こうして8月1日より、社保の歯口科にかかっている患者さん、その家族やお友達、これからかかるかもしれない一般の方々から、歯口科存続のための署名を集める運動を始めました。署名をお願いするにあたって訴えたことは、署名運動趣意書にあるとおり、以下の5点です。
1) 歯科の二次医療機関を減らさないでほしい。
一次医療機関である開業歯科はどんどん増えています。しかし、そこで手におえない難しい患者を回す二次医療機関は札幌市内にほとんどありません。社保の歯口科を廃止すると、ただでさえ少ない歯科の二次医療機関がさらに減ってしまいます。
2) 総合病院で歯科治療が受けられるという恩恵を奪わないでほしい。
歯科医師には歯科以外の医療行為が禁じられていますから、もし患者に突発的な様態の変化などが起こっても対応できないのが原則です。したがって、合併症がある方・お年寄り・てんかんや麻痺がある方など、常に自分の健康に不安を抱いている人には、救急施設の整った総合病院で治療が受けられるということは大きな安心なのです。特に、先日のように歯科診療中の事故が大きく報道されたあとではなおさらです。
3) 総合病院だからこそできるチーム医療の場を残してほしい。
いろんな診療科を持っているのですから、各科連携によるチーム医療ができるはずです。つまり、歯の診療中に疑いの出てきた全身疾患なども検査や診療ですぐに対応できるはずですし、逆に、からだの疾患だと思ってたことが実は歯や顎の疾患だったりするという可能性も即座に調べられるはずです。これは、歯口科が総合病院内にあるからこそできるチーム医療ではないでしょうか。
4) 一次医療で対応してくれない患者の受け入れ先を減らさないでほしい。
開業歯科は増えましたが、車椅子の方・心臓などの合併症がある方・大きな口腔外科手術の必要な方・難病/アレルギー/感染症などを持っている方を受け入れてくれる歯科クリニックはまだまだ少ないのが現状です。社保の歯口科のように他のところで断られてしまう患者を積極的に受け入れてくれる場を減らすのは、弱者の切り捨てであり時代に逆行するものです。
5) 採算面だけを重視して必要な医療を切り捨てないでほしい。
歯科では医師が30分以上1人の患者に張り付くことが多いので当然1日に診療できる患者数は少なく、「1人2分」で患者をさばいていける他科と比べると採算性は劣ります。しかし、診療報酬の点数としては小さくても、患者にとっては必要不可欠な医療というものが存在します。収入につながらないからと言って、必要な医療の供給を止めるのは、正しい医療の在り方でしょうか。
以上の5点を訴えながら、「社会保険病院に歯口科を残そう」という趣旨で主に郵送と手渡しとでさまざまな方に署名をお願いしました。社保では新外来棟の建設中で、もし廃止決定となれば歯口科のスペースが外来棟からなくなってしまうので、10月末には署名を取りまとめて病院に提出しようということになったのでした。
一方、9月も下旬に入った頃、ようやく病院側が患者向けに廃止通知を貼り出しました。といっても、A3版1枚の紙が病院内の歯口科受付窓口に貼られただけで、歯口科がなくなることに気がつかない患者さんも大勢いたのです。
10月下旬、各方面から集まった署名数を集計した結果、3,024人もの方がこころを寄せてくださいました。そして、患者の会として2002年10月31日付で署名用紙原本(約160枚)を、歯口科廃止撤回をお願いする書面とともに病院長宛てで郵送したのでした。