| 2002年2月15日 | 朝日新聞 |
| ここまで判った糖鎖の働き |
| 細胞の運命にも関与 |
| 異常が病気の引き金に |
糖鎖は、細胞の構造を保ち、安定させる役割も果たす。筋肉細胞の膜には、糖鎖がついたたんぱく質があり、糖鎖の部分で細胞の外の分子とつながることで、構造を安定に保つ。構造が不安定になると筋肉は働けなくなる。
東京都老人総合研究所の遠藤玉夫・糖鎖生物学部門研究室長らがこの糖鎖を調べたところ、酵母ではよくあるが、ほ乳類ではめずらしいものとわかった。そこで、この糖鎖合成に必要な酵素の遺伝子を突き止めた。
この酵素遺伝子に異常があると、全身の筋力が低下する筋ジストロフィィーの一種「MEB病」になることも、大阪大学の戸田達史教授(遺伝学)らとともに突き止めた。
「この酵素遺伝子は神経でも働いているので、異常があると神経系にも症状がでる。」と遠藤室長は話す。
一方、受精卵から細胞分裂が始まり、さまざまな役割を果たす細胞へと分化していくが、「細胞の役割を決める運命づけにも、糖鎖が重要なことがわかってきた」と古川鋼一・名古屋大教授(生化学)は話す。
ネズミの神経系の培養細胞に、神経成長因子を加えると、突起が伸びて神経細胞になる。ところが、ある糖鎖を作る酵素遺伝子を過剰に働かせると、突起が伸びなくなることがわかった。そればかりか、細胞の増殖速度が上がることを古川教授らは確認した。
発生過程で神経細胞の増殖が盛んになるときにも、この遺伝子は働く。 細胞が特殊な役割を果たす分化に向かうのか、そのまま増えるのかという運命決定に、糖鎖が一役買っているらしい。
細胞を見分けるのにも糖鎖が働いている。 細胞表面の糖鎖は洋服にたとえられる。制服で職業が見分けられるように、細胞は糖鎖で互いを認識する。
動物の臓器を人に移植する際にも、動物固有の糖鎖が異常として認識され、拒絶反応を起こす。
入村達郎・東大教授(薬学)らは、多数の糖鎖がついたムチンと呼ばれる分子に注目する。 ムチンは消化管などの粘膜にくっつき、表面を保護して潤滑にする。糖鎖は微生物によって見分けられ、浸入の足場にもなる。ムチンのどこにどんな種類の糖鎖がつくのかにより、ムチンの構造の多様性は無限に近い。
「細胞表面にバーコードがついているようなもの」と入村村教授は言う。 バーコードを読むのに生物は「レクチン」という分子を使う。糖鎖の構造が変化すると、結合相手のレクチンが変わる。がん細胞に特有のムチンには、特定のレクチンがくっつく。入村教授らは約300種類のレクチンを集めた。細胞診断などに役立てられる可能性もあるという。
![]()
このページに関するお問い合わせはこちらまで
hiroshi@mannapages.com