第一章 深海鮫エキスとは
(1)鮫の肝臓
サメといえば「ジョーズ」でクローズアップされたように、灰色か黒色の体色をもち、ふみつぶされたような扁平な顔をしています。 深海から引き上げられたサメの眼は、緑色の宝石のように水にぬれてキラキラしています。 腹開すると、たちまち二本の太くて長い肝臓が巨大な舌のようにペロリと流れ出してきます。 その重量は体重の二十五パーセントを超えるというのですから、その大きさがおわかりでしょう。 その肝臓を切断すると、ぶわっと油が流出します。肝臓の含油量は実に八〇パーセント、そのまま放置しておいても、じとじと油が集まってくる強靭な生命力をもっています。 「鮫の世界」の著者、矢野憲一氏は、その本の中で、アイザメの肝臓を食べた感想を次のように述べています。 「アイザメの肉の刺身は、身がしまっていて、淡白で美しく、実においしかった。もちろん、くさみなど全くない。それにもまして、肝臓の刺身はさらにうまかった。これほど、舌ざわりのなめらかなものは知らない。油が口中にやわらかくしみわたるが、コッテリした油でなく、さらりととろけるところがよい。くせのない味だ。あまり美味なので箸が置けなかった。」 深海鮫エキスの原料は、まだ汚染されていない、美しいフィリピン海に群生している深海鮫「アイザメ」の新鮮な肝臓です。これを現地ですばやく熱処理し、日本で、理論的沸点を利用した、減圧真空蒸留などの独特の技術を駆使して、ごく自然のまま、エキスを抽出精製するのです。
{2}不飽和炭化水素「スクアレン」
鮫の肝臓油(肝油)の八〇パーセントがスクアレンです。このアイザメやウバザメなどの肝油に、多量の、不飽和炭化水素 (スクアレン)が含まれているのを発見したのは、明治三九年、当時東京工業試験場の油脂科学者でもあった辻本満丸博士でした。 不飽和炭化水素といってもピンとこないでしょうが、非常に不安定な原子の集まりなので、他の原子といくらでも重合でき、非常に粘性の高い性質をもっていて、高級潤滑油としてほかに類をみない特徴をもっているのです。 辻本博士にわこれによって恩賜賞が授与され、スクアレンの化学構造式は、後に昭和六年、スイス・チューリッヒ大学のノーベル賞受賞者カーラー教授によってスクアレンとあきらかにされました。 スクアレンは人体のいろいろな組織中にもさまざまな割合で存在しています。その組織中最も濃度の高いのは、皮膚と体脂肪組織です。こういえば、なめらかな皮膚とゆたかな志望を身につけた女性の肌の美しさも納得がいくでしょう。 クレオパトラも楊貴妃も小野小町も、このスクアレンによって、世の男たちを狂わせていたというわけです。 このわずかな生体内のスクアレンは、酸素を補給し、新陣代謝を促すという”蘇生”におどろくばかりの力を発揮しているのです。 医学の分野でも目下クローズアップされています。 生体内で、生化学的に合成されるスクアレンは、ビタミンEに近い天然物質で、新陳代謝に重要な関連を持ち、いま、深海鮫エキスが注目されているのも、このスクアレンの働きが主なポイントです。欧米化している私たちの食生活改善に、栄養補給に、役に立つと思われます。

