医学ニュース短信
(2000年12月〜2001年6月)
1.
末期的な状態にある腎疾患患者では、唾液の流量が減少している。そのため患者は、カンジダ症(カンジダ属の菌類により発生)や虫歯に罹りやすくなるのかもしれないという。
[主要参考文献:American Journal of Kidney Diseases 2000年12月号]
2.
妊婦が健康なら、適度な強さの体重負荷運動は、胎児と胎盤の成長を刺激するという。
[主要参考文献: the American Journal of Obstetrics and Gynecology 2001年1月号]
3.
月経前症候群(PMS=生理が始まる前の数日間、生理的・情動的に苦痛が生じる。例えば、神経過敏、体重増加、頭痛、乳房の張りが見られたりする)に悩む女性に朗報がある。
PMSに悩む女性は、貞操木と呼ばれる植物の実を乾燥させ、その抽出物を服用すると、症状が軽減されるらしいのである。
[主要参考文献:the British Medical Journal 2001年1月20号]
4.
欧米では広く行われているホルモン補充療法であるが、その効果を巡り、様々な報告が為されている。
◎プラス面の報告
@ホルモン補充療法により、結腸直腸癌の危険度は低下する可能性がある。これは、ホルモン因子が、女性における結腸直腸癌の発症に何らかの役目を果たしているかもしれないことを示唆する。
[主要参考文献:British Journal of Cancer 2001年5月号]
A閉経後にエストロゲンを長期間補充すると、白内障(眼球の水晶体が白濁し、視力障害を起こす疾患)が発生する危険度は低下するという。
[主要参考文献:Archives of Internal Medicine 2001年6月11日号]
◎マイナス面の報告
@尿失禁に悩む閉経後の女性が、ホルモン補充療法を受けると、症状が実際に悪化する恐れがあるという。
[主要参考文献:Obstetrics & Gynecology 2001年1月号]
5.
妊婦は薬物に対しては特に慎重でなければならない。妊娠中に非ステロイド系の抗炎症薬を服用すると、胎児異常や早期産の危険が高まることはないらしい。しかし、流産の危険は劇的に高まる恐れがあるらしい。
[主要参考文献:the British Medical Journal 2001年2月3日号]
6.
Ib期やIIa期の小さな子宮頸癌(子宮の上側は広くて体部、下側は狭くて頸部と呼ばれる。この頸部に発生するのが子宮頸癌である。主として扁平上皮癌であり、発生しやすい人と、しにくい人がいることは判明している。しかしはっきりした発生原因は不明である)がある女性の場合、5年生存率は、放射線治療よりも手術の方がよいという。
[主要参考文献:Obstetrics & Gynecology 2001年2月号]
7.
2、3年前に公開された『ファイトクラブ』という米映画では、エステテックサロン店で廃棄処分された脂肪から石鹸を作るシーンがある。
しかし吸引した脂肪には、幹細胞(様々な細胞へ分化しうる多能性幹細胞と、分化する方向性が定まっている単能性幹細胞が存在)が多く含まれているため、現実社会では、より有効な利用が可能である。つまりこうした脂肪は、骨あるいは筋肉へ変化するよう刺激を与えられる幹細胞の優れた供給源になる、ということである。
[主要参考文献:Tissue Engineering 4月号]
8.
「経口避妊薬(=いわゆるピル)は飲み忘れがあったりして面倒」という女性には、避妊用パッチがお勧めかも知れない。
経皮避妊用パッチの効果は、混合型経口避妊薬に匹敵するが、そのコンプライアンス(=医師が指示した治療法に患者が従う確かさ)は著しく優れているという。FDAによる承認プロセスはやがて終了するようであり、約1年後には市場に出回る模様である。
[主要参考文献:JAMA 2001年5月9日号]
9.
米国太平洋岸の北部に位置するオレゴン州では、1997年10月、医師の手助けによる自殺、つまり尊厳死法が他州に先駆け制定された。尊厳死法は、末期患者の苦痛を除くことに重点を置くより、死なせてしまう方が安上がりで簡単な方法として広まるのではないか、と懸念されていた。
しかし最近行われた新しい研究では、全く正反対の結果が出ている。オレゴン州の終末期における看護は、尊厳死法が制定されて以来、改善されたという。
[主要参考文献:JAMA 2001年5月9日号]
10.
慢性骨髄性白血病の治療新薬として知られるSTI-571(Gleevec)には、新たな作用のあることが判明した。サンフランシスコで2001年5月に開催された米国臨床腫瘍学会第37回年次大会で、この驚異の薬剤は、充実性腫瘍(少なくとも胃肉腫)にも作用することが証明されたのである(因みにこの薬剤は日本でも臨床試験が始まっている)。
11.
本人はともかく、他人には大変に迷惑な鼾。これを防止するには、クリップなどの医療器具を使う方法がある。 しかしこれに変わる新たな手段が開発された。口蓋が緩いと、大きな鼾に伴い特徴的な「粗動」音が生じる。そこでこの方法では、後方の軟口蓋に硬化療法剤であるSotradecolを注射し、鼾を予防しようとするのである。
[主要参考文献:Otolaryngology-Head and Neck Surgery 2001年5月号]
12.
喉頭癌(多くは扁平上皮癌)患者の悲劇は声をなくしてしまうこと。しかし2001年5月にサンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会年次大会で、新たな治療法が示された。それによると、化学療法と放射線治療の併用すると、ほぼ半数の患者で声を残せる可能性があるという。
13.
60歳以上の高齢者に多発する前立腺癌。しかし、食生活に気をつけると、その危険性を低下させることが可能である。
具体的に言えば、高脂肪酸に富む魚肉、例えばニシン、サケ、サバを積極的に摂取すると良いのである。こうした魚肉を摂取しなかった人が前立腺癌に罹る危険度は、中程度から大量に魚肉を摂取した人の
2〜3倍に達したことを示すデータが出ている。 [主要参考文献:The Lancet 2001年6月2日号]
14.
日本はともかく、米国における最近の癌の現状は良好である。1992年から1998年までの期間で見ると、癌患者及び死亡者の数は減少したという。専門家は、喫煙率の低下を原因に挙げている。しかし女性の死亡者は、男性ほど低下していなかった。
[主要参考文献:Journal of the National Cancer Institute 2001年6月6日号における Annual
Report to the Nation
15.
過剰は禁物。長い間、医師は、妊婦に高蛋白食を摂取するようアドバイスしてきた。だが妊婦の3分の1以上は過剰摂取となっているらしい。妊娠中に高蛋白食をとった女性は、平均食の女性に比べ、出生時の体重が低い新生児を産んだという統計結果が出ている。
[主要参考文献:Nutrition Research 2001年6月号]
16.
これまで、心筋細胞は再生不可能と考えられたきた。しかし、心臓は心発症の後でも、自らを修復できる能力があるらしい。
[主要参考文献:The New England Journal of Medicine 2001年6月7日号]
17.
心臓にとり、怠く、靄のかかった夏の日は、室内にいる方が安全である。夏場に発生するスモッグのような微粒子性の大気汚染は、吸入すると、心臓発作の引き金となりうるという。しかも症状は、吸入してから数時間以内という短時間で始まる恐れすらある。
[主要参考文献:Circulation:Journal of the American Heart Association 2001年6月12日号]
18.
数学の成績を上げるには鉄分が有効。たとえ貧血でなくても、学齢期の小児の場合、鉄欠乏症(例えば、酸素を運搬する赤血球中のヘモグロビンには鉄が含まれているので、鉄が欠乏すると貧血になる。貧血の90パーセント以上は、この鉄欠乏症貧血であるという)にかかっていると、数学の標準的なテストで成績が芳しくない。特にティーンエージャーの少女らは要注意である。
[主要参考文献:Pediatrics 2001年6月号]
19.
アテローム性動脈硬化症に対しては、ルテイン(動物や植物に広く分布するカロチノイドの一種で、一般に身体に有害な活性酸素を消し去る作用が強いことが分かっている)が有効である。ただし、サプリメント=栄養補助食品からではなく、食べ物から摂取する必要があるらしい。
[主要参考文献:Circulation:Journal of the American Heart Association 2001年6月19日号]
20.
ツルコケモモの果実は、赤い色をした液果で酸っぱいが、食用になる。昔からこのジュースには尿路感染症を防ぐのに役立つと言われているが、どうやらこれは真実らしい。しかしその理由は、依然、不明である。
[主要参考文献:British Medical Journal 2001年6月30日号]
*その他の主要参考文献
『ドーランド図説医学大事典』
『ステッドマン医学大事典』