから、口径357マグナムのS・Wコンバットマグナムの拳銃と、これも口径357マグナムのコルトパイソンの拳銃を抜き、撃鉄を起こしておいた。
二丁とも4インチ銃身のタイプで、ダブルアクションのリボルヴァーだ。
しかし、一度銃声をたててしまえば、あとは撃ち合いになって、今まで自分達が静かに殺してきた行為は気泡になる。
二人は、敵のヤクザが静まるのを願った。
その時、ヤクザが、
「ありゃあ、キジが飛び立った音だ。」
「そうだ。おれもさっきの音は鳥かなんか
の音だと思う。」
と、言い合った。
「くそ、びっくりさせやがって・・・。」
「キジかよっ。そうなのかよっ!!」
と、ヤクザ達は言い合った。
しばらくして、当たりに再び静寂が訪れた。
田原と中川は、そっとため息をついた。そして、ニヤリと笑った。さっきの出来事で他のヤクザの位置関係がわかったからだ。これから、首尾よくカモを始末していける
わけだ。
二人は、手に握っていたリボルバーの撃鉄を親指で押さえながら引き金を絞った。親指の力をそっと抜いていくと、撃鉄は静かに倒れ、暴発はしなかった。
ホルスターに拳銃をしまい、中川はクロスボウを、田原はナイフを持ちヤクザのほうへ向かった。
桜井と鈴木は、柳沢達がいる母屋へ進んでいた。
再び、ヤクザのパトロール部隊と遭遇する。次の相手は腕に黒の腕章をつけていた。
樺山一誠が率いる山誠会の連中だ。
またもや潅木の茂みに身を隠した二人は、ヤクザが通りすぎるのを待つ。
アホ二人が猥談しながら通りすぎたのを見計らって、鈴木がそっと立ちあがった。
手に持ったガーバー・マークTのナイフが一人の男の延髄を抉る。そして、完全に即死させるために、ナイフをグリッと突き刺しながら回した。L6アロイの工具用特殊鋼を鍛造したマークTの刃は非常に粘りがあるので、刃がかけるようなことはなかった。
脊椎動物の最大の弱点である延髄を壊された男は無論、即死する。見事な死に様だ。感動する。
一方、桜井のほうは、もう一人の相手の首を、革で作った投げ縄で締付けていた。鍛錬を重ねた筋肉がフルに活用される。
相手の男はM1カービンを地面に落とし、必死に投げ縄を外そうともがくが、桜井の筋力が相手ではどうにもならなかった。
ずるずると桜井達のほうへと引きづられてくる。首をしめられているので、呼吸はおろか、声をあげることすらできなかった。
男の目は眼窩から飛び出そうになり、舌が膨れ上がってくる。そして、苦し紛れに脱糞する。
桜井自身も男に近寄り、ポケットからスリーブナイフを取り出す。右手で持った。
全長11センチで双刃の刃渡り7インチの凶器は、第二次世界大戦中に英軍特別攻撃隊の刺殺用正式ナイフであったサイクス・フェアベーンのコマンドウナイフで、刃は黒色メッキ処理されていた。
桜井は、ナイフで男の両肘と両手首の腱を切断した。
そして鈴木が桜井が締付けていた男の両膝と両足首の腱をガーバー・マークTで切断する。
桜井は投げ縄を緩め、外す。
鈴木と桜井は、男達を近くの潅木の蔭にかくした。
「くっくっく・・・・。」
と、桜井は笑った。鈴木のほうを見る。
鈴木も、同じように笑った。
二人は、さっきまで投げ縄で締付けられていた男の両眼をナイフで突き刺した。抉る。桜井が左で、鈴木が右だ。
二人はたっぷりと血を吸ったナイフを男の目から抜き、そいつの服でぬぐった。
男は気絶する。トドメを刺さないのは、後で、その男に本当の恐怖とは何であるのかを、山誠会のメンバー達に知らせてもらう狙いがあるからだ。
桜井は男の服をナイフで裂いて猿轡をつくり、男に噛ませる。男が意識を取り戻しても両手の腱を切断されているから猿轡を外すことは不可能だ。そして、両足の腱も切断されているので逃げることもできない。
桜井と鈴木は、柳沢の母屋へ向けて歩き始めた。
桜井と鈴木のペア、田原と中川のペアが柳沢の別荘敷地内にいる30人近くのヤクザ達を処理し終わったのは、桜井達が敷地内に入って1時間ほどたってからであった。
霧が薄れ、秋の虫のスダク声が再び激しさを増している。
フクロウが鳴く声を真似ながら、二組の戦士達は合流した。声をひそめてこれからのことをしばらく話し合った。
4人の中で一番走るのと逃げるのが得意な田原が庭の中にある電柱の下に行った。
背中のデイパックとライフルを地面に置き電柱をサルのような敏捷さで昇っていく。
電柱の天辺まで来ると、電話線の一部をロープで結んでおき、ニッパーを使って電話線を切断する。
切断された電話線はロープに結ばれているから落下するようなことはなかった。
田原はすばやく電柱をおり、さっきまで背中に背負っていたものをつけていく。フクロウの泣き声を真似て合図を送りながら、他の3人達の後を追った。
桜井達も田原にコノハズクの泣き声を送り場所を教えた。数分後、田原は桜井達と合流できた。
「放置プレイかと思ったぜ。」
田原は一言言った。
しかし、他のメンバーは黙殺した。
4人が母屋の近くに停まっている十数台の高級車やスポーツカーやステーションワゴンから30メーターほど離れた林のなかに集まったのは、それから10分ほどたってからであった。
その車のほとんどは鍵を指しっぱなしにしており、無施錠であることを桜井達は知っていた。
そして、今母屋のサロンで何が行われているのかも知っていた。
別荘の母屋のサロンでは、大テーブルを囲んだ男達が、メインディッシュのキジのローストを食っている。
柳沢の愛妾である小酒井若菜が男達にワインを注ぎまわっていた。鳥肉なのでボーヌの白だ。若菜の匂いと巨乳をまじかに感じるため、男達は普段よりよく飲んだ。
サロンの両側の隅で、向かい合うようにしてジェラルミントランクとアタックザックを守る山誠会と青龍組のヤクザ達はマツタケの詰め物がしてあるキジの丸焼きが放つ香ばしい匂いに耐え兼ねて腹をグーッ、グーッ鳴らしていた。
サロンの左右にある部屋では、バーストリテイリングと樺山の発展協会の経理部員が、サンドイッチと紅茶などでわびしい夕食を済ませ、トランプなどをして時間を潰していた。
桜井達は、柳沢の別荘の母屋の裏口に忍び寄った。
鈴木がズボンのバックルの裏側に隠していた二本の針金を抜いた。二本とも先端が潰された上に鍵型に曲げられ、焼きを入れてから焼き鈍し、程よい硬度にしてあった
裏口のドアのシリンダー錠の鍵穴にその二本の針金を突っ込み、それらの先端で二個のピン・タンブラーをさぐって押した。
錠のロックは外れた。
ピストルを右手に持ち、左手でそのノブを回す。
そこは広いキッチンであった。うまそうな料理の匂いが漂っている。ガスレンジにはパーコレーターのコーヒーが沸騰し、テーブルの上には、デザートがすでに用意されていた。
キッチンには人影がみえなかった。いたところで殺すだけだが・・・。
4人は物音をできるだけ立てずに部屋へはいった。そして、廊下を音もなく歩いていく。4人は、クッションクレープソールの靴底のブーツをはいているから殆ど音を立てなかった。
4人はそれぞれが愛用の静かな武器を手にし、サロンの左側の部屋の前に立った。
ドアを大きく開ける。すると、さっきまでトランプをやっていた柳沢のバーストの経理部員達が恐怖で眼を大きくしながら4人を見た。
桜井は、ニヤっと笑う。
桜井が押し殺した声で、
「騒ぐと殺す。命が大切なら、黙って言うとおりにしろ。」
と、命令した。
4人は部屋の中に押し入った。
バーストの経理部員たちは漏れそうになる悲鳴を抑えようと両手を口に持っていき震える。心臓が喉から飛び出そうだ。
桜井たちは経理部員たちの後ろに回りブラックジャックを取り出した。革で作られたその凶器は中に、砂や鉛の芯が詰められている。手首に巻きつけるための皮紐がついていた。
そして、4人は各自一人から二人づつブラックジャックで経理部員たちを殴りつけていった。鈍い打撃音がし、彼らは気絶していく。手加減しているために頭の骨にひびが入った程度であろう。
背中のデイパックから取り出したロープで手足を縛り、猿轡をかませて気絶から覚めても抵抗できないようにしておく。
桜井達4人はサロンの中の人間たちに気づかれずに、今度は右側の部屋に押し入った。右側は樺山の発展協会の経理部員がいる部屋だ。
経理部員たちは桜井達の鮮やかな行為に無抵抗のまま気絶させられる。小便でズボンがぬれているものもいた。バーストの経理部員と同じように猿轡をかませた。
左右の部屋の人間を片付けた4人はサロンの様子を伺いチャンスを待った。
すると、ドアがサロンの内側から開かれた。食い散らかされた皿が満載されたワゴンを押して、エプロン姿の老夫婦が出てきた。この別荘の管理人だ。
4人の男たちの姿を認めた老夫婦は悲鳴を上げそうに口を開け、立ちすくんだ。かなりの役者だ。
この老夫婦は桜井達に買収されていた。今日、柳沢と樺山が取引すること、別荘の警備状態、経理部員たちの部屋割りなど、桜井達が知りたい情報を提供してくれたのだ。
4人はサロンの中に飛び込んだ。
そして、4人はそれぞれが愛用のピストルを目にもとまらぬ速さでホルスターから抜いた。
マホガニーのテーブルの左右でアタッシュケースとアタックザックを見張っていた山誠会と青龍組のヤクザに狙いをつける。
桜井と鈴木が山誠会で中川と田原が青龍組だ。4人が同時のタイミングでトリガーを引いた。4発が1発のように聞こえて、鉛の弾がヤクザ達の眉間に穴をあけた。
ヤクザの中でヒップホルスターからピストルを抜けたものは誰もいなかった。
4人はテーブルを囲んで座っている10人の男たちに狙いをつけた。もちろん、撃鉄は起こされいつでも発射できる状態だ。
「所詮、ヤクザなんてこんなもの・・・。」
桜井は、散々、壁に血を飛び散らせてから倒れたヤクザのほうに目をやり言った。
「おまえら、動くんじゃないぜ。悲鳴を上げたければあげろ。まあ、誰もそれを聞いて助けにはこないだろうがな・・・。」
鈴木が言った。凄みもあるが、からかうような口調だ。
「おまえら、どっからはいってきた・・・?」
樺山資紀が震え声を搾り出した。小酒井若菜は気絶している。
「どいつもこいつも、くたばったぜ。」
中川がニヤッと笑った。
「う・・・、助けてくれ!警察を呼んでくれ。たのむ。」
柳沢正が経理部員がいるほうに向かって叫んだ。
「そいつらは、全員気絶してるぜ。」
田原が言った。
その時、樺山の秘書の一人である河口が発狂したような表情になり立ち上がる。
「・・・・・・・・・!!!!」
と、頭に響く悲鳴をあげ暖炉に駆け寄った。そして火掻き棒を掴み、それを振り回しながら田原に向かって突進してきた。
田原は一瞬怯んだが、冷静に河口の動作を見た。
河口が火掻き棒を田原に振り下ろそうとした時、田原は体を後ろに反らせてそれをかわす。火掻き棒が絨毯に当たり、薄煙がたった。
それから、間髪入れずに田原は河口の睾丸を蹴り潰した。
河口は両手を股間にやり、絨毯を転げまわる。
「うるせえんだよ・・・。」
田原は愛用のベレッタを中川に手渡し、戦闘服のポケットの一つから針と糸を出した。糸は靴縫い用の太く長い針に通されている。
河口に近づく。髪を掴んで、上を向かせた。そして、上唇と下唇を針と糸で縫っていった。素早い手つきだ。苦痛でさっき食べた未消化物を吐き出そうとするが口を縫われているので不可能だ。口だけが膨らんでくる。隙間から多少液体が漏れてくるが吐き出すことはできなかった。河口は吐き出そうとしたものをまた飲み込んだ。
それを見ていた桜井達4人はゲラゲラと
声をあげ笑ったが、テーブルに座っていた男たちは胃に詰まっていたご馳走を吐き出した。
田原は針と糸を戻す。
本当の恐怖を知った老夫婦をサロンの奥に放り出し、静かにしているようにと命令する。その二人は白目を向いて気絶した。
中川が田原から預かったベレッタを樺山資紀に向けた。樺山はよだれを垂れ流しながら小娘のように固く目をつぶる。
中川は引き金を絞った。
ベレッタは乾いた金属音を立てる。
しかし、安全装置が掛かっていたので、発射はしなかった。
樺山は歯を鳴らしながら震えはじめる。
「これから、本物の恐怖を味わってもらうぜ。」
桜井が、無気味に笑いながら呟く。
中川はベレッタの安全装置を解除し、再び撃鉄を起こした。樺山に狙いをつける。
「樺山、目を開けろ。そうでないと二度と何も見えないように眼球を抉り出してやるぞ。」
と、言う。
「ま、待ってくれ・・・・。」
樺山は悲痛な喘ぎ声とともに、目を開けた。体は震えている。
「今夜ここに集めたバーストリテイリングの株券は全部でいくらだ?」
中川は尋ねた。ベレッタの銃口をアタックザックの方へ向ける。
「1400万株だ・・・。」
樺山は喘いだ。
「柳沢さんよ、あなたのほうで用意した金はいくらだ?」
今度、中川はジュラルミントランクのほうを銃口で指し、尋ねた。
「・・・・・・・・。」
柳沢はしゃべらなかった。
「しゃべれ・・・。俺達で数えてやってもいいんだが、時間が掛かりすぎる。」
中川は、不敵な笑みを浮かべた。
「頼む。勘弁してくれ・・。金額をしゃべると樺山さんに手の内を読まれてしまう。」
柳沢は震え声でしゃべった。
「めでたいねえ・・。あんたの考えはとっくに樺山達に知られてるさ。」
「え・・?どういうことだ?」
「まあ、いいよ。後でじっくり教えてやる。でも、あんたがまだこの期に及んで樺山と取引ができると考えているなら、ますますおめでたいな。あんたが用意してきた金は俺達が全部奪うんだからな。」
「そ、そんなことは絶対させんぞ。」
柳沢は、足をがくがくさせながらも立ち上がった。
「落ち着けや。お前の金は頂戴するが、その代りに樺山が買い集めた株券は暖炉で灰にしてやるさ。有難く思えよ?」
「・・・・・・・・。」
柳沢は口をパクパクさせたが、何を言っているのかわからなかった。
「さあ、しゃべれ。現金でいくらある?ここいらでしゃべらないと、あんたのちんぽを切り落とすぜ?それとも、金抜きがいいのか?両方とも手術してやってもいい。もちろん、麻酔はかけてやれねえがな。くっくっく・・・。」
中川は、笑いながら言った。
「300億だ・・・。樺山さんとの事前交渉では一株19000円で、1400万株を買い取ることになっていたから2600億円は必要だったんだが、いくらなんでも2600億円の金は集めることができなかった。それに、それだけの金を集めるとなると警備上の問題もあるから・・。」
「き、貴様、騙したな・・・!!!!!」
樺山は叫んだ。
「お前は黙ってろ。」
桜井が言った。
そして、
「樺山さん、バースト株の買占め資金はどこから捻出したんだ?無論のこと、あんたの親父がやってる船舶事業発展協会からでたことはわかっている。だけど、あんたのファミリーがやってる船舶事業発展協会だって無尽蔵に金をもってるってことはないだろ。それに、買占め対象にあがっている企業はバーストだけではないはずだ。他にもたくさんの企業を泣かせてきてるんだろ?ライト通信株では500億円近い金が未だに凍結状態にあるそうだしな。さあ、残りの一生涯をベッドで過ごしたくなかったら、さっさとしゃべれ。」
桜井が、たんたんといった。
「俺のやっている水難商事だけではたりん資金は、親父がやっている大日本船舶振興協会が出してくれた・・・。」
「質問の意味がわかってくれてねえようだな。おまえら樺山ファミリー以外にも出資してくれた奴がいるんだろう、ときいてるんだ。」
「し、しらない・・。そんな奴はいない。」
「そうか・・。分かった。貴様を不具にしてやる前に、面白いものを見せてやる。待ってろ。」
桜井が言った。田原のほうに目配せする。田原は頷き、サロンを出た。バーストリテイリングの経理部員が閉じ込められていた部屋に入る。
そこでは、意識を回復して状況を伺っているものもいたが、田原が入ってきたと知ると慌てて気絶しなおした。
田原は5人のうち、意識を回復しているものの中から若い男を二人選んだ。他の3人をもう一度殴り倒してから、左右の手で二人のズボンのベルトを掴み引き釣るようにしてサロンに運んでいく。二人とも気絶から覚めていたので、猿轡から悲鳴を漏らす。
「心配するなよ。おまえらのような下っ端は殺さないからさ。それよりも、もっと楽しいことを味あわせてやる。」
田原は、笑いながら言った。
田原は、二人を連れサロンに戻った。そして、腰のM16の銃剣で二人の猿轡を切断してやる。手足のロープも切ってやる。
二人とも猿轡をはずされた瞬間、金きり声をあげた。
背広の内側に刺繍されているネームから、背の高いほうが新宿、低いほうが池袋とわかった。
「二人とも、服を脱いで、裸になれ。」
桜井が言った。
「そ、そんなことできるわけがない。」
「僕達はなにも悪いことはしていないじゃないか。」
新宿と池袋はわめいた。
「騒ぐな。おまえら会社の駒を今までやってて疲れたろう?今日はそんなおまえらに特別なご褒美をしてやろうとおもってな・・・。小酒井若菜を犯せ!!」
桜井は無気味に笑った。
「おまえら、会社のためならなんでもするんだろう?例え、火の中水の中にでも飛び込むんだろう?」
鈴木が調子よく続けた。
田原が、M16に装着された銃剣で柳沢のほっぺたをパチパチと叩きながら、
「さあ、柳沢さんよ、二人に命令してやってくれねえか?喉を掻ききられたくなかったらさあ。」
と、いう。
「若菜は私の一番かわいい女だ。」
「知ってるよ。あんたが若菜ちゃんに毎日いいことしてもらってるのはさ。昨日も挿入する前にパイズリだけでいったんだってな?それに今、若菜はあんただけの専用便所じゃないんだぜ?」
「ど、どういうことだ・・?」
柳沢は大きな声でいった。
「さっきいってやったじゃん?おまえはおめでたい野郎だって。おまえらバーストの計算は樺山に読まれているとも言ったよな?今となっては、読まれていたって言うべきだがな・・。」
「・・・・!!教えてくれ。樺山さんがうちの手の内を読んでいたというのは本当なのか?そのことと若菜が関係してるのか?」
柳沢は吐き出すように言った。
「教えてやるよ。小酒井若菜はあんたが愛人にする前から、そこにいる樺山資紀と出来てたんだ。要するに、樺山は若菜をスパイとして使うため、あんたに接近させたんだ。当然、今夜の取引が成功すれば一生楽に暮らせる礼金を払うって約束でな。だから、若菜はあんたらの情報を全部樺山に流していた。」
桜井が読み上げるようにしていった。
「そんな・・・。嘘に決まってる。」
柳沢は何かに引っぱたかれたような表情で呟いた。
「そんなどこの馬の骨ともわからんやつらの言うことを信じてはいけない。」
樺山が小便でぬらしたズボンを気にしながら立ち上がって、叫んだ。
「駄目よ、会長さん。そんな野蛮な人の言うことを信じたらいけないわ。」
気絶しているふりをしていた小酒井若菜が半身を起こして叫んだ。ほつれた髪と青白くなった顔が色気を感じさせた。
「今に奴らに本当のことをしゃべらせてやる。さあ、会長さん、あんたは新宿と池袋に若菜を犯すように命令しろ。」
田原は銃剣で柳沢の頬を軽くきった。
柳沢は垂れてくる血を見て悲鳴をあげながらも、樺山に
「この男たちが言ったのは本当なのか?そこまで汚い手を使うとは思わなかった。」
と、わめく。
「嘘だ。その男たちと、私のどっちを信用する?」
樺山がわめき返した。
「もういい。こうなったらどっちも信用しない。よし、俺が命令する。新宿、池袋、若菜にブチこんでやれ!!!!」
柳沢は発狂したような口調で二人の男に命令した。
「か、会長のご命令なのでしたら・・。」
「本当に宜しいんでしょうか?後で、私達のことを首だ、などとおっしゃらないでくださいよ・・・?それと、ボーナスや昇格の査定のときに、心では涙しながらも会長のご命令に従った私達の献身ぶりを忘れないでください。」
新宿と池袋はそういいながらも、若菜を見つめ服を脱いでいく。
新宿は背の高さの割には、逸物のほうは短小だ。一方、池袋のほうは背の低い割には細長いモノをもっていた。
二人とも、まだ若いからすでに勃起している。
「よし、二人ともまず若菜をすっぽんぽんにしちゃえばいいじゃん?」
桜井がニヤニヤ笑いながら言う。
悲鳴なのか、歓喜なのかわからない叫びをあげ二人は若菜がいるソファに走った。そのソファはセミダブルサイズのベッドぐらいの大きさだ。
「だ、駄目。来ないで。私に何かしたら舌を噛み切って死にます。」
若菜は叫ぶ。だが興奮の色は隠せないようだ。
若菜のそばまで行った二人は、
「会長のご命令ですから・・・。」
と、言い、若菜に飛びついた。桜井の命令道り服を脱がそうとする。ドレスを引っ張り若菜の手からむいていく。手が抜けると後は楽で、新宿が背中から若菜を羽交い締めにし、池袋が足のほうからドレスを引っ張った。スポッとドレスは若菜から外れた。
純白のブラジャーとパンティ一枚になった若菜をあらためて見た二人はさらに股間を膨らませた。
そして、若菜のブラジャーを乱暴に外し、パンティをずり降ろした。新宿が若菜の巨乳の乳首に吸い付き、池袋が若菜の膝を割った。二人とも感無量という感じで舐めまわす。
「ストップ!!ちょっと待て、お前ら。二人とも若菜の腿を大きく開いて、あそこをみんなが観察できるようにしろ。」
鈴木がニヤニヤと笑いながら、二人に命じた。
マホガニーのテーブルに座っていた男たちは若菜の秘部が見れるとだけあって一斉にソファのほうに視線をむけた。
東京四菱銀行頭取の浅井は老醜がにじみ出た顔を赤く染め、ヨダレを垂らしながら右手を股間に持っていき愚息をこすりだした。
素晴らしい巨乳をもつ童顔の若菜を犯すことができるとあって、新宿と池袋は鈴木の声が耳に入らなかったようだ。いまだに若菜のおっぱいやあそこを舐めまわしていた。
「若菜の股を開け。大開だ。」
鈴木が怒鳴りながら、二人に近づく。
M16の銃剣で二人の尻を軽くなでる。
新宿と池袋は同時に悲鳴を上げ、ソファーから転げ落ちた。若菜の両足首を掴んで左右に引っ張る。
「はにゃ〜〜〜ん。」
若菜は両手で目を覆って、叫んだ。しかし、あまり抵抗はしなかった。
若菜には露出狂の気もあるようだ。充血した花弁からジュースをしたたらせる。花芯は栗ぐらいの大きさに勃起していた。
新宿と池袋は、それをみて、
「うぅぅ・・・。」
と、うめき、暴発させた。
若菜の顔やおっぱいにザーメンが飛び散る。それを若菜は無意識のうちに、なめる。
二人は一度発射したにもかかわらず、まだ硬度を失ってはいなかった。
「樺山さん、自分の女がなぶりものにされているんだぜ?まだ平気なのか?いい加減、若菜とグルだったということをしゃべったほうがいいと思うぜ?」
中川が言った。
「私はその女とはなんの関係もない。」
樺山は否定した。
「そうかい・・。二人とも、いいぜ、ぶち込んでやれ。」
桜井が二人にウインクした。
「俺が先に挿入する。俺は係長で、君は平社員だからな。」
新宿がいった。ずんぐりしたものを若菜の蜜壷にあてた。
「ま、待て。俺が先に入れる。愛社心に上下はない。」
池袋が新宿の髪を掴み、必死に若菜からはがそうとした。新宿のものは、すでに若菜の蜜壷に吸い込まれていた。
2分とかからないうちに新宿は、
「無念・・・。」
と、言いながら四肢を痙攣させた。
今度は池袋が新宿を若菜から引きはがし、若菜に挿入する。
若菜は次第に声をあげはじめた。
東京四菱銀行頭取の浅井は、その頃すでにズボンのチャックを開き、しなびたものを愛玩していた。
その間に、田原は背中のデイパックから、大型のステイプル数本とハンマーを取り出し、サロンの堅木の床にステイプルを打ち込み始めた。
ステイプルとはU字型の釘で、田原が今打ち込んでいるのは、太さが1.5センチあった。
池袋はすでに一回発射していた。だが、若菜から離れずに2回戦目を楽しんでいた。若菜は池袋の頭の後ろに手を回し、積極的に腰を使い始めた。サロンじゅうに響き渡る嬌声をあげている。
自分のときはあまり反応を示さなかった若菜を見て、新宿が怒りに顔を赤くし、
「貴様、ずるいぞ。俺の番だ。」
と、激しく池袋の髪を掴んだ。
桜井が、マホガニーのテーブルのほうに
歩いていった。
「浅井さんよお、あんた若菜とやりたいんだろ?遠慮しなくてもいいんだぜ?東京四菱の頭取さんが一人でしごいてるなんて、みっともないぜ?若返りの薬になるかもしれんし、抱いてみたらどうだい?」
桜井はしみだらけの愚息を弄玩していた浅井に声をかけた。
「い、いいんですか・・・?」
浅井は桜井と柳沢の両方に顔を向け、聞いた。
数カ所にステイプルを打ち終えた田原は、それにロープを通す。
それを見ていた中川が,樺山の後ろに回りこんだ。
「な、なんだ!!」
樺山資紀は臆病な声をあげた。
中川に掴みかかろうとする。
中川はそれを簡単に避け、
「ふん。馬鹿が。そんなんじゃ、俺にはかなわないんだよ。」
と、言いながら、樺山の右手を掴み、手首の関節をねじ外す。左手も同じようにしてやった。
そして、樺山を田原がステイプルを打ち終えた場所まで運んでいく。背広の襟を掴まれた樺山はずるずると引っ張られる。
ステイプルのところまで運ばれた樺山は田原に足払いをかけられ、簡単に尻餅をついた。
中川は樺山の腹の上に、力強く足を踏み降ろした。
ゲエッという声をあげ、樺山は反りかえる。中川は樺山を踏みつけながら、ベルトにつけていたフォールディングナイフ用の鞘を取った。
その鞘から、ガーバー/サカイを取り出す。全長が三3/4インチの小さいものだ。柄は真珠母貝だ。開くと2.5インチほどの刃がでてくる。
中川はヤスキ鋼を使ったハイ・カーボン・ステンレスのナイフを使って、樺山の衣服を切り裂いていく。女を犯すためではないので残忍に切り刻んでいった。
樺山の体からも血が出てくる。
ズボンの当たりは小便でぐっしょりぬれていた。
血だらけで丸裸にされた樺山のものは、ジャングルの中に隠れている。
中川はその樺山のジャングルにナイフを滑り込ませた。亀頭の皮が切れる。
樺山は膀胱にためていた小便を噴出させる。膀胱の水が空っぽになったところで、中川は刃を畳んだ。
小さなナイフを鞘に収める。
中川は逆U字型に打ち込まれたステイプルに樺山の肘と膝を縛りつけ始めた。
樺山は絶叫するが、抵抗したところで無駄だと判断したのかされるがままだ。
赤ちゃんが四つん這いしているような格好で樺山は尻だけを突き出した格好になった。
樺山は両手で作られた逆三角形の天辺あたりにある顔を居心地のいい方向に向けようと、右や左の頬っぺたを交互に床につけたりしている。
結局、顎の先を床につけた姿勢におさまった。猫の威嚇のポーズのようだ。
桜井が、小酒井若菜と新宿と池袋が肉をぶつけ合ってるソファに戻る。図々しく若菜を抱いている二人を蹴り飛ばす。
桜井の鋭い蹴りで肋骨をへし折られた二人は苦痛で床をのた打ち回った。
桜井はザーメンと唾液でべとべとに汚れた若菜の髪を掴み、樺山のほうへ引っ張る。若菜はあそこを恥ずかしがって腿と腿をぴったり閉め、両手で陰毛の部分を覆って隠す。
そして、若菜を樺山の目の前当たりに、放り出す。
「浅井さん、こっちへきな。」
桜井は、目で東京四菱の頭取を促す。
「好きにして、いいんだぜえ?」
と、おどけた調子でいう。
「宜しいのでしょうか・・・?」
浅井は、柳沢のほうへ声を出した。
「どうでもいい。そんなニンフォに興味はない。」
柳沢は吼えた。
「うひょっ・・。じゃあ、早速・・。」
立ち上がった浅井は、ズボンとパンツを猛烈な勢いで脱ぎ捨てる。パンツには前に4人が攻め込んだときに恐怖で漏らした下痢弁がこびりついていた。
「き、貴様。おのれはそれでもバンカーか?恥ずかしくないのか?」
四つん這いで恥ずかしいポーズを取らされている樺山が罵声を浴びせる。
「この状況下でございますので・・。私の行為は緊急避難ということになりまして・・・。暴力の威嚇のもとに強制された行為は責任をとらなくてもいいという法律がありまして・・・。はい・・・。」
浅井は上半身に背広とネクタイをつけたまま、若菜の上にのしかかる。
嫌がって逃げようとする若菜を桜井、鈴木、中川、田原が囲んでどうしようもないようにお膳立てしてやる。
浅井は丹念に若菜のおっぱいをなめまわす。若菜の両手を腹のとこ当たりで交叉させる。寄せ集められた胸は更にボリュームを増す。ハァハァとうめき声を出す。
胸を十分に堪能した浅井は、次第に指を若菜の下半身のほうへ伸ばしていった。
花芯をなでる。あふれ出た愛液がぴちゃぴちゃと音をたてる。
そして、浅井は素早く若菜に入っていった。老人なのでゆっくりゆっくりと腰を動かす。
桜井の蹴りでのたうっていた新宿と池袋はすでに若菜のほうへギラギラとした視線で見つめていた。
「後で、またゆっくりかわいがらせてやるよお。」
と、鈴木が経理部員の二人に、下品な笑いとともにいう。
「その前に、おまえら樺山のカマを掘ったらどうだ?」
桜井が二人に言った。
「じょ、冗談を・・・。」
「無理だ・・。勘弁してくれ。」
二人は青ざめる。
「会長の命令なら、どうする?」
桜井は、バーストの柳沢のほうをむき、
「命令してくれよ。」
と、言う。
「二人とも、樺山を犯せ!!」
柳沢が叫んだ。
「無理です!!!」
「何が何でも、男とセックスするなんて、無茶過ぎる。」
二人が絶叫して、拒絶する。
「若菜を犯すときは会長の命令に従えて、樺山を犯すときは従えないというのか?そんなに愛社精神が欠如している人間はクビだ。そうでしょう、会長?」
田原がにやにやいった。
「ごもっともだ。」
柳沢も唸った。
「わかりました・・・。やります・・。」
「クビにするのだけは勘弁を・・。もしクビにされたりしたら後で組合で問題にしますから・・。」
新宿と池袋は立ち上がって、樺山のほうへ歩いてくる。
「やめろ、おまえら!!!」
樺山が悲鳴をあげ、暴れ出した。
「気持ちいいかもしんないぜ?」
と、桜井が言い、樺山の脇腹に軽く蹴りをいれ黙らす。
まずは新宿が、短小だがずんぐりと太い肉棒で樺山のアナルを貫こうとする。
池袋が樺山の尻を左右から引っ張って入れやすいようにした。
ゲイ同士が気持ちよくセックスするのではないから、肛門拡張棒や鏡など必要無い。すべりをよくするためのローションもなかった。
メリッという音とともに、新宿の肉注射が樺山に施される。
樺山は絶叫を上げた。全身が小刻みに痙攣してくる。
異様な状況のため倒錯的な気分に陥っている新宿は無理やりに腰を振った。
サロンにキチガイ地味た雰囲気が流れだした。
桜井が、樺山と新宿の行為を鼻で笑いながら、
「さあ、認めろ。樺山、おまえは柳沢会長に若菜を潜り込ませたな?そして、バーストリテイリングの動きを逐一報告させていたな?」
と、言った。
「ぐう・・・。認める。俺が若菜をさしむけた。柳沢は若菜に鼻毛を抜かれて、ベッドでいろいろしゃべるようになった。白状したんだ。さあ、俺の上に乗っかっている馬鹿をどかせろ。」
樺山は一息にしゃべった。その横では、東京四菱の浅井が巨乳の若菜と楽しんでいた。
「まだだ。もう一つ聞きたいことがある。おまえらのファミリーはバーストリテイリングの株の買占めの資金をどこから捻出した?」
桜井が、樺山に聞いた。
「俺は知らない。そういうことは俺の親父に聞いてくれ。」
樺山はうめいた。
「そうか・・。あんたも結構しぶといじゃないか?わかった・・。正真正銘のオカマにしてやる。」
桜井はそう言い捨て、着剣されたM16をもった。そして、新宿にバックから犯されている樺山のペニスの根元にあてる。
樺山はそれを身をよじって逃れようとしたため、肛門が裂かれた。出血してくる。
絶叫した樺山は口から泡を吐き、
「グハッ・・・!!わかった、しゃべる・・・。しゃべらせてください。俺達ファミリーのスポンサーは、松上電器の現在の会長だ。」
と、叫んだ。
「あのじじいか・・。お前ら樺山ファミリーと松上はどうやって知り合ったんだ?」
桜井が聞いた。
松上電器は大阪の門真に本社がある。
松上電器は日本の電機メーカーの中でも最大手の一つだ。最近ではクソニーにその牙城を切り崩されてはいるが、それでも巨大な企業集団を形成している。
この松上電器の会長である松上幸之助は、丁稚から叩き上げた立身出世型人間の神様とも言われている。
松上は明治27年、旧家の息子として和歌山に生まれた。
なにひとつ不自由ない生活を約束されているはずだったが、父親が米相場で莫大な借金を作ってしまい、暮らしは一変した。小学校を中退した松上は9歳のときに丁稚として大阪の商家の家に住み込むこととなった。この多感の時代に商才を学んだといわれている。
23歳のときに会社を設立して世界の松上電器を育て上げた。
松上は自分の会社を世界的な巨大企業にさせたあと
経済活動が保障されることによって、人類の平和と幸福が確立するのだというお題目のPHP運動というのを主催し、その運動の機関紙を発行しはじめた。
この機関紙の発行にからませて、自分にとって利用価値のある大学教授や文化人に高い原稿料を払い、自分の陣営に引きづりこんだりすることで有名だ。
松上は機関紙の発行で、メディアというものの有益さを知り、出版会社も設立させた。PHP印刷という会社で、松上幸之助の偉大さを世間一般に知らしめる為と、日本の馬鹿な消費者を説教するために作られたものだ。
また松上は、将来日本の総理や政府閣僚をそこの出身者で独占させる狙いで、長年蓄えた隠し金300億から作った政治家養成学校を経営している。松上政経塾というその学校は松上が税金を経費として落とすためもあって、授業料も衣食住も無料で受けられる。
ともかく、今は真似下電器と揶揄されるほどオリジナリティが欠如していることと、後発の電器メーカーの成長もあってシェアは落ち込んでいるが、それでも松上幸之助はここ30数年間長者番付のトップ5から落ちたことは無い。
だから、松上が溜め込んだ隠し金は莫大なものになっているのだろう。
「さあ、言え!!どうやってお前らのファミリーは松上と親しくなれたんだ?」
桜井は声をあらげた。
「死にそうだ・・。この馬鹿を何とかしてくれ・・。松上会長は英雄色を好むの例外ではなかった。90歳を超えているのに、未だにお盛んな毎日なんだ・・・・。」
樺山資紀は苦しそうに、しゃべり出した。
「若い女の蜜を吸うことが若返りの妙薬だと信じている。だから、京都の嵐山にある別邸にこもる週末は10人の女子大生を並べてパーティーをすることになっている。会長は知ってのとおり、小学校を中退している・・。あははっ・・・・。今の世の中では信じられないかもしれないが、そのことがコンプレックスとなって女子大生狂いなんだ・・。」
樺山は途切れ途切れに話す。
「あのクソじじいめ・・。国民には道徳本をだしやがって、若い女のあそこを舐め舐めしまくってやがるのか。」
鈴木がうらやましげに言う。
「舐め舐めだけではないだろう。自分のあそこだってナメナメしてもらってるはずだ。それに、ハメハメだってしてるに決まっている。」
田原がいった。
「松上会長に可愛がられる女子大生は神戸に本拠を置く山田組が世話するアルバイトで、ほとんど素人だ。10人ずつが毎週交代で派遣されることになっている。松上は毎週200万、女子大生には一人につき50万円ずつ支払ってきたからトラブルは皆無だったし、どちらもいいことづくめだった。」
「ほう、それで?」
桜井がいった。
「それで、松上会長はあの年だから、生でやっても妊娠する女もいなかった。」
「つまり空砲ってわけなんだな?」
中川が言う。
「でも、松上は2年前にフィリピンに旅行したんだ。そこでルーマニアの女医から若返りの秘薬の注射をされた。その女医は世界的に有名な女で、誰もが知ってる超大物が何人も信者になるほどだ。日本では最近、バイアグラというのが流行したがあれと似たようなものかもしれないな・・。俺の親父も3年に一度その女医のところで治療をうけているんだ・・。俺は若いから
まだだがな。」
「それから?」
桜井が、無表情でいった。
その時に、樺山を犯していた新宿が低いうめき声を出し、精子を放った。樺山は絶叫する。新宿は肩で息をつきながら、樺山から降りた。
東京四菱の浅井はまだ若菜とプレイの最中で、全身汗だくになっている。口を半開きにさせ、恍惚としている。若菜はぐったりとしながらも、上の口で池袋の逸りきったちんちんを、下の口で浅井のものをくわえて喘いでいる。
中川がM16で樺山の尻を軽く撫でながら、
「さあ続きをはじめろ」
と、催促する。樺山は怪鳥のような声をあげて、
「ルーマニアの女医の薬は松上会長に劇的に効いた。そして会長が相手をした女子大生のうちで妊娠するものがでてきた。しかし、所詮は金に目がくらんだメス豚どもだ。相手が誰なのかの断定はできなかったし、騒ぎ立てるものは松上が特別に払うボーナスと山田組の威圧で黙らせてきた。そうやってスキャンダルになるのを防いでいたんだ。妊娠騒ぎがあってからは女子大生だけにピルを飲ませて事故を未然に防ぐようにした。」
と、さっきより幾分、冷静に話す。
「ところが、また奴は女を腹ボテにさせてしまったんだな?」
桜井が鋭く指摘した。
「そうなんだ・・・。ピルを服用すると体に悪いとか、太ると信じてる奴がいて・・・・。松上会長はナマが好きだしな・・・。しかも運が悪いことにその孕ませた女のオヤジというのが大阪地検の検事だったんだ・・・。」
樺山はしゃべった。
「その娘は検事にベラベラと話してしまったんだ。松上会長のしていることや、妊娠した経緯をだ。そして、そのバカ娘の親父は怒り狂った。慰謝料だけでは済まさない、娘と結婚しろと迫ってきた。生まれてくる子供もしっかり認知しろと・・・。」
樺山は半笑いでいった。
「そいつは面白い話じゃないか?」
桜井はゲラゲラと声をあげた。
「しかし、松上会長は否定した。自分はもうすぐ100歳になる年齢なんだから、子孫を残せる肉体ではないと突っぱねたんだ。それを聞いた検事は、娘に子供を産ませてから、血液検査以外にもありとあらゆる手段を用いて立証して見せると言った。」
「最近は、とてつもなく進歩した検査方法があるらしいからな。」
田原が言った。
「悩んだ末に松上会長は、神戸の山田組に、検事を灰にしろと命令した。そして、バカ娘のほうは堕胎医のところに送り込めといった。しかしだ・・・、いくら日本最大の組織暴力団である山田組でも相手が検事となると迂闊には手を出せない。松上会長と山田組の人間が対策を練っている間に、検事の方が、松上会長側の情報を掴んでしまったんだ。大阪府警に自分と娘の身を保護させた上に、松上会長の証拠固めに動き始めた。」
「松上は相当びびっただろうな?」
「そうなんだ。なんせ松上と言えば、大阪の政治を牛耳っているといっても過言ではないからな。まさか、警察が動き出すとは夢にも思ってなかったらしい。そして、かねてからたんまり政治献金をしていた政治家連中に泣きついたんだ。なかでも、一番熱心に松上会長の為に頑張ってくれたのが、中野広務先生だった。」
「ほう、あいつか。政界の闇将軍とか、同和利権屋とか言われてる中野のことだな。1998年に保守党総裁選に出馬して古淵に敗れてたな。2001年の総裁選にも出馬する予定だったが、アメリカのマイム誌に生い立ちを書かれて結局所属してる派閥の領袖である橋爪龍太郎の援護をすることになったらしいが・・・。」
田原は知ってることをアピールした。
「いずれにしても・・・、俺たち樺山ファミリーは次の総理に中野先生がなってくれんことには、うかばれんのだ・・・。くそが・・・、俺様をこんなひどいめにあわせやがって・・・、中野先生に頼んで貴様らを全員死刑にしてやる!!今の法務大臣は橋爪派だと言うことを知らんのか!!!!」
樺山はわめきちらした。
「ふん、好きにしろ。」
桜井は銃剣で樺山の尻の穴を突き刺した。軽くだ。
「わ、悪かった・・・。」
樺山はそう言いながら、尻から下痢弁をボトボトと垂らした。汚物が出てくるたびに傷口にしみて、苦痛のうめきを漏らす。
桜井は樺山のアナルからM16を抜き、アイス・ペールの氷水に付けて、汚れを取った。
中野広務は京都でも有名な同和地区出身で、中学を卒業後国鉄職員を経て、町議、町長、府議、副知事と段階的に政治家としての地位を上げてきた。愛のない社会は暗黒であり、汗のない社会は堕落であるというのが政治信条である中野は、昭和58年に衆議院議員として初当選している。その後は、けんか上手の武闘派の一面を見せたり、沖縄米軍基地問題では人情家としての一面を見せるなどして、政界の風見鶏などとも言われている。
「さっきの、続きをしろ。」
桜井が、銃剣を拭きながらいった。
「知っての通り、中野先生は現在の政界で圧倒的な派閥を持つ橋爪派の幹部だ。現在の法務大臣も橋爪派だし、検察や警察にも橋爪派の人間がごろごろいる。中野先生は松上会長が孕ませてしまった女子大生のオヤジを大阪地検の検事から東京高検の検事正に抜擢し、バカ娘のほうには3億円の慰謝料を払うことで片を付けてやったんだ。」
「ほう。その親子もなかなかやるじゃないか。」
鈴木が言った。
「そして、その検事と中野先生が交渉している過程で、松上会長がトンネル会社を通じて、サラ金業者たちに運転資金を貸し付けていることがわかったんだ。」
樺山が言った。
「松上という奴は、本当に大した野郎だな。世間には修身だとか道徳だとか抜かしやがって、女子大生を孕ませたり、あくどいサラ金業者のスポンサーになってやがるとはな・・。」
中川が呟いた。
「年利100パーセント以上も借り手から巻き上げる悪徳サラ金業者に、松上会長のトンネル会社は年利40パーセントで運転資金を貸し付け、その利子だけでもすでに2000億円は稼いでいることがわかったんだ・・。」
樺山は続けて、
「それなのに、あのドケチで有名な松上会長はせっかくお世話になった中野先生に、たったの2000万円しか謝礼を払わなかったんだ。激怒した中野先生は、政治家という職業上、もっと金をよこせとは言えないので俺の親父に話をもってきたんだ。」
と、言った。
「樺山一誠にだな。お前の親父も中野も商業右翼だから、気が合うんだろうな。」
田原が言った。
「商業右翼ではない。愛国の志士だ。」
樺山が怒鳴った。
「ふん、何とでも言え。」
桜井は銃剣で樺山の尻の穴を突き刺そうとした。
「わ、分かった、謝る。悪かった。商売の為に右翼を名乗っていると認める。その通りだ。」
樺山は必死に哀願した。
「気取るから痛い目にあうんだぜ。ちょっとは利口になれ。」
樺山のアナルを突き刺そうとしていた銃剣を下に降ろし、桜井が言った。
「樺山ファミリーは新聞やメディアに強い。松上に食らいついている山田組には敵わんが、山誠会という護身用の団体ももっている。」
「暴力団が護身用の団体だと?笑わせるな。」
「もし山田組が俺達を潰そうとしても、警察が動いてくれる手はずになっているので、何かあっても安心だ。」
「それで?」
「そして、俺達の陣営の新聞である山経新聞にこんなタレコミがあったのだが、と言って、山経新聞の編集長が、松上会長の女子大生狂いの件を書いたものを松上に持っていったんだ。」
「ほう、なるほど。」
「すると、松上は慌てやがった。すぐに中野先生に電話してきた。だが、中野先生は、‘‘これいじょうの面倒は見切れない、樺山ファミリーを紹介する。後は、樺山ファミリーに任せたらいい‘‘と、答えたんだ。打ち合わせした通りに・・」
樺山は自嘲するように、半笑いでしゃべった。
「それから?」
桜井は、促した。
「その後、うちの親父は松上と会談した。ドケチの松上はしぶとかったが、結局決まったのは、800億を月3パーセントの利息で松上が樺山ファミリーに貸すということだった。こっちは、松上が闇金融のスポンサーとして影であくどい事をやっているという話まで持ち出してやったんだが、松上はその頃には本性をむき出して、樺山ファミリーに月3パーセントの利息で貸し付けるよりはサラ金業者に貸し付けたほうがよっぽど儲かるんだとギャーギャー抜かしやがった・・・」
「その800億がバーストリテイリング株の買占め資金に回ったんだな。そして、おまえらは株をバースト側に買い戻させて儲けたうちのいくらを中野に献金するつもりだったんだ?」
「中野先生にお渡しするのは15億だ。今度の保守党総裁予備選の浮動票を買収するのに必要な金の一助としてな・・・。糞・・・、バースト株で大儲けする筈だったのに、その買占め資金まですべておまえらに強奪される羽目になるとは・・・・、畜生、貴様らただではすまさんからな!!!」
「気の毒だが、まあ自業自得だな。そう思ってあきらめてくれ。」
鈴木が言った。
「でも、おれたちをどうするかより、怒り狂ったお前の親父のことを考えたほうがいいぜ?お前は勘当されるかもしれんぜ。」
中川が言った。
「俺たちに奪われた金を損金として税務署に認めてもらうんだな。お前らのファミリーは日本の権力に強力なコネがあるそうだからな。」
桜井が言った。
「ところで、おまえらのファミリーはバーストリテイリングやライト通信株のほかにどんな銘柄で大損してるんだ?」
田原が話を変えた。
「大損ではない。俺達が買い占めてやった株はどれも金の卵だ。今の樺山ファミリーがあるのも俺たちファミリーの日本の将来を見通す先見の明があってこそなんだ。おまえらには口が裂けても言うわけにはいかん。」
樺山が言った。
「忘れたのか?」
田原が深く渋い声で言った。
「思い出させてやる。」
と、言いながら田原は腰のスキャバードからガーバー/サカイのナイフを取り出した。それをクロームカーバイドで焼きつけした研ぎ板で入念にタッチアップする。
刃と研ぎ板がシュッ、シュッと擦れる音と、田原の不敵な笑みが樺山を臆病にさせる。
「な、なんだ。なにをするというんだ。」
先ほど漏らしてから溜まった小便を少し漏らしながら、樺山が言った。
田原は、マホガニーのテーブルで4人の戦士のほうを見ていた四菱商事社長の岡田の髪の毛をナイフでカットしていく。岡田は呆気なく気絶する。椅子から転げ落ちた。田原は、樺山のほうを向き
「おまえが自力では動けないようにしてやるんだ。」
と、言った。
ナイフの切れ味は抜群にいい。
4つのステイプルに両手両足を縛り付けられている樺山の右足首のアキレス腱を田原は切った。
「さあ、しゃべれ。」
桜井が言った。
「し、知るもんか。」
樺山は泣き声をあげ、言った。
「馬鹿が・・。」
田原は左足首のアキレス腱も切断した。
桜井が樺山を足で仰向けにさせた。樺山の男根はジャングルの中に隠れてはいたが先っちょのほうだけはうっすら顔を見せていた。漏らした小便でぐちゃぐちゃになっている。
「今度こそは本当のオカマになるかもな・・。」
田原は深みのある声で言った。
「やめてくれ、しゃべる・・。だが、親父は息子の俺にも本当のことはあまりしゃべってはくれないんだ。俺の兄貴達も同じだ。それに絶対口外しないと約束させられてるからあまり俺にはわからんのだ。」
樺山は言った。
「だからどうした?」
中川が言った。
「だから、詳しいことはわからないんだ。でも、俺が噛んでいる買占めについてだけは話す。分かってくれ・・・・。今俺たちファミリーが買い占めているのは、焼肉屋こさかいの株だ。20パーセントの株を買い占めることができた。」
樺山は、自分の大事な部分に両手を当てながら言った。
「焼肉屋こさかい?どんな会社だ?」
中川が聞いた。
「・・・・・・。」
樺山は黙ったままだ。
「よし、あんたなら知ってるだろ?銀行屋さん。俺たちに分かるように業務や財務の内容を教えてもらおうか。」
桜井が、若菜を堪能しきって痴呆のように口をあけている浅井に言った。
東京四菱銀行頭取の浅井は、やる事をやった後なので虚脱していた。桜井の声を無視した。
「さあ。時間がないんだ。」
田原が浅井の腿を蹴った。
浅井は蹴られたショックで飛び起きる。
その横では、ぐったりした若菜を新宿と池袋の二人がまだ犯し続けていた。若菜はされるがままだ。精液や唾液が異様な臭いをあたりに発散させている。臭かった。
浅井は、さっき脱ぎ捨てたズボンをはきながら、
「ちょっとだけお待ちください。すぐに説明いたしますので・・・。」
と、言った。
浅井は背広姿に戻った。光の加減で色が玉虫色に変化するフィンテックスだ。イギリス製だ。
浅井は乱れた髪を綺麗に直す。
「貴様、恥を知れ。それでも銀行員か。」
樺山が怒声をあげた。
「もういいか?説明してくれ。」
桜井が言った。
浅井は、ネクタイの位置を直しながら
「ええと、焼肉屋こさかいと申しますと、確か資本金は9億、1980年設立の焼肉店チェーンで御座いますな。中部地区が地盤でして、本社は岐阜にあります。割安な価格と奇抜なコスチュームをした社長が消費者の支持を集めておりまして、焼き鳥・とんかつ主体の新業態店を展開したりもしております。「焼肉屋こさかい」を掲げて直営とフランチャイズチェーンの両輪で多店舗展開に乗り出してます。また備長炭を使った焼き肉店「炭火こさかい」なども・・・・・・−。年間売上高は、ええと、約130億円ほどになりましたかな。1999年に店頭登録しておりまして、現在の株価は一株800円から1000円の間をいったりきたりのボックス相場だったとおもいますです。」
と、言った。
「焼肉屋こさかいの社長は何て奴だ?」
中川が言った。
「確か、創業した小酒井哲史が会長に退いてから、井川という男に代わったと記憶しておりますが。」
「ワンマンなのか?」
「現在の社長は、銀行出身のエリートでして、主に焼肉屋こさかいを一部上場企業にのし上げるために雇われたのですが、会長の小酒井が今も権力を握っていると存じておりますです。」
「過小資本なのか?含み資産は大きいのか?」
「そのようでして・・・・。」
「その他に、焼肉屋こさかいについて重要なことは何だ?」
「私はバンカーでございまして、公表されている以外の情報については軽々しく口に出すことは法律違反になりますので・・・。」
「そうかい、さっきは嬉しそうに小酒井若菜を犯してたじゃないか?実はな、貴様が若菜の巨乳を揉みながらヨダレを垂らしているところや、ハメハメしているところを俺の仲間がデジカメで撮影していたんだぜ?フラッシュは使わなかったがな。見せてやろうか?」
桜井は、そういって、クソニーのP5の液晶画面を浅井に見せた。
浅井は、P5を握り締めてうなった。
「信じられん・・・・。合成に決まっている。」
「チャノンのEOSにもばっちり写させてもらったぜ。これを焼き増しして総会屋連中に配ってやろうか?大喜びすると思うぜ。俺たちよりたちがわりいだろうな。」
鈴木がゲラゲラ笑いながら言った。
「そ、そんな・・・・・。終わりだ・・。」
浅井は、P5のバッテリー入れの横に挿入してあるメモリースティックを取り出して、それを握り潰しながら、鈴木のカメラを奪おうと突進してきた。
鈴木は、EOSにつけたストラップの端を握り、それで浅井の右耳の上部分を殴りつけた。EOSはバキッという音を残して潰れる。
浅井は、白目をむいて気絶した。カメラをぶつけられた所からうっすらと血がにじんでくる。
桜井が、浅井の背中を蹴って、活を入れてやる。浅井は呻き声とともに意識を回復した。
「浅井さん、素直にしゃべってくれたらフィルムをあんたに返してやってもいいんだぜ?」
桜井が優しそうな声でいった。
「本当ですか?」
浅井は飛び上がりそうな勢いで、聞き返した。
「ああ。」
「わかりました。実は、焼肉屋こさかいについて当行でキャッチした内密な情報があるんです。」
「聞こうか。」
桜井がいった。
「ご存知のように、先ほどBSE問題が騒がれています。それで牛肉を扱う業界ではめっきり売り上げが落ちてしまいました。焼肉屋こさかいもその例外ではなく、かなり厳しい状態になっているようです。ここ2年ほどの間に異常ともいえるハイペースでの出店を続けていましたので業績のほうが芳しくないようです。」
浅井は言った。
「こさかいはフランチャイズ展開もしているんだろう?」
中川が聞いた。
「全国展開で業界トップになるためには、資本力が不足しているこさかいはフランチャイズという形で全国の土地持ちや既存の焼肉店の経営者に出資してもらう方法でこれまでやってきました。フランチャイズというのはご存知の通り、フランチャイジーに店の開店資金を出してもらい売り上げの一部を本部に支払って貰う代わりに、本部が経営のノウハウを提供するというものです。その為、出店するための資金負担は少なくてすみます。」
浅井が言った。
「で、内密な情報というのは一体なんなんだ?」
桜井がいった。
「はい。実は焼肉屋こさかいは、業界1位のシェアを誇る埼玉亭に吸収合併されるという計画が具体化しているようなのです。その計画が実現することにより、双方とも大きなメリットがあるようでして・・・。」
浅井が思わせぶりな表情で言った。
「やめろ。それ以上しゃべるんじゃない。貴様、ただじゃすまさんぞ。」
樺山資紀が言った。
「し、しかし、私の今置かれている立場も考慮していただきたいものでして・・。」
浅井が言った。
「これ以上しゃべりやがったら、樺山ファミリーがお前の銀行に預けている金を全部引き上げてやる。」
「そうなんですか?資紀さんはご存じないのかもしれませんが、あなたのお兄様が当銀行に預けてあった樺山ファミリー関係の預金を先日、全て引き上げられていきましたよ?従いまして、私にはあなたのそのような、御脅迫、いや御恫喝は無意味なことでして・・。」
「くそ・・。」
「うるさいんだよ、おまえは!!」
田原が、樺山の顔面に強烈な蹴りを入れた。トマトを潰した時のような顔になった樺山は、折れた歯を吐き出して喘ぐ。
「業界一位の埼玉亭は、焼肉屋こさかいを吸収して何のメリットがあるんだ?」
桜井が聞いた。
「はい、埼玉亭は名前の通り埼玉県に本社がありましてそこが経営の地盤です。店の出店地域もほとんどが関東圏です。低価格メニューをテコに、焼肉屋こさかいと同じく出店ラッシュを続けておりました。しかし、狂牛病問題という深刻なダメージを受けたことと、以前からやっていたデリバティブ運用の失敗で会社の経営が苦しくなっていたのです。しかも、この会社は本業の焼肉店以外にも経営の多角化と称して、書籍販売や、ソフトウエア開発事業などにも手を出しておりました。もちろんこれらの多角化はオーナー一族の私服を肥やす面が強く、赤字経営が続いております。今までは、会社のほうが順調に成長しておりましたので問題はなかったのですが、ここのところその発展にもかげりが見えてきたようです。そこで、経営の抜本的な見直しをしているのです。焼肉屋こさかいは、岐阜県が地盤でして主に東海地方、関西地方に出店をしております。その為、両者が合併しても出店地域の重複はあまりなく、より一層のスケールメリットを追求できるのではないかと考えているようです。当行の調査では、埼玉亭が焼肉屋こさかいを吸収合併する場合の株主比率は、埼玉亭の株が1に対して、焼肉屋こさかいが4.5株とし、合併後は焼肉屋こさかいは解散する、というものだそうでして・・・。」
浅井はしゃべった。
「どうして、小酒井はその条件をのんだんだ?」
桜井が聞いた。
「焼肉屋小酒井の小酒井哲史は、ここ数年、車の蒐集に凝っておられまして、特にイタリア車には狂の字がつくほどなのです。財団法人小酒井記念会というのをつくり、岐阜県の稲葉山城の近くにある自宅の広大な庭のなかに、ムゼヨ美術館というのをお建てになられたのです。正しくパラノイアという言葉がぴったりなほどでして・・。」
「てめえで、てめえの記念会を作るなんて芽出度い野郎だな。」
田原が笑った。
「俺だったら、車の変わりに世界中の巨乳の美女を集めてハーレムを作るがな。」
鈴木が真剣な顔で言った。
「小酒井哲史はそのような車蒐集狂でして、埼玉亭に株を引き取ってもらった後、引退して、蒐集三昧を送ろうとしているようでして・・。」
「変わり者だな・・・。」
「はい、コレクターというのはそういうものだそうでして・・。」
「で、なぜ樺山ファミリーはそこまでして、会社の乗っ取りや株の買占めで大儲けをしたがってるんだ?もう十分すぎるほどの金は集めただろうに・・・。あんたなら知ってるのかい?」
桜井が真剣な表情で浅井に聞いた。
東京四菱銀行の浅井は、
「さあ、そこまでは当行の調査では把握しておりません。・・・、ほ、本当です。」
と、言った。
「樺山ファミリーは、株を買い占めて企業側に肩代わりをさせてボロ儲けをするだけではなく、ファミリーにとって利用価値があるとみた企業についてはその会社を乗っ取ったケースが幾つかある。今、樺山ファミリーがそのようなことを仕掛けている企業は知らないか?」
桜井が浅井に聞いた。
「・・・・・。わかりません。」
浅井は少し考えた後に、言った。
「よし、本人から聞き出そうか。暖炉の火をもっと盛大に燃やしてくれ。」
桜井が、田原に言った。
田原は、柳沢と一緒に暖炉へ向かう。暖炉の脇に積んであった白樺やクヌギの薪を暖炉の熾火の上に大量にヤグラに組み、ダンボール箱に入れてあった落葉松の落ち葉を暖炉に放り込んだ。
落ち葉はゴーっと言う音とともに燃え、薪に燃え移っていった。
「そこの水難商事の人たち、持ってきたバーストリテイリングの株券を暖炉で焼却してくれ。」
桜井が言った。
「何てことをしやがるんだ。」
樺山が起き上がろうとした。しかし、アキレス腱を切断されているので再び横転した。
「む、無理です・・。」
「そんなことをしたら、私たちは後でリンチを受けます。それに家族だって同じ目にあうはずです・・・。」
田原にボロ雑巾のようにされた河口を除く4人の秘書課員たちが言った。
「絶対にできないんだな?」
桜井がそう言いながら、4人の秘書のうちの一人に近づいていった。
桜井は秘書の一人の襟首を掴み、薪が赤々と燃え盛っている暖炉の中に顔面から突っ込む。
男は怪猫のような声を上げた。顔はたちまち火ぶくれてくる。
髪はスチールウールのようにちりちりになった。
桜井は、もがき苦しむその男を暖炉の傍にほうり捨て、
「次、こいつと同じ運命になりたい奴はどいつだ?」
と、言った。
そのとき、残りの3人の秘書のなかで、一番貫禄のある男が、
「やめてくれ。」
と、言いながら、桜井達がサロンに押し入ったとき、真っ先に死んだボディーガードの所に向けて走った。
バーストリテイリングの株券が入っているアタックザックに向かうと見せかけたその男は、
転がっている死体の横に落ちているワルサーP38を掴んだ。
ワルサーP38とは、1938年にナチスドイツ軍の制式拳銃として採用された9連発自動拳銃だ。この9ミリ・ルーガー口径を使用するP38の機構は、引き金を絞っただけで撃鉄が往復運動を行うダブルアクションで、その優れた性能と完璧ともいえる安全機構は、現在でも世界最高の自動拳銃のひとつといわれている。第二次世界大戦に咲いた暗い華だ。
その銃把を両手で握りながら桜井たちのほうへ振り向こうとする。
中川がクロスボウを肩付けして、引き金を絞った。4枚刃の矢じりがついた矢は、男の胸に吸い込まれるように刺さった。
矢じりが背中から抜ける。
男はワルサーを放り出し胸を押さえながら、
「女房子供をよろしくお願いします・・・。」
と、口から血を出し言った。
「お気の毒にな・・・。あんたの遺族には俺達から金を送っておいてやるよ。樺山のために死ぬなんてバカが・・・樺山がおまえの遺族の面倒なんぞみるわけがないだろう。」
桜井が沈痛な面持ちで言った。
田原が、クロスボウで打たれた男に近づき、ワルサーP38を拾った。撃鉄が起こされていないのを確認して腰の弾倉帯の内側に差し込んだ。
しらけムードが漂った。桜井たち4人は胸の中の洞窟に住み着く魔物と対峙する。
田原は、アタックザックを両手に持ち、桜井たちの方へ歩く。
その一方で、中川がアタックザックとは反対側の青龍組の男が持っていたシグザウエルを拾い、起こされていた撃鉄を親指で押さえながらそっと引き金を絞る。引き金を絞りながら親指の力を、ゆっくりと抜いた。撃鉄は静かに倒れる。撃針を激しく打って暴発させるようなことはない。中川はその自動拳銃を弾倉帯の内側に差し込む。
桜井たち4人の真ん中に置かれたアタックザックは3つあった。
一つ目の袋には、バーストリテイリング株の千株券が詰まっている。
二つ目は1万株券と5万株券で、三つ目は5万株券と10万株券がそれぞれ詰まっていた。
全部で一千万株を超えるバースト株がある筈だ。桜井以外の3人が一つづつアタックザックを持ち、暖炉の前に運んだ。
「くそ、待て。やめろ。気違いどもが。殺してやる。」
と、狂ったように叫ぶ樺山を見て、4人はニヤニヤ笑う。
アタックザックを開き、手始めに20枚ほどの1万株券を樺山に見せてから、暖炉の中に投げ込んだ。株券に火が移る。
樺山は悲痛な声を上げた。
「さあ、言え。なぜ、お前達樺山ファミリーはそこまでして金集めに励むんだ?その狙いは何だ?」
中川が言った。
「脅しには乗らん。お前らが株券を全部燃やすはずはない。どこかのブローカーに持ち込んで換金しやがるに決まっているからな。」
樺山が言った。
「いや、俺達はそんなにバカではない。株券を証券会社やブローカーに持ち込めば、そこから足がつく。お前が今しゃべれば、一千万株だけは残してやる。」
桜井が言った。
「本当か?」
「ああ。」
「約束してくれ?本当なんだな?」
「証文でも書きましょうかね?」
鈴木がおどけていった。
「ああ、そうしてくれ。もし半分でも株券を取り戻せれば、俺は何とか親父に勘当されずにすむかもしれん。」
樺山は手を合わせて、頼んだ。
「無理だ。筆跡を残すことはできない。俺達を信用してもらうほかはないな。」
桜井が言った。
「信用なんかできるか。」
「じゃあ、約束は取り消しだな・・・。」
と、言いながら桜井は株券を鷲づかみにして、更に火の中に投げた。
「くそ・・・。まるで俺自身が焼かれているような思いだ・・。」
「どうだ?しゃべるきになったか?」
「ああ、だが、俺は本当に何も知らんのだ。親父は息子である俺達にも具体的なことは何も言ってくれん。しかも、親父のやることはどれもスケールがでかすぎて、まったく想像がつかないんだ・・・。ただ、俺は親父の命令で動いているに過ぎない。本当に知りたいなら、親父に直接聞けばいいだろう?」
「ああ、そのうち樺山ファミリーが築き上げた醜悪な巨城をじわりじわりと壊していき、貴様の親父の度肝を抜いてやる。」
「そんなことできるわけがない。親父には常に20人のボディーガードがついているからな。今日ここであったことを親父が知れば、更にその人数を増やすだろう。100人でも200人でも護衛をつけるはずだ。」
樺山がわめいた。
「勝手にしろ。俺達は今日、庭をガードしていた30人を始末してきたぜ?」
「笑わせるな。親父を警護しているボディーガードは、今夜ここに連れて来た口先だけは威勢のいい、チンピラヤクザどもとはわけが違う。みんな、自衛隊のレインジャー上がりの猛者ばかりだ。貴様らなんぞ、虫けらのように殺されてしまう。」
樺山が叫んだ。
「ほう?陸上自衛隊の特殊部隊のレインジャー崩れか。強そうじゃないか?だけどな、実践で鍛えられていないレインジャーなんて、使い物になるのかい?」
桜井がにやにや笑いながら言った。他の3人も追従する。
「親父は、レインジャー上がりのボディーガードに、親父の悪口を書きまくるジャーナリスト・ゴロや、親父の権威を利用して株の買占めで儲けやがったくせにリベートを一銭もよこしやがらない連中を何人も処分してきた。」
樺山は無我夢中で叫んだが、その後我に帰って、シマッタという顔つきになった。
「そんなひどいことをしてるのか、お前の親父は・・。今までにやられた連中の名前は?」
桜井が聞いた。
「う、嘘だ・・・。ちょっとした脅しを言ったまでだ。忘れてくれ。」
「そう簡単には忘れられないな・・・。さあ、言ってもらおうか?樺山ファミリーが今まで抹殺してきた連中の名前を。」
「本当に冗談だったんだ・・・。」
樺山は言った。
「そうかい。じゃあ、貴様が答えやすい質問に変更してやろう。樺山ファミリーは他の買占めやから、名義料というか、樺山ファミリーの名前の使用許可料をどれぐらい召し上げているんだ?」
桜井が聞いた。
「・・・・・・。」
「企業秘密ってわけだな?」
鈴木が聞いた。
桜井がバーストリテイリングの一万株券を10枚ほど暖炉に放り込む。
「分かった・・・。一株について4円ほどだ。」
樺山が答えた。
「年間、どれぐらいの金が入ってくるんだ?」
「80億から90億といったところだ。」
「今までに樺山ファミリーが闇に葬った買占め屋や、ジャーナリスト達の名前を教えてもらおうか?」
「何度も言っただろう?ハッタリだったんだ。おまえ達を脅してやろうと思ってついた嘘だったんだ。」
「冗談にしちゃあ、きつすぎるぜ。」
田原は暖炉用の防火キルティングの手袋をはめた。右手にだ。燃え盛っている暖炉の中から、白樺の薪を一本掴む。それを持って樺山に近づいた。
「や、やめろ、やめてくれ!!!!」
と、叫ぶ樺山の尻に薪を近づけた。
樺山は薪から逃れようと仰向けに転がった。
田原は樺山の胸を左の足で踏みつけ身動きができないようにしてから、ゆっくりと恐怖を味あわせながら薪を下腹のジャングルの部分に接近させていく。
「おまえのこの薄汚いちんぽを炭化させてやるぜ。」
と、田原は言った。
「参った。勘弁してくれ。しゃべる。」
樺山は言った。
「早く言え。」
田原が威嚇しながら言った。
「くそ・・。どれからしゃべればいい・・・。最近やってやったのは、古淵恵三だ。」
「古淵恵三?貴様ら、樺山ファミリーと仲がいい中野と98年に保守党総裁選で争い、首相の座についたあの古淵か?」
「そうだ。あのくそったれめ・・・。日本のバカで愚鈍な一般市民の前では人柄の古淵だとか、愛嬌があるなどと持ち上げられてたくせに、とんでもねえ二枚舌の腹黒い奴だったんだ。」
「ほう、具体的には?」
桜井が聞いた。
古淵恵三は1937年6月、群馬県で製糸業を営む家の次男として生まれた。早稲田大学を卒業後、同大学院に在学中26歳で衆議院議員に初当選した。古淵は、選挙に当選してから2ヵ月後にあの世へ行った父の意志を継ぐという美談と、温厚そうな人柄で一歩一歩政治家としての地位を固めていった。同じ選挙区に首相経験者が二人もいるため、苦労することが多かったが念願の総理大臣になれたので古淵の人柄は更に温和なものになっていった。
「話せば長くなるがな・・・。1990年の3月、郵政大臣の諮問機関の電気通信審議会が、2年以内にNTTから移動体通信業務を分離するという方針を打ち出したんだ。当時のNTTの移動体通信部門は急成長を始めており、89年度には売上高・約2200億円、600億円の黒字を稼ぎ出すドル箱部門だった。そして、5年後には上場を目指すというものだ。この一連の分離政策を打ち出したのが、電気通信問題調査会長だった古淵のくそったれと、我らの中野先生、そして電気通信問題調査会政策小委員長の羽口孜だった。」
樺山がしゃべった。
「ああ、当時はすごかった。今の携帯電話と同様に、バブル景気と重なって自動車電話の普及率は1年で倍増するほどの急成長だったな。」
田原が自分の知識を披露した。
「それで?」
桜井が、話の腰を折った田原を睨みながら樺山に聞いた。
「古淵はNTTから移動体通信業務を分離独立させるという方針を出す一方で、てめえだけとんでもねえ裏工作をしてやがったんだ。」
樺山が叫んだ。
「どんなことだ?」
「古淵は90年にNTTから移動体通信分野を独立させるというまえから、群馬のポケベル販売会社の下毛通信サービスという会社の株を自分の実兄と秘書に買わせて保有していた。」
「どのくらい?」
「一株500円の額面金額で13000株ほどだ。およそ600万円ちょっとだ。」
「それで?」
「1988年に、NTTはグループ企業の再編方針に基づいて、関東地区のポケベル販売会社4社(ジャパン通信サービス、下毛通信サービス、新新潟通信サービス、松本通信サービス)と、日本自動車電話サービスを対等合併させ、NTT中央移動通信を設立した。この合併にあたってNTTは、中央移動通信を完全子会社化するために合併する各社の役員や株主から株の買い上げを進め、下毛通信の株主には、1株800円を提示したんだ。」
「それはおいしい話だな・・・。」
「だが、古淵は株を手放さなかった。下毛通信サービスなんて吹けば飛ぶようなちっぽけな会社だ。そんなくず株を持ってたとしても何の特にもならんのだがな。そして、さっきもいったように、90年に古淵がリーダーを務める電気通信審議会の移動体通信分野の分離提案がでた。当時すでに、郵政族のドンとまでいわれていた古淵は、この提案と一緒に、移動体通信業務の一部を委託している現在の受託会社については新会社と地域毎に一体化を図るものとするという一文もこっそり入れてやがったんだ。」
「つまりは、古淵がもっていたNTT中央移動通信の株が後のドコモの株に化けたということだな。」
「そういうことだ。移動体部門はたいへんな成長分野で、販売委託会社とは資産の点でも天と地ほどの違いがあったんだ。しかし古淵は、自民党中枢の政治決断で、行政側が口をはさめる問題ではないと突っぱねた。それに古淵はこのNTT中央移動とドコモの合併に際しても、とんでもない合併比率を採用しやがった。中央移動とドコモの比率が1:0.6という常識はずれの内容だ。」
樺山が声を荒げた。
そして、更に、続ける。
「結局、古淵は疑惑が暴露されるまでに、100億円近いドコモ株を保有していたんだ。奴が600万円ちょっとで手に入れたクズ株を、政策決定を利用して1500倍以上の価値に変えたんだ。」
「完全なインサイダー取引だな。」
「ああ・・・。その情報が流れ出したのは古淵が首相の座につき少したってからだった。保守党の総裁選で敗れた中野先生に一本の匿名電話が入ったんだ。内容は古淵のドコモ株疑惑で、それを聞いた中野先生は激怒された。」
「そりゃ、そうだな・・・。中野もその審議会のメンバーとして政策決定に重要な役割を果たしていたんだろう。自分が蚊帳の外にいたと知ったら、あの利権モンスターの中野が黙っているわけはない・・・。」
「何を言う。無礼だぞ。先生は日本で最も優れた政治家だ。古淵のような小賢しいバカの悪行を見過ごせなかったんだ。先生は、同じ政治家として古淵に、そのような噂は本当なのかと、問い質しに行った。先生も鬼ではないから、古淵の出方次第ではその疑惑の温床を握り潰してやるつもりだったんだ・・。だが、古淵は完全にそれを否定した。」
「で、いつものパターンか?おまえら樺山ファミリーの出番だな?」
「俺の親父も人一倍正義感が強いからな・・・。中野先生に頼まれた親父は、早速、古淵の調査を始めた。そして、いろいろとわかったんだ。古淵が郵政省の族議員としてドコモ株疑惑以外にもどんなことをしていたかが・・。」
「他にも古淵はおいしいアルバイトをしていたんだな?」
「最近、迷惑メールというのが社会問題になっていただろう?」
樺山が桜井たちに聞いた。
「ああ、よく聞くなあ。」
迷惑メールとは、メールを要求していない受信者に無差別に送られてくるすべてのメールのことだ。
「NTT以外のほとんどの会社では携帯メールの受信料は無料なんだが、ドコモの場合は未だにメールの受信料についてもきっちり料金を取っているんだ。一ヶ月につき100通分ほどは無料になったんだが、それでも受信料を取られることに変わりはない。古淵はこのNTTの時代錯誤の料金体系を逆手にとって、奴らしいみみっちい金儲けの手段を考えやがった。」
樺山は続けてしゃべる。
「古淵は秘書が作ったテレクラのサーバーから無差別にドコモの契約者にメールを送ったんだ。古淵の時代はアドレスがほとんど数字だったし、迷惑メールなんていうのは世間であまり知られていなかった。」
「それで?」
「そのメールには特殊な、といっても簡単なものなんだが、あるプログラムが仕込まれていたんだ。そのメールを受け取って開くと、自動的に古淵の指定した番号にダイアルされる仕掛けになっていた。古淵はその番号を自分のテレクラがやっているダイアルQ2の番号に設定して送りまくった。」
「かんがえたな・・。」
「携帯メールが黎明の時代でもあったことと、興味本位も手伝って、古淵のテレクラは活況を呈した。例え、テレクラだとわかっても、その時にはすでに課金されているわけで広く薄くアルバイトにしては結構な額だったんだ。」
「NTTに苦情はなかったのか?」
「あったが、NTTの幹部も黙認していた。奴らにしてみれば、契約者同士がメールのやり取りをしてくれればくれるほど、儲かるんだからな。信じられない話かもしれないが、古淵にはNTTから送ったメール一通につき30銭が支払われていたんだ。」
「NTTがメールの受信料を無料にしないわけがなんとなくわかったぜ。」
「そして、中野先生と俺の親父は話し合った。結局、古淵を始末することに決まったんだが、相手は総理大臣だ。樺山ファミリーの山誠会や、中野先生子飼の暴力団に任せては足がつく。狙撃するにしても、確実に仕留めることができる人間は数少ないし、依頼がばれたらこちら側の破滅だ。」
「で、どうやって殺したんだ?」
「赤坂の料亭の市竹で古淵と中野先生が今後の内閣の方針を考えるため会合したんだが、その時に、当時の内閣官房副長官だった鈴本が古淵の酒に一服盛ったんだ。古淵の死因は脳梗塞となっているが、一国の首相が暗殺されたなんてことが世間に知れたら、大変だからな。」
樺山は他にも8人の名前を並べた。
その中には世間にかなり名の知られた有名人や、総会屋の名前があった。
「よし、樺山、いまからこうしゃべれ。``私こと樺山資紀の父樺山一誠の命令により暗殺された人間は以下の通りです``と前置きしてから、おまえがさっき言った名前を並べていけ。」
桜井がICレコーダーを樺山に見せながら言った。
「く、くそう。録音してやがったんだな。」
「ああ、浅井を隠し撮りしたみたいに、おまえの声も隠し取りしといてやった。悪いか?」
「畜生・・・。」
「心配するな。法廷に持ち出そうなんて考えてないから。さあ、早くしゃべれ。」
「馬鹿め。もし貴様らが法廷に立つとすれば、それは被告人としてだ。この殺人機械のキチガイどもめ。」
「わかった、わかった、だから、早くしろ。時間がない。」
樺山の男根に薪を近づけて、威嚇する。
「やめてくれ・・・。ど、どうせこんな拷問を受けながらしゃべったことなんて、証拠としては採用されないんだ・・。」
樺山は一人の名前を言うごとに、ギャーとかワーとかわざとらしい悲鳴を入れて、しゃべった。
「ごくろうだった。」
桜井が言った。
「で、樺山、おまえのファミリーに回転資金を貸し付けているスポンサーは松上以外に、誰がいるんだ?」
「俺が知っているのは、松上幸之助以外に誰もおらん。」
「とうとう、貴様のチンポが炭になる時が来たようだな・・。」
「知らないものは知らない。どうしろっていうんだ。」
「ふう・・・。あんたもよく頑張るよ・・・。俺たちのやり方はもう十分知っているだろうに・・。」
田原は樺山のチンポを薪であぶり始めた。
樺山は男根から小便を迸らせる。それが薪にあたり湯気と音を立てる。ジャングルからも煙が立ち、男根が火傷し始める。辺りには、嗅いだことのないような異臭が立ち上った。
「ぐ、ぐはっ・・・。こ、これだけ頑張ったんだ・・。俺がしゃべっても、親父だってわかってくれるはずさ・・・。今日はなんて、厄日なんだ・・・。俺がしゃべるのはこれが最後だ・・・、これっきりだ。後は兄貴や親父に聞いてくれ・・・。」
と、言い意識を失った。
すかさず桜井はその樺山にアイスペールの氷が解けた冷水を浴びせた。
意識を取り戻した樺山は、
「勿論、十数行の銀行から低利の金を借りているが、松上会長以外の大口スポンサーといえば・・・・・・・、金玉誉士夫先生だ。」
と、しゃべった。
樺山は気絶した。
「金玉誉士夫?どこかで聞いたような名前だな・・。そうか、全国の総会屋の世界を取り仕切る影の大ボスといわれている男だな。日本の都銀や地銀や相銀などの頭取や副頭取や重役クラスが交代で奴の三鷹の屋敷の中にある私設博物館に日参して草むしりの勤労奉仕をやっているそうだな。勿論、そのついでに奴へ多額の献金も忘れてないそうだが・・・。草むしりは奴に対する忠誠心の証だと聞く。奴は、どうしてあそこまで権力を持つようになったんだ?」
桜井は、気絶してしまった樺山のかわりに、東京四菱頭取の浅井に聞いた。
「そ、その前に、フィルムのほうを返してもらえたら、嬉しい次第でして・・。」
浅井は、揉み手した。
「ああ、もういいだろう。」
鈴木がチャノンのEOSからフィルムを取り出して、浅井に放った。クソニーのデジカメからメモリースティックを取り出し、それも投げた。
浅井はそれらを受け取り、暖炉の中に無我夢中で投げ込んだ。そしてしゃべる。
「金玉先生は、戦時中、海軍の特務機関の一つであった金玉機関の長でした。上海に本部を置いていたその機関は、海軍へ軍需物資を供給する一方で、中国や南方諸国で略奪した財宝をこっそり日本に運び込み、日本の各地へ隠匿していたのです。
国宝美術も多数含まれていたその財宝は現在の金に換算すると、10兆円ともそれ以上とも言われております。
金玉先生は、ありあまる財宝のごくごく一部を使って、東大や京大などの旧帝大クラスの学生や、関東では早稲田や慶応、関西では同志社などの私立の雄といわれている大学の中でも、とりわけ頭の切れる学生に対して在学中から資金の援助をしていたのです。衣食住から、女の世話までとことん面倒を見てあげていたそうです。そうやって利用価値のある学生を子分にしたのです。
金玉先生から金を受け取る学生が守らなければならないのは、ただ自分が金玉先生の子分であることを黙っているという条件だけでした。」
「金玉は戦犯として逮捕されなかったのか?」
「はい、さようでございます。」
「なぜだ?」
「皆様、そのことを不思議がられます。これは最近になって米国側の秘密文書から判明したことでございますが、金玉先生は二重スパイでございまして、つまり、戦時中からずっと、米国側に日本軍の作戦機密を流し続けていたのでございます。金玉先生曰く、日本が連合軍に勝てるわけはないんだから、それならいっそのこと早く戦争を終わらせて、日本全土が焦土になるのを防がなければならない、だから私のとった行動は間違ってはいない。それを証拠に日本は見事に立ち直って世界経済の中枢を担っているではないか、と・・・。」
浅井はいった。
「モノはいいようだな・・・。それで、金玉がエリート学生に経済援助を続けていた理由は?聞かずとも、大体の想像はつくがな・・・。」
桜井が浅井に聞いた。
「金玉先生が育てたエリートたちの古手は、現在の政財官界のトップクラスや中堅層のかなりの部分をしめるようになりました。若手でもほとんどみんなが、エリート街道を突っ走っております。
金融界も例外ではありません。金玉先生子飼いの若手や中堅のパリパリは、入社した銀行の役員連中の背任横領やセックス関係のスキャンダルを探って、金玉先生に知らせて金を受け取り、金玉先生はその情報をネタに銀行に揺さぶりをかけてきますから、銀行としましては多額の献金を先生に差し上げて株主総会を無事に済ませるほかないのです。
また、銀行のトップ連中になっている先生の子分たちは、先生に融資した額の20パーセントがリベートとしてスラッシュバックされる仕組みになっているそうです。」
「ふざけた話だな・・。あんたらの東京四菱銀行は金玉誉士夫に年間いくら払っているんだ?」
「20億でございます。実はうちの会長の斉藤が金玉先生の子分でして・・・。」
「なぜ、あんたの銀行の会長の斉藤が金玉というインチキ野郎の子分だと分かったんだ?」
「し、失言でした・・。」
「しゃべれ。樺山の様にしてやるぞ?」
「し、しかし、それを今ここでしゃべりますと、樺山ファミリーに金を脅し取られるネタを与えるようなものでございまして・・。」
浅井は震えていた。
「よし、わかった。樺山を少し眠らせてやる。」
桜井はそういって、樺山の耳の上を靴先で鋭く蹴りこんだ。死なないように加減をした。
樺山は瞬間的に気絶した。
そして、樺山の秘書課連中のうち中川に殺された一人と、田原に口を縫われた河口をのぞく3人の意識も失わせた。
「これでいいだろう?」
桜井がたずねた。
「あれは、去年の夏、当行の斉藤会長と、当行と業務提携をしているピース・マンハッタン銀行の創立130周年記念の行事に招かれていったときのことでございましたな・・。
ピース・マンハッタン銀行は、我々二人のために、最高級ホテルにそれぞれ特別室を用意してくれたのです。それぞれの続き部屋は、バスルームの横のドアを開けると自由に出入りできるようになっていました。
そして、私達二人のために3人づつ最高級のコールガールをあてがってくれたのでございます。私と会長は、会長の特別室のサロンで女達と飲み始めたのですが、会長が3人の女を連れてベッドルームに引きこもったので、私も残りの3人を連れて自分の寝室に移りました。
いやはや・・・・・、最高級とだけ合って嬉しい限りの過剰サービスを堪能できました。」
浅井はにやけながら言いい、小酒井の方にいやらしい視線を送った。
「それでどうした?」
鈴木が小酒井の前に立ち、浅井の視線をさえぎりながら聞いた。
「私は、仰向けにベッドに横になりました。一人の女のあそこをなめながら、二人の女に自分のあそこと尻の穴を舐めてもらっていたのです。そして、不覚にも、プラチナブロンドの女の口内に射精してしまったのです。この年齢ですから、一度終わった後では、どうにもこうにも、息子が言うことを聞いてくれんのです・・。女達は必死にがんばってくれたのですが・・。
そして、その女のうちの一人が、マリファナタバコに何か白っぽい粉を混ぜましてな、これを吸えば元気になるからといって、私に勧めてくれたのです。
外国ですから、日本の法律は及びませんが、ヘロインは嫌だと断ったんです。
そうすると、女はこれはヘロインではなくて、ラヴ・ウイード、つまり愛の草というあだ名の覚せい剤で、麻薬ではなく、アメリカ人の夫婦はセックス前に誰でもやっているから、安心していいよといわれたのございます。」
浅井がはなした。
そして、田原が呟く。
「それは多分、フェンサイクラジン・ハイドロクロライドで、P・C・Pとか天使の埃などと呼ばれることが多い、幻覚剤と覚せい剤の作用を与える危険な向精神剤だな。アメリカではその薬の服用で気が狂い、多数の自殺者や犯罪者を生んだといわれている。」
「はい・・・、そのことは後で知った次第でして・・・、ともかく、その時は私の愚息が嘘のように蘇り、3人の高級コールガールと再戦できるようになったのです。」
浅井は答えた。
「しかも、愚息は素晴らしい硬度を保ち続け、2時間以上奮闘しても発射しないですむ様になったのです。女達は狂喜してくれました。
そこへ、斉藤会長が私の部屋へ入ってきたのです。斉藤会長は私に、一度前からやりたかった乱交パーティーというのをしてみないかとおっしゃられたのです。
私は薬のせいで羞恥心が欠如していたので、諸手をあげて賛成しました。それから、私と会長は6人の美女とタッグマッチをはじめたのです。
しかし、10分おきぐらいの割合で会長は薬を混ぜたタバコを吸っていたものですから、頭のほうがおかしくなられたのです。
狂った会長は女に暴力をふるい、小便をかけたりし始めたのです。しまいには、絨毯の上にウンチを垂れて、それを食べ始めたのです。
女達は悲鳴を上げて、隣の部屋に移りました。ドアに鍵をかけて閉じこもったんです。
一人になった会長は、泣き始め、いかに自分が世間体を取り繕ってきた駄目男であるかをクドクドとしゃべり始めました。
私はこのチャンスに今まで疑問であったことを聞いたのです。なぜ、どの銀行も金玉先生に対してあれほど従順なのかも聞きました。」
「その時に、金玉のことを斉藤がしゃべったというんだな?」
「はい、そうなのです。斉藤会長は自分が学生時代から金玉先生に世話になっていたこととか、当行に入ってからも同じ金玉先生の子分である先輩に引き立ててもらいながらスパイ活動をし、会長になってからは金玉先生への年間20億円の賛助金のうち4億円を還元してもらっていることなどを、泣きながらしゃべりました。」
「そうか、わかった。ごくろうさん。ところで、あんたは金玉の子分ではないのか?」
桜井が聞いた。
「とんでもないです。私はただのバンカーでして、銀行にとって毒にも薬にもならないイエスマンです。そのおかげで今の地位にまで這い上がることができた、ただの番頭にすぎません。次の頭取は内定しておりまして、これも斉藤会長と同じように金玉先生の子分の一人と決まっております。私は、東京四菱グループのとある機械メーカーの会長として飛ばされることになっております。」
浅井は哀れっぽく言った。
「失業するよりましだろう?」
中川が聞いた。
「ところで、斉藤は正気に戻ってからどうだった?」
「それが不思議なことに、御自分がなされたことを全く覚えてらっしゃらないのです・・。」
「本当か?」
「さようでございます。しばらくしまして、会長は泣きつかれ、しゃべり続けて、ベッドに倒れてお眠りになりました。私は、会長がお休みになったからといって、コールガールたちにチップを渡し、帰ってもらいました。その後、会長と私のパスポートや重要書類を預けたホテルの貸し金庫の鍵が盗まれてないのを確認して、自分も眠りました。
翌日、会長は目をさまれると、あわててシーツで前を隠し、``頭が割れるようだ・・・、しかもなぜ私はこんなところにいるんだ‘‘と私を怒鳴りつけましたが、自分の部屋に戻り貴重品がなくなっていないのを確認すると、一安心されたようです。
そして私に、昨日女と自分のベッドでふざけあっていたのは覚えているが、その後のことは全く記憶にない、とおっしゃられたのです。
だから私は、会長が私の部屋にいきなり来て、おおはしゃぎになられた後、急にお眠りになった、とご説明したのです。
すると会長は、私に失礼なことはしなかったかね、とお尋ねになりましたが、私は全くなかったといっておきました。」
「わかった。ところで、あんたが会長に尋ねたのはそれだけか?他にも色々と聞いたんじゃないのか?」
「ばれましたか!!!」
「阿呆でも見当がつく。しゃべってもらおうか?」
「私は、他にも金玉誉士夫先生の子分はどれぐらいいるのかと聞きました。すると会長は、東京四菱とその系列企業の役員についてはよくしゃべってくださったのですが、それ以外については良く知らないとおっしゃられたのです。なんでも、金玉先生が横の連絡を取らさないようにしているようで・・・。それでも、当行にいる金玉先生の子分については知ることができました。」
浅井はその名前と役職名をしゃべった。
「ありがとう。あんたは金玉誉士夫の屋敷や私設博物館に行った事はあるのか?」
「はい、月に1回ぐらいの割合で伺わせてもらっております。賛助金を持参して・・・。」
「ほう、そのついでに草むしりをさせられているのか?」
「はい・・・。ゴルフやテニスより草むしりが健康に一番だ、と金玉先生がおっしゃられるので・・・。しかし、真夏の草むしりは帽子をかぶっていても日射病になりかけるわ、真冬は手の感覚がなくなり鼻水が垂れてくるわで、本当にきついものでして・・・・。」
浅井は哀れっぽく言った。
「奴の屋敷の広さはどれくらいあるんだ?」
「全体で、5万平米といったところです。つまり、1万5千坪ほどです。」
「建物の中に入ったことはあるのか?」
「それは勿論。あのかただって、人間ですから、我々が草むしりを終えた後は、客間で酒肴をふるまってくださいますよ。」
「酔わせて、情報を取ろうということか・・・。」
「まあ、それもあると思いますが・・。」
「母屋のつくりは?」
「ど、どうしてそのようなことを知りたがるのですか?」
「良いから、答えろ。」
「外観は数寄屋造りですが、木の壁の間に20ミリの厚さの鉄板が入っていると土建上がりの総会屋が申しています。そのことは、私も雨戸を閉めたときに確かめております。」
「確かめた?」
「はい。あの重さと厚さは尋常ではありませんでした。」
「奴の屋敷は一度、セスナがぶち込まれたこともあったはずだが?」
「あれは、もう20年以上前の話ですか・・。金玉先生は不在だったらしく、難を逃れたそうです。」
「ヤクザの親分の家には、侵入者がきても大丈夫なようにドンデン返しだとか、隠し階段だとか、高圧電流だとか、様々な仕掛けがあるそうだが?」
「そ、そこまではわかりません・・・。しかし、家全体があまりの広さのため、通いなれた私でさえも、よく間違えることがあります。」
「あんたは奴の博物館の中には入ったことがあるのか?」
「はい、ありますです。大雪や大雨で庭の草むしりができないときなどに、博物館の見学を申し付けられたことがありました。私は宝石などにあまり興味がないので、価値は分かりませんが、ガラスケースに顔を近づけすぎて熱い息がかかっただけでも、警報装置が鳴り出し警備員が駆けつけてくるぐらいですから、落ち着いて鑑賞などはできませんでした。」
「警備員の数は?奴の私邸と博物館の両方を合わせて。」
「30人ほどでした。」
「どんな奴らだ?」
「ベトナム戦争で、鬼より恐ろしいと言われていた韓国海兵隊の青龍旅団(ブルードラゴン)上がりだそうです。」
「ブルードラゴンか・・。」
「あの博物館は、金玉財団という法人の所有にはなっていますが、一般公開はしていなくて、政財界や美術界の有力者の紹介を受けたものにだけ招待状を渡しているのです。その時だけは、拳銃を隠しもち、警棒をぶら下げているだけですが、普段は肩からライフルをかついでパトロールをしております。」
「よし、わかった。色々教えてくれてありがとうよ。」
「では、私めにもう用はないというわけですな?」
「しばらくはな。」
浅井は安堵のため息をついた。
田原が暖炉から、燃えている薪を持ってきて、樺山の男根をあぶった。先ほど炙られたときできた火ぶくれを再び痛めつけられた樺山は、絶叫を放って意識を回復した。
「く、くそ、やめろ。なんでもしゃべる。これ以上痛めつけられると、女を抱けない体になる。」
と、なきわめいた。
「これからは、調子よく質問に答えていけよ。」
「・・・、わかった。」
「金玉誉士夫はどういう成り行きでおまえらに回転資金を貸してくれるようになったんだ?」
「金玉先生はサディストなんだ。それに、女だけではなく男も相手にする二刀流だ。昔は純粋に、サド・マゾ遊戯を楽しめる余裕があったそうだが、ここ数年の金玉先生は相手をとことん痛めつけて不具にしたり、殺したりしないと射精できない体になった。
実を言うと、金玉先生の屋敷を護衛する人間は樺山ファミリーの山誠会だったんだ。
しかし山誠会は、先生好みの美少女や美少年を誘拐して先生の屋敷に連れて来た後、先生が度を過ぎたプレイで殺してしまった死体のあと片付けまでさせられるのにうんざりして、うちのファミリーに身売りしてきたんだ。」
「じゃあ、おまえらは金玉の殺しをネタに、融資を申し込んだのか?」
「そうだ。いかに金玉先生が政財界に睨みをきかせているとはいえ、30人以上の人間を殺したとなると話は別だ。そのことが一度表ざたになると、収拾がつかなくなるだろう。先生は、慌てて韓国から海兵隊上がりを呼んだんだ。しかし、さっきはいわなかったが、樺山ファミリーだって金玉先生よりはやく100名の青龍旅団員上がりの猛者を雇っていたんだ。バカが、貴様ら俺がこんな目にあったとなると、親父は青龍旅団の人間をもっともっと増やすだろう。韓国海兵隊は一個師団、2万名もいるんだ!!」
樺山がしゃべった。
「そうか、そうか。期待してるぜ。それで、金玉がおまえらに融資した金額はいくらぐらいなんだ?」
「2000億円だ。」
「利率は?」
「松上会長と同じだ。」
「ところで、おまえは金玉の屋敷の正確な警備状況を知っているだろうな?」
「知るか。知ってたら、教えてやる。おれはまだそこにはいったことがない。本当だ。」
「貴様の親父といい、金玉誉士夫といい、松上幸之助といい・・・・、国士面しやがってとんだ食わせ物だな・・・。」
桜井が吐き出すようにいった。
「さて、そろそろ引き上げるとするか。柳沢さん兄弟と、浅井さん、それに岡田さん。ここにあるバーストリテイリングの株券を全部燃やしてしまえ。」
桜井が言った。
「ち、違うぞ約束が!!!」
樺山が絶叫した。
「約束?忘れたな・・・。さあ、はじめてくれ。」
「し、しかし・・・・、樺山ファミリーの復讐が・・・・。」
柳沢が震えながら答えた。
「おまえら、いいか?貴様らは暴力の威嚇でもって強請させられているんだぜ?逆らうなら、殺すぞ。」
中川が言った。
「わ、わかりました・・。」
「仕方ありませんな。」
柳沢達は、ともすれば嬉しい悲鳴が出るのを必死で抑えながら、株券を暖炉に放り込んでいく。火掻き棒を使って空気の流れをよくしてやり、株券が完全燃焼されるようにしたりもした。
樺山は灰になっていく株券を見つめながら、全身を震わせ、口から泡を吐いて気絶した。
「現なまが入ったケースの鍵は誰が持っている?」
桜井が聞いた。
「・・・・・・・。」
誰も答えなかった。
「本当に死ぬか?」
中川はテーブルに、ハドソンベイアックスの、北米のプロのキコリが使う斧を叩きつけた。
テーブルが真っ二つに割れ、そこに乗っていたグラスや酒瓶、それにコーヒーカップなどが床に落ちて砕ける。
「わ、私でした。キーを持っていたのは・・・。」
バーストリテイリングの柳沢の弟が悲鳴にも声を絞り出しながら、背広のうちポケットから鍵束を取り出した。
鍵の一つ一つには小さなナンバー札がついている。
鍵束を受け取った鈴木は、トランクの山に近づいていく。その一つのロックをとき、ふたを開いた。
一万円札がぎっしり詰まっていた。
札束は意外に重いもので、一万円札ばかりの一千万円の札束の重さは約1・3キロで、大きさはレンガブロック2つ分ほどにもなる。
1億円だと13キロになるから、バーストが用意した300億は3900キロにもなる。
バーストリテイリングの全てのトランクを開けてみた鈴木は、そのすべてに一万円札が詰まっていることを確かめた。
鈴木はトランク全てにロックをしなおし、桜井たちの方へ合図した。
桜井と中川と田原は手分けして、サロン内にいる全ての男達を気絶させた。手足を縛って、猿轡をかませる。
意識を取り戻していながらも、気絶を続けているふりをしていた小酒井若菜に近づいた。若菜は悲鳴を上げたが、すぐにいやらしく腰をくねりながら、
「乱暴はよして?・・・、お望みなら、私を抱いてもいいのよ?」
と、言った。
桜井が鼻で笑うと、若菜は自分の花弁を両手で開いて、
「早く入れてよ・・・?」
と、身をくねらせた。新宿と池袋と浅井が放ったものが滴り落ちてくる。
「誰が、そんな公衆便所なんかに・・・」
桜井は冷笑し、若菜の秘部を蹴りつけた。恥骨も蹴り砕かれた若菜は白目をむいて気絶する。
「さあ、ずらかろう。」
桜井は言った。
4人はトランクを庭に停まっている車のほうに運び出す。どの車にもキーは差し込まれたままだ。一人が数回往復した。汗が吹き出てくる。
それを見ていた管理人夫婦が、
「お、お礼は必ず支払っていただけるのでしょうね・・?」
「1億ということでしたわね。」
と、震え声でいった。
「ああ、約束は守る。しかし、前にも言ったように、ここに置いていったんでは、すぐに見つかって柳沢達に取り上げられてしまう。だから、打ち合わせ通りに、庭の東南の隅にある空井戸の中に放り込んで、その上に石をのせておく。それでいいだろう?」
桜井がささやいた。
「勿論です。」
「じゃあ、あんたらが疑われないように、手足を縛らせてもらうぜ。ついでに、タンコブの一つも作らせてもらおうか・・・。」
「い、一億のためですから、少々の痛みは我慢します。」
桜井は二人を縛り、猿轡をかませた。そして、銃で手加減をして殴りつけた。二人はあっさり気絶する。
4人は、4台のアメリカ製ステーションワゴンの荷室に、トランクの重さもあわせると4トン近い獲物を積み終えた。
スプリングが柔らかい4台のアメ車は、尻のほうがぐっと沈み込んだ。
その中の一つから、一億円を取り出し、麻袋に詰める。田原がそれを井戸のところに投げ入れにいった。
桜井と鈴木と中川はそれぞれ車に乗り、エンジンをかけた。車は碓氷峠を越えた辺りで給油したのか、燃料はほぼ満タンの状態だった。
田原が必死の形相で3人のところへ戻ってきた。
4台のワゴンは、正門から三笠通りに出た。
三笠通りはグリーンベルトをはさんで左右がそれぞれ一方通行路になっていて、両者の間にかなりの段差があるので、重荷を積んで尻が下がった4台のワゴンは、旧軽側に向かうためにグリーンベルトの切れ目で段差を渡るときには、極度にスピードを落とした。
渡りきるとスピードを上げる。
間道を通って国道18号を横切った4台のワゴンは、曲がりくねった山道を、中軽の駅から直線距離だと6キロほど南だが、実際の走行距離はその倍ほどある茂沢の村落の方に近づいた。
同じ軽井沢町とはいっても、そのあたりはまだまだ鄙びた面影を残している。
茂沢の村落から1キロほど手前で、4台のワゴンは右折し、草越側の山の中に入った。
このところ長野県にはウサギが増えすぎて植林を荒らすため、ウサギの天敵であるキツネが保護獣になっている。キツネはキジやヤマドリやコジュケイも捕食してしまう。
そのためか、ワゴンのライトに、砂利の道路を横切るキツネの姿がたびたび浮かび上がった。
4台の車は、廃道のように雑草に覆われた道に入る。やがて、雑木林のなかの広場に、シートを被せた4台の車が見えた。
4台のワゴンは、その広場に入る。
桜井達は停車させたステーションワゴンから飛び降り、シートを被せた4台の車に近づいた。
シートをはずす。
4台とも4輪駆動車であった。
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