「薬物中毒」、「依存症」といえば、覚せい剤なんかを連想しますよね。
それに、平凡な生活を送っている自分とは関係のない遠い世界のことのように思っていました。
でも、私は自分でも気が付かないうちに、どっぷりと薬のとりこになっていったのです。
もともと心配性でなかなか自分に自信が持てなかった私は、よく不安になることがありました。そんな時は、不安を打ち消すために、自分の世界を作って楽しい空想にふけっていました。心配事があってなかなか眠れない夜は、ボーっと夢の世界に浸っていました。
不安や心配事があるときは、現実逃避することで自分をリラックスさせて、平常心を保っていました。子供
の頃から夢見がちな私は、暇さえあれば夢の世界にいきます。何もすることがなくて部屋で一人で過ごす
時や、退屈な授業の時なんかはたいていそうでした。
でも、うつ病になってからは、常に不安でしかたがない毎日が続き、楽しいことなど考えることが
できなくなってしまいました。どんなに辛くても夢の世界へ現実逃避することができなくなった私は、
しだいに逃げ場をなくしていきました。
そんな時に登場したのが抗うつ剤と睡眠薬です。不安や心配を紛らわせるための唯一の助けとなって
いったのです。
始めのうちは規則正しく薬を飲んでいました。1日3回、食後30分以内の服用です。
はっきりいって、あまり効果を感じたことはありません。でも、薬を飲むだけで「この薬を飲んだから
私は大丈夫なんだ。」と、いう安心感が得られるので、飲まないとまた憂鬱になって苦しくなるような
気がして、うつがくるのが怖くて飲んでいました。
しばらく飲み続けていると、飲まない時より気分が良いし、薬が効いているような感じがしてきたので、
どこに行くにも常に持ち歩くようになりました。
薬は、どんな時でも私を助けてくれる大切なお守りとなりました。
抗うつ剤は1日3回と決まっていましたが、いつも持ち歩くようになってからはどんどん薬に頼るようになって、辛くなるといつでも飲むようになりました。
まさに、苦しい時の神頼みです。
いつのまにか私の中で、薬はランクアップして新興宗教の教祖的存在になりました。
外出する時に忘れたと気付くと、人を待たせてでも取りに戻るくらいでした。
そうしていくうちに、薬だけでは物足りなくなっていきました。
不安になったり悲しくなったりすると、一人でいることが淋しくてしかたがなくなるので、診察日以外
でも週に1〜2度、病院に行って安定剤と睡眠薬の混ざった点滴をうつようになりました。
それとともに、常に気分が落ち込んでいて苦しいので、少しでも気分を明るくしたくて大量にお酒を飲む
ようになりました。
ウイスキーをだいたい3日で1本というペースで飲んでいました。辛くて苦しくて眠れない時には、
眠くなるまで飲みつづけていたので、1日1本飲んでしまうこともありました。
たくさんお酒を飲んだ翌朝に薬を飲むわけですが、当然お酒が残っているので
薬とお酒が体の中で混ざってしまいます。
そして、薬が分解されないうちに夜になり、またお酒を飲むのでさらに体内の薬と酒の量が増えていきます。
さらに、点滴と薬の副作用(眠気・だるさ・憂鬱・眠れなくなる・のどが乾く…)などの症状が加わって
本当に最悪です。
それをほとんど毎日繰り返していたので、常にお酒と薬が混ざった状態がつづいて
1日中眠くてだるい毎日を過ごしていました。体は重いのに気分はふわふわと浮いているような
状態でした。
しだいに記憶力も低下していき物忘れが激しくなり、昨日のこともほとんど覚えていない
こともよくありました。
お酒と薬を飲むのでのどが乾いて常に水ばかり飲んでいました。1日
2〜4リットルくらいです。
食欲がないのでろくにご飯も食べないうえに、飲み過ぎも加わって胃炎を起こしていたので、
よけいに食べれないから病的に痩せていきました。
病気の時は、薬とお酒で半分麻痺して、全てがどうでもよくなっていたので、
あまり自分の外見のことを気にしていませんでした。
でも、うつ病が治ってから冷静に自分の顔を鏡で見てみると、自分では気が付かないうちに、
いかにも病気っぽくやつれたように痩せていたことに気がついて、本当に驚きました。
薬を飲み始めて3年で、6キロも体重が減ってしまいました。
辛い・苦しい→薬を飲む→効果がない→お酒を飲む→効果がない→また薬を飲む…
この最悪な悪循環によってうつ病だけではなく体力が低下し、胃腸・肝臓も悪くなってしまいました。
私は不思議なことに、お酒を飲めば飲むほど目が冴えていきました。
後で人から聞いて知ったのですが、薬とお酒を混ぜると薬の効果は5〜10倍になり、
覚醒作用があるそうです。だからお酒を飲むと目が冴えるし、薬を飲むとすぐに効果が出て
ハイテンションになるみたいです。その代わり、薬の効果は長くは続きません。
だから、飲んだ後は強烈なうつがやってきます。それでまた薬を飲むことになっていたのでした。
薬 + 酒 = 覚せい剤
いつのまにか自己開発した覚せい剤による薬物中毒になっていました。
こんな生活を3年ぐらい続けていた私は、ある日突然、自宅のトイレで倒れてしまいました。
倒れたのが朝で、両親はまだ出勤前で家にいたので、私は運良く助けられました。
私がうつ病だということは家族全員知っていたのですが、
私が倒れるまでは、うつ病が重症でしかもかなり悪化しているということに気が付かなかったみたいなので、
これをきっかけに、完全な自宅療養に入りました。うつ病は骨折のように、見た目では分からないので
要注意です。
このように、間違った薬の飲み方をしていると、いつか絶対死にます。
私はたまたま運が良かっただけです。
正しく飲んでいれば良く効く薬も、適量飲めば楽しくおいしいお酒も、分量と飲み方を誤ると
毒薬になってしまうので、これを読んでくださった方は絶対に真似しないでください。
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